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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
それぞれの新たな出会い

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第978話 様々な下準備

 八咫烏達の人化の術の成果を一通り見終えたライト達。

 どの人化も全て素晴らしい出来映えだった。後は、その人化の術で変身した姿を如何にして長時間保てるか、である。

 こればかりは、繰り返し鍛錬を続けることで身体の芯まで覚え込むしかないだろう。ひたすら慣れるのみ!である。


 そして話はフギンとレイヴンの今回の外交成果についての報告に移る。

 神樹ユグドラツィのところで新たに運用が開始された結界のこと、人里でたまたま遭遇したドラリシオ・ブルーム達の事件など。

 フギンとレイヴンが語る様々な話に、八咫烏達だけでなくここに同席しているラキもまたとても興味深そうに聞き入っている。


 特にドラリシオ・ブルーム達と出会った場所であるノーヴェ砂漠に関して、八咫烏達は皆一様に絶句していた。

 この緑豊かな大神樹ユグドラシアのもと、カタポレンの森でのみ生きてきた彼らにとって、草木一本も生えない砂だけの世界というのは想像するだに恐ろしいことらしい。

 アラエルやムニン達は「砂漠とは……何と恐ろしい場所でしょう……」身震いしながら呟き、ウルスでさえも「そのような世界が、この世に実在するとは……」と険しい顔で呻るくらいである。


 そしてドラリシオ・ブルーム達の事件の顛末、無事の帰還を聞き、そこでも皆一様に安堵の息を漏らす。

 ユグドラシアもドラリシオ・ブルーム達の事件のことは気づいていなかったらしく、レオニス達に改めて礼を言ったくらいだ。


『レオニス……また貴方に大きな恩ができてしまいましたね。我が友ドラリシオ・マザーの子達を救ってくれたこと、心より感謝します』

「俺にシアちゃんから礼を受ける資格なんぞないさ。そもそもドラリシオ達を金儲けの手段にしようとしたのは、他ならぬ人族なんだからな。俺は同じ人族として、その尻拭いをしたに過ぎない。だから、礼なら事件を見つけて尽力したラウルやフギン達に言ってくれ」

『もちろんラウルやフギン、レイヴンにも感謝していますよ』


 礼を言うならラウル達に、という言葉に、ユグドラシアもすぐにラウルやフギン達に礼を述べる


『ラウル、貴方のおかげで罪もないたくさんのドラリシオ達の命が救われました。本当にありがとう』

「いやいや、俺の力だけじゃここまで円満解決には至らなかった。ご主人様とフギン達の力添えあってこそだ」

『フギン、レイヴン、貴方達も本当にご苦労さまでした。貴方達八咫烏にとって、砂漠はとても恐ろしい地だったでしょうに……』

「シア様からの労いのお言葉、もったいのうございます」

「ぃゃー……俺はあの砂漠というものを初めて見た時、正直恐ろしくて震え上がりましたが……あの場にはフギン兄様やマキシもいましたし、ラウル殿も様々な道具を置いていってくれたので……こんな臆病な俺でも少しは皆の役に立てたようで、嬉しいッス!」


 ユグドラシアからの心からの感謝に、ラウルは素直な所感で応え、フギンもまた頭を垂れて恭しく受ける。

 最後のレイヴンだけは、これまた本当に素直にド正直に恐怖を認めているが、これはこれで大事なことだ。それはレイヴンの教訓として、成長の糧となるのだから。

 そしてユグドラシアは、改めてレオニスに声をかける。


『そしてレオニス。今一度、改めて礼を言わせてください。例え事件を起こした元凶が、貴方と同じ人族であろうとも―――そこに貴方が救いの手を差し伸べてくれたことに、何ら変わりはないのですから』

「……そうか。シアちゃんにそこまで言われたら、これ以上拒むというのも野暮だよな」

『ええ。いつか私も貴方達に報いることができるよう、日々貴方達を見守り続けていきましょう』

「シアちゃんにそう言ってもらえると心強い。これからもよろしくな」

『こちらこそ』


 レオニスは穏やかな笑みを浮かべつつ、真上に繁る豊かな緑を見上げる。

 そこにちょうどタイミング良く、心地良い爽やかな秋風が吹きつける。

 旧友の子達が救われた喜び、レオニス達に礼を受けてもらえた嬉しさ、そうしたユグドラシアの歓喜を表すように軽やかな葉擦れの音が響いていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「さて……そしたら次は、シアちゃん用に新たに作る結界の話を進めておきたいんだが」

「うむ。先程のフギン達の話では、ツィ様の新しい結界はそれはもう素晴らしいものらしいが……それと同じものを、シア様のために作ってくださる……ということか?」

「ああ。新たな結界作りに必要な海樹の枝も、ユグドライアから貰い受ける許可は既に得ている」

「何と……それは非常にありがたい」


 レオニスの話に、ウルスや他の八咫烏達も感激の面持ちでいる。

 大神樹ユグドラシアは常に八咫烏達の守りがあるとはいえ、結界そのものに関してはかなり脆弱と言っても過言ではない。

 トロール族などの一部の種族には多少効いているようだが、それでも当時まだそこまで強くなかったライトやラウルでさえ最初から難なく入れたのだから。

 それをより強固なものにできるならば、大喜びしながら歓迎しこそすれ断る理由などない。


「レオニス殿、我らに協力できることあらば何でもしよう。遠慮なく申してくれ」

「ありがとう。そしたら結界用の駒を置く位置を決めておいてくれ。置き方は、ツィちゃんのところでフギンとレイヴンが設置作業を見ていたから分かると思うので、後でフギン達から詳しく聞いといてくれ。でもって、置く駒の個数は六十個以上になるが……」


 ウルスの協力の申し出に、レオニスが早速結界設置の下準備作業を伝える。

 レオニスはこの八咫烏の里の地理に疎いが、住民であるウルス達ならばどこにどう置くべきか分かるはずだ。

 そしてレオニスが駒の個数を伝えたところで、はたと言葉が止まりフギンに問いかけた。


「フギンよ、ツィちゃんのところの結界とこの八咫烏の里の結界、広さを比べたらどの程度違う?」

「そうですね……ツィ様の周囲の平地もかなり広かったですが、それでもこの里の結界よりは小さいかと」

「その差は倍以上か?」

「いいえ、そこまではないと思います」

「そうか……よし、そしたらこの里に置く駒の個数は、ツィちゃんのところの五割増しにしよう」


 レオニスが気になったのは、結界の面積だ。

 ユグドラツィのところよりユグドラシアの方が狭いなら、同じ個数でも問題なく稼働するだろう。だが、ユグドラシアの方が面積が広ければ、その分ユグドラシアの周辺を覆う面積も大きくなって、その結果結界の密度や強度が落ちてしまうかもしれない―――レオニスはそう考えたのだ。


 実際その懸念は的中していて、この八咫烏の里の方がユグドラツィの周辺の平地よりも広いらしい。

 これは、両方の現地を実際に見て知っているフギンもしくはレイヴンにしか判断を下せないところである。

 そのフギンの意見を聞いたレオニス、新たに作るユグドラシアの結界にはユグドラツィの1.5倍、つまり百個を用いることにしたようだ。


「結界用の駒は全部で百個使う。ついてはその百個分の駒を置く箇所を、八咫烏の皆で話し合って決めておいてくれ。事前に置き場所を決めておいてもらえれば、俺達が結界の駒を用意できた後にすぐに設置に取りかかれるからな」

「承知した。シア様を守る結界、その迅速な設置のために我らも尽力しようぞ」

「頼んだぞ。……ああ、場所決め自体はそんなに急がなくていいからな。こっちもまだイアから枝をもらってないし、海樹の枝を入手した後も百個分の駒を加工するまでそれなりに日数がかかるからな」

「承知した。こちらもフギン達と相談して、置き場所をじっくり吟味して決めるとしよう」


 ユグドラシアを守る結界について、レオニス主導でどんどん話が進んでいく。

 するとここで、それまでずっと静かに結界設置計画を見守っていたラウルが、レオニスに声をかけた。


「ご主人様よ、俺からも一ついいか?」

「ン? 何だ?」

「この八咫烏の里の中に、俺の持つログハウスキットでログハウスを建ててはどうだ? そうすれば、これから俺達が八咫烏の里に泊まる時に使えるし、結界設置のために来てもらうナヌス達にも宿泊や休憩施設としても提供できるだろ」

「それもそうだな……うん、そりゃ良い案だ!」


 ラウルの提案に、最初は思案顔だったレオニスの表情がどんどん明るくなる。

 ラウルが持つログハウスキットとは、天空島で畑を開墾した島に建設したアレ(・・)のことだ。

 ログハウスの材料となっている丸太は、ラウルがカタポレンの家の周辺を開墾した時に伐採した木や、ユグドラツィ襲撃事件の際の激しい戦闘により倒れてしまった木々が使われている。

 そういえば、かつてマキシが『ラウル曰く、これと同じものがあと二個は建てられるらしい』と言っていたが、その二個のうちの一つをこの八咫烏の里で使おう!という訳だ。


 レオニスは早速ウルスの方に向き直り、八咫烏族族長への交渉に入る。


「ウルス、もしよければこの八咫烏の里の中に、俺達や小人族なんかが滞在した時用に使える家を建てたいんだが。許可はもらえるか?」

「もちろん私自身には異存はないが、まずはシア様にお許しをいただけるかどうかをお聞きしてかr」

『もちろんいいですよ。何なら私のいるこの場所に建ててくれても構いませんし』


 レオニスの問いかけに対し、ウルスも八咫烏族族長として答える。

 ウルスとしてはもちろん許可を出したいが、まずは自分達よりも敬うべき大神樹ユグドラシアの意見が最優先される、ということだ。

 そしてそのウルスの意見が全て出切らないうちに、早々にユグドラシアからの許可が下りた。

 食い気味に出たその答えは『私の許可など得ずとも良い』と言っているかのようだ。

 ユグドラシアのあまりにも食いつきの良い迅速な回答に、早速レオニスも動き出す。


「よし、シアちゃんとウルスの許可も出たことだし、今ここでサクッとログハウスを建てちまうか!ラウル、ログハウスキットをここに出してくれ」

「了解」

「そしたらちょうどいい、ラキにも手伝ってもらうぞ」

「おお、我にできることならいくらでも協力しようぞ」

「ライトは…………さすがに手伝ってもらう訳にはいかんな」

「じゃあぼくは、八咫烏の皆といっしょにこの近くにいて、人化の術のお手伝いとかするよ!」

「おお、それがいいな」


 ユグドラシアのお膝元にログハウスを建てることにしたレオニス。

 幸いにも今ここにはラキがいるので、ログハウス建設に大いに役立ってくれることだろう。

 ラキ自身、突然出てきた謎のワード『ログハウスキット』なるものが一体何なのか、全然分かっていない。だがそれでも、レオニスが『手伝ってくれ』ということならばラキは無条件で協力するのだ。


 そして今回ばかりはライトに手伝わせる訳にはいかない。

 中身はともかくライトはまだ九歳の子供であり、オーガ族のラキはもちろんレオニスやラウルと比べても体格差が大きい。

 建設現場で小さな子供がうろちょろしてたら間違いなく邪魔だし、事故のもとになりかねない。

 これはライト自身もすぐに理解できたので、レオニス達がログハウスを建てている間は八咫烏達とともに別のことをすることを選んだのだ。


 こうして急遽決定したログハウス建設。

 ライト達はそれぞれにすべきことをこなすべく、分かれて行動していった。

 八咫烏の里でしておかなければならないことのオンパレードです。

 それはフギンやレイヴン達の外交成果の報告だったり、あるいはユグドラシアのために新しく作る結界のための事前の打ち合わせだったり。

 ただ単にフギンとレイヴンの帰郷の手伝いだけかと思いきや、思いの外やらなきゃならないことが結構あるんですよねぇ。

 とはいえ作中でも書いた通り、こうして事前に打ち合わせをしておけば、結界新設という一大事業も後々スムーズに進められるというもの。


 ……というか、後半で突如『ログハウスキット』がニョキニョキと生えてきたのは何故だ…( ̄ω ̄)…

 まぁね、ライト達にとってもログハウスは朗報というかメリットは大いにあるんですが。八咫烏の里に遊びに来る度に、毎回テント設営とかする必要もなくなるし。

 あるいは八咫烏達が人族の巣を理解する下地にもなりますし。

 さすがに体格差があるラキまで使える代物ではありませんが、せっかくならログハウス作りを手伝ってもらっちゃえー!と相成りました。

 ホントに突如作者の中に生えてきたログハウス建設計画ですが、ここで一棟建てておけばきっと後々便利になる、ハズ…ッ…!

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