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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
それぞれの新たな出会い

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第973話 大神樹との邂逅

 フギンとレイヴンの案内により、程なくしてユグドラシアのもとに辿り着いたライト達。

 いつもの場所に、いつものようにユグドラシアがそこに立っていた。


「おお……これが、大神樹ユグドラシア……」


 目の前に聳え立つ大神樹の威容に、ラキは思わず感嘆の声を漏らした後しばし言葉を失う。

 ラキ達オーガ族は、普段は自分達より背が高いものをあまり見ない。いいとこカタポレンの森の木々くらいのものである。

 そんな周囲の木々を十倍以上は軽く超えそうな超巨木。先日予行演習と称して、神樹ユグドラツィに初めて会った時にもラキは大いに感動していたが、今回の大神樹の雄大さにも胸を打たれていた。


 ラキは真上を見上げたまま、しばし無言で大神樹に見惚れている。

 するとどこかから、何者かの声が聞こえてきた。


『オーガ族族長ラキ、ようこそいらっしゃいました』

「ぬ?……この、穏やかで優雅な声は、もしや……」

『私は大神樹ユグドラシア。どうぞ気軽に『シアちゃん』と呼んでくださいね』

「おお……やはり大神樹のお声であったか!」


 突然聞こえてきた声に、ラキの顔が明るくなる。

 それは、ラキが神樹ユグドラツィと初めて会った時と同じ。ラキに向けてかけられた声が、目の前にいる大神樹から発せられたものであることに気づくのに、そう時間はかからなかった。

 その後ラキはハッ!としたような顔になり、慌ててその根元で跪く。


「お初にお目にかかり光栄に存じ上げます。我はオーガ族族長を務めるラキと申します。神樹ユグドラシア」

『シアちゃん』

「うぐッ」


 畏まりながら挨拶をしようとするラキに、ユグドラシアの容赦ないツッコミが炸裂する。

 神樹族の次女も、末妹と同じく何が何でも可愛らしい呼称で呼ばれたいようだ。

 しかし、ラキにしてみればやはり想定外のことである。

 ラキは猛烈に戸惑いながらも、おそるおそる神樹に物申す。いきなり馴れ馴れしく『シアちゃん』などと呼ぶことに、かなり抵抗を感じているようだ。


「そ、それは……大神樹と既に知己を得たレオニスや、同じく大神樹を慕うフギン殿達のような、親しき者達だけに許される呼び方では……?」

『ラキ、私自身が貴方にもそう呼んでほしいと願っているのだから、何の問題ありません。レオニス、フギン、レイヴン、そうですよね?』

「もちろん。シアちゃんの言う通りだな」

「「はい!」」

「ぐぬぬぬぬ……」


 ラキの後ろに控えていたレオニスやフギン達。同意を求めるユグドラシアの言葉に、大いに頷いている。

 その会話と光景は、過日どこかで繰り広げられたものと全く同じデジャヴ感が、これでもか!というくらいに溢れていた。

 ここでも完璧なる四面楚歌状態に、ラキはぐうの音も出ない。

 そんなラキに、ユグドラツィがいたずらっぽい口調で語りかける。


『……フフフ、冗談ですよ。少し意地悪なことをしてしまいましたね』

「い、いえ、け、決してそんなことは……」

『ですが……ツィのことを『ツィちゃん』と呼べるなら、私のことも『シアちゃん』と呼んでもらえます、よね……?』


 それまでのいたずらっぽい口調から一転、懇願するような口調に変わっていくユグドラシア。

 もし大神樹を擬人化したら、きっと間違いなく潤んだ瞳で上目遣いしているであろうことを彷彿とさせる。

 そのように懇願されたら、否とは言えないラキ。大神樹の願いを叶えることは、ラキとしても望むところだから。


「……も、もちろん、です……シア、ちゃん」

『ありがとう!私にとって初めてのオーガの友よ、心より貴方の来訪を嬉しく思います』


 早々に諦めてユグドラシアのことを『シアちゃん』と呼ぶラキ。

 神樹ユグドラツィの時の例もあり、さっさと白旗を掲げて観念したようだ。

 そしてユグドラシアの方も、その声音から本当に喜んでいることが分かる。

 既に前例を作っていた末妹(ツィ)のおかげで、次姉(シア)の願いもスムーズに叶えられたことがとても嬉しいとみえる。

 存外強かなユグドラシアに、さすがのラキもくつくつと笑い始める。


「フフフ……神樹族の女子衆とは、長生きしているだけあって我を転がすことなど朝飯前と見える」

『まぁ、酷い。私などたかだか五千年程度しか生きていないというのに』

「五千年……我には想像もつかない月日だ」


 完全に手玉に取られたことを自嘲するラキに、今度はユグドラシアが少し拗ねたような口調になる。

 神樹族にもレディーの年齢に関するタブーなどないが、それでもユグドラシアの中には『私なんてまだまだ未熟者』という意識があるようだ。

 そして五千年という月日は、鬼人族であるラキはもちろんのこと里を守る八咫烏やライト達人族にとっては途轍もなく長い。

 悠久の時を生きる神樹に、ラキが改めて声をかける。


「はるか長い時を生きる神樹にとって、我らは儚き存在であろうが……貴女にとって瞬き程のほんの僅かな間だけでも、その長き樹生を彩る存在となれるよう我も努めよう」

『……ありがとう。そのように言ってもらえたのは、我が樹生でも初めてのことです』


 身長5メートルを超える体躯のラキであっても、樹高100メートルを超える神樹の前では赤子どころか子犬にすらならない。それこそ手乗り文鳥程度のサイズであろう。

 神樹ユグドラツィの時にも打ち震えた感動が、大神樹ユグドラシアとの謁見で再びラキの中で鮮やかに蘇る。


 ユグドラシアの枝葉も、ラキとの邂逅を喜ぶようにサワサワと揺れ動く。

 緑豊かな枝葉から聞こえる心地良い葉擦れの音。それを楽しむかのように、一同はしばし静かに佇んでいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてラキとユグドラシアの対面が恙無く進み、和やかな空気に包まれた頃。

 他の八咫烏達が続々と集まってきた。

 まず現れたのがミサキ。はるか遠く離れた場所からミサキの声が聞こえてくる。


「フギン兄様ー……レイヴン兄様ー……」

「……お? あの声はミサキか?」

「ですねー。おーい、ミサキー!ただいまー!」

「おかえりなさーい!」


 猛スピードでユグドラシアのもとに飛んできたミサキ。

 遠くから声が聞こえてきたと思ったら、あっという間にライト達のもとに到着したミサキ。その猛烈な勢いのまま、レイヴンの胸にボフン!と飛び込んだ。

 ミサキの猛烈アタックをしっかりと受け止めたレイヴン。可愛い妹の熱烈な出迎えに、胸の中にいるミサキの頭を翼で優しく撫でる。


「兄様、おかえりなさい!二度目の人里見学はどうでしたか!?」

「おう、とても実りのあるものだったぞ!……つーか、ミサキ。今日は他のお客人もおられる、まずはご挨拶しな」

「……あッ!気づかなくてごめんなさい!」


 レイヴンに客人への挨拶が先、と諭されたミサキ。慌てて周囲をキョロキョロと見回す。

 そしてライトやレオニス、ラウルの姿を見つけて、破顔しつつ今度はライト達の方に飛んできた。


「ライトちゃん、レオニスちゃん、ラウルちゃん!こんにちは!お久しぶりー!」

「ミサキちゃん、こんにちは!」

「おお、相変わらず元気いっぱいだな」

「ミサキちゃん、久しぶり。元気そうで何よりだ」


 今度はライトの胸元に飛び込んできたミサキ。

 さすがにレイヴンに対する程の勢いで突っ込んでくることはなく、ライトの胸元にぽすん、と収まっている。

 とはいえその大きさはライトが両腕で抱えられるギリギリ。相変わらず八咫烏一族はむっちりムチムチのプリップリで、非常に艶やかなまん丸球体型である。


 そしてミサキは、ライトの胸の中でラキの方を見る。

 初めて見る鬼人族に、ミサキの目は興味津々に光る。


「ライトちゃん、あちらにいるのはどなた?」

「あの人はラキさんと言って、ぼく達の家の近くに住む鬼人族、オーガ族の族長さんだよ」

「まぁ!ワタシ、鬼人族の人って初めて見たわ!是非ともご挨拶したいから、ライトちゃん、ラキさんの前にいっしょに行ってくれる?」

「もちろん!」


 ミサキの可愛らしい願いに、即時応じるライト。

 まん丸なミサキを胸に抱えたまま、ライトはラキの前に立った。


「オーガ族の族長さん、初めまして!ワタシは八咫烏一族族長の七番目の子にして三女のミサキと言います!」

「丁寧なご挨拶、痛み入る。我の名はラキ、先程ライトからも軽く紹介してもらった通り、オーガ族の族長をしている。以後お見知りおきを」

「ラキちゃんね!こちらこそよろしくね!」

「「「……ラキ、ちゃん……」」」


 ニコニコ笑顔で挨拶するミサキに、ラキもまた静かに微笑みながら挨拶をする。

 ライトの前でしゃがみ込み、初めて会うミサキと少しでも目線を近くに合わせようとするラキの姿勢は、常に真摯である。


 そしてミサキの方も相変わらず一切物怖じしない性格で、ラキのことを早速『ラキちゃん』と呼んでいる。

 ライトやレオニス、ラウルがちゃん付けで呼ばれることは度々あっても、あのラキがちゃん付けで呼ばれているところを見るのはこれが初めてのことだ。

 筋骨隆々の巨躯を誇るオーガ族の族長には、間違っても似つかわしくない響きにライト達は思わずその場で固まる。


 だが、当のラキ本人は全く気にしていないようだ。

 幼子を見つめるかのような優しい眼差しのまま、微笑みつつミサキとの会話を続ける。


「おお、我のことを『ラキちゃん』と呼んでくれるのか。では我も、ミサキ殿のことを『ミサキちゃん』と呼んでもよろしいかな?」

「もちろんよ!『ミサキ殿』なんて堅苦しい呼び方をされるよりも、『ミサキちゃん』って呼んでもらえた方がワタシも嬉しいもの!」

「それは良かった。ミサキちゃん、よろしくな」

「うん!ラキちゃん、我が八咫烏の里へようこそ!心よりラキちゃんの来訪を歓迎するわ!」


 それまですっぽりと収まっていたライトの腕から抜け出して、そのままラキの肩までパタパタと飛んで留まったミサキ。

 ライトやレオニス、ラウルが抱えたら巨大なカラスにしか見えないミサキも、オーガのラキの肩に留まると途端に小ぶりのカラスに見える。


 新しい客人と仲良く会話を交わせたことに、喜びながらラキの頬に頬ずりするミサキ。

 ミサキからの頬ずりに、ラキもまたにこやかに微笑みながらミサキの頭をそっと撫でる。

 オーガ族族長と八咫烏一族族長末娘の、末永い友誼が結ばれた瞬間だった。

 ラキとユグドラシア、そしてミサキとの初邂逅です。

 シアちゃんもミサキも、相変わらずパワフル女子で周囲を振り回してくれる子です。

 ですが、振り回される方も怒ることなく許容してしまうのは、ひとえに彼女達の愛らしい仕草故でしょう。

 というか、初っ端から濃いぃ子達が連チャンで登場したせいか、ユグドラシアとミサキが出てきただけで4000字超えてもた…( ̄ω ̄)…

 他の父ちゃん母ちゃん兄ちゃん姉ちゃんはまた次回に持ち越しです!><

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