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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ドラリシオの悲劇

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第969話 末永く受け継がれていくもの

 北の里の療養畑で、全てのブルーム達の療養開始を無事見届けたライト達。

 レオニスが両手を組み腕を高く上げて、ググーッ……と背中を伸ばし身体を解す。


「……さ、俺達の仕事もようやく完了したことだし。そろそろ帰るとするか」

『あら、もう帰っちゃうの?』

『何なら数年くらいここに泊まっていってもいいのよ?』

「バカ言え。ここに数年もいたら、人族の街で行方不明者になっちまうわ」


 帰宅を宣言するレオニスに、レナータとミレイユが残念そうに引き留める。

 もっとも彼女達もそこまで本気で引き留めている訳ではなく、冗談交じりの掛け合いのようだ。

 しかし、そんな彼女達が急に真面目な顔になってレオニスに問うた。


『ていうか。レオニス、アンタが連れてきたアンタ以外の面々の紹介、まだしてもらってないんだけど?』

「ン? ……おお、そういやそうだったな」

『やぁねぇ、レオニスってば。ホント、そそっかしいんだからー』

「あんだけ大騒ぎしまくったお前らにだけは、そそっかしいとか言われたかねぇっての……」


 レナータとミレイユが、レオニス以外の者達の紹介を促す。

 今の今までずーっと自己紹介ができなかったのは、ひとえにレナータとミレイユが繰り広げていたドタバタが原因なのだが。当のレナータ達にその自覚は全くないらしい。

 しかし、ライト達としてもろくに名乗らぬまま帰るというのも、それはそれで寂しい。

 なので、ライトが率先して名乗りを上げた。


「レナータさん、ミレイユさん、カティアさん、初めまして!ぼくはライトっていいます。普通の人族で、レオ兄ちゃんといっしょに住んでる弟みたいなもんです!」

『まぁ、可愛らしい』

『人族なんて、レオニス以外で初めて見たわ!』

『レオニス、アンタに似なくて良かったわねぇ♪』

「うッせーよ」


 礼儀正しく挨拶をするライトに、三体のレディー達はご機嫌になる。

 ここでもレオニスと比較されてレオニスがディスられるのはお約束である。


「俺はラウル。妖精でプーリア族の出だが、訳あって今は人里で暮らしている」

『まぁ!貴方が、さっきレオニスが言っていたブルーム達の恩人なのね!』

『ブルーム達を助けてくれて、本当にありがとう!』

『私達にできることがあれば、何でも言ってね』


 ライトの次に自己紹介をしたラウルも、概ね快く受け入れられている。

 先程レオニスの口からも『ラウルがブルーム達を保護した』と聞いていたおかげだろう。


 その後もマキシ、フギン、レイヴンの順に自己紹介していく。

 八咫烏三兄弟達も、このドラリシオの群生地からそこそこ近い場所にあるということで、カティアなどはその存在を知っていた。

 八咫烏一族は大神樹ユグドラシアのもとで里を形成していることも、レナータ達は好意的に捉えていた。

 そして最後の最後に、アクアがレナータ達に声をかけた。


『僕はアクア。目覚めの湖に住む水神で、湖底神殿の守護神も務めているんだ。今回はラウル君やレオニス君、ライト君達のたっての頼みということで、僕がノーヴェ砂漠から目覚めの湖にブルーム達を連れてきたんだ』

『まぁ、水神様自らがドラリシオのために動いてくださるなんて……』

『何て光栄なことなんでしょう!』


 レナータとミレイユが感激している傍で、カティアが改めてアクアに向かって深々と頭を下げる。


『母様だけでなく、私達からもお礼を言わせてください。アクア様……私達の妹を助けてくださり、本当にありがとうございます』

『『ありがとうございます!!』』


 アクアに礼を述べるカティアに続き、レナータとミレイユもまた深々と頭を下げてアクアに感謝を示す。

 するとここで、アクアがいたずらっぽい笑顔でレナータとミレイユに話しかけた。


『おや? 君達はレオニス君にするように、僕に向かって蔓を飛ばしてくれないのかい?』

『『え"ッ!?』』

『僕もレオニス君のように、熱烈な歓迎を受けたいなー』

『『そそそ、それは……』』


 ニコニコ笑顔で宣うアクアに、レナータとミレイユがあばばばば……と慌てている。

 いくらレナータ達が遠慮知らずだからと言っても、さすがに水神に向かって極太蔓を飛ばす程無遠慮ではない。

 困ったように極太蔓を上下させてモゴモゴ口篭るレナータ達。

 そんな彼女達を見たレオニスが、助け舟を出す。


「アクア、そんな無茶言ってくれるな。いくらこいつらが基本脳筋だからって、アクアにまで蔓を飛ばせる訳ねぇって」

『そうなの? 君達がさっきしていた挨拶は実に仲睦まじくて、親愛の情に満ちていたように見えたんだけどなぁ?』

「え? あの挨拶に親愛を見い出せるのか? アクア、そりゃ危険過ぎるってもんだぞ?」


 フフフ、と小さく笑うアクアに、レオニスが呆れたように忠告している。

 あの危険極まりないドラリシオ・レディー流挨拶は、受ける相手がレオニスだからこそできる芸当である。それ以外の普通の者が受けたら、間違いなく瞬時にズタボロにされて死んでしまうだろう。


 レオニスとアクアのやり取りを、ライトもまた顔を引き攣らせながら聞いている。

 しかし、アクアがそれを羨ましがるのも少し分かる気がするライト。

 アクアは水神という、生まれながらにして高貴な身分を持つ者。誰もがアクアの前では傅き跪く。

 それはトラブル回避等にもなり、多くの場面で役立つことではあるのだが。ほんの少しだけアクアが寂しく思っていることを、ライトはアクアの表情から察していた。


 そんな畏まった関係ではなく、ただの友人として接してくれる者もいてくれたらいいのに―――そう思うアクアにとって、レオニスとレディー達の間柄はとても眩しいものに映る。

 故にアクアは、レオニスとレディー達の仲を羨ましく思ったのだ。


『ま、僕もそのうちレディー流の挨拶をしてもらえるように、これから頑張ろうかな』

『あああアクア様、そそそそれはご容赦願いたく……』

『え、何で? チルドレンの子達は僕に普通に蔓を飛ばしてくれたよ?』

『『何ですって!?』』 

「「「ピャッ!?」」」


 話の流れで、ついぽろりとチルドレン達の所業を暴露したアクア。

 レナータとミレイユはそのことを知らないので、思わず首をギュルン!と動かしチルドレン達の方を見遣る。

 当のチルドレン達は、思わぬところで黒歴史所業を暴露されて涙目で固まっている。

 そんなチルドレン達を庇うのは、他ならぬアクアだった。


『あ、そのことでチルドレン達を叱らないであげて? 彼女達は彼女達で、里に入ってきた侵入者を退治しようとしただけなんだから』

『それにしたって……まずは相手が何者かを確認すべきでしょうに……』

『それはそうなんだけどね。でも、今回だけは僕に免じて許してあげて?』

『……アクア様が、そう仰られるのでしたら……』


 アクアの擁護に、渋々引き下がるレナータとミレイユ。

 命拾いしたチルドレン達は、アクアのもとに駆け寄り抱きついた。


「アクア様ーーー!ありがとうございますぅーーー!」

「このご恩は、一生忘れませんーーー!」

「いつか必ずご恩返しいたしますぅーーー!」


 大泣きしながらアクアの身体にしがみつくチルドレン達。

 姉達からのお仕置きが余程怖いようだ。

 おいおいと爆泣きするチルドレン達に、アクアが困ったように笑いながら前肢でチルドレン達の頭を撫でる。


『困ったなぁ……君達には変わらずにいてほしいんだけど』

「「「ア"グア"(ざま")ぁぁぁぁ」」」

『仕方ないなぁ……でも、これからも僕と仲良くしてね?』

「「「あ"い"ぃぃぃぃ」」」


 アクアの願いに、チルドレン達がエグエグと泣きながら応える。

 するとここで、アクアがふとチルドレン達に話しかける。


『うーん……君達には、まだ個々の名前はないんだよね?』

「……ぁ、はい……私達にはまだ、母様から名を賜る資格はないですぅ……」

『君達だけだって三体もいるのに、それぞれ個別の呼び名がないのは思ったより不便だなぁ……』


 アクアがチルドレン達の頭を撫でながら、ぽそりと呟く。

 確かにアクアの言う通りで、三体のチルドレン達に名前がないのはかなり不便だ。今後もより交流を深めていくにつれ、その不便さは常につきまとうだろう。

 するとここで、何故かアクアとレオニスの目が合った。

 困っているアクアに、レオニスが一つの提案をした。


「……そしたら、そいつらに『ドラ子』『ドラ恵』『ドラ代』の名をつけてやりゃいいんじゃね?」

『ああ、それいいね!その名前はちょうど、たった今さっき御役御免になったところだもんね!』

「そそそ、そゆこと。アクアの友達になるとしたら、二代目襲名するにも相応しいってもんだ」


 何とレオニス、カティア達レディーが卒業?したばかりの『ドラ子』『ドラ恵』『ドラ代』の名をチルドレン達に与えたらどうか?と言い出したではないか。

 突拍子もないその案を聞いたドラリシオ達、全員があんぐりと口を開けたまま絶句している。

 そんなドラリシオ達を他所に、レオニスはどんどん話を進めていく。


「そしたら、三体の中で頭の花が一番大きいお前が『ドラ子』、目の横に泣きぼくろみたいな赤い痣のあるお前は『ドラ恵』、蔓のお下げが癖毛のお前は『ドラ代』な」

『ふむ。君が『ドラ子ちゃん』で君は『ドラ恵ちゃん』、君は『ドラ代ちゃん』だね。よし、覚えたよ!』

「私……ドラ子?」

「私は、ドラ恵……?」

「私、ドラ代になるの?」


 個々の特徴を捉えて、それぞれに名を振り分けるレオニス。そこに根拠などは一切なく、完全に順不同かつ適当な付け方である。

 しかし、特徴的な箇所で見分けをつくようにするのは有効的な手段だ。

 テキパキと決めていくレオニスの解説に、アクアもしっかり食いついてチルドレン達の見分け方をマスターしたようだ。


『ドラ子ちゃん、ドラ恵ちゃん、ドラ代ちゃん。これからもよろしくね!』

「……ぁ、はい!」

「お前ら、本当に良かったなぁ。この名前はな、お前らが姉と慕うカティアやレナータ、ミレイユにも使われていた由緒正しい名前だぞ?」

「由緒正しい、名前……」

「そう。お前らはカティア達の幼名を受け継いだんだ。これからは胸を張って、療養しているブルーム達の世話をしてやってくれよな」

「……うん!分かったわ!」


 レオニスの口車に思いっきり乗せられたチルドレン達。すっかりその気になって、やる気に満ちた顔になっている。

 一方の先代であるカティア達は、呆気にとられた顔をしていた。


『あ、あの名前を、チルドレン達に下賜するなんて……』

『あの名前に、そんな正しい由緒なんてあったっけ?』

『ないないナイナイ、そんなもんある訳なーい。あんなんレオニスが勝手に私達をそう呼んでただけだもの』


 三体でひそひそ話をするレディー達。

 やっと卒業できたへんちくりんな名前を、今度はチルドレン達に使い回されるとは夢にも思っていなかったようだ。

 だが、レオニスやアクアに励まされて純粋に喜んでいるチルドレン達の笑顔を見て、レディー達の呆れ顔も次第に和らいでいく。


『……でも、アクア様も納得して喜んでおられるみたいだし……』

『そうねぇ……確かにアクア様達には、私達を見分けて名を呼ぶ必要性はあるでしょうし……』

『仕方ないわね……あの子達も、思いの外喜んでいるようだし』


 フフッ、と小さく笑いながらチルドレン達の笑顔を見つめるカティア達。

 彼女達がレオニスと出会ったことで生まれた名前『ドラ子』『ドラ恵』『ドラ代』。

 一度は御役御免となりかけたそれらの名が、このドラリシオの群生地で代々優秀なチルドレン達に末永く継がれていくことになるのは、まだまだもっと先の話。

 消えることなく受け継がれていく名前、今日はその襲名が初めて決まった記念すべき日となったのだった。

 ぼちぼちライト達がドラリシオの群生地から去る時がきました。

 思えばこのドラリシオ・ブルーム達の事件が始まったのが第949話。そこから話を完結させるまでに21話、三週間も経過してしまいましたよッΣ( ゜д゜)

 ここまで長くなるとは、作者も全く予想しておりませんでしたぁー><


 でも、新しく登場したドラリシオ、その様々な形態や個性的な面々を描写するのはとても楽しかったです。救出劇の時には、マキシ達八咫烏三兄弟の魔法攻撃などのカッコいいバトルシーンも出せましたしね!(・∀・)

 この先また機会があれば、ドラリシオ達を再登場させるつもりでいる作者。

 こんな面白楽しい可愛らしい子達を、一回こっきりの使い捨てモブにするのは惜しいですからね!(`・ω・´)

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