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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第948話 人族の族長と次の行き先

 向日葵亭を出た後、ラウル達は散歩がてらしばらく適当に歩いていた。


「前回フギン達が人里見学に来た時は、どこをどう回ったっけ?」

「えーとですね……確か里から出た初日にナヌスの方々とお会いして、ツィ様の結界について計画を練る場に立ち会わせていただきまして」

「ああ、その成果は昨日見れたんだってな?」

「はい、おかげさまでツィ様のところの立派な結界を見学させていただきました。とても立派な素晴らしい結界でした」

「そうだろう、そうだろう。あの結界作りには、ご主人様達やナヌスだけでなく俺もかなり携わったからな!」

「皆様方の技術と努力の結晶を、いつか我が里にも導入したいッス!」


 話の流れでユグドラツィの結界のことに触れたことで、ラウルも誇らしげにドヤ顔する。

 実際ラウルもあの結界作りにはかなり関与している。

 海樹の枝を譲り受けて地上に持ち帰り、ナヌスに加工してもらった海樹の枝の駒の配置もレオニスと二人で頑張ってこなした。

 そうした実績を褒められれば、ラウルも鼻高々になるというものだ。


「そして二日目には、冒険者ギルドという数多の人々が集まる場所と、新しく建てる孤児院?なる場所に連れて行っていただきました」

「思い出した、確かそんなコースで回ってたな」

「で、その後ジョージ何とかという店に入り―――」


 今日のお出かけの行き先を決めるため、前回のフギン達の人里来訪時の行動を確認し合うラウル達。

 できれば前回とは違う場所に連れて行ってやりたい、と考えたためだ。


「そしてその翌日には、オーガの里に連れて行っていただきました。その時のご縁により、我が里にも新たな交流の可能性が生まれ、一刻も早くそれを実現のものとするために我らは早期に帰郷した次第です」

「そうか。そしたら今日は、それ以外の別の場所を案内してやりたいが……さて、どこがいいかな」


 本日の案内先を思案するラウル。

 そんなラウルに、フギンが何気なく問うた。


「ラウル殿、人族の族長というのはどこに住んでおられるのですか?」

「人族の族長、か?……あー……人族というのは、国によって戴く王が違っててな……あ、国ってのは、お前達八咫烏や妖精の俺の言うところの『里』で、それをもっと大きくしたようなもんで、王ってのは族長のことなんだが」

「我らがその王?に会うことは可能ですか?」

「ンー……ぃゃ、それはまず、というか絶対に無理、だろうなぁ……」


 フギンの問いかけに、若干顔を顰めつつ難を示すラウル。

 ふと足を止め、振り返りながらとある方向を指し示す。


「フギン、あの大きな建物が見えるか?」

「はい。何やら山のように大きく聳え立つものがありますね」

「あれは『ラグナ宮殿』と言ってな。この国、アクシーディア公国の頂点に立つ人族の王、ラグナ大公一族が住む城だ」

「何と……あれは、人族の族長が住まう家なのですか……」

「はぇー……ツィちゃん様やシア様にも負けぬほどのデカさですね……」


 ラウルの説明に、フギンもレイヴンも目を見張りながらラグナ宮殿を見つめる。

 はるか遠くにあってなお誇るその威容は、全方位からよく見える。例えラグナロッツァの端っこ、外壁付近であっても例外ではない。


「あれ程に巨大な居を構えられるとは……ならばその警備も相当なものなのでしょうね」

「だな。俺は直に呼ばれたことなどないし、一度も足を踏み入れたことはないが……まぁ警備が厳重なのは間違いないし、ましてや事前連絡無しに会えるなんてことも絶対にない。そもそも会いたいから会わせろと言って『ハイ、ソウデスカ』と会わせてくれるようなもんでもない」

「人族とは、つくづく我らとは異なる生き物なのですねぇ……」


 感嘆を漏らしつつ、ラグナ宮殿を眺め続けるフギンとレイヴン。

 自分達も八咫烏一族の代表として、オーガの族長ラキやトロールの族長シンラに直接会って会談できたように、人族の長ともまた知り合うことができれば……と思ったのだが、どうやらそう簡単にはいかなさそうなことを悟る。

 そんなフギン達を励ますように、ラウルが八咫烏兄弟に声をかける。


「……ま、うちのご主人様曰く『あんなところは近寄らん方がいい』だそうだ。人族ってのは、俺ら妖精や八咫烏、神樹達と違って平気で嘘をつく奴等だからな」

「そうですね……これまで我らが出会ってきた方々が善き人々だったのは、単に幸運に恵まれていただけなのでしょう」

「そういうことだな。うちのご主人様達や、マキシが世話になっているアイギス三姉妹、冒険者ギルドにいる受付の姉ちゃんや顔馴染みの冒険者仲間は、間違いなく良いヤツばかりだが……そうでない輩も多いってことさ」


 フギン達を宥めるラウルの言葉は、全て真実だ。

 それはきっと、これから人族と関わることが多くなるにつれて様々な場面で実感していくことだろう。

 だが、今日ここで今すぐにそれを思い知ることもなかろう、とラウルは思う。


「……そしたら、今日はラグナロッツァの外に出るか」

「外? ラウル、どこか行きたい場所とかあるの?」

「ン、まぁな。人里と一口に言っても、ラグナロッツァ以外にもいろんな街があるしな。たまには他所の街を見せてやるのもいいだろ」

「そうだね!そしたら、どこがいいかな?」


 ラウルの発案に、最初は不思議そうにしていたマキシも次第に笑顔になって賛同する。

 思えばマキシも、このラグナロッツァ以外の街に出かけたことがまだ一度もない。

 せっかくだからこの機会に、フギンとレイヴンだけでなくマキシにもまた違う人里を見せてやろう、とラウルは考えたのだ。

 そうしたラウルの素晴らしい提案に、マキシはワクテカ顔で尋ねる。


「ラウルは今までどこに行ったことがあるんだっけ?」

「ンー、ツェリザークにエンデアン、ネツァクにファング、アドナイ、くらいか?」

「かなり出かけてるんだね!今から兄様達と出かけるとしたら、どこがいいかな?」

「そうだなぁ……」


 マキシにラウルのオススメを問われ、しばし悩むラウル。

 今挙げた五つの街のうち、最初の三つは殻処理関連、ファングはオリハルコン包丁、最後のアドナイは単眼蝙蝠の巣となっている小洞窟の探査で行ったことがある。

 そして、できればラウルとしても馴染みの街を案内してやりたい。となると、必然的に何度も通っている殻処理関連の街に絞られた。


「……よし、そしたらネツァクに行くか」

「ネツァク? ……あ、それってもしかして、ラウルが好きな『砂漠蟹』が手に入れられる街?」

「そうそう、それそれ。……つか、ネツァクが砂漠蟹の街だなんて、よく覚えてたな?」

「うん!いつもラウルが話してくれる、他所の街のお話。聞いてるだけでもすっごく楽しくて、今でもよく覚えてるんだ!」

「そっか」


 ネツァクが砂漠蟹の街であることを言い当てたマキシ、ラウルから正解のお墨付きを得て破顔する。

 ラウルが冒険者になってから、様々な街に出かけるようになった。そうした冒険者としての活動の話を、マキシは晩ご飯の時などに聞くのがとても好きなのだ。

 無邪気に喜ぶマキシの笑顔に、ラウルもつられて微笑む。


「じゃあ今日は俺がよく行く街の一つ、ネツァクに皆を連れてってやるか」

「やったー!ありがとう、ラウル!」

「ラウル殿、ありがとうございます!」

「ラウル殿、あざーッす!」


 今日の行き先が決まったことに、マキシはもちろんフギンとレイヴンも深々と頭を下げつつラウルに礼を言う。


「そしたら今から冒険者ギルドに行くぞ」

「うん!」

「「?????」」


 ネツァクの街に移動するために、冒険者ギルド総本部に向かうラウルとマキシ。

 二人は他の街に移動する=冒険者ギルドにある転移門を使う、という図式を理解しているが、転移門のテの字も知らないフギンとレイヴンは頭の上に『???』を浮かべている。

 そんな八咫烏兄弟達に、ラウルとマキシが明るい笑顔で話しかける。


「ま、俺達についてくれば分かるさ」

「そうですよ!フギン兄様もレイヴン兄様も、僕とラウルを信じてついてきてくださいね!」

「……ああ、そうだな」

「マキシ、そしてラウル殿、よろしくお願いしまッス!」


 ラウル達の頼もしい言葉に、フギンもレイヴンも疑問など全て吹っ飛び安堵する。

 こうして四者はネツァクに向かって歩いていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 冒険者ギルド総本部に向かう道すがら、ラウルがフギン達に向けて今から行くネツァクという街について解説する。


「ネツァクはノーヴェ砂漠に最も近い人里で、ここラグナロッツァ程ではないがそれなりに繁盛している街だ」

「砂漠、というのは……?」

「森や人里の街と違って、草木一本生えない砂だけが広がる大地のことだ」

「何と……森の外にはそのような場所があるのですか……」

「はぇー……木々のない生活なんて、俺達八咫烏には考えられませんね……」


 カタポレンの森からほとんど出たことがないフギン達。ラウルの砂漠についての解説に、心底びっくりしたような感想を漏らす。

 彼らは森の中で生まれ、大神樹ユグドラシアとともに生きてきた種族だ。木々のない大地など、微塵も想像つかないだろう。


「でな、そのノーヴェ砂漠にもいくつかの魔物がいてな。中でもランドキャンサーという魔物がまた美味いんだ」

「う、美味い、のですか?」

「ああ。見た目は海に住む蟹そっくりなんだが、水一滴ないノーヴェ砂漠の固有魔物だってんだから不思議なものだ。つーか、ラグナロッツァに帰る前に砂漠蟹を買い付ける予定だから、何なら今晩の晩飯に砂漠蟹を出すぞ」

「ホントですか!? 蟹とか全然分かんないけど、ラウル殿の作るご馳走ならすんげー楽しみッスー!」


 ラウルのグルメ話に、特にレイヴンが喜んでいる。

 森で暮らす八咫烏達に海のことなど分かりようもないが、それでも『どこの何であろうと、ラウルが美味しいと言うならそれは絶対に間違いない事実だ!』と思っているらしい。


 そうして雑談がてら話していると、冒険者ギルド総本部に辿り着いた。

 ラウル達一行は奥の事務室に行き、転移門でネツァクに移動していった。

ーーラウルとフギンの過去行動の摺り合わせ話の余談ーー


フ「で、その後ジョージ何とかという店に入り、先程の『ねむちゃま』という御仁にお会いし……」

ラ「ぁー、あん時にはフギン達もいたっけな……」

フ「ちなみにというか、一応お聞きしますが……あのねむちゃまなる人物も、人化の術の参考にすべきですか?」

ラ「ぃゃ、そりゃやめといた方がいいと思う……」


 今回ラウル達の行き先を決めるため、フギン達の前回訪問を改めて見返した作者。

 そこで『あ、この子達前にもねむちゃま見てたのか!』と思い出しました。前に書いた話って、改めて読み返さないと忘れてることも多くてですね><

 つか、君ら、第776話から第802話までと結構な長期間いたのね…( ̄ω ̄)…

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