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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第941話 会談の予行演習

「さて、そろそろ昼飯の時間だが……どうだ、良ければ皆うちで食っていかないか?」

「そうだなー、これからの大まかな予定も今ここで話し合っておきたいしな」

「せっかくですから、ここは我らもラキ殿のお言葉に甘えさせていただきます」

「決まりだな。そしたらリーネに頼んで、ここに昼飯を持って来させるようにしよう」


 レオニス達がそんな話をしていると、客間の扉が開いてリーネが入ってきた。

 その手には、料理が載せられたお盆を持っている。


「あなた、お昼ご飯の時間ですのでこちらに持ってきましたよ」

「おお、ちょうど良かった。今皆にそろそろ昼飯を食おうと話していたところだ」

「それは良かったですわ」


 ラキの言葉に、リーネもにこやかに微笑む。

 オーガサイズの巨大なお盆を、輪になって座るラキ達の前にそっと置くリーネ。

 お盆の上には、バンズで肉を挟んだハンバーガーのようなものや、巨大ジャガイモを揚げたフライドポテト、巨大キャベツの千切り等々が各皿に盛り付けられている。もちろん人数分のおしぼりや飲み物も用意されている。


「おお……リーネの手料理か、初めて見るな。どれも美味そうだ」

「うふふ、レオニス君ってば褒め上手なのね。ラウル先生にお料理を習い始めてから、かなり上達したのよ?」

「そりゃいいことだ。つーか、ラキ、相変わらずお前もラウルの料理教室に参加してんのか?」

「もちろんだとも!ラウル先生の料理教室に、族長たる我が参加しないなどという選択肢はない!」

「そ、そうなんか……」


 リーネの手料理を見てレオニスが絶賛する。

 それらの手料理は、全てラウルから伝授されたものだろう。特にハンバーガーなど、人里に住む人族以外が口にするとはとても思えないからだ。

 魔の森と呼ばれるカタポレン、その只中にあるオーガの里でよもやハンバーガーをごちそうになるとは夢にも思わなかったレオニス。

 ここでも異種族交流が盛んなことを実感し、何となく嬉しくなってくる。


 そして、異種族交流の料理教室とは何もご婦人方だけのものではない。

 ラウルから『料理ができる父親は子供達から尊敬されるぞ?』と聞いたラキ。嫁子供にモテたさに、ラウルの開く料理教室に毎回必ず参加する常連さんと化している。

 その甲斐あって、今では三日に一度くらいはラキが手料理を作って家族に振る舞っているという。


 そのおかげで、リーネは家事を休めて育児の疲れを癒やせるし、子供達は父親の美味しい手料理を堪能できて嬉しい。そしてラキは嫁子供に喜んでもらえて、父親の株も爆上がりで万々歳。

 まさに一石三鳥、ただでさえ仲が良かったラキ家はますます家庭円満絶好調である。

 このように、オーガの里では『男子厨房にガンガン入るべし!』という風潮が徐々に広まりつつあるのだ。


 するとここで、リーネがフギン達に向かって声をかけた。


「無知でお恥ずかしいのだけど、カラスさん達がどのようなものを食べるか分からなくて……もし食べられなかったらごめんなさいね」

「そんなことはございません!」

「そうですよ!こうして俺達にまで食事を出していただけるなんて……それだけでとても嬉しいッス!」

「まぁ、八咫烏の皆様はとても真摯な方々なのですねぇ」


 リーネの心遣いに、フギンもレイヴンも感動の面持ちになっている。

 フギン達八咫烏は霊鳥族なので、別に食事を摂らずともカタポレンの森の魔力だけで生きていける。

 しかし、マキシが連れてきた恩人ライト達によって、食事を摂るという文化を知った。

 そして異種族との積極的や交流を決めたフギン達に、ラキやリーネのもてなしである昼食を断るという選択肢などない。


 こうして皆の前に昼食が置かれ、リーネは空になったお盆を小脇に抱えて再び立ち上がる。


「では私は、向こうで子供達といっしょにお昼ご飯を食べてきます。皆様、どうぞごゆっくりしていってくださいね」

「リーネもご苦労さん、いつもありがとうな!」

「奥方様のお気遣い、誠に痛み入ります」

「本当にありがとうございます!」


 にこやかな笑顔でリーネが客間から退出していく。

 再び二人と二羽になったところで、ラキが食事の挨拶を始めた。


「さ、では早速いただこうか。いッただッきまーーーす!」

「「「いッただッきまーーーす!」」」


 ラキの挨拶の後に、レオニスと八咫烏兄弟も続いて唱和する。

 この挨拶は、本来人族ならでは習慣である。

 しかし、ラキはラウルの料理教室でこれを習い、八咫烏兄弟達もまたライト達が八咫烏の里を訪れる度に様々なご馳走を振る舞われては都度挨拶をしてきた。

 故に、食事前の挨拶が皆身についているのである。

 人族と鬼人族、そして霊鳥族が一堂に会し、それぞれの手や翼を合わせて食事の挨拶をするというのもかなり珍しい光景だ。


「おお、リーネの手料理、すんげー美味いな!」

「そうだろうとも。リーネもラウル先生の開く料理教室には必ず参加して、常に学んでおるからな」

「これなら子供達も飯をモリモリ食うだろうなぁ」

「当然。ルゥもレンも『パパとママの作るご飯、美味しくて大好き!』と言ってくれるからな」

「へいへい、飯を食いながらの惚気、ごちそうさん」


 オーガと体格が違うレオニスやフギン達の前には、小さめに刻んだフライドポテトや挽肉のそぼろ煮が置かれている。

 小さめと言ってもそれはオーガから見たサイズの話であって、レオニス達には十分な大きさなのだが。

 リーネの絶品料理に舌鼓を打ちながら、今日のこれからの予定を皆で話し合う。


「さて、昼飯を食った後はどうする?」

「そうだな……まずはフギン殿達の用事を優先したいところだが……」

「そしたら、皆でツィちゃんのところに行くか?」

「我も神樹のもとに行くのか?」


 フギンとレイヴンの訪問目的の一つである『神樹ユグドラツィを訪ねる』。

 レオニスがこれにラキもともに行こうと誘う。

 レオニスからの意外な提案に、ラキが少しだけ驚いている。


 オーガ族と神樹ユグドラツィは、実はこれまで直接交流を持ったことは一度もない。

 双方そこまで遠い距離でもないのだが、交流するとしたらオーガの方から神樹のもとを訪ねる必要がある。

 だが、これまでオーガ側から神樹に接近する理由も特になかったので、交流することもなかったのだ。


 だが、これからは事情が変わってくる。

 その理由をレオニスが語って聞かせた。


「お前だって、近々八咫烏の里の大神樹を訪ねるんだ。その前に、近所にいる神樹に先に会っておいてもいいだろ?」

「それもそうだな……」


 レオニスの話に納得しきりのラキ。

 大神樹の招きを受けて、フギン達の帰郷に合わせてラキも八咫烏の里に赴くことになった。

 はるか遠い地にいる大神樹に会うんだから、それより先に近所の神樹に会っておいても決して損はない。

 言ってみれば、神樹相手の会談の予行演習のようなものである。


「フギン殿、レイヴン殿。我も貴殿らとともに、今から神樹のもとを訪ねてもよろしいか?」

「もちろんですとも!歓迎こそすれ、断る道理などございません!ともにツィ様のもとに参りましょうぞ!」

「ええ!きっとツィちゃん様も、ラキ殿とお会いしたら大喜びすると思います!」

「だといいのだがな」


 ラキの同行を快諾する八咫烏兄弟に、ラキの顔も綻ぶ。

 午後の予定が決まったところで、昼食を食べ続けるレオニス達。

 その間にも、今日の八咫烏兄弟はオーガの里に泊まっていくこと、翌日はレオニスやラウルとともに人里見学に行くこと、そして二日後にはライトやラキを伴って皆で八咫烏の里を訪問することなどが決まっていった。


 大まかな予定が決まって頃には、皆昼食を食べ終えていた。

 食器をひとまとめにして、ラキが厨房に下ろしに行く。

 ラキが客間に戻ってきたところで、全員でラキ宅から外に出た。


「さ、じゃあ今からツィちゃんのところに行くか」

「おう」「「はい!」」


 レオニス達はオーガの里を出て、ユグドラツィのもとに向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 里の外に出て、しばらくのんびりと歩くレオニスとラキ。

 フギンはレオニスの肩に、レイヴンはラキの肩に、それぞれ文鳥サイズになってちょこんと留まっている。

 それはまるで食後の優雅な散歩風景である。

 そんな優雅な散歩の中、ラキがレオニスに問いかけた。


「レオニスよ、お前の足で駆ければここから神樹までどのくらいで辿り着くのだ?」

「ンー、そうだなぁ……普通に走って二十分とか三十分程度か?」

「片道半刻か……結構かかるものなのだな」


 ラキの質問に、レオニスが淡々と答える。

 ラキ自身は、オーガの里からそう遠くないところに神樹があることを知ってはいる。だが、実際に神樹のもとを訪ねたことは一度もない。

 故に、どれくらい歩けば到着するかなども全く見当がつかないのだ。


「そうかー? まぁ、ずっと歩いてたらもっと時間がかかるがな。そしたらここから走っていくか?」

「我はニル爺ほどの健脚ではないが。久しぶりに森を駆け巡るのも良いかもな」

「よっしゃ、そしたらどっちが先にツィちゃんのところに辿り着くか、勝負しようぜ!」

「馬鹿言え、我はユグドラツィの御座す場所もよく分からんのだぞ? 道も知らぬ者に勝負なんぞ吹っかけるんじゃない」

「それもそうか。じゃあ勝負抜きで普通に走るか」


 ラキがここから走っていくことを容認し、早速勝負を持ちかけるレオニス。誰かと走るとなれば、すぐに勝負事に持ち込みたがるのはレオニスの癖である。

 だが、神樹までの道のりや方向を熟知しているレオニスに対し、ラキはそこまで地理的に詳しくない。

 知識的にも不公平な勝負に、ラキが乗ってくるはずもなく素気無く断られてしまった。


 しかし、のんびり歩いていたらかなり時間がかかってしまう。

 ここは勝負抜きで走ることにしたレオニス。肩に留まっていたフギン達に声をかける。


「フギン、レイヴン、俺達は森の中を走るから、お前らは空を飛んでてくれ。ツィちゃんが見える方向に向かって飛んでくれれば、俺達の走る方向の目安にもなるからな」

「分かりました」

「了解ッス!」


 レオニスの呼びかけに、八咫烏兄弟達は元のサイズに戻り空を飛び始めた。

 ラキよりもはるかに背が高い、大きな木々が生える森の中を走るだけでは神樹のいる方向が分かりづらい。

 レオニスや八咫烏達だけなら空を飛んでいけるが、特に今回は空を飛べないラキがいることも考慮しなければならない。


 そしてそれらを考えた時、森の木々の上を飛べるフギン達ならば巨木のユグドラツィの姿を遠くからでも目視できる。

 レオニスもラキも、フギン達が飛ぶ方向に従って走ればいいのだ。


 秋も深まり、ところどころに枯葉が落ちてきて季節を感じさせるカタポレンの森。

 その中を、空を飛ぶ二羽の八咫烏とともに人族の英雄と鬼人族の族長が勢いよく駆け抜けていった。

 レオニス達の午後の予定を決める昼食の風景です。

 今回作者が何気に苦労したのは、レオニス達に振る舞われたお昼ご飯のメニュー。

 レオニス達だけなら、おにぎりやサンドイッチなどを出せば済むのですがー。ラキ宅でリーネの手料理を振る舞うとなると、現時点ではおにぎりもサンドイッチも不可なことに気づいた作者。

 何故なら、おにぎりの主体である米はまだオーガ向けに巨大化実践してないし、サンドイッチのパン作りもオーガの里の中だけで作るにはまだまだ難易度高そう…( ̄ω ̄)…

 タコ焼きやお好み焼きなんかの粉ものも、米と同じく主原料の小麦粉=小麦の巨大化ができてないから出せないし><


 でも、サンドイッチ用の食パンを焼き上げるのは無理でも、パンっぽいものならもう焼けてるんじゃね? ハンバーガーのバンズくらいなら焼けるっしょ? てことにして、ハンバーガーもどきを登場させました。

 しかし、やっぱりおにぎりっていろんな場面で重宝するなぁ……と今回改めて実感した作者。

 こりゃ早いとこラウルに米の巨大化に導いてもらわねば><

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