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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第940話 八咫烏兄弟の今後の予定

 その後レオニス達は、フギンとレイヴンからトロール族との交流について話を聞いていった。


「我が里もですが、トロール族にも外部と物々交換できるような特産品は特にありませんでして。そのため、まずは不可侵条約を交わそう、ということになりました」

「不可侵条約か、ま、当面はそれで繋がりを持つのが一番妥当だろうなぁ」


 八咫烏はトロールと不可侵条約を締結したという。

 確かにレオニスの言う通り、現状ではそれが最も手っ取り早く有効な手段であろう。

 だがしかし、ラキが気になったのはそこではないようだ。


「シンラに『不可侵条約』と言って、話が通じたのか?」

「そこはですね、『互いに互いの縄張りを荒らさない』『意味もなく攻撃したり喧嘩しないという約束をしよう』という説明をしまして……何とかご理解いただきました」

「ああ、それならシンラでもちゃんと分かるだろうな」


 フギンの答えにほっと安堵するラキ。

 その後もフギンはウルスとともに、シンラと様々な話をしたという。


「トロール族は、かつて我が里で起きた悲劇―――骸骨どもの襲撃のことを全く知りません。それは先程ラキ殿も仰っていたように、彼らがあの地に住まうようになったのは事件からだいぶ経ってからでしたので」

「ああ、シアちゃんの代わりにマキシが穢れを植え付けられた、スケルトン集団の襲撃事件のことか……トロール達が五十年程前に移住したってんなら、その事件のことは知るはずもないわなぁ」

「はい。ですので、トロール族にも今後注意するように、という意味で事件の詳細を話したところ……シンラ殿に号泣されました」

「号泣……何でその話で号泣?」


 ウルス達との会話でシンラが号泣したと聞き、レオニスが不思議そうに首を傾げる。


 八咫烏達に起きた過去の忌まわしい事件。それは今から約百二十年前に起きた故に、トロール達がそのことを知る由もない。

 しかし、今後八咫烏とトロールがご近所付き合いをしていくにあたり、そうした警戒を要する情報は共有すべきである、と考えたウルスの判断は正しい。

 八咫烏達だけでなく、トロールの里だっていつ何時誰かに襲撃されたり異変が起きるか分からない。この夏に起きたユグドラシア襲撃事件だって、何の前触れもなく突然起きたのだから。

 そうした外敵への警戒を促すためにも、八咫烏の里で起きた悲劇を実例としてシンラに語り聞かせたのだ。


 しかし、まさかそこでシンラが号泣するとはウルス達も思わなかったようだ。

 その時の様子を、フギンとレイヴンが微笑みながら語る。


「マキシが一身に穢れを負い、その間ずっと魔力を奪われ続けてきたことあたりで泣き始められて……つい最近その穢れが祓われて、ようやく本来の魔力を取り戻したと聞いたシンラ殿が『末っ子なのに、百年以上も身を挺して大神樹を守るなんて、見上げた根性じゃねぇか!そいつは(おとこ)の中の漢だな!』と、甚く感激なさっておられました」

「俺もその話を聞いた時は嬉しかったです。シンラ殿は、まず真っ先にマキシの男らしさを褒めてくれたんですから」

「あー、それで号泣したんか……」


 二羽の話を聞き、レオニスも得心する。

 レオニスはシンラと会ったことはないし、その人となりも全く知らない。だが、フギンの話を聞く限りでは、かなりの感激屋のようだ。

 レオニスの横にいるラキも小さく笑いながら、その事実を認める。


「シンラは昔からその手の話には滅法弱くてな。マキシの侠気と忍耐強さに、心から感銘を受けたのだろう」

「そうなのか……今度八咫烏の里に行った時には、トロールの里にも立ち寄ってみるかな」

「おお、それはいい。シンラは我等オーガ族以上に脳筋だからな。レオニス、間違いなくお前とも馬が合うだろう」


 シンラをよく知るラキが語るトロールの里の族長に、レオニスもかなり興味が湧いたようだ。

 そしてラキもレオニスの言葉に破顔しながら大きく頷いている。

 脳筋同士、絶対に気が合うだろ!というのは、レオニスとラキの間で既に証明済みだ。

 しかしここで、レオニスがふと考え込んだ後ラキに問うた。


「つーか、そしたらアレか? お前ん時と同じく、のっけからガチの殴り合いしなきゃならんか?」

「もちろん。トロール族は、我等オーガ族以上に力に拘る種族だ。力無き者など絶対に認めないし、その言葉に耳を傾けることもない」

「やっぱりそうか……そしたらトロールの里に行く時には、体調はもちろん回復剤なんかの準備も万端にして挑まなきゃならんな」

「ま、我等オーガ族とも常に対等に渡り合うお前ならば、シンラ相手にも引けは取らんだろう」


 レオニスの疑問、それは『拳で語り合う必要があるかどうか?』であった。

 一口に『脳筋族』と言っても、そのレベルは様々だ。

 例えばレオニスは、人族の中ではかなりの脳筋の部類に入る。だがそれでも、最初から喧嘩前提での対面などあり得ない。まずは普通に話すことから始める。

 だが、オーガ族や竜族は違う。強者には敬意を払うが、弱者の言葉に耳を貸すことはない。

 まず第一に『我等と話をしたければ、兎にも角にも力を示せ!』が大前提なのだ。

 そしてそれは、トロール族にも当てはまることらしい。


 かつてレオニスがラキと初めてカタポレンの森の中で出会った時も、ラキから「まずは力を示せ」と言われて即座に殴り合いの戦いとなった。

 そんな根っからの脳筋であるラキが、トロール族は自分達以上に脳筋である、と断言したのだ。レオニスが改めて確認するまでもなく、シンラと知り合いになりたければまず拳での語り合いは必須である。


 だが、ここで別の疑問がでてくる。

 それは『何故シンラは八咫烏一族との交流を受け入れたのか?』ということだ。

 これは、ウルス達がラキの紹介状を持ってきたということももちろん大きいが、それ以外にもちゃんとした理由があった。

 トロール族は、各種魔法が使える八咫烏のことを『力ある者』として認めているのだ。


 シンラやラキが思う力とは、何も純粋な腕力のみに限ったことではない。攻撃魔法を用いて敵を攻撃し、魔力という力を以って相手を屈服させることもまた厳然たる力である。

 そして、トロール族は八咫烏族が魔法に秀でた種族であることを、ウルス達と知り合うよりもずっと前から知っていた。


 時折八咫烏の縄張りに入り込んだ赤闘鉤爪熊(レッドクロウベア)が、しばらくして()()うの(てい)で逃げ出すところを何度も目撃しているし、彼らの里の周囲に張り巡らされた侵入者感知用の結界はトロール族にとって非常に苦手なものだった。

 八咫烏の里の結界は、ライトやレオニス、ラウルなどには薄い膜程度のものにしか感じられないが、シンラ達トロール族には『何かよく分かんねーけど、すんげー気持ち悪いもんがある!』という感覚に陥るのだ。

 これは、トロール族がオーガ族以上に他者からの魔法耐性がない証である。


 するとここで、フギンがラキに向かって話しかけた。


「ラキ殿、もしよろしければ今度我が里にお越しいただけませんか? 此度の初の外交成功のお礼を是非ともしたい!と、我が父も言っておりました」

「ン? 八咫烏の里に我がお邪魔してもよろしいのか?」

「もちろんですとも!既にラキ殿は、我等八咫烏一族にとって恩人のお一人。大神樹シア様も、是非とも里の恩人に直接礼を言いたい、と申しておりました」

「何と……大神樹まで我を招いてくださるのか?」


 フギンの話に、ラキの目が大きく見開かれる。

 八咫烏がラキのことを恩人と持ち上げるのは、まあ分からんでもない。実際にトロール族族長に宛てて紹介状を書き、八咫烏族との交流の橋渡しを行ったのは他ならぬラキなのだから。

 だが、その礼を大神樹であるユグドラシアにまで言ってもらえるなどとは全くの予想外だった。

 フギンからの思わぬ話に、ラキは驚きつつも嬉しそうに口を開く。


「大神樹からも望まれているとあらば、断る訳にはいかんな。是非とも、いや、何が何でも大神樹に拝謁せねばな」

「ご快諾いただき、ありがとうございます!」

「父様はもとより、シア様もとてもお喜びになられると思います!」

「そうだと良いのだがな。しかし……」


 ラキが八咫烏の里の訪問を承諾したことに、フギンもレイヴンも我が事のように喜んでいる。

 だが、ラキの方は喜んだのも束の間、一転してその顔が曇っていった。


「我は貴殿らのように自由に空を飛ぶ翼を持たぬ身。故にそちらの里にお邪魔するとしても、相当先の話になると思うが……それでもよろしいか?」

「ン? それなら俺達といっしょに行くか?」

「ン? レオニス、お前といっしょに、か?」


 ラキの懸念に、横にいたレオニスが軽い口調で同行を申し出る。

 二人して「ン?」と言いながら互いの顔を見合わせていると、フギン達もそれに賛同した。


「おお、それは良い案ですな!」

「ウィカ殿にお願いすれば、レオニス殿といっしょにラキ殿も連れてきてもらえますね!」

「?????」


 フギンとレイヴンは、レオニスの話が『ウィカに水中移動で行き来してもらう』という案であることを即座に理解しているので、大いに賛同する。

 だが、ウィカのことを知らないラキにしてみれば何のことやらさっぱり分からない。頭の上にたくさんの『???』を浮かべるのも致し方なしである。


「ぁー、そういやラキはウィカとちゃんと会ったことは一度もなかったか」

「その、ウィカというのは何者だ?」

「ウィカチャという、目覚めの湖に住む水の精霊だ。見た目は普通のちっこい黒猫にしか見えんのだが、立派な水の上級精霊でな。ある程度の大きさの水場があれば、その水を介して遠い地への移動も可能なんだ」

「ほう、それはすごいな!」


 レオニスの解説を聞いたラキが驚愕している。

 思い返せば、ウィカがオーガの里に入ったことは一度しかない。

 それは、オーガの里襲撃事件でのこと。オーガの子がナヌスに危機を知らせ、それを受けたナヌスの要請によりウィカがライトをナヌスの里に連れ去った。

 その後ライトもレオニスもオーガの里に救援に向かい、ウィカも連絡要員としてオーガの里についてきたことがあるのだ。


 ただし、その時のラキは単眼蝙蝠と戦闘したり屍鬼化の呪いに冒されたりしていたため、ウィカとはまともに会っていない。

 そして襲撃事件解決後も、ウィカがオーガの里を訪ねる理由がなかったため、ラキもウィカも双方全く面識がないのだ。


「というか、レオニスよ。お前がそんな高位の精霊と懇意にしてたとはなぁ、今の今まで知らなかったぞ?」

「もともとウィカはライトの友達だったんだ。その縁で俺とも知り合って、何だかんだいろんなところでウィカの世話になってるが」

「ほう、その水の精霊はライトの友達なのか……お前の養い子だけあって、とても人族の幼子とは思えんな?」

「うん、ライトのことは俺ですら時々空恐ろしく思うわ……」


 レオニスの思いがけない交友関係に驚くラキに、レオニスはただただ真実のみを述べる。

 ウィカの正体はライトの使い魔だが、そんな真実など知る由もないレオニスは今でもウィカのことを『ライトの友達』と思っている。

 話の流れでライトの噂話になっていっているが、今頃ライトは盛大なくしゃみを連発しているかもしれない。


「ま、そんな訳で。ラキ、お前でも八咫烏の里に一瞬で移動することができるぞ」

「それは素晴らしい。して、レオニスよ。いつ八咫烏の里に行くのだ?」

「ンー、そうだなぁ……フギンとレイヴンを送り届けがてら、そのついでにいっしょに行くのが一番手っ取り早いとは思うが……フギン、お前らはいつ里に戻るとかの予定はあるか?」


 八咫烏の里行きの予定を早速聞くラキ。ウィカなる水の精霊の術により、行き来が容易にできると聞いてかなり乗り気のようだ。

 そんなラキの問いかけに、レオニスはしばし思案しつつフギンに今後の予定を尋ねる。

 レオニスの言うように、一日でも早く実現したければフギンとレイヴンをウィカの水中移動で送り届ける時に随伴するのが最も効率が良い。

 そうするには、フギン達の今後の予定が重要な鍵となる。

 レオニスからの問いかけに、フギンが嘴を開いた。


「まず我らの今回の目的はいくつかありまして。一つはオーガの里にてラキ殿に外交成功の報告をお届けすること、二つ目は神樹ユグドラツィ様のもとを訪問し、お身体の具合などをお聞きしたり新たな結界の様子を見てくること。そして三つ目は、前回の人里見学時に一日早く切り上げて帰郷した分を、再び人里で過ごしてくること。この三つです」

「おお、結構たくさんの予定があるんだな?」

「我らが自力でここまで訪ねることも、そう滅多にないことなので……父様からも、外交成功の褒美代わりに外でたくさん学んで羽を伸ばすように、と言っていただいております」

「そっか、そりゃそうだよな」


 二羽の話に、レオニスもうんうん、と大きく頷きながら同意している。

 予想以上に盛りだくさんの目的があったが、それに対してレオニスが難を示すことなどない。


 レオニスやライトには、ウィカというありがたい存在がいる。

 そのおかげで八咫烏の里へも行こうと思えばいつでも行けるが、八咫烏達はそうではない。彼らが里の外に出てどこか遠い地に赴こうと思ったら、己の翼で何日も飛び続けなければならないのだ。

 そして、それだけ大変な思いをするのだから、こなせる用事は一つでも多くこなしておきたい!と考えるのは当然のことである。


 八咫烏兄弟の今後の予定を知ったレオニス。

 改めてラキの方に身体を向き直し、話し始めた。


「八咫烏の里なら、多分ライトやラウルもいっしょに行きたがると思うから、いつ行くか皆で相談しておくわ」

「承知した。我はいつ出かけてもいいので、そちらの都合に合わせる。日取りが決まったら教えてくれ」

「はいよー」


 こうして、あれよあれよという間にラキの八咫烏の里訪問が決まっていったのだった。

 フギン達の各種報告の続きです。

 というか、最後の方では『レオニスがウィカに八咫烏兄弟の帰還を頼むついでに、自分達もラキといっしょに八咫烏の里に連れていってもらう』という話になってんですけど…( ̄ω ̄)…ナンデ?

 本当に、ほんの数時間前までは全くそんな予定なかったんですけど!(ノ`д)ノ===┻━┻

 つーか、『大神樹がラキに直接礼を言いたいと言っている』と書いた辺りから変容していった気がする…( ̄ω ̄)…


 でもまぁね、作中時間を考えると結構都合が良さげなことに気づいた作者。

 第937話でラウルがツィちゃんとお話ししたのが、ルティエンス商会訪問翌日の月曜日。そして第938話にて八咫烏兄弟がオーガの里に到着したのがその三日後。つまり今レオニス達が過ごしているのは、木曜日なのですよ。

 と、いうことは。ライトが自由に動ける週末、土日が近い!ㄟ( ̄∀ ̄)ㄏウヒョヒョ☆

 そんな訳で、ライトの次の土日も大忙しになることが確定。

 冒険三昧の土日は、いつにも増して楽しい週末になることでしょう!(º∀º) ←鬼


 ……ぃゃ、それより先にサブタイ案件=八咫烏兄弟の今後の予定をこなす方が先だわ…_| ̄|●… ←たった今気づいた人

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