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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第938話 見えない膜の空中絨毯

 ラウルがユグドラツィから八咫烏来訪の話を聞いてから、三日後のこと。

 大神樹ユグドラシアが言っていた通り、フギンとレイヴンがオーガの里の近くまできていた。


 カタポレンの森の上で、空高く飛ぶ二羽の八咫烏が艶やかな漆黒の翼で悠々と飛んでいる。

 上空から見える、何者かが住まう広大な里と思しき景色。それを見た二羽が、思わず歓喜の声を上げる。


「おお、ようやくオーガの里が見えてきたぞ!」

「え、マジですか? ……あ、ホントだ!ありゃオーガの里に間違いないッスね!」


 オーガの里を先に見つけたフギンが、少し後ろを飛んでいるレイヴンに里の発見を知らせる。

 長兄(フギン)の伝えた朗報に、三男(レイヴン)もまた己の目でそれを確認して喜びのあまり叫ぶ。


「うおおおおッ、ここまで長かったー!思ったよりすんげー遠かったー!」

「レイヴン、油断はするな。ここから先にもまだ試練はあるのだからな」

「ですね!問題は、どうやってあの頑強な結界を通るかですよね!」

「うむ。まずは里の中におられるオーガの方々に声をかけて、我らの訪問を知らせないことには中に入ることも能わぬからな」


 レイヴンはオーガの里発見の喜びに浸るも、フギンは油断することなく気を引き締めるよう警告する。

 このオーガの里がナヌス特製の超強力な結界に守られていることは、フギン達もよく知っている。彼らもまたラウル同様、その頑強の前に敢えなく撃沈し膝を屈しただけに、痛切なまでに承知しているのだ。


「つーか、あの結界、横とかの側面はすんげー強靭だったけど……上空の方はどうなってんでしょうね?」

「さぁなぁ……我らも里にて結界を用いてはいるが、ナヌス殿達の作るものと比べたら児戯にも等しいからなぁ。全く以って想像もつかん」

「俺らのと比べること自体が、もう甚だしく烏滸がましいッスよねー……」

「とりあえず、様子見がてらで一度上空から訪問してみるか」


 どんどん近づいてくるオーガの里を前に、どのようにして里の中に入るかを相談し合うフギンとレイヴン。

 かつて地上側から挑んだナヌスの里の結界は、完璧なまでに外部からの侵入者を排除することに成功していた。

 ならば、上空の方はどうなのだ? もしかしたら素通りできたりするかも? という疑問が湧くのは、彼ら八咫烏が空高く飛べる種族ならではの思考であろう。


 オーガの里の間近まで近づいた頃、徐々に飛行高度を落としていくフギンとレイヴン。

 里の外周付近で、周囲の木々の高さまで二羽が下りたその時。

 フギン達は、目に見えない膜のようなもので思いっきり弾かれた。


「おわッ!」

「ンギャッ!」


 ぼよん!という強力な弾力でもって、まるでトランポリンにでも突っ込んだかのように弾き返されたフギンとレイヴン。どうやらここに、オーガの里の結界の上辺があるようだ。

 結界に飛び込んだせいか、勢い余って目に見えない膜の上をぼよん、ぼよん、と二回ほど弾かれた後、ぺたん……と膜の上にうつ伏せに突っ伏したフギンと、さらに半回転多く転がって仰向けになってしまったレイヴン。

 上から見たら、二羽とも空中で大の字になって寝転がっているようにしか見えない図である。


「……ど、どうやら上空にも結界が張られているようだな……」

「……そうみたいですね……」

「しかも、我らが二羽乗っかったところでびくともしないとは……」

「こりゃまた俺らの敗北確定ッスかねぇ……?」


 はぁー……とため息をつきつつ、そのまま空中で突っ伏し&仰向けのまま会話するフギンとレイヴン。

 結界にはうつ伏せ状態のフギンの鋭い嘴がずっと当たっているというのに、破けるどころか針の穴一つすらも開く気配すら全くない。この時点で、八咫烏達の敗けが確定したも同然である。


 ぐぬぬ……となりつつ、そのまましばし結界の空中絨毯で寝そべって羽を休めるフギンとレイヴン。

 不眠不休とまでは言わないが、八咫烏の里を出て以来二羽はずっと休む間も惜しんで飛び続けてきた。その疲れが、今ここでほんの少し出てしまっただけのことである。


 今の時刻は正午より少し前、日が真上に昇りきる手前あたり。

 秋晴れの長閑な日差しが、八咫烏兄弟の漆黒の身体に燦々と降り注ぐ。

 そうやってフギン達が空中絨毯でのんびりと休んでいると、下から何やら声が聞こえてきた。


「おーい、フギン、レイヴン、そんなとこで何してんだー?」

「……あッ!レオニス殿!」

「え、マジ?……あ、ホントだ!レオニス殿だ!」


 空中で寝そべるフギン達に声をかけてきたのは、レオニスだった。

 首を真上に向けて、空を仰ぎ見るようにフギン達を見ているレオニス。

 レオニスの姿を見たフギン達は慌てて起き上がり、再び空中を舞うように飛んだ。


「レオニス殿、ご無沙汰しております!本日我らはオーガの里に用がありまして、罷り越しました!しかし、結界内に入るための証を持たぬ故、どうしたものかと考え倦ねておったところです!」

「あー、そっかー。そしたらちょっとそこで待ってな」


 フギンの話を聞いたレオニスが、空間魔法陣を開いて【加護の勾玉】を二個取り出した。

 そしてその場で地面を蹴り、空中に飛んだレオニス。瞬時にフギン達と同じ高度まで飛んできた。

 二つの【加護の勾玉】を手に持ったレオニスが、フギンとレイヴンの首にそれぞれかけてやった。


「よし、これで二羽とも中に入れるぞ」

「「ありがとうございます!」」

「そしたら早速皆でラキんちに行くか」

「「はい!」」


 レオニスから貸し出された【加護の勾玉】を得たフギンとレイヴン。

 これで二羽とも無事にオーガの里の中に入ることができるようになった。

 レオニスとともに地面に降り立つ二羽の八咫烏。

 三者はラキ宅に向かうべく歩き出した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ぃゃー、レオニス殿がここにいてくださって、本当に助かりましたよ!」

「あー、それはだな。三日程前に、うちのラウルからお前らがこっちに来ることを聞いててな。それで今日もお前らを待ち構えるために、朝からオーガの里にきてたんだ」

「えッ、そうなんですか!?」


 ラキ宅までの道中の雑談で、レオニスがオーガの里にいた理由を聞きフギン達が驚いている。

 彼らはレオニスがここにいたのは、たまたま居合わせただけの単なる幸運な偶然だと思っていた。

 それが実はそうではないと知り、驚きを隠せないでいる。

 驚く八咫烏兄弟達に、レオニスはその種明かしを話し始めた。


「ラウルがツィちゃんから呼ばれててな。ツィちゃんはツィちゃんで、シアちゃんからお前らがこっちに向かってるからヨロシクネ☆って言伝を受けてたらしい。それをラウル経由で俺達も聞いたって訳だ」

「そうでしたか……シア様が、我らの身を気遣ってくださったのですね……」


 フギン達八咫烏が敬愛して止まない大神樹ユグドラシア。

 主とも仰ぐ彼女からの心遣いに、フギンもレイヴンも感動していた。

 そんな話をしているうちに、ラキ宅前に到着したレオニス達。

 玄関の引き戸は開いていて、レオニスが先陣を切って遠慮なく中に入る。

 フギンとレイヴンは、おとなしくレオニスの後についていく。


「おーい、フギンとレイヴンを見つけたから連れてきたぞー」


 レオニスが中に向かって、大きな声で呼びかける。

 すると、しばらくしてからドスドス……という足音とともにラキが奥から出てきた。


「おお、フギン殿にレイヴン殿!よくぞ来てくだされた!」

「ラキ殿、ご無沙汰しております」

「その節は、大変お世話になりました!」


 オーガの里の族長であるラキのお出ましに、それまでレオニスの後ろに控えていた八咫烏兄弟が前に出てきて深々と挨拶をした。

 そんな礼儀正しい律儀なフギン達に、もとより笑顔で出迎えていたラキの表情はさらに明るさに満ちていく。


「さあさあ、皆中に入ってくれ。玄関で立ち話も何だ、奥で話そうじゃないか」

「おう、邪魔するぞー」

「お邪魔させていただきます」

「お邪魔しまーす!」


 ラキの歓迎を受けて、レオニス達は家の奥に入っていった。

 前話の流れに続き、早速八咫烏兄弟の再訪です。

 神樹襲撃事件時に援軍として駆けつけた時や、その後の人族見学での往復はウィカの送り迎えがあったので簡単に行き来できましたが。今回はウィカの手助けは全く望めないので、八咫烏の里から自力で飛び続けて向かわねばなりません。

 さすがに三日三晩夜通しで飛び続けるのは無理な話なので、夜はどこかの木の樹上に止まって他の魔物からの襲撃を回避しつつ、休息を取りながら何とか無事に到着!てことに。


 でもって、オーガの里の箱型結界については第783話でも解説しています。

 中に入る証を持たない者の侵入を絶対に許さない、頑強なナヌスの結界。その強力無比さが証明されたと同時に、まさかそれを利用して空中絨毯として八咫烏兄弟がのんびりと寝そべるとは……作者も夢にも思いませんでしたわぁー('∀`)

 ですが、まぁね、八咫烏達は一族の特性である高魔力体質のおかげで、触れただけで黒焦げとか串刺しになる等の心配はないので。ハンモックやウォーターベッドのように、寛ぐのもアリかもしれません(´^ω^`)


 そして今日は現実世界では24時間テレビをやってますねー。

 常に賛否両論沸き起こる番組ですが、この番組をCMなどで見かけるようになると『あー、もうそろそろ夏も終わるのねー』と感慨に耽ってしまう作者。……って、いつかの活動報告だかにもこんなこと書いたような気がするー。

 この後書きを書いている今も、マラソンのラストスパートシーンが画面から流れていますが、作者は今からサライを聴くべくテレビの前で正座して待ちます!

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