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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第929話 竜騎士の使命

 地べたに座り、輪になって軽食を摂りつつ会話をするレオニスと六人の竜騎士。

 時間的にはかなり早めの昼食だが、まだもうしばらく飛び続けなければならないのと、現地に着いたら野営の準備やら竜王樹に白銀の君への挨拶回り等々忙しくなることが確実なので、今のうちに昼食を摂っておくのがベストなのだ。


 昼食を摂るに先立ち、竜騎士団の補給係が『ビッグワームの素』を空間魔法陣から取り出し、水魔法で水を出して膨らませてから飛竜達に与えている。

 ビッグワームの素なるものに、大量の水を与えてもとの量に戻す場面は何度見ても摩訶不思議だ。

 そして飛竜達はそれを大喜びで食べている。一頭につきビッグワームの素一個で十分足りるようだ。


 一方でレオニスは、竜騎士六人が勢揃いするのを待ってから昼食を摂り始めた。

 レオニスはラウル特製おにぎり、竜騎士達はサンドイッチを頬張りながら四方山話で盛り上がる。


「え"ーッ!? レオニス卿、あの善十郎の滝から南方の竜族の生息地まで単独遠征したんですか!?」

「単独っつーか、ウィカという水の精霊といっしょだったけどな」

「それにしたって、飛竜や鷲獅子などに頼らず己の足のみで踏破するとか……これはかなりすごいことですよ?」

「南方に辿り着くまでに何日間、いや、何ヶ月くらいかかったんですか?」

「あー……確かあん時は、シュマルリ山脈を丸二日縦断して、三日目に鋼鉄に遭遇して? その翌日に白銀と竜王樹んとこ行ったから、四日くらいはかかった勘定になるか」

「「「………………」」」


 特大おにぎりをもっしゃもっしゃと食べながら、事も無げに語るレオニスに竜騎士達は皆黙り込む。

 飛竜に乗って一直線に飛んでなお半日はかかる距離を、レオニスは単身で山の峰々を約三日程で踏破したと言うではないか。

 レオニス自身はシレッと語っているが、これは他者にとっては驚愕以外の何物でもない。


「ま、一介の冒険者に過ぎん俺には飛竜で行き来なんて贅沢はできんから、自分の足で行っただけだがな」

「目的地まで、よくぞ無事に辿り着けましたね……シュマルリ山脈には、たくさんの危険な魔物がいると言いますし。道中はさぞや危険に満ちていたでしょうに」

「まぁなー。朝起きたら百を超える大量の毒キノコに囲まれてたり、飛竜の巣に誤って飛び込んだりもしたがな!あー、あとはミスリルゴーレムの大群にかち合ったりもあったか。ま、久々の冒険三昧だったぜ!」

「「「………………」」」


 水筒の茶をゴキュゴキュと飲みつつ、カラカラと笑うレオニスにまたも竜騎士達は言葉を失う。


 基本的に竜騎士が冒険者と場を同じくすることは滅多にない。

 竜騎士はアクシーディア公国直属の組織であり、そのほとんどが貴族の子弟で構成されていて入団審査もとても厳しい。

 一方で冒険者ギルドもまた半ば公的組織ではあるが、その構成はほぼ平民出身でやる気さえあれば出自や資格を問わず誰でも冒険者になれる。

 守備範囲も竜騎士団はラグナ宮殿およびラグナロッツァの治安維持であるのに対し、冒険者ギルドはそれ以外の全般多岐に渡る。

 こうした環境の違いから、竜騎士も冒険者も一体どういうものなのか、互いにいまいちよく分かっていないのだ。


「私は魔物のことに関してはよく分かりませんが……レオニス卿って、サラッと何かすごいこと言ってません?」

「ああ……百を超える毒キノコに囲まれて、一体どうやって生き延びられるんだ?」

「ミスリルゴーレムの大群遭遇というのも、かなりの窮地では?」

「そもそも飛竜が半日かけて飛ぶ距離を、人の足だけで三日で辿り着く方がおかしいかと……」


 竜騎士達は、レオニスに聞こえない程度の小声でゴニョゴニョと囁き合う。

 竜騎士達は冒険者ほど魔物に対する知識は備えてはいないが、それでもレオニスの語る『冒険三昧』というのがかなりおかしいことは分かるようだ。

 ゴニョゴニョと囁き合う竜騎士達に、今度はレオニスの方から問いかける。


「なぁ、俺の話はどうでもいいから、今度はあんた達の話を聞かせてくれよ。竜騎士って、普段は何してんだ?」

「我々の普段、ですか?」

「そうそう。俺ら冒険者と違って、あんた達竜騎士は選りすぐりのエリートだろ? 公国生誕祭以外で表立って出てくることもあまりないし、どんな連中なのか外からじゃ全く知りようもない」

「確かにそうかもしれませんね……」


 レオニスの問いかけに、竜騎士達も顔を見合わせながら小さく頷く。

 レオニスと今いる竜騎士達は、これまで互いに接触したことはほとんどない。先日レオニスが竜騎士専用飼育場を訪ねた時に、初顔合わせしたくらいだ。

 今回邪竜の島の討滅戦という共通の目的が発生したことにより、両者は互いのことをより知っておかなければならない。

 人族側が連携を取れないままでは、天空島側に迷惑をかけてしまうからだ。


 レオニスのそうした意図を、竜騎士団団長であるディランも汲んだようで、ディランが率先して答え始めた。


「そうだな……まず我々の日々の主な業務は、首都ラグナロッツァの外周警邏だ」

「そこら辺は冒険者ギルドも多少担っているとは思うが、あんた達の仕事はまた違うのか?」

「我々も、冒険者ギルドの仕事がどんなものかは分かっていないが……ラグナロッツァの壁の向こう側には、ビッグワームを始めとした様々な魔物があちこちで蠢いている。スライムにリトルゴブリン、マッドウルフ、エビルファルコン、時にはレッサードラゴンが近づいてくることもある。そうした魔物達を空からの警邏で発見次第、駆除するのが我等の仕事だ」

「そんな広範囲の魔物狩りをしてるのか? 冒険者ギルドでは、せいぜいビッグワーム狩りとスライム生け捕りくらいのもんだが……竜騎士がエビルファルコンやレッサードラゴンまで狩っていたとは知らなんだ」


 ディランの話によると、ラグナロッツァの壁の外側から首都に向かって近づいてくる魔物達を駆除するのが竜騎士団の主な仕事だという。

 その守備範囲は、何と壁から約10km離れたところまで常に警邏しているという。

 相棒の飛竜とともにラグナロッツァ周辺を飛び、魔物を見つけ次第竜騎士が魔法もしくは剣技で狩り、首都に迫る危機を未然に防ぐ。

 これこそが、彼等竜騎士が背負う本当の使命であった。


 これまでレオニスや一般人は知る由もなかったが、ラグナロッツァの安全は竜騎士達のこうした働きによって保たれていたのだ。

 そのことを知ったレオニスは、神妙な顔つきになり呟く。


「ラグナロッツァの住民の安全は、あんた達の日々の努力によって守られていたんだな」

「それが我等竜騎士に課せられた使命だからな」

「俺もそうだが、ラグナロッツァの民達もほとんどその功績を知らんというのが何とも歯痒いな。あんた達の仕事は、もっと広く世間に知られてもいいと思うぞ?」


 レオニスの言い分は尤もなものだ。

 ラグナロッツァに住む民達全てが、竜騎士達の尽力によって日々の平和を享受しているというのに、それを知る者の方が圧倒的に少ないのだ。

 そのことに憤慨するレオニスに、竜騎士達は静かに微笑む。


「そうですね……我等竜騎士は飛竜を駆る花形の人気職業として、常に子供達に大人気ですし、人々の崇敬を集めたりもしますが……実際には地味で地道な警邏が主な仕事なんですよね」

「身内に竜騎士になった者でもいなければ、我々の日々の仕事がどんなものか、知らない人々の方が多いでしょうね」

「でも、それでいいのです」


 世の人々に理解されずともそのままで良い、と竜騎士達は言う。

 それを裏付けるかのように、ディランが静かな声でその胸の内を語る。


「そう、我等の仕事はわざわざ喧伝するようなものでもない。これは竜騎士となった瞬間から定められた宿命なのだからな。それに、我等が公国生誕祭以外で皆の目につくところに出る時など来ない方がいいのだ。それは即ち、ラグナ宮殿もしくはラグナロッツァ内で緊急事態が起きた、ということなのだからな」

「ああ……そうだな。あんた達の仕事の中には、ラグナ宮殿の警備も含まれているもんな」

「そういうことだ」


 竜騎士団の表立っての活躍などない方がいい、と断言するディラン。

 確かに彼の言う通りで、ラグナロッツァ内で飛竜を駆る竜騎士を見るということは、それ相応の事件や緊急事態が起きたことを意味する。

 そんなことになるよりは、自分達の出番などない平和な日々が続くことを願うのは、人として当然のことだ。


「それに、この事実は一部の人達が知ってくれているだけでいいんだ。例えばの話、レオニス卿だってこれまでの自分の功績や手柄をわざわざ広めたりしないだろう?」

「ンー……そりゃまぁな。いちいち自慢することでもねぇしな」

「それと同じだ。さらに言えば、今日レオニス卿が我等の真実を知ってくれただけでも、我等にとっては望外の喜びなのだ」

「そっか……そうだよな」


 ディランの謙虚な言葉に、レオニスも感じ入った様子で微笑む。

 レオニスも竜騎士団も、どちらも世にその名を馳せる者同士。表に見える煌びやかな功績ばかりが注目されがちだが、その裏には血の滲むような努力や研鑽の積み重ねがある。

 そうした見えない部分まで、全てを曝け出して他者に理解してもらおうとは思わない。日々の苦労などは、身近な者達だけが知ってくれていればいい。

 ディランのそうした考えは、レオニスも大いに理解できるところだった。


 話に一区切りついたところで、ディランが持っていたカップのお茶をクイッ、と飲み干す。


「……さ、昼食も摂り終えたことだし。そろそろ出発するか」

「そうだな。ここからあと二時間も飛べば、竜王樹のいる山に着くだろう。……あ、そうだ、竜王樹のいる山の手前辺りで低空飛行に切り替えるからよろしくな」

「承知した。確か、その山の周辺は飛ぶことが許されていないんだったか?」

「そうそう。これまで何度か邪竜の群れの襲撃があったせいか、白銀の君がその山の周辺で飛ぶことを一切許してないんだ」


 出発前に、レオニスがディランに向けて注意事項を再確認する。

 いつものレオニスなら地上経由で訪ねるため問題はないが、今回は飛竜という飛行種族を伴っての訪問だ。

 しかも竜騎士とその相棒飛竜は、シュマルリ山脈南方は初めての訪問。見ず知らずの飛竜が飛来した日には、白銀の君に問答無用で撃ち落とされかねない。

 そんな悲惨な事態を招かないためにも、ここは徹底して付近からの低空飛行に移行しなければならない。


 レオニスと六人の竜騎士が、それぞれの竜の背に乗り込む。

 ちなみに迅雷竜と飛竜達は、ここでは特に話したり交流することなく少し離れた場所で各々寛いでいた。


「さ、じゃあ出発するぞ!」

「「「おう!」」」


 レオニスの掛け声をきっかけに、レオニス達は再びシュマルリ山脈南方を目指して飛び立っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 早めの昼食休憩から再出発し、空を飛ぶこと約一時間半が経過した。

 ここまでの空の旅は、特に何事もなく順調に進んでいる。

 それは、この界隈がまだ下位ドラゴンや飛竜の縄張りであることに加え、飛竜達とともに迅雷竜が随行していたためである。


 もしこれが飛竜達だけだったら、野生の飛竜達に縄張りを荒らす侵略者として問答無用で襲いかかられるところだ。

 だが、そこにレオニスが乗る迅雷竜がいたことにより、それら全てを回避できていた。


 野生の飛竜達は、皆一度は他所者を見て気色ばむ。しかし、そのすぐ近くに自分達より明らかに強い迅雷竜がいることに気づき、襲撃を留まった。

 そうして遠巻きに警戒しながらも、迅雷竜と六頭の飛竜達が通過していくのを黙って見過ごす野生の飛竜達。

 レオニスが行きの送りだけでも迅雷竜とともに竜騎士達と行動するのは、こうした護衛的な目論見もあったのだ。


 そうして何事もなく飛び進む中、レオニスが迅雷竜に向かって声をかけた。


「迅雷、そろそろラグスのいる山が見えてくる頃か?」

「ソウダナ……ボチボチッツーカ、アレガ、ソウダナ」

「……お、ホントだ。そしたらそろそろ低空飛行にするか」

「ワカッタ」


 まだはるか遠くではあるが、竜王樹ユグドラグスが御座す山がレオニスの目にも見えてきた。

 少し早めではあるが、低空飛行を開始する迅雷竜。

 迅雷竜の背に乗るレオニスも、他の飛竜に向けて人差し指を下に向けて下降の合図を出す。

 レオニスと迅雷竜の下降を受けた六頭の飛竜達も、背に乗った相棒の竜騎士が出す指示に従い少しづつ高度を落としていく。


 六人の竜騎士と六頭の飛竜が、竜族の頂点に立つ二者と対面を果たす時がすぐそこに近づいてきていた。

 研修に向かう途中の、レオニスと竜騎士達との交流です。

 作中でも書きましたが、両者は邪竜の島の討滅戦において互いに協力し合わねばなりませんからね。互いのことを知ることで交流を深めておかなければ!(`・ω・´)


 その中で、やはり話の取っ掛かりにしやすいのは仕事の話。

 竜騎士団の存在意義の最たるものは『ラグナ宮殿とラグナロッツァの守護』、この二点。ですが、ラグナ宮殿の守護は平時には無用なので、日頃は鍛錬も兼ねたラグナロッツァ外周警邏が主な業務となっています。

 その警邏の最中に、飛竜の主食であるビッグワームを狩っては備蓄に務めているのですね(^ω^)

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