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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第928話 竜騎士達のシュマルリ山脈研修

 十月も半ばに差し掛かった頃の月曜日。

 この日のレオニスは、朝から忙しく動いていた。

 何故ならば、今日からアクシーディア公国竜騎士団のシュマルリ山脈研修が始まるからだ。


 レオニスと竜騎士団の研修第一陣である第一班は、シュマルリ山脈中央で朝六時に現地集合となっている。

 現地とはシュマルリ山脈中央に新設した転移門のことであり、レオニスが三日前に設置したばかりのものだ。

 場所は善十郎の滝のすぐ横。かつてレオニスも、シュマルリ山脈南方に遠征するためにアクアに水中移動で連れてきてもらった場所である。


 今回設置する転移門は、竜騎士が駆る飛竜とともに使用するものなので、いつもより巨大サイズだ。

 幅10メートルはある転移門の魔法陣と石柱を眺めながら、レオニスは感慨に耽る。


 この善十郎の滝から、レオニスがシュマルリ山脈南方を目指して遠征したのは今年の六月初旬のこと。いわゆる『野良ドラゴンと友達になろう!大作戦』の始まりである。

 そこから約四ヶ月が経ち、今では中位ドラゴン達や白銀の君、そして竜王樹ユグドラグスとも仲良くなることができた。

 そのおかげで念願の天空島にも行けるようになったし、天空樹ユグドラエルや天空島に住む光の女王や雷の女王、そして彼女達の神殿守護神である二羽の神鶏達とも交流を深めるに至った。


 本当に、いろんなことがあったなぁ……と、完成した巨大転移門を眺めていると、レオニスの横にいる迅雷竜がレオニスに声をかけた。


「ナァ、レオニスヨ。今日ハ、本当ニ、ウィカチャンハ、来ネェノカ?」

「ああ。今日の俺達は、人族の精鋭部隊である竜騎士団の案内のためにここに来てるからな」

「チェー、ツマンネェノー」


 口を尖らせてブチブチと文句を言う迅雷竜。

 今日の迅雷竜は、白銀の君の命によりレオニスとともに朝イチで竜騎士団の研修員達を出迎えに来ていた。

 もちろん迅雷竜が白銀の君の命に背くことなど絶対にない。だがそれでも、いつもならレオニスとともに来ているウィカに会えないことがかなりご不満のようだ。


「まぁまぁ、そう言うなって。迅雷だって、飛竜と交流したことは一度もねぇんだろ?」

「ソリャアナ。アレラト、俺ラハ、住ム場所モ、全然、違ウシ」

「同じ竜族同士、たまには交流を持つのもいいことだと思うぞ?」

「デモナァ……今日、来ルノハ、イツモ、人族ト、イッショニ、人里ニ、住ンデイル、ヤツラ、ナンダロ? 俺ラトハ、気ガ合ワン、カモ、シレン」

「ンなこたぁねぇさ!だってほら、俺やウィカともこうして仲良くなれてるんだからよ!」


 未だにブチブチと文句を垂らす迅雷竜に、レオニスが迅雷竜の身体をバシバシ!と叩きながら明るく笑い飛ばす。

 確かに迅雷竜と飛竜では、住むエリアが異なるので普段から接触する機会など全くない。

 さらに言えば、両者を比較した場合迅雷竜の方が格上だ。迅雷竜が言うように、飛竜とは気が合わない可能性だって往々にしてある。


 しかし、それを言ったら人族のレオニスの方が飛竜よりもさらに格下だ。本来というか、大多数の人族は竜族と対等に渡り合えることなどないのだから。

 だから、レオニスが言うことも一理ある。ただしそれは、レオニスが人類最強の人族であるという規格外の能力を持つが故に成し遂げられた、例外中の例外なだけなのだが。


 とはいえ、そうした実例を迅雷竜も己の身を以て体験してきている。

 それに、迅雷竜自身が他の中位ドラゴン達と同様に性格は楽観的な方だ。

 故にレオニスの言い分も、すんなりと受け入れることができた。


「ンー……マァナ。人族デアル、オマエニ、ソウ言ワレリャ、ソンナ気モ、スルナ」

「だろう? あんまり難しいこと考えずに、迅雷も飛竜達を鍛えてやってくれ。いずれは邪竜の島の討滅戦で共闘しなきゃならねぇし」

「オウ、任セロ!」


 レオニスに乗せられて、迅雷竜もやる気満々になる。

 そんな話をしていると、レオニス達の横の巨大転移門が一瞬揺らいだ。

 どうやら竜騎士団が移動を始めたようだ。


「レオニス卿、先にいらしてたか。お待たせしたようで申し訳ない」


 一番最初に転移門で移動してきたのは、竜騎士団団長であるディランだ。

 シュマルリ山脈研修の第一陣の責任者であり、班長であるディランが先陣切ってのお出ましとは。彼がどれだけこの研修に意気込んでいるのかがよく分かる。


 ディランが転移門から出た後も、続々と竜騎士を乗せた飛竜が到着する。

 そうして六人全員が揃ったところで、竜騎士全員が飛竜から下りて改めてレオニスと迅雷竜に挨拶を始めた。


「レオニス卿、そして横におられるのは迅雷竜殿とお見受けする。此度は我等を研修生として受け入れてくださったこと、心より感謝している。これより一週間、我等竜騎士一同は全身全霊を以て精進いたす所存にて、何卒よろしくお願い申し上げる」

「オオオ……レオニス、オマエヨリモ、ハルカニ、賢ソウナ、ヤツガ、来タナ」

「うっせーよ」


 迅雷竜に向けて、竜騎士の六人全員が恭しく頭を下げる。

 もちろんそれは竜騎士だけでなく、彼らの相棒である飛竜達も同様に深々と頭を垂れる。飛竜もまた迅雷竜が自分達より格上の存在であることを、身を以てヒシヒシと感じ取っているのだ。

 そしてディランが頭を上げて、迅雷竜に向かって自己紹介を始めた。


「全員の自己紹介は、後程白銀の君の御前でするとして……まずは総責任者である私だけでも先に名乗らせていただこう。私の名はディラン・チェステ、人族の中では竜騎士団を率いる団長を務めている。以後お見知りおきを」

「俺ハ、迅雷、決マッタ、名ハ、ナイ。普通ニ、『迅雷』、トデモ、呼ンデクレ」

「承知した。迅雷殿、レオニス卿、これからよろしく頼む」


 竜騎士団団長のディランと迅雷竜が挨拶を交わしたところで、レオニスが二者に声をかける。


「じゃ、早速南方に行くか。迅雷、案内よろしくな」

「オウ!」


 鞍や手綱も無しに、迅雷竜の背に乗るレオニス。

 迅雷竜も素直に受け入れている様子を見た竜騎士達が、非常に驚いている。


「あの迅雷竜殿は、野生のドラゴン、なのだよな?」

「野生のドラゴンに、ああも懐かれ受け入れられているとは……さすがはレオニス卿ですね」


 竜騎士達は驚きながらも、それぞれ己の相棒の飛竜に乗り込む。

 全員が竜の背に乗ったところで、レオニスが全員に向かって大きな声で明るく掛け声をかける。


「よーし、じゃあ行くぞ!」

「「「おうッ!」」」


 レオニスの掛け声を皮切りに、迅雷竜と六頭の飛竜がふわりと宙に浮く。

 一頭の迅雷竜と六頭の飛竜は、シュマルリ山脈南方に向かって飛び立っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 転移門のあるシュマルリ山脈中央部から、竜の背に乗って飛び続けること約四時間。

 どの竜も疲れた様子は全くないが、小休止ということでレオニス達は一旦地上に下りた。


「うおおおお……こんなに長時間、ずーっと何かに座り続けるなんてことねぇからケツと背中が痛ェー!」

「オマエ……前ニ、白銀ノ君ノ、背ニ乗ッテ、出カケタ事、アンダロ……」

「だってなぁ、あん時は小一時間で天空島に着いちまったし」

「文句言ッテネェデ、アイツラヲ、見習エ」


 迅雷竜の背から下りたレオニスが、腰の辺りを己の拳で叩きながら左右に数回捻り、凝り固まった身体を解す。

 普段のレオニスは、竜や馬などといった動物の背に乗って長距離移動することなどほとんどない故に、長時間それらに乗ることに慣れていないのだ。

 一方で六人の竜騎士達は、平然とした涼しげな顔で悠々と飛竜から下りる。そして飛竜の身体を撫でて、その働きを労っている。


「そりゃあいつらは、飛竜の背に乗ってあれこれするのが仕事だもんよ。慣れてて当然だ」

「ナラ、オマエモ、今ノウチニ、慣レトケヨ。討滅戦、トヤラニ、オマエモ、参戦、スルンダロ?」

「まぁなー……確かに討滅戦のことを考えたら、俺も今のうちからこのケツの痛みに慣れとかなきゃならんよなぁ。……つーか、ケツにクッションか座布団敷いて乗ってもいいか?」

「好キニシロ……」


 呆れて物も言えない、といった空気の迅雷竜に、レオニスはあくまでもマイペースのまま接している。

 そんなレオニス達のやり取りに、竜騎士の一人であるエレオノラが声をかけてきた。


「あのー……レオニス卿、少しよろしいですか?」

「ン? 何だ?」

「そこにおられる迅雷竜殿に、疲労回復のエクスポーションを差し上げたいのですが……」

「エクスポ!? クレ!!」

「!?!?!?」


 エレオノラの申し出に、レオニスが返事するより先に迅雷竜がパァッ!と明るい笑顔で素早く反応した。

 人族が普段から用いる回復剤の一種であるエクスポーション。その差し入れと聞けば、居ても立ってもいられないくらいには迅雷竜の大好物である。

 迅雷竜の食いつきの良さに、エレオノラが一瞬びっくりしていたが、気を取り直してすぐに応じる。


「す、すぐに持ってまいりますね!」

「おう、エクスポ二十本よろしくなー」

「エックースポ♪エックースポ♪」


 急いで補給担当者のもとに向かうエレオノラに、レオニスは二十本持参という注文を出し、迅雷竜はウッキウキの笑顔でエクスポコールをしている。

 補給係からエクスポーション二十本を籠で受け取ったエレオノラ。その周囲にいたディランとともに、すぐにレオニス達のもとに戻ってきた。


「お待たせいたしました。ご所望のエクスポーション二十本です」

「おお、ありがとう。迅雷、おやつをもらえて良かったな!」

「アア、早ク、食ワセテ、クレ!」

「レオニス卿、これをどうやって迅雷竜殿に飲ませるのですか?」

「今から俺が手本を見せるから、よーく見てな」


 エレオノラからエクスポーション入りの籠を受け取ったレオニス。

 不思議そうに問うてきたディランに向かって、ニヤリと笑いながら手本を見せる。


 早速籠とともにふわりと宙に浮いたレオニス。

 あーん♪とばかりに口を大きく開けて待ち構えている迅雷竜の口に、レオニスがどんどんエクスポーションを放り込んでいく。

 迅雷竜の口に向けて、ザラザラザラー……と未開封のエクスポーションをそのまま放り込む図を、果たして『手本』などと呼んでいいものかどうかはさて置き。当の迅雷竜は二十本のエクスポーションを、それはもう美味しそうな顔で食べている。


 パリン、バキン、モクモク、ゴッキュン……と、瞬く間に飲み込んでしまった迅雷竜。

 エクスポーションどころか瓶ごと食べて喜ぶ姿に、ディランとエレオノラはただただ唖然とする他ない。

 そんな二人に、レオニスがしたり顔で声をかける。


「な? 俺が言った通りだろ?」

「は、はい……確かに迅雷竜殿は、エクスポーションを瓶ごと食べる?のが大変お好きなようですね……」

「迅雷だけじゃないぞ? 鋼鉄も獄炎も氷牙も、それどころか白銀の君だってエクスポが大好物だからな?」

「そ、そうなのですね……今回我々第一班は、エクスポーションを五百本用意してきたのですが、足りるでしょうか?」

「一週間で五百か……ギリ足りるかどうかってとこじゃね?」


 エクスポーションを五百本持ってきたというエレオノラ。

 だが、今の迅雷竜の反応を見るに、竜達がエクスポーションを相当好んでいることはエレオノラにも十分理解できた。

 多めに持ってきたつもりの五百本だったが、一週間の滞在ともなると心許なくなってきたようだ。

 そしてそれはエレオノラだけでなく、ディランもまた同様のことを考えていた。


「これは後続の班にも、エクスポーションを大量に用意しておくように通達しておかねばならんな……」

「そうですね……今回の五百本も、半分以上は後続の班に持ち越すつもりでしたからね……」

「これはもう、薬師ギルドへの増産依頼だけでは足りんかもしれんな」

「冒険者ギルドや魔術師ギルドの売店、街の薬屋にある店頭分も買い占めなければならないかも……」


 深刻そうな顔で相談しているディラン達に、レオニスがおずおずと声をかける。


「あー、もし竜騎士団に連絡しておきたいことがあるなら、紙に書いてくれれば俺が届けるぞ?」

「本当ですか!? そしたら今から書状を認めますので、それを本日中に竜騎士団本部に届けていただけますか!?」

「ああ、いいぞ」


 レオニスの申し出に、エレオノラが再び補給係のもとに駆けていく。

 受け取った紙とペンを持ってきて、ディランに渡すエレオノラ。

 ディランがスラスラと何かを書き込み、書き終えた紙を封筒に入れてレオニスに渡した。


「レオニス卿、使い走りさせるようで申し訳ないが、よろしく頼む」

「俺から申し出たことだ、気にすんな。さ、俺達も少し休憩しようぜ!」

「ありがとう。ではレオニス卿の言う通り、我等も少し休むとしよう」


 レオニスはディランから受け取った封書を空間魔法陣に仕舞い込む。

 そして他の団員達が寛いでいる場所に、レオニス達も向かっていった。

 竜騎士団のシュマルリ山脈研修開始です。

 レオニスが『野良ドラゴンと友達になろう!大作戦』を展開し始めたのは、作中時間で約四ヶ月前ですが。リアルの第602話は2022年9月7日の投稿、つまりはほぼ一年前のことなんですねー。


 あー、あれからもう一年経っちゃうのかー。レオニスの力を示すための鋼鉄竜との決闘とか、ドラゴン達とのあれやこれやを書いてたのはついこないだのような気がするのに。

 でもなー、よくよく考えると話数で言ってももう320話以上も前のことだもんなー。そんだけ月日が経ったってことよねぇ…(=ω=)…

 こうして人間は歳を取っていくもんなんですねぇ…( ´д` )…ハァ…

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