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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第923話 信頼の証

 氷の洞窟の守護神探索とその孵化という、二つもの大仕事を無事達成したライト達。

 ひとまず休憩を取るために、氷の女王の住処である最奥の広間に移動した。

 いつものようにレオニスがテーブルと椅子を出し、ラウルがお茶菓子を並べ、ライトが飲み物を注ぐ。

 そして準備が整い、全員が席に着いたところで祝杯を上げた。

 氷の女王の膝の上には、先程生まれたばかりの玄武がちょこなんと座っている。


「氷の洞窟の守護神誕生を祝し……乾杯ーーー!」

「「乾杯ーーー!」」

『カンパーーー、イ?』


 レオニスが乾杯の音頭を取り、ライトとラウルがそれに続き、氷の女王もキョロキョロと周囲を見ながら見様見真似で乾杯している。

 ライト達はホットココア、レオニスはホット珈琲、ラウルは温かい紅茶、そして氷の女王にはぬるぬるドリンク水色サイダー味。

 乾杯の後は、それぞれの飲み物を一口二口啜る。


 極寒の氷の洞窟で飲むホットドリンクは、何とも心温まる。

 とはいえ、場所が場所なのであっという間に冷めてしまうのだが。

 それでも最初の一分くらいの間は、カップを持つ手に温もりを感じることができる。

 人嫌いで知られた氷の女王とともに過ごす贅沢なひと時に、ライト達のテンションは上がりまくる。


「いやー、無事守護神を見つけることができて良かったな!」

「うん!しかもこんな可愛らしい玄武が生まれるなんて、思ってもみなかったね!」

「これで氷の女王も安心できるな」


 ライト達が温かい飲み物を啜りつつ、笑顔で今日の成果を祝う。

 そんなライト達に、氷の女王が改めて頭を下げて礼を言う。


『其方達のおかげで、この氷の洞窟にも立派な守護神を迎えることができた。改めて礼を言わせてもらいたい。本当にありがとう』

「何、俺達も好きでやったことだしな」

「そうですよ!氷の女王様のお役に立てたなら、ぼく達も嬉しいです!」

「そうそう、ご主人様達の言う通りだ。この氷の洞窟の氷やツェリザークの雪には、俺達いつも助けられてるしな」


 氷の女王に優しい言葉をかけるライト達に、氷の女王は頭を上げてライト達の顔を見る。

 すると、氷の女王の膝にいた玄武が彼女のお腹や胸をよじ登ってきた。

 それに気づいた氷の女王が、身体をよじ登る玄武を両手でそっと包み込みテーブルの上に乗せた。


『まぁ、玄武様もラウル達に礼を言いたいのですか?』

「♪♪♪」


 テーブルの上に乗せられた玄武が、よちよちと歩きだした。

 そして氷の女王の横、一番手近な位置にいたラウルに向けて満面の笑みで長い右手をヒョイ、と上げた。

 それはまるで『よッ、皆、オレのために働いてくれてありがとな!』と言っているかのようだ。

 これをラウルの横にいたライト、レオニスにも順番にしていく玄武。全員に挨拶をするとは、なかなか律儀な性格である。


「ほう……この玄武、もう挨拶もできるとは……」

「可愛いいぃぃ!」

「なかなかに賢いやつだな」

『玄武様は、この氷の洞窟の守護神様ぞ? 玄武様ならば、このくらいのことはできて当然であろう♪』


 感心しきりのライト達に、氷の女王が我が事のように鼻高々のドヤ顔でフッフーン☆と頷く。

 暗黒神殿のノワール・メデューサのクロエも、生まれてすぐにレオニスをパパ認定、ライトを兄認定したりしていたが、やはり神殿守護神ともなれば生まれた直後から知能や知性が高いのがデフォルトなのだろうか。


「玄武がこんなに小さくて可愛らしいのも、きっと今のうちだけなんだろうねー」

「だな。目覚めの湖のアクアも大きくなるの早いもんな」

「やっぱ神殿守護神ともなると、成長するのもすごく早いんだろうな」


 玄武の甲羅や頭、取り巻きの蛇の背中などを人差し指で撫でつつ愛でるライト達。

 玄武と言えば四神の一柱。ぶっちゃけ神様の頭や背中を撫でるなど、一見罰当たりにしか見えない光景だ。

 だが、撫でくり回されている当の玄武は特に抵抗などすることなく、目を細めてニコニコしている。

 目覚めの湖のアクアや暗黒の洞窟のクロエのように、孵化に直接携わったライト達を生みの親として無条件に慕っているのかもしれない。


 するとここで、レオニスがはたとした顔で氷の女王に尋ねる。


「氷の女王、そういやさっきの隠し部屋? 祭壇があった部屋の出入口はあのままにしておいていいのか? もし潰しておけってんなら、帰り際に祭壇部屋の入口を閉じるが」

『いや、あのままでいい。あれは玄武様がお生まれになった場所、そこに至る道を潰すなどとんでもない』

「そうか、ならそのまま残しておくことにしよう」


 レオニスの懸念とは、祭壇がある隠し部屋に入るために作った臨時トンネルのことだった。

 この氷の洞窟に近寄る侵入者(主に冒険者達)がズカズカ踏み込んで休憩地点にでもしだしたら、氷の女王の機嫌を損ねるかもしれない―――と、レオニスは考えたのだ。


 だが、氷の女王はそのままにしておいていいという。

 確かにあの隠し部屋は『玄武生誕の地』であり、それを聖地のように崇める氷の女王の気持ちも分からないではない。

 なのでここは氷の女王の希望を優先し、隠し部屋への出入口の臨時トンネルはそのまま置いておくことにした。


「まぁ、この先もし何か不都合が起きたら遠慮なく言ってくれ。その時はまた潰すなり何なり対策するから」

『ああ、そうなったらまた其方達に相談させてもらおう。よろしく頼む』

「ラウル、氷の女王との連絡係を頼むぞ。お前のことだから、これから足繁く通うだろ?」

「ン? 連絡係か? もちろんいいぞ。つーか、俺の行動予定を見越して頼んでくるとは、さすがはご主人様だな」


 隠し部屋の臨時トンネルの件の流れで、レオニスがラウルに氷の洞窟関連の連絡係として指名する。

 もちろんラウルに否やはないし、むしろこの中で最も適任と言い切る自覚すらある。

 ラウルはツェリザークの氷雪をこよなく愛しており、その氷雪を採取するために何度も足繁く通うことだろう。ツェリザーク及び氷の洞窟を訪れる頻度が最も高いのは、間違いなくラウルである。


 それに、ラウルは何と言っても氷の女王の想い人。

 人嫌いで有名な氷の女王も、ラウルが訪ねれば決して邪険にはしないしむしろ大歓迎されるまである。

 人族には頼み難いことでも、ラウル相手ならきっとその心を包み隠すことなく語れるだろう。


 レオニス達のそうした会話に、氷の女王の瞳がキラキラと輝く。


『ラウルが我の相談役になってくれるのか?』

「相談役なんて大層なもんじゃないが……俺も氷の洞窟の氷を採らせてもらったし、氷の女王直々に生み出した氷の槍なんかももらったりしてるし。その恩に報いなきゃな」

『そうか? 我の方こそ、恩などと大層なものではないが……でも、ラウルが氷の洞窟に来てくれるというなら、我としても嬉しく思う』


 艶やかな頬をさらに白く染める氷の女王。

 これからラウルが氷の洞窟に何度も訪ねてくるであろうことが、余程嬉しいようだ。


『ラウル、これから我とともに玄武様の成長を見守っておくれ』

「ああ、神殿守護神の成長なんて滅多に見られるもんじゃないからな。俺ができることがあったら何でも言ってくれ。できる限り力になろう」

『よろしくな』


 うっとりとした眼差しでラウルを見つめる氷の女王に、ラウルは普段と変わらぬ態度で接している。

 二者の間にはかなりの温度差が存在するような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 休憩を終えて、ライト達は外に出るべく帰り支度を始める。

 最後にレオニスがテーブルや椅子を片付けている間に、ラウルが空間魔法陣を開いて氷の女王から直接氷の槍をもらっている。

 どこまでもちゃっかりとした妖精である。


 そうして氷の洞窟の入口まで出たライト達。

 氷の女王も皆を見送るためにいっしょに歩いてきていた。

 洞窟の内側に立つ氷の女王と、洞窟入口から外に出て数歩歩いたライト達。

 ライト達が振り返り、改めて氷の女王と向き合う。

 そして三人を代表してレオニスが氷の女王に別れの挨拶を切り出した。


「じゃ、俺達は帰る。またな」

『ああ。我も此度の恩―――昨日水の姉様やアクア様に会わせてくれただけでなく、今日は玄武様まで見つけだして我と引き合わせてくれた。この大恩は決して忘れぬ。其方達が望む時、いつ如何なる時でも我は其方達に力を貸そう』

「そりゃありがたい。遠慮なくいつか頼らせてもらうとしよう」


 レオニスが握手のために差し出した手を、氷の女王は迷うことなく己の手を伸ばして握る。

 それは、あれ程人族のことを嫌っていた氷の女王とはとても思えないような自然な仕草。

 今はまだライトとレオニスの二人だけの限定だが、氷の女王が心から人族のことを信頼し受け入れた証だった。

 氷の洞窟の守護神探しの締め括りです。

 今回新たに誕生した玄武、そのイメージは縁日の亀すくいの水槽にいるちっこい亀です。

 と言っても、作中でも言及してある通り、玄武がちっこいのはほんの僅かな間だけでしょうけど(´^ω^`)


 でもって、作者自身は今まで生きてきた中で縁日の亀すくいというものを一度も見たことがありません(´^ω^`)

 見たことあるのはせいぜい金魚すくいくらいですかねー。

 でも、亀も金魚も掬って持ち帰ったところで飼い続ける環境は一切なかったので、それらの屋台は人垣の後ろや横からただただ眺めるだけでしたけど。

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