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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第917話 天然最強の人たらしと爆弾発言

 お茶会の準備が整ったところで、皆合掌して食事の挨拶をする。


「「「『『『いっただっきまーす!』』』」」」


 ライト達ラグナロッツァ組や目覚めの湖組はもちろんのこと、氷の女王までちゃんと唱和しているのが実に素晴らしい。

 氷の女王もライト達とお茶会するのは二度目なので、隣に座っている水の女王や向かいのライトを見倣ってちゃんと真似しているのだ。


 今日のお茶会は寒い野外なので、お茶菓子の代わりに熱々のたこ焼きや肉まん、唐揚げなどのお惣菜系ホットスナックがテーブルの上に並ぶ。

 どんなに焼きたて揚げたての熱々でも、雪原の中での冷気にはとても勝てない。しばらくすればぬるくなってしまうので、すぐに食べ頃温度になるのが利点と言えば利点だ。

 ただし、いつものように山盛りで出すと全部一気に冷めてしまうので、今回はラウルが少量づつ出していっている。


 一方の氷の女王には、彼女だけの特別メニューでアフォガートとパンプキンパイ、スイートポテトを提供している。

 アフォガートのエスプレッソのほろ苦さに驚いたり、パンプキンパイやスイートポテトの優しい甘さにも喫驚しつつ、氷の女王は次第に笑顔になっていった。


『姉様達と、このようにお茶会ができるなんて……本当に、本当に夢のようです……』

『私も氷の女王ちゃんと美味しいものが食べられて、すっごく嬉しいわ!』

『これもひとえにラウルやライト、レオニスのおかげですね……』

『そうね、皆のおかげでこうして私達姉妹は会えたんですもの、皆に感謝しなくちゃね!』


 感慨深げにちびちびとアフォガートを食べる氷の女王に、熱々の肉まんの底を頬に当てて暖を取りつつ唐揚げを頬張る水の女王。

 ラウル特製スイーツ&ホットスナックを美味しそうに食べる姿は、実に愛らしい激レアシーンである。


 はぁぁぁぁ、属性の女王様が人間の食べ物を食べる姿って、ホンット可愛いいいい……

 嗚呼、何故にここにはスマホもデジカメもビデオカメラもないのだろう……水の女王様や氷の女王様のこんな貴重な姿、滅多に拝めるもんじゃないのに!!

 誰か!誰か俺にスマホをくれええぇぇッ!!


 目の前で繰り広げられる、属性の女王達の尊い姿に内心で悶絶しまくるライト。

 そんなライトを他所に、レオニスが氷の女王に向かって冷静に話しかける。


「氷の女王、この近辺で特に異変とかは起きてはいないか?」

『ああ、特に伝えるべき事件などは起きてはいない』

「そうか、なら良かった。……って、そういや氷の女王に一つ、伝えておきたいことがあったんだった」

『ン? 我に伝えたいこととは、何ぞ?』


 氷の女王が不思議そうな顔でレオニスを見つめる。

 氷の採取のために何度もこの地を訪れているラウルならともかく、レオニスとはまだそこまで頻繁に顔を合わせていない。

 レオニスから伝えられるような事柄に全く心当たりのない氷の女王が不思議がるのも無理はない。


「今から約三ヶ月後……百日くらいしたら、俺は天空島の光の女王や雷の女王とともに、邪竜に占拠されているという別の天空島の討滅戦に参加するんだが」

『ほう、我の姉妹である天空の姉妹達とともに出陣するのか』

「ああ。その邪竜の島にいる邪竜どもは、俺達人類やあんた達属性の女王の敵である廃都の魔城の手先として使われているのでな。そいつらを叩いて、奴等の手駒を少しでも減らそうって作戦だ」

『それはいいことだ。我にも何か手伝えることあらば、何でも言うがよい。できる限り協力しよう』

「そりゃありがたい。何か思いついたら、その時は是非とも女王の力に頼らせてもらおう」


 レオニスが話す邪竜の島討滅戦に、氷の女王も力強く頷きながら賛同する。

 廃都の魔城が犯す数々の悪辣な所業は、氷の女王もレオニス達から聞き及んでいる。

 その魔の手の毒牙は人族のみならず、属性の女王や神樹などの本当に罪無き善良な者達まで付け狙う極悪非道な輩共。氷の女王とて見過ごせるものではない。


「でな、話はこれだけでは終わらないんだ」

『ン? まだ何かあるのか?』

「邪竜の島を殲滅させることで、もしかしたら……この地で邪龍の残穢の出現も増えるんじゃないか、と思っててな」

『……ああ、そういうことか』


 少しだけ言い淀むレオニスの真意に、早々に気づく氷の女王。

 このツェリザークのみで発生する『邪龍の残穢』とは、邪龍が倒された後の残留思念体だ。

 ツェリザークの固有魔物である邪龍の残穢、その生前の邪龍が邪竜の島に生息する邪竜と同一のものかは分からない。そもそも邪龍の残穢の発生のメカニズムすら、現状では全く分かっていない。


 だが、邪竜という括りで見れば同一の範疇である。

 しかも邪龍の残穢は、討伐された後の思念体が具現化した魔物。もしかしたら邪竜の島の討滅戦で倒した邪竜が、ツェリザークで邪龍の残穢として復活するかもしれない―――レオニスがそう危惧するのも当然のことだった。


「今のところ、邪龍の残穢がどういう仕組みで現れるのか、俺達人族側では全く分かっていない。天空島にいる邪竜とは全く無関係かもしれんが、それでもその名に『邪龍』という同じ意味の言葉が含まれている以上、このツェリザークでも用心するに越したことはないと思う」

『そうさな……その天空島にいるという邪竜が何匹いて、其方達の手で何体倒されるのかは全く予想もつかぬが……邪龍の残穢は思念体だけに、倒された場所に関係なくどこに現れてもおかしくはないからな』


 レオニスが口にした懸念に、氷の女王も頷きつつ同意する。

 思念体とは、早い話が『幽霊』である。肉体という物質的な楔から解き放たれた霊魂的なそれは、距離の遠近など一切関係ない。

 このツェリザークから遠く離れた地、しかもはるか上空にある天空島から瞬時にして怨念の塊として復活することだって十分にあり得る話だ。

 そしてここでレオニスが、ラウルに向かって声をかけた。


「そこで、だ。邪竜の島の討滅戦に行く具体的な日時は、まだ決まっていないんだが。決行日の当日と翌日はラウル、お前にこのツェリザークに待機していてもらいたい」

「ン? 俺か?」

「ああ。今のお前なら、もし邪龍の残穢が複数出現しても余裕で倒せるだろう?」

「そりゃまぁな」


 レオニスから突如指名されたことに、ラウルは平然としつつ承諾する。

 かつては軟弱者を自称していたラウルだったが、今では邪龍の残穢など物ともしない程に強くなった。

 カタポレンの森を飛び出したばかりの頃は、ズタボロにゃんこだったラウルがこんなに大きく成長するなんて……ううッ、何て素晴らしいんだろう!

 レオニスとラウルの頼もしい会話を、その横で聞いていたライトが内心でラウルを讃えている。何ならそのついでに目頭まで熱くなってきているようだ。


 そんなライトの感涙の視線を他所に、ラウルはさらに男前な発言を重ねていく。


「あんな奴にツェリザークの美しい雪原を穢させるなんてこと、絶対に許せんし黙って見過ごすつもりもない」

『……ラウル……』

「もしその日にツェリザークで邪龍の残穢が大量発生したとしても、俺が全部退治してやる。だから、氷の女王もご主人様達も安心してくれ」

『ああ……やはり其方ほど頼もしい者はおらぬな……』

「「………………」」


 ラウルのこれ以上ない程に力強くて頼もしい言葉の数々に、氷の女王がうっとりとした表情でラウルを見つめている。

 もちろんラウルに他意や下心など微塵もない。

 その言葉の額面通り、本当に『俺に任せとけ!』と言っているだけだし、ラウルにとって守るべき対象は『ツェリザークの美しい雪原』であり、それ以外のことは何も言っていない。

 ツェリザークの雪を守るのは、料理好きのラウルにとってもはや欠かすことのできない水源となっているからだ。

 つまりそれは全て己のため。身も蓋もない言い方をすれば、邪龍の残穢退治はひとえにラウル自身のためなのである。


 だが、聞いている方からしたら、とてもそれだけには思えない響きを多分に含んでいることは明白だ。

 現に氷の女王は蕩けるような表情でずっとラウルを見つめ続けているし、ラウルの天然砲でノックアウトされた氷の女王を見ていたライトとレオニスも思わずスーン……とした顔になっている。


「ラウルってさぁ……ホンット、最強の人たらしっていうか、女王様たらし? とにかくすごいよね……」

「ああ……これを毎回毎度無自覚でやってるってんだから、ホンットすげーよな……」

「そのうち氷の女王様に拉致されちゃうんじゃない?」

「さすがにそれはないと思うが……ンなことになったら、絶対にツィちゃんあたりが黙ってねぇだろ」

「だよねぇー」


 二人にしか聞こえない程度の超小声で、何やらゴニョゴニョと会話するライトとレオニス。

 ライトが懸念するような日が来ないことを、ただただ祈るばかりである。


 レオニスが気を取り直し、コホン……と一つ咳払いをし、改めてラウルに話しかけた。


「邪龍の残穢の大量発生の懸念は、俺の方からも冒険者ギルドを通して通達しておく。総本部の方からツェリザーク支部に連絡がいくと思うし、何ならラウルに待機させることも伝えておこう」

「承知した。先に連絡を入れておいてもらえるなら、その方が話も早く済んでいいだろ」

「そうだな。今日の帰りにツェリザーク支部に寄っていって、軽く話だけでもしておくか」

「それでよろしく」


 ラウルとの話がまとまったところで、レオニスは続けて氷の女王にも声をかける。


「氷の女王の方からこちらに連絡を取るのは、かなり難しいかもしれんが……それでも、もし何かあったら氷の精霊を人里に遣わすなりしてくれ。多少日数はかかるだろうが、そうすれば冒険者ギルドを通して俺に連絡が来ると思う」

『相わかった。それか、もしこの近くにシーナ姉様がいたら、姉様に言伝を頼むことにしよう』

「……ああ、それでもいいかもしれんな。もしシーナに会ったら、よろしく言っといてくれ」


 氷の女王の案に、レオニスもはたとした顔になり頷く。

 アルとシーナ、銀碧狼親子はツェリザーク北部のカタポレンの森を縄張りとしている。

 人族嫌いで名の知れた氷の女王。人族相手に連絡を取るのは敷居が高くても、旧知の仲であるシーナにレオニス宛の言伝を頼むくらいなら気兼ねなくできるだろう。


 そんな話をしていると、突然水の女王が氷の女王に話しかけてきた。


『氷の女王ちゃん、私以外にもお姉ちゃんがいるの?』

『はい。この地には、銀碧狼という美しくて大きな神獣がおりまして。その中に私より年上のシーナという、それはもう銀碧狼の鑑のような気高く立派な御方がいて、その方を姉と慕っております』

『そうだったの……』


 氷の女王の話に、俯きつつ目を伏せる水の女王。

 そんな彼女の様子に、氷の女王が慌てだした。


『い、いえ、その方は我が生まれる前からこの地に君臨していた縁で繋がっているだけで、我の本当の姉様は水の姉様だけです!』

『……ああ、心配しないで。別に私は怒ったりがっかりしている訳ではないのよ?』

『で、では……?』


 水の女王の気を害した!?と、あわあわと慌てふためく氷の女王に対し、水の女王が穏やかな声でそれを否定する。

 そして彼女の本当の真意を語りだした。


『貴女はこの地で、この氷の洞窟の中でずっとひとりぼっちで過ごしてきたのだと、勝手に思っていたけれど……姉と慕えるような、素晴らしいお友達もちゃんとお外にいたのね。私はそのことに、とっても安心したの』

『水の姉様……』


 水の女王の嘘偽りない心情を聞き、氷の女王がまたも瞳を潤ませつつ感動している。

 この氷の洞窟には、例えば目覚めの湖の主であるイードやウィカ、水神アクアのような、氷の女王以外の他者はいない。

 いや、この氷の洞窟にもきっと守護神がいるのだろうが、現時点ではまだ出てきていない。


『遠くにいる家族ももちろん大事だけど、近くにいる友達はもっと大事よ? 貴女に何かあったら……いいえ、何かがなくても貴女に常に寄り添ってくれるのは、身近なお友達なのだから』

『そうですね……水の姉様のお心遣い、とても嬉しいです……』

『私にもね、目覚めの湖にたくさんのお友達がいるの。水神アクア様やクラーケンのイーちゃん、水の精霊のウィカちー……貴女にもそうしたたくさんのお友達がいることを知って、とても嬉しいわ!』


 ニッコリと笑う水の女王に、氷の女王も嬉しそうに微笑みつつ水神アクアの方に視線を向けた。


『水神アクア様とは、そこに御座す御方ですよね?』

『そうよ!ご紹介が遅れちゃってごめんなさい、あちらにいらっしゃるのが水神アクア様、湖底神殿の守護神であらせられる御方よ』


 氷の女王が席を立ち、ラウル特製ミートボールくんを頬張るアクアの前に進み出て跪く。


『水神アクア様、私は氷の洞窟に住まう氷の女王と申します。この度は我が姉だけでなく、このように尊き水の神にお会いすることができて恐悦至極に存じます』

『……あ、氷の女王だね、こちらこそ初めまして。僕の名はアクア、水の女王からの紹介通り、目覚めの湖の湖底神殿の守護神だよ。よろしくね』


 己の前で恭しく跪く氷の女王に、アクアが気さくに話しかける。

 本来なら水神アクアに真っ先に礼を尽くさねばならないところなのだが、水の女王との対面の感動&和やかなお茶会で互いの名乗りが遅れてしまっていた。

 気難しい神ならすぐに臍を曲げるところだが、アクアは優しい子なのでそんなことで怒ることなどないのだ。


『ていうか、そんなに畏まらなくてもいいからね。ここにいる皆は僕の大事な仲間だから。もちろんその中には、同じ水属性である氷の女王も含まれるよ』

『何というお優しいお言葉……ありがたき幸せに存じます!』


 アクアからの優しい言葉に、氷の女王の瞳はまたも潤む。

 本日何回目の潤みか分からないくらいだが、次の瞬間、その涙が引っ込む言葉がアクアから放たれた。


『……そういえば、この氷の洞窟の守護神はどこにいるの?』

 水の女王と氷の女王、水の姉妹達とのお茶会&諸々のお話です。

 麗しの姉妹を眺めながらのお茶会、最も喜んでいるのはライトでしょう。

 水の姉妹以上にウッキウキしているに違いありません!゜.+(・∀・)+.゜


 ……って、作者も途中まではライト同様ウッキウキだったんですけどね?(=ω=)

 締め括りに近いところで安堵する水の女王の言葉、自分にも身近に寄り添ってくれる友達がいる、と語るシーンで問題発生。

 水の女王にはアクアという湖底神殿の守護神がいるのに、そういや氷の洞窟の守護神って……まだ未出じゃん…( ゜д゜)…


 …( ゜д゜)…

 …( ゜д゜)…

 …( ゜д゜ )… ←こっち見んな!


 嗚呼、何てことに気づいてしまったんだろう……

 それまで繰り広げていた、水の姉妹の和やかな交流シーンや、男前なラウルを巡るほのぼのプチラブコメシーンなんかが全部、全ーーー部!木っ端微塵に宇宙の彼方へ吹っ飛ぶ程の大問題ジャマイカーーー!!(ノ`д)ノ===┻━┻


 そして、これに気づいた時点で本文文字数5500超え_| ̄|●

 これにさらに氷の洞窟守護神問題を捩じ込んだら、8000超えじゃ済まん_ノフ●

 下手すりゃ10000超えてまうやろがえー!_|\●_


 ……ということで、守護神問題解決は次回に持ち越しですぅ(;ω;)

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