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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第915話 水の女王との約束

 ライトがルディ達とシルバースライム大捜索を行った、翌週の土曜日。

 十月になってから初めての週末土日である。

 この日は朝からライトとレオニスの二人で、目覚めの湖に出かけていた。


「皆、おはよう!」

『あら、ライトにレオニス、おはよう!』

「よう、皆元気そうで何よりだ」

『ライト君もレオニス君も、元気なのは良いことよねぇー♪』


 カタポレンの家の浴槽から、目覚めの湖にダイレクトに移動したライトとレオニス。

 その行き先は水神の鱗の持ち主であるアクアの近くになるので、必然的にその周囲には水の女王やイード、ウィカもいる。

 皆で朝の挨拶を交わした後、早速ライトが本題に入る。


「今日は、水の女王様との約束を果たしに来ました!」

『私との、約束?』

「はい!十月になったら、氷の女王様のところに皆で会いに行こうって約束してましたよね?」

『!!!!!』


 ライトの言葉に、水の女王の目が大きく見開かれる。

 その顔は瞬く間にパァッ!と明るくなり、ズイッ!とライトに迫りつつ問い返す。


『氷の女王ちゃんのところに連れていってくれるの!?』

「はい、もう十月に入りましたし。向こうも既に初雪が降ったそうなので」

『ヤッターーー!ライト、ありがとう!』

「おごッ」


 ライトが明かした今日の本題、『氷の女王に会いに行こう』という話を聞いた水の女王、あまりの嬉しさにライトに抱きついてきた。

 水の女王の身体は水でできているので、それはまるでウォーターベッドのようなふにふにとした柔らかさだ。それでいて適度に跳ね返してくる弾力が何とも心地よい。

 ただし、抱きついた拍子に顔を全部覆われると文字通り窒息してしまいそうだが。


 しかし、ライトが窒息するまでには至らない。

 水の女王がパッ!と自ら身体を離し、ワクテカ顔でライトに問うた。


『ねぇねぇ、今すぐ行くの!?』

「はい、まずは今日の予定を大まかにお話ししておきますねー」


 水の女王の期待に満ちた眼差しに応えるべく、ライトが今日の予定を説明していく。

 まずライト達とともに、ツェリザーク郊外の黄泉路の池に移動。

 そこから皆で歩いて氷の洞窟に行く。

 そして氷の洞窟入口で氷の女王とご対面、という流れだ。


『氷の女王ちゃんが、洞窟の入口まで出てきてくれるの?』

「はい。水の女王様が氷の洞窟に入って、万が一にも凍っちゃったらいけないので。女王様達が会うのは氷の女王様の力が及ぶギリギリのところ、洞窟入口が一番良いと思うんです」

『そうね……氷の女王ちゃんも洞窟の外に出て身体が融けたりしたら、すっごく困るものね』

「そういうことです」


 ライトの説明に、水の女王もうんうん、と頷きつつ納得している。

 水の女王と氷の女王、液体と固体という形態の違う両者の身の安全を図るには、氷の洞窟と外界との境目である洞窟入口が最も適切なのだ。


「氷の洞窟の方には、今ラウルが向かってます。ラウルにも氷の洞窟入口で氷の女王様と待機しててね、と伝えてあるので」

『ああ、そうなのね、道理で今日はラウルがいない訳ね』


 ライトが説明していたように、氷の女王側への出迎えはラウルの担当となっている。

 何しろ氷の女王はラウルのことが大好きなので、彼女のエスコート役にはラウルが最適なのだ。

 いつもなら三人で出かけそうなところを、今日はライトとレオニスだけだったのはそうした理由からだった。


 そしてここで、ライトがアクアに向かって話しかけた。


「でさ、もし良かったらアクアにもついてきてほしいんだけど、どうかな?」

『もちろんいいよ。氷の女王も水属性だし、僕としても水属性仲間には一度会っておきたいからね』

「だよね!アクアならそう言ってくれると思ってたんだ、ありがとう!」

『フフフ、どういたしまして』


 アクアの快諾に、今度はライトがアクアの身体に抱きついて感謝と喜びを表す。

 会う度に大きくなっていくアクア。その身体は既にオーガより一回り以上も大きく、もう少しでイードにも並ぶくらいになった。

 アクアが生まれてから約十ヶ月、まだ生後一歳にも満たないうちから驚異的な成長ぶりだ。

 さすがはBCOレイドボス、今後の成長がますます楽しみである。


『じゃあ、今日はボク達がお留守番してるねー☆』

「うん。ウィカ、イード、いつもありがとうね!」

『どういたしまして~。帰ってきたら、お留守番のご褒美にライト君特製のミートボールくんをよろしくね~♪』

「もちろん!たくさん用意してあるから、楽しみに待っててね!」


 自ら留守番を買って出てくれたウィカとイードに、ライトも礼を述べる。


『じゃ、皆僕の背中に乗ってー』

「アクアもありがとう!今日もよろしくね!」

「お邪魔しまーす」

『アクア様もついてきてくださって、本当にありがとう!』

『どういたしまして』


 アクアの呼びかけに、ライト達もいそいそとアクアの背に乗り込む。


『じゃ、いってきまーす』

『『いってらっしゃーい☆』』


 ライト達を背に乗せたアクアが、ウィカとイードに向かってお出かけの挨拶をする。

 大きな触腕やぷにぷにの肉球をフリフリしつつ、出立するアクア達をお見送りするウィカ達。

 お留守番組に見送られながら、アクアは黄泉路の池に移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライト達が水の女王を迎えに目覚めの湖に行っている間、一方のラウルはツェリザーク郊外にいた。

 冒険者ギルドの転移門を使い、ラグナロッツァ総本部からツェリザーク支部に移動したラウル。建物の外に出て、その寒さに驚いていた。


「うおッ、寒ッ!」


 仄暗い曇天の空のもと、ラウルが吐き出した息はほんのりと白くなる。もう既に冬と言っても差し支えない寒さに、思わずラウルが喫驚するのも無理はない。

 ツェリザークの厳寒期に比べたらまだまだ軽い方ではあるが、それでも秋真っ盛りのラグナロッツァの気候に比べたら完全に冬の寒さだった。


 そしてその寒さは、城塞都市の外壁の門を潜って外に出るとさらに厳しいものになる。

 ツェリザークの街も寒いことは寒いが、それでも一応街を守るための結界が張られていて、外よりは若干どころかかなりマシなのだ。

 その証拠に、街中には見られなかった雪が門の向こうの外側に積もっている。

 ツェリザークでは十月に初雪が降る、というのは本当のことらしい。


 ツェリザークの外壁の向こう側は、一転して一面白銀の世界。

 ラウルが歩く度に、足元からサク、サク……という雪を踏む音が鳴る。

 だがそれも比較的軽い音で、現時点では積雪も3cm程度と少ない方だ。

 冒険者ギルドツェリザーク支部で、今朝ラウルと軽く雑談を交わしたクレハが「三日前に初雪が観測された」と言っていたので、本当にまだ降り始めのうちなのだろう。


 今日のラウルは完全フル装備、黒の天空竜革装備一式を着用してきているので、体感的にはそこまで寒さは感じない。

 だが、頬を撫でる風の冷たさはやはり冬を感じさせる。


 あー、ツェリザークはもうとっくに冬になってんだなぁ……とはいえ、この雪の量じゃまだ雪狩りするまでには至らんな。雪がもっと溜まるまで、もうしばらくは待たなきゃならんな。

 十二月……いや、十一月にもなればそこそこの量が積もるか? ……よし、帰りにツェリザーク支部の受付の姉ちゃんに聞いてみるか。

 この手の情報は、地元の人間に聞くのが一番早くて確実だからな!


 そんなことを考えながら、氷の洞窟に向かうラウル。

 途中ツェリザーク近郊の固有魔物である狗狼、フロストニードル、雪原鷲などがラウルに襲いかかってくる。

 だが、それらの雑魚魔物がどれだけ束になってかかったところで、今のラウルを倒すことなどできない。ラウルに片手でペシッ!とあしらわれて終了である。


 もちろんそれらの死骸は、ラウルがその都度きっちりと回収していく。

 狗狼や雪原鷲からは肉や皮、羽根などが採れるし、他にも牙や骨、嘴、そしてフロストニードルの針や翅なども冒険者ギルドに素材買い取りしてもらえる。

 これらを余すことなく有効活用することは、ラウルの冒険者階級アップにも繋がるのだ。


 これら冒険者の基礎知識をラウルに教えたのは、他ならぬライトである。

 ライト曰く『出かけた先で魔物を狩ったら、なるべく回収した方がいいよー。四つ足系や鳥型魔物からは肉や皮が採れるし、それ以外の魔物でも冒険者ギルドが買い取りしてるから、階級査定の点数稼ぎにもなるし。もちろんそれは、拾う時間の余裕があったらの話だけどね』とのこと。

 肉や皮などの食材が手に入るなら、料理好きのラウルにとってもこれ程好都合なことはない。しかも冒険者ギルドの階級アップにも繋がるとなれば、まさしく一石二鳥。

 うちの小さなご主人様は、本当に賢くて立派だよな!とつくづく思うラウル。


 そうしてラウルが歩いていくと、程なくして氷の洞窟の入口に辿り着いた。

 本当なら、皆の大好物である氷蟹その他の魔物狩りもついでにしていきたいところなのだが、今日の目的は別のところにある。

 氷の女王と水の女王を引き合わせるために、氷の女王と話をして彼女を洞窟入口まで連れてこなければならない。

 その任務を遂行するためには、これ以上時間をかけ過ぎてもたもたする訳にはいかないのだ。


 氷の洞窟の入口に立ったラウルは、黒の燕尾服ジャケットの内ポケットから何かを取り出す。

 それは、一枚の魔物除けの呪符。これを使って、氷の女王がいる最奥の間に最短時間で行こう!という訳だ。

 ラウルは取り出した魔物除けの呪符を真ん中から破り、氷の洞窟の中に入っていった。

 水の女王との約束、氷の女王と引き合わせる時がきました。

 水の女王とアクアは、先日も天空島で第二の泉を創り出すという大役を果たしたばかりなのですが。時節と気候を考えると、この約束は十月入ってすぐにでも実行に移さなきゃなんないんですよねぇ。

 ツェリザークの夏と秋は本当に短くて、すーぐ冬になっちゃう。そして厳寒期になったら、水の女王が出向くのは非常に困難になり『しょうがないから、じゃあまた来年ね!』と延期になってしまうので。そうならないためにも、約束の早期実現の実行に出た、という訳です。


 ちなみにリアルの本日は7月31日、明日から八月になるという事実。

 もう毎日毎日暑くて敵いません。風呂上がりの麦茶のがぶ飲みはとっても美味しいですけど。

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