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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第885話 泉の命名

 天空島第二の泉が無事出来上がり、大いに喜びに湧くライト達。

 ライトとラウルがいそいそと泉の水を汲みながら、泉の名前について話し合っている。


「この泉にも、ちゃんとした名前があった方がいいよね?」

「そうだなぁ。アクアやウィカの水中移動の目安のためにも、名前はあった方がいいだろうな」

「そしたら、祝福をつけてくれたアクアの名前を取って『アクアの泉』なんてどうかな?」

「おお、そりゃいいな」

「そうだな、分かりやすくて良い名だ」

「僕もその名前が一番良いと思います!」


 ライトの命名案に、ラウルも手放しで大賛成している。

 如何にも安直な名付けだが、泉の創造に尽力したアクアの名を冠するのは当然の流れとも言える。

 水マニア達の横で水汲みの様子を見ていたレオニスやマキシも、『アクアの泉』という名前に賛成しているので、この泉の名は『アクアの泉』で決まったようだ。

 そんな風に盛り上がるライト達の後ろで、高位の存在達の交流もそれぞれに交わされていた。


 アクアはヴィゾーヴニルとグリンカムビに泉のお礼を言われているのか、二羽に左右を挟まれつつにこやかに会話をしている。

 三者が並ぶと、大きさ的にはアクアの方がかなり小さく見える。

 これでもアクアは生まれた時よりかなり大きく成長しているが、それでも数百年先輩の神鶏達の方がはるかに体格が大きい。

 その差はまるで、オーガ族のラキとニルに挟まれたレオニスのようだ。


 とはいえ、三者は生まれた時期こそかなり違えども、格で言えば同格。

 きっとアクアもこれからどんどん成長し、神鶏達にも負けないくらいに大きくなっていくだろう。

 アクアが住処とする目覚めの湖には、大きくなっていくアクアを受け入れて有り余る程の広大さがある。

 そして神鶏達も、これから天空島産野菜を食べてもっともっと大きく成長するだろう。

 いずれにしても、将来や行く末が大いに楽しみな神殿守護神達である。


 そして神殿守護神達の和やかな会話の横では、水の女王と雷の女王が少し遅めの感動の初対面を果たしていた。


『雷のお姉ちゃん!会いたかったわ!』

『水の女王、私もよ!こんな素敵な泉を作ってくれて、本当にありがとう!』


 二人とも思いっきり両手を広げながら、ヒシッ!と抱き合う。

 その瞬間、水の女王が『あばばばばッ』と痺れたような悲鳴を上げた。

 その声にびっくりした雷の女王が、慌てて水の女王から身体を離した。


『え、ちょ、待、水の女王、大丈夫!?』

『ゥキュゥ……ら、大丈夫(らいじょうぶ)よ……』

『ホ、ホントに……?』

『うん……し、心配しない()……』


 髪が逆撫で状態の水の女王、軽く目を回し怪しい呂律になりつつも雷の女王を気遣う。

 だが、普段は流れる水のように美しい女王の髪がまるで静電気を浴びたかのように、バリバリに逆立ってしまっている。これは、雷の女王に全力で抱きついたことで感電してしまったのか。


 心配そうに見つめる雷の女王に、光の女王が水の女王の頭をそっと撫でて髪を整えてあげている。

 光の女王に撫でられて、総逆立ちだった水の女王の髪も次第に落ち着いていく。


『雷の女王は、文字通り雷の化身だから……直接触れ合うのは危ないことも多いのよね』

『ぅぅぅ……ごめんなさい……』


 水の女王の髪を整えながら語る光の女王に、雷の女王も申し訳なさそうに謝っている。

 しょんぼりと俯きながら涙目になる雷の女王。そんな彼女を見て、水の女王が慌てて言い募る。


『そ、そんなに気にしないで!ほら、雷のお姉ちゃんも見て、私はこの通り元気で何ともないから!』

『……ホント、に……?』

『ええ、ホントにホントのことよ。私達精霊は決して嘘はつかない、でしょ?』

『……ええ、そうね。貴女も私も、自然界に生きる一体の精霊ですものね』

『そうよそうよ!』


 水の女王の懸命な励ましに、それまで俯いていた雷の女王の顔もだんだんと上向いていく。

 そして失態の悲嘆に暮れていた涙は、水の女王の満面の笑みによって今度は歓喜の涙に変わっていった。


『私達属性の女王は、他の姉妹には滅多に会えないけれど……こうして水の女王と会える日が来るなんて、とっても嬉しいわ!』

『私もよ!光のお姉ちゃんと雷のお姉ちゃんに会えて、すっごく嬉しい!』

『うふふ、だったらこないだエルちゃん様のところに来た時にも、こっちに寄っていってくれても良かったのに』

『うぐッ……そ、それは……私も、おうちに帰ってから、思ったわ……』


 歓喜の涙をポロポロと零しながらも、笑いながら先日の話をする雷の女王。

 天空樹の島と二つの神殿がある島は、それこそ目と鼻の先くらいに近い場所にある。

 それは寄り道などという仰々しい距離ではなく、本当にお隣の家とか敷地内別邸と言っても差し支えないくらいだ。


 そして水の女王自身も、目覚めの湖に帰宅してからその事実に気づいたらしい。

 軽く揶揄うような雷の女王の言葉に、水の女王は思わず言葉に詰まりながらもそのことを認める。


『……あ"ーッ!そういや天空島って、光のお姉ちゃんと雷のお姉ちゃんがいるところじゃない!』

『そしたらお姉ちゃん達にも会いに行けたのに!せっかくお姉ちゃん達に会える機会だったのに!こんな絶好の機会を逃すなんて!』

『うわーーーん!バカ馬鹿バカ馬鹿、私のバカーーーッ!!』


 水の女王は両手で頭を抱えながら、水の褥の上でゴロゴロと左右に転げ回って絶叫していたそうだ。

 ライト達はその時の話を後日アクアから聞いていたのだが、その時の様子を想像すると何とも微笑ましい。

 しかし、当の水の女王からしたら、微笑ましいどころの話ではない。

 己の失態を認めつつ、懸命に挽回しようとする。


『……こないだはせっかく天空島に来れたというのに、お姉ちゃん達に会いに行かなくてごめんなさい…………で、でも!今日こうしてお姉ちゃん達に会えたんですもの!それで許して、ね? ね?』

『許すも何もないわ。それどころか、今日は私達のために新しい泉を作りに来てくれたんですもの』

『ええ、お礼をしなければならないのは私達の方なのよ?』


 何とか名誉挽回しようと必死に言い募る水の女王に、光の女王も雷の女王もニコニコと微笑みかける。

 そして二人の女王は、改めて水の女王に頭を下げた。


『この天空島に、こんなにも素晴らしい泉を作ってくれて、本当にありがとう』

『そ、そんな……お姉ちゃん達、頭を上げて!この泉は私の力だけじゃなくて、アクア様のお力添えもあるんですもの!』

『それでもよ。この泉は私達天空島の者にとって、これから間違いなく欠かせないものとなるわ。どれ程お礼を言っても言い足りないくらいよ』


 真摯に礼を尽くす二人の女王に、水の女王もそれ以上何かを言えなくなる。

 根が生真面目なのはどの属性の女王にも言えることで、光の女王も雷の女王もその例に漏れず真っ直ぐな性格をしている。

 そして水の女王も、そんな姉妹達の性格は重々承知していた。


 深々と頭を下げる二人の姉妹に、水の女王はそっと手を伸ばす。

 光の女王の手は普通に握れるが、雷の女王の手は一瞬だけバチバチッ!と特大静電気が起きる。

 だがその一瞬だけ堪えれば、その手をずっと握り続けていられる。

 水の女王の髪が再び静電気により、ふよふよと毛先だけ宙に浮き上がるのはご愛嬌である。


『光のお姉ちゃん、雷のお姉ちゃん。お姉ちゃん達の気持ちは私にも十分伝わったわ。だから、もう頭を上げて?』

『『水の女王……』』

『私達は姉妹でしょ? 姉妹なら助け合って当然よね?』

『……そうね、その通りだわ』

『他の姉妹が困っていたら、私だって助けたいと思うもの』


 静かに語る水の女王の言葉に、光の女王も雷の女王もコクリと頷く。

 どれだけ遠く離れていても、属性の女王達は皆互いに互いを思い遣る姉妹。

 それは神樹達の家族としての絆と同様に、姉妹達にもまた強い絆があった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 光の女王と雷の女王、そして水の女王。

 離れた地に住まう属性の女王達の、美しくも強い絆が織りなす感動の対面。その眩い光景を、少し離れたところでライト達が見守っていた。

 いつの間にか水マニア達の泉の水汲みも終わっていたらしい。


「遠く離れた姉妹の再会……ううッ、何て感動的なんだろう……」

「全くだ……兄弟姉妹ってのは、どんなに遠く離れていても思い合うもんだもんなぁ……」

「本当になぁ……女王様方があんなにもお喜びになられるとは……」

「水の女王様も、光の女王様と雷の女王様に会うことができて、本当に良かったねぇぇぇぇ」

「ああ、俺も貰い泣きしちまうぜ……頼れる兄貴や姉貴ってのは、本当にいいもんだよなぁ」

「女王様方も、初めて他の姉妹にお会いできて本当に……本当にようございましたねぇ……」


 滝の如き涙をダバダバダーと流す人外ブラザーズ。どうやら三人の女王の感動の対面に、二人して思いっきり貰い泣きしているようだ。

 そしてその中に何故かパラスも加わって、エグエグと泣いている。

 人外ブラザーズとともに、感情を抑えることなく滝涙を流すパラス。

 普段の彼女は天空島警備隊隊長として、威厳ある態度を決して崩さない。そんな彼女もまた情に篤く、涙脆い性格らしい。


 だが、ライト達の感動の空気を読まない者が、ここに一人。


「さ、二つ目の泉も無事作り終えたことだし。これから畑に何を植えるかとかの、細かい打ち合わせはまた今度にするとして。ぼちぼち帰ろうか」

「お前ね……人が感動に浸ってるってのに……」

「いや、だってほら、そろそろ地上に帰らんと。まだ日が暮れる時間じゃないが、これからどんどん日が短くなっていくし」

「そりゃそうなんだが……」


 帰宅を促すラウルに、レオニスがブチブチと文句を言う。

 とはいえラウルの言うことも尤もで、九月も半ばを過ぎれば日中時間よりも夜の時間の方が長くなっていく。

 それに、アクア達と地上に戻るにしても、ライト達は目覚めの湖からさらにカタポレンの森を駆けて家に戻らなければならない。

 そうした諸々を考えると、早めに地上に戻る方が良いことは間違いない事実だった。


 ラウルの提案に納得したレオニス。

 三人の女王とアクアに向かって声をかける。


「女王達、すまんが俺達はそろそろ地上に戻らなきゃならん」

『あら、もうそんな時間なのね』

『お姉ちゃん達、今日は皆に会えて本当に嬉しかったわ!』

『私達の方こそ、とても嬉しかったわ。これからも、いつでも会いに来てね』

『うん!今度はお姉ちゃん達も、私のおうちに遊びに来てね!目覚めの湖には小島もあるから、雷のお姉ちゃんでも遊びに来てもらえるわ!』

『そうなのね、それなら是非とも遊びに行きたいわ!』

『いつでも遊びに来てね!』


 レオニスの言葉に応じ、別れを惜しみつつ次の再会の約束を交わす三人の女王達。

 光の女王はともかく、雷の女王が目覚めの湖に降臨するのはかなり危険そうだ。しかし、ライト達もいつも利用している小島に来てもらえれば、然程問題もなく迎え入れられるはずだ。

 光の女王と雷の女王、二人同時に天空島を不在にするのはかなり難しいだろうが、それでもいつかは水の女王に会うために地上に降臨することだろう。


 一同はアクアの泉に集まり、帰り支度をする。

 ライト達がアクアの背に乗り込み、後はこのアクアの泉を経由して水中移動するばかりである。

 アクアの背に乗ったライト達一行を、二人の女王とパラスと二羽の神鶏達が泉の縁で見守りながら声をかけた。


『今日は本当にありがとう』

『また皆に会える日を楽しみにしているわ!』

「道中気をつけながら帰るんだぞ」

『ココケケッコ!』

『クルクエェェ!』


 アクアの背中から大きく手を振るライトとマキシ、小さく手を振るレオニスとラウル。そしてアクアの横で、水の女王もブンブンと両手を大きく振っている。

 天空島の面々の笑顔に見送られながら、アクアと水の女王はアクアの泉に沈み消えていった。

 天空島第二の泉の命名と、三人の属性の女王達の交流風景です。

 水の女王が雷の女王に触れて感電するというシーン。

 ほぼギャグにしか見えませんが、実際水と雷が触れ合うとなると避けては通れない問題なので。早速検索検索ぅ!


 水が電気を通すというのは常識中の常識ですが、水なら絶対に電気を通すという訳でもないんですね。

 水が電気を通す原理とは、水の中に電解質=イオンが溶けているかどうかなのだそうで。

 水中にイオンが含まれていれば電気を通し、イオンが含まれない純水などは電気を通さない、という訳ですね(・∀・)


 嗚呼しかし。学生時代理数系が苦手だった作者に理解できるのはここまで。

 これ以上電解質やらイオンやらの記述を追っていくと、作者の脳は間違いなくショートしてしまう><

 なので、水の女王は『身体の構造としては純水だが、外気に触れている時点で体表にはどうしても埃等多少の不純物がくっついている』ということにしました。

 故に雷の女王に直接触れればちょっとだけ感電しますが、高圧電流のように耐えられない程のものではないのです(^ω^)

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