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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第883話 水神と神樹の出会い

 アクアの背に乗って、天空島のドライアドの泉に移動したライト達一行。

 突如泉の中央に現れた水神に、周囲にいたドライアド達がびっくりしている。


『え、え、何事!? コレ、誰!?』

『……あ、光の女王様がいるー』

『あ、ラウルのお友達もいるー』

『じゃ、大丈夫ね!』


 最初こそプチパニック状態だったドライアド達も、光の女王やその他顔見知りがいることで危険性はないことを理解していく。

 そうなると、次にドライアド達の中に湧いてくるのは好奇心である。

 次々とアクアの周囲に集まってきて、興味津々で見つめている。


『光の女王様、おかえりなさーい!』

『ただいま。ドライアドの貴女達、いい子にしてた?』

『もっちろん!いつだって私達はいい子だもんねー!』

『『『ねーーー♪』』』


 まずは一番仲の良い天空島仲間である光の女王に、おかえりの挨拶をするドライアド。

 そして早速ドライアド達は光の女王に、アクアが何者なのかを尋ねる。


『ねぇねぇ、光の女王様ー。何に乗ってきたのー?』

『こちらは、水神アクア様よ。私の姉妹である水の女王が住む湖底神殿の守護神でいらっしゃるの』

『神殿の守護神ってことはー、グリンちゃんやヴィーちゃんと同じってこと?』

『そうよ。天空島にもう一つ、泉を作るためにお越しくださったの』


 光の女王の話を聞いたドライアド達が、ますます興味深そうにアクアに近づいていく。

 そしてドライアド達が何やら鼻をくんくん、と動かしている。

 アクアがまとう空気やオーラの匂い?を嗅いでいるようだ。


『何かー、すーっごく甘ぁーいお水のニオイがするー』

『ホントホントー、ここの泉にも負けないくらい、とっても良い香りがするー』

『お水の神様って、良いニオイがするのねー♪』


 アクアの周囲にわらわらと群がるドライアド。

 水神であるアクアから、彼女達にとってとても良い香りがするようだ。

 芳しい香りにうっとりとしながら、空中をふよふよと漂うドライアド。そんな彼女達に、アクアの方から挨拶をする。


『初めまして、こんにちは。僕はアクア、さっき光の女王が言っていたように水神だよ。目覚めの湖という湖の底にある神殿の守護神なんだ』

『そうなのね!初めまして、アクア様。私達はドライアド、天空島の木々を統べる天空樹エルちゃん様の眷属なの!』

『こんな可愛らしい眷属がいて、天空樹さんは幸せだね』

『ヤダー、アクア様ってばそんなー♪』

『私達が可愛いのはホントのことだけど、面と向かって言われると何だか照れちゃうー♪』


 アクアの言葉に、ドライアド達は顔を赤らめてキャーキャー言いながら空中で転げ回る。

 自分達の愛らしさをガッツリ肯定するあたり、実に精霊らしいポジティブさである。


『そしたら、まずは天空島の主である天空樹さんにご挨拶しに行こうかな』

『だったら私達がエルちゃん様のところに案内してあげるわー!』

『アクア様、ついてきてー!』

『皆ありがとう、よろしくね』


 ドライアド達からの申し出に、アクアもニッコリと頷く。

 アクアの紳士的な笑みに、ドライアド達はまたもキャーキャー言いながら喜んでいる。

 一頻り喜んだところで、ドライアド達がわらわらと集まって何やら相談を始めた。


『アクア様はお身体が大きいから、木の間はすり抜けられなさそうよね?』

『そうねー、まず無理そう』

『そしたら、木の上に出るしかないわねー』

『じゃあ、皆で木の上に出ましょ!』

『『『そうしましょー!』』』


 行動方針が決定し、打ち合わせをしていたドライアド達全員が右手を高く上げて気勢を上げる。

 そして再びアクアのもとに集まり、改めてアクアに声をかけた。


『アクア様、私達についてきてね!』

『うん、よろしくね』


 上空に向かってふよふよと飛んでいくドライアド達の後を、ライト達を乗せたアクアはおとなしくついていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『アクア様、見える?』

『あれが私達の主、天空樹のエルちゃん様よ!』


 木々の上に出たドライアド達が、天空樹ユグドラエルのいる方向を誇らしげに指してアクアに教える。

 ユグドラエルは周囲の木々の何倍もの大きさだけに、ドライアド達の解説が無くとも一目でそれと分かる。

 こうなると案内もへったくれもない気がするが。ドライアド達のせっかくの厚意を無碍にするのも可哀想なので、そこは黙って案内されることにするアクア。

 ユグドラエルのもとに向かう道中で、ドライアド達とのんびりと会話を交わす。


『エルちゃん様って、面白い呼び方だね。本当の名前は別にあるの?』

『そうよー、エルちゃん様の本当の名前は『ユグドラエル』っていうのー』

『エルちゃん様が、そこにいるライト達に『名前をエルちゃんって呼んで』ってお望みになったのー』

『だから私達も『エルちゃん様』って呼んでるのよー』

『『『ねーーー♪』』』


 ユグドラエルのことを『エルちゃん様』と呼ぶ由来を聞き、アクアが感心したように呟く。


『へー、天空樹さんって親しみやすい性格なんだねー』

『ええ、誰にでも優しくしてくださる、とても素晴らしい御方なのよ!』

『そしたら僕も、皆に『アクア君』って呼んでもらいたいなー』

『え? いいの?』

『もちろん。だって僕自身がそう言ってるんだもの。問題ないよね?』


 アクアの願いを聞いたドライアド達が、少しだけ驚いた顔をしている。

 アクアとドライアド達は初対面の間柄だが、アクアは木の精霊であるドライアド達を信頼している。彼女達のこれまでの言動に、悪意や邪悪さといったものは微塵も感じられなかったからだ。

 そして、立場的には木の精霊よりも水神の方がはるかに格上だ。格上の存在を君付けで呼ぶなど、本来はあり得ないことである。


 しかし、そこは普段から物怖じしないドライアド達のこと。

 驚いたのはほんの一瞬だけで、次の瞬間にはもう笑顔になっていた。


『そうね!アクア君がそう言うなら、全く問題ないわね!』

『これから私達も、水神様のことは『アクア君』って呼ぶわね!』

『アクア君、よろしくね!』

『『『よろしくねーーー♪』』』


 こうして木の精霊(ドライアド)達は、水神(アクア)と仲良しになっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 和やかな会話をしつつ、天空樹のもとに向かうドライアドとアクア達一行。

 ユグドラエルの根元に着地し、その背に乗っていたライトとレオニス、光の女王もアクアの背から降り立った。

 一番最後に降り立った光の女王が地に足を着けたところで、ユグドラエルの方からアクアに向かって声をかけた。


『水神アクア、ようこそいらっしゃいました』

『初めまして、天空樹ユグドラエル。僕の名は、ドライアド達との会話をお聞きになったので?』

『ええ。この島でのあらゆる会話は、私の耳にも届きますので』

『そうですか。ですが一応改めて名乗らせていただきますね』


 アクアが名乗るより先に、アクアの名を知っていたユグドラエル。

 別に盗み聞きしていた訳ではないのだが、もとより天空島内での会話は全てユグドラエルにも聞こえているのだ。

 そこら辺はアクアにも理解できる。何故ならアクアもまた、目覚めの湖内での会話や出来事を全て把握してるからだ。

 神々が自身の領域のことを完全に把握しているのは、当然のことなのである。


 ユグドラエルの言葉に理解を示したアクア。

 だからといって、自ら名乗らないままというのも釈然としない。

 改めて己の口から名乗り始めた。


『僕の名はアクア。地上にあるカタポレンの森、その中にある目覚めの湖に住まう水神にして湖底神殿の守護神です』

『ご丁寧な挨拶をありがとう。私は天空樹ユグドラエル。世界にある六本の神樹、その中で最も古い神樹です』

『神樹族の一番上の御方なのですね。永い時を生きてこられたことに、心から敬意を表します』

『フフフ、そんなに畏まらなくても良いのですよ。若き水神よ、(おもて)を上げてくださいな』


 目の前にいる天空樹が世界最古の神樹と聞き、即座に長い首を地につけるくらいに平伏すアクア。

 そんなアクアに、ユグドラエルは小さく笑いながら顔を上げるように促す。

 アクアはその言葉に従い、顔を上げてユグドラエルを見上げる。

 上を見上げるアクアの目に、神々しくも雄大なユグドラエルの姿が映る。


 アクアが知る木とは、目覚めの湖の周辺に生えているカタポレンの木々くらいしかない。

 それらも森の外の木々に比べたらかなり大きいのだが、それと比較するのもおこがましいくらいに天空樹の威容は偉大だった。


『今日貴方方がここにいらした理由は知っています。天空島に二つ目の泉を創りにいらしたのですよね?』

『はい。ライト君達が水の女王に、天空島に泉を作ってほしいとお願いしに来まして。僭越ながら、水神である僕も手を貸そうと申し出た次第です』

『水の精霊の頂点たる水の女王だけでなく、若き水神までもが手を差し伸べてくださるとは……ありがたいことです』


 アクアの来訪理由を聞き、ユグドラエルが感謝の意を示す。

 天空島に二つ目の泉を作るのは、ひとえに天空島全体の利益のためだ。

 邪竜の島を殲滅するという共闘理由があるライト達はともかく、目覚めの湖にいるアクア達には何のメリットもない。

 いや、水の女王は自身の姉妹である光の女王や雷の女王の手助けをしたい、という理由はあるが、アクアにとって天空島を助ける直接的な理由はないのだ。

 なのに、水神自らが助力を申し出てくれた。このことに、ユグドラエルは深く感謝しているのだ。


『僕は、僕の友達のために来ただけです。水の女王だけでなく、ライト君やレオニス君も僕の大事な友達ですし』

『まぁ、そうなのですね。私もライトやレオニスとは友達なのですよ』

『友達の友達ということは、僕とユグドラエルさんも友達ということになりますね』

『フフフ、そうですね』


 ライトやレオニスとも友達だから来た、というアクアに、ユグドラエルも声を弾ませながら自分も二人と友達だと語る。

 友達の友達は皆友達―――このサイサクス世界でも通じる概念に、アクアもユグドラエルもくつくつと笑う。

 世界最古の神樹と、生まれてからまだ間もない若き水神。二者の友情が結ばれた瞬間だった。

 アクアの初めての天空島訪問です。

 出入口がドライアドの泉なので、必然的にドライアド達にも囲まれる訳ですが。

 この子達、もうすっかり幼女モード全開で美女モードの欠片もありません。

 ぃゃー、ホントはこの子達全員、絶世の美女に化けられるんですがねぇ?( ̄ω ̄)

 でも、美女モードに化けたところで誘惑できるような相手は誰一人としていないので。ドライアド達的には『化けても無駄なことはしない!』といったところなのです(´^ω^`)


 そして、アクアがいつになく畏まった物言いをしていますが。

 水神である彼と同等もしくはそれ以上の存在というのは、滅多にいません。

 その滅多にいない相手の一つに該当するのが、世界最古の神樹族。

 何百年、何千年と生きる神樹族は、そこに存在するだけで既に神にも等しいのです。

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