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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第880話 尽きせぬ泉の創造主

 昼の日差しから逃れるように、ログハウスの中に入ったライト達。

 中にはまだ家具の一つもないので、レオニスが空間魔法陣からテーブルや椅子を取り出して並べていく。


 出されたテーブルの上に、今度はラウルが皆の昼食を次々と出していく。

 サンドイッチにパイア肉のハンバーガー、氷蟹クリームコロッケにペリュトン唐揚げ、温室産野菜のサラダ等々のご馳走が並ぶ。

 ちなみにこれはライト達四人分の昼食である。

 光の女王と雷の女王、そしてパラスは先程の焼き野菜バーベキュー大会でたらふく食べた直後なので、ログハウスの中でまで昼食を食べる必要などないのだ。


 とはいえ、ただ単に待ちぼうけさせるのも申し訳ないので、ライト達のテーブルの真横に女王達用のテーブルと椅子を別途に出す。

 女王達には食後のティータイムとして、バニラクッキーなどの軽めの茶菓子と紅茶を用意した。

 昼食の準備を一通り整えた後、全員着席してからレオニスが食事の挨拶をする。


「いッただッきまーーーす!」

「「「いッただッきまーーーす!」」」


 お約束の挨拶を済ませた後、モリモリと昼食を食べるライト達。

 一方天空島の三人は、時折クッキーを摘みつつ優雅に紅茶を飲んでいる。

 三人とも香り高い紅茶の芳しさに、満足そうな笑みを浮かべている。


 そしてライト達も昼食を摂り終えて、それぞれに飲み物を用意してから女王達との打ち合わせに入った。

 まずはレオニスが進行役として、話をし始めた。


「さて、この島の今後の方針について決めていこうか。野菜作りの指導は主にラウルが担うことになると思うが、何か要望とか提案はあるか?」

「そうだな……まず真っ先に決めなきゃならんのは、水遣りをどうするかだな」

「だな。自然に降る雨の恵みだけじゃ絶対に水が足りんだろうな」


 レオニスがラウルに意見を求め、ラウルもそれに応じる。

 ラウルが真っ先に出した意見は『水遣りをどうするか』であった。

 確かにこの島には、水源と呼べるものが全くない。川もなければ池も泉もない。

 野菜を育てるには、兎にも角にも水が必要だ。そのための水をどこから引っ張ってくるかが喫緊の課題である。

 ここでラウルが、光の女王達の方に向かって話しかける。


「この天空島の木々には、ドライアド達がその身体を通して水を与えていると聞いたが。野菜作りでもドライアド達の力を借りることはできるか?」

『『「…………」』』


 ラウルの問いに、三人はしばし無言になる。

 三者の渋い表情から見るに、どうやらそれは難しいらしい。


『確かに天空島の木々への水遣りは、あの子達の使命であり存在意義でもあるのだけど……』

『自分達に課せられた使命以外の仕事を、あの子達ができるかどうかと問われたら……』

「極めて難しい、と言わざるを得ないだろうな」

「そうか……」


 特に事前に打ち合わせした訳でもないのに、女王達とパラスの意見がこうも一致するということは、彼女達の見立ては間違いなく正しいのだろう。

 ここでパラスが、ドライアド達の擁護をする。


「いや、ドライアド達の名誉のために言っておくが、あの子達だって決して無能な訳ではないぞ? 現に今日もお前達に新たに【ドライアドの加護】を授けたようだし」

「ああ。前回ラウルにもらった加護を、ラウル以外の俺達三人にも今日はつけてくれたしな」

「そう、そしてそれは一回付与するだけで完了するものだからいいのだ。だが……」

「木々への水遣りのように、毎日欠かさず行う仕事となると話は別、てことだな?」

「詰まるところ、そういうことだ」


 パラスの擁護を受け入れつつ、レオニスが補足的な確認をしている。

 天空島に住むドライアド達には『天空島にある木々に水を与える』という、生まれながらに持つ使命がある。

 そしてドライアド一体につき三本から五本の木を担当していて、自分が担当する木々には惜しみない愛情を注ぐのだという。


 だが、木々への水遣り以外には一切使命のないドライアド達。水遣り以外の時間は、日がなゴロ寝するか他のドライアドと遊んでいることが多いという。

 やってもせいぜい自分が担当する木々の枝葉や幹の調子をチェックしたり、万が一枯れかけた枝葉があったら懸命に治療?することくらいなのだそうだ。

 そんなのんびりとした日々を過ごすドライアド達に『天空島畑の野菜に、これから毎日水遣りをしろ』と言っても、到底受け入れられないであろう。ライト達にもそれは容易に想像できた。


「じゃあ、別の方法を考えなきゃな。……パラス、天使達ってのは水魔法は使えるのか?」

「水魔法か? 私を含めて幾人かは使えるが、片手分いるかいないか程度だったはず」

「そうか……たったの四、五人に水遣り仕事を全て任せるというのも、酷な話だな……」

「風魔法と雷魔法なら、全員漏れなく使えるのだがな。それ以外の属性は持たない者の方が多い」


 レオニスとしては『ドライアドに頼むのが無理ならば、水魔法を使える天使に頼めばいいんじゃね?』と思ったのだが、これもそう簡単にはいかなかった。

 空に住まう飛行種族である天使は、基本的に風属性だ。

 それに加えて天空島は雷の女王の住まう地でもあるので、雷属性も風属性とセットで漏れなく付属するらしい。

 だが、その分他の属性とは縁が薄いようで、水属性を持つ者はかなり稀少だった。


「ぬーーーん……」


 天空島における水問題。思ったより難航しそうな気配に、しかめっ面で唸るライト達。

 するとそこに、それまで静かに話を聞いていた光の女王が、そっ……と右手を上げながらライト達に声をかけた。


『あのー……一つ、いいかしら?』

「ン? 何か良い案があるのか?」

『良い案かどうかは分からないけれど……ドライアドの泉のように、この島にも泉を作れば良いのではないかしら?』

「何? 新しい泉を作る方法があるのか?」


 光の女王の提案に、レオニスの目が大きく見開かれる。

 確かにこの島にもドライアドの泉と同じものがあれば、水問題は一気に解決するだろう。

 身を乗り出すようにして問いかけたレオニスに、光の女王が言葉を続ける。


『エル様の御座す島にある泉、あれは何代か前の水の女王が作ったものだという言い伝えがあるの』

「そうなのか!?」

『ええ。水を司る女王が祝福を与えた泉だからこそ、あの泉は今でも尽きることなく清らかな水を生み出し続けてくれているのよ』

「あの泉には、そんな経緯があったのか……」


 天空島の泉の知られざる逸話を聞き、ライト達も全員納得する。

 水の精霊の頂点たる水の女王が作った泉ならば、この天空島にあって尽きせぬ湧水を保ち続けていけることにも頷ける。

 そしてこの話は、天空島の野菜畑計画にとっても大いなる光明となった。

 今度は雷の女王が、ライト達に話しかけた。


『貴方達は、私達の姉妹である水の女王とも仲が良いんでしょ?』

「ああ。水の女王が住む目覚めの湖は、俺とライトが住むカタポレンの森の家からも近いしな」

『それに、こないだ水の女王がエル様のもとを訪れたんですってね? 後からエル様にその話を聞いて、びっくりしたわ』

「ぁー、あのことか……ありゃウィカをここに呼んだ時に、水の女王が勝手にくっついて来ちまっただけなんだがな……」


 先日水の女王が、初めて目覚めの湖の外に出かけた時のこと。

 その顛末を聞き、雷の女王がクスクスと楽しそうに笑う。


『ウフフ、今代の水の女王はおちゃめさんなのね』

『本当にね。エル様のところまで来たのなら、私達のところにも寄っていってくれれば良かったのに』

「ぃゃ……勝手についてきた当の本人は、天空島なんてところに来ちまったことに驚き過ぎてそれどころじゃなかったと思うぞ」

『でしょうねぇ』


 雷の女王につられて、光の女王もクスクスと笑う。

 二人の女王は一頻り笑った後、改めてレオニスに向かって話しかけた。


『ねぇ、そしたら今から水の女王をここに呼び出してはどうかしら?』

『この島に新しい泉を作るには、水の女王の協力が不可欠だわ』

「そうだな……それが一番良さそうだな」


 女王達の庵に、レオニスも少しだけ考えた後頷く。

 今後この島で野菜作りをしていくためには、是非とも尽きせぬ泉が欲しいところだ。

 それに、水の女王は既に一度天空島を訪れている。今から急に呼び出したとしても、そこまで驚くこともないだろう。……多分。


 そうと決まれば話は早い。

 レオニスはライトに向かって声をかけた。


「ライト、ウィカはまだドライアドの泉にいるよな?」

「あ、うん、多分そうだと思うよー」

「なら早速ウィカを呼んで、一旦目覚めの湖に戻って水の女王を迎えに行こう」

「うん、分かった!」


 レオニスの提案に、もちろんライトも同意する。

 今ここにウィカがいないのは、実は一番最初にドライアド達から加護をもらった際に、ウィカはそのままドライアドの泉に残ったからだ。

 というのも、ラウル程ではないがウィカもドライアド達から何気に人気者で、マカロン三昧でお腹が膨れた多数のドライアド達に乗っかられていた。


 ライト達が神鶏に乗って神殿に向かう時も、ふにゃむにゃ……と呟く多数のドライアド達に埋もれながら『いってらっしゃーい』と細長い尻尾をフリフリしながら送ってくれたくらいだ。

 まん丸お腹の幼女なドライアド達にのしかかられて、さぞかし重たかっただろうに。嫌な顔一つせずにドライアド達の相手をしてあげるウィカもまた、心優しい紳士なのである。


「そしたら、光の女王と雷の女王も向こうの島についてきてくれ。どの道あの島にも転移門を設置しなきゃならんからな」

『分かったわ』

「ラウルとマキシは、ここに残って畑の開墾を進めておいてくれ。パラスもここに残って、新しい泉を設置する場所を決めといてくれ」

「了解ー」

「分かりました!」

「うむ、承知した」


 適材適所でテキパキと各人に指示を出していくレオニス。

 いつになく頼もしい姿である。


「じゃ、皆、それで頼むぞ。ライトと女王達も行くぞ」

「はーい!」


 レオニスの掛け声を皮切りに、それぞれ行動していった。

 天空島のログハウスでの打ち合わせ風景です。

 天空島の水問題、いざ書き始めるとこれが何気に難易度高かった…(=ω=)…


 陸地なら、ダムなり池なり新しく作るところなのですが。天空に浮かぶ島は面積的な問題でそれらはできず。

 ファンタジー世界の伝家の宝刀である魔法も、天使全員に水魔法を持たせるのも違和感ゴリゴリ過ぎて却下。

 さて、どうしたもんか……と悩んだ作者の頭の中に、ふいに浮かんだのが『水の女王』という言葉でした。


 そこからの作者は、そりゃもう超ご機嫌。それまでの悩みが嘘のように、サクサク執筆が進む進むぅ!

 水の女王ちゃん、次回頑張ってもらうからね!

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