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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい生活

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第852話 リベンジマッチ

「はぁぁぁぁ……今日はすっごく緊張しましたぁ……」


 ライトとレオニス、ラウルにクレエ、四人でのんびりと歩きながらエンデアンに戻る道中、クレエが心底疲れたように呟く。

 ディープシーサーペントや海の女王達と別れ、離れたことでようやく緊張が解けたのだろう。

 全身の力が抜けきったクレエに、レオニスが不思議そうに問いかける。


「そうかー? 緊張しているようには全然見えなかったぞ?」

「またまたぁ、金剛級冒険者ともあろうお人が何を寝言吐いてるんです? 寝言は寝て言うものですよ? 如何に私が冒険者ギルド受付嬢として、日頃からレオニスさん他猛者達を相手にしていてもですね。神と名のつく高位の存在と直接対面するなんて、正真正銘今日が初めてのことなんですからね? 緊張しない訳ないでしょう?」

「ぐぬぬ……」


 レオニスの軽口に、クレエが速攻で反撃に出る。

 スラスラと流れ出てくる彼女のド正論に、今日もレオニスはぐうの音も出ない。

 そんなレオニスの横で、ライトがうんうん、と頷きながらクレエの意見に賛同している。


「ですよねー。そもそもクレエさんは冒険者じゃないし、何と言ってもか弱い一般人女性ですもんねぇ」

「ですですぅ。ライト君はよく分かってらっしゃいますねぇ。まだ冒険者登録できないライト君ですら、私のことをこれだけ分かってくださっているというのに。それに引き替え、まぁーレオニスさんときたら……ホンット、乙女心が全く分かっていないですよねぇ」


 ライトの言い分に、クレエもまたうんうん、と頷きながら感心している。

 しかし、レオニスにしてみれば到底納得できる話ではない。

 レオニスはライトの方に向き直り、真剣な眼差しでライトを諭しにかかる。


「それはだな、ライト。お前はこいつら十二姉妹の真の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだぞ?」

「え、そなの? クレアさんがすっごく強いことは知ってるけど、クレエさんも強いの?」

「ああ。今日だってな、俺とクレエでどっちが先に崖に到着するかを競ったんだがな? 結局こいつの方が先に着いちまったんだ」

「「え"ッ!?」」


 本日のレオニス vs. クレエの競争結果を聞かされ、ライトだけでなくラウルまで心底驚いている。

 そりゃそうだろう、冒険者でもないただの女性であるクレエが現役冒険者に長距離走で勝つなど前代未聞だ。

 しかもその現役冒険者とは、世界最強の呼び名を欲しいままにする金剛級冒険者レオニス・フィア。体力勝負でレオニスに勝てる女性がこの世に存在するなど、ライトやラウルでなくともびっくり仰天である。


 あまりにも信じ難い話に、ライトがおそるおそるクレエに確認する。


「ク、クレエさん、それ、ホントなんですか……?」

「もちろん事実ですよ? まぁ、私が数秒先にスタートダッシュしたおかげというのもありますが」

「そ、それにしたって、レオ兄ちゃんとかけっこで競争して勝つなんて……クレエさん、スゴいですね!」

「ぃぇ、そんな……それ程でも……」


 ライトの問いに、堂々と胸を張りつつ答えるクレエ。

 ハンデ付きとはいえ、レオニスとの勝負に勝ったことを誇らしげに語るクレエを、ライトは尊敬の眼差しで見つめつつ讃える。

 ライトに賞賛され、クレエは柄にもなく照れている。やはりクレエ自身も、心のどこかで『レオニスに勝てる訳がない』と思っていたのかもしれない。


 しかしクレエの横にいるレオニスは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 もともと負けん気の強いレオニスのこと、やはりクレエに負けたことが相当悔しいらしい。


「……よし。帰りは四人で勝負といこうじゃないか」

「え。四人でって、ぼくも参加?」

「おう、ライトが走ってから一分後に俺達三人がスタートする、でどうだ?」

「ンー……それならまぁ、まだいい……かな?」

「ご主人様よ、俺にはハンデはないのか……」

「身体強化魔法は無し。俺とラウルはジャケットを脱いで、さらに俺はイヤーカフや指輪も外す。身体一つのみの真剣勝負だ」

「聞いてねぇな……」


 帰り道でもかけっこ勝負をしよう!というレオニスに、ライトとラウルはまたもびっくり仰天する。

 ただし、ハンデをもらえたライトは少しだけやる気になったようだが、レオニスに完全スルーされたラウルはブツブツと零している。

 どうやらレオニスは、何が何でもリベンジマッチしたいらしい。


 いい歳した大の男が、何て大人気ない……と思うことなかれ。

 レオニスはもとより、冒険者とは勝ち負けに対して貪欲な者も多いのだ。

 とはいえ、さすがにライトには一分早くスタートする権利を提示したレオニス。そこら辺はまだ分別があったようだが。


 しかしラウルに対しては、一切ハンデを与えるつもりはないらしい。

 何故ならば、ラウルもレオニス同様黒の天空竜革装備をフル装備で着ているからだ。

 さすがに最も強力なジャケットは二人とも脱ぐことにしたが、それでもブーツやベルトなどの付与魔法付きの装備品が残る。

 それすらも取り除くとなると、ほぼ全裸で走らなければならなくなるのでそこまではしないが、ブーツやベルト一つでもかなり違ってくる。

 それらの装備の強力さを思えば、ラウルのハンデ無しも致し方なしか。


 レオニスは歩きながら深紅のロングジャケットを脱ぎつつ、空間魔法陣に仕舞った。そして間を置かずに、指輪やイヤーカフなどを外しては、ポイポイ、ポイー、と空間魔法陣に放り込んでいく。

 ラウルもご主人様(レオニス)に倣い、黒の燕尾服ジャケットを脱いで空間魔法陣に仕舞う。

 レオニス熱望のリベンジマッチ、その開催のための準備が着々と整っていく。


 その間ずっと静観していたクレエ。彼女だけは一言も反論することなく、レオニスの提案を暗黙のうちに受け入れている。

 それどころか、やる気満々のレオニスに負けじとばかりにクレエが物申した。


「レオニスさん、そしたらこの勝負にも勝者のご褒美はあるのですよね?」

「もちろんだ。俺が勝った場合は何もなくてもいいが、俺以外の三人のうちの誰かが勝ったら何でも一つ望みを叶えよう。ただし一着のやつだけな」

「レオ兄ちゃん、それホント!?」

「おう、俺はこの手の勝負事で嘘はつかんぞ?」

「ほほぅ、ご主人様に何でも一つ願い事ができるのか……悪くないな」


 クレエが物申したのは、勝者への報酬。

 行きの勝負の時には、それを事前に決めておかなかったが故に少々揉めた。

 それと同じ轍を踏まないクレエ、さすがは『何でもできるスーパーウルトラファンタスティックパーフェクトレディー!』である。


 そしてクレエのその機転のおかげで、ライトとラウルにもやる気が起きる。

 いや、本来ならその褒美はライトやラウルにとって飛びつく程のものではない。何故ならば、二人ともいつも大抵の願いはレオニスに叶えてもらっているからだ。


 ライトがどこかに行きたいと言えば、余程のことでもない限り連れていってくれるし、ラウルだってラグナロッツァの屋敷のガラス温室やらカタポレンの畑など、いつもレオニスに快諾を得ている。

 だが、それはそれとして、レオニスに何でも言うことを聞いてもらえるというのはかなり魅力的だ。


 もしかしたら、かつてクレアが報酬として望むもレオニスに速攻で却下された『クー太ちゃんの着ぐるみを着て、クー太ちゃんとともに冒険者ギルド主催の祭りに出る』という願いをも叶えることができるかもしれない。

 もっとも、ライトやラウルがそれをわざわざ望むかどうかは全くの別問題なのだが。


 指輪やイヤーカフ、各種付与魔法の付いたアクセサリー類を全て外し終えたレオニスが、他の三人に向けて確認する。


「他には質問はないか? なければ一旦ここで止まって、ライトからスタートするぞ。……あ、ライトは走り出したらすぐにこれを使え」

「あ、うん、分かったー」


 レオニスが空間魔法陣を開き、一枚の呪符を取り出してライトに渡した。

 その呪符は、魔物除けの呪符。

 今も崖から帰路に就く時に一枚使用したのだが、ライトだけ単身で走るということはレオニス達と一分間離れるということになる。

 それは即ち、ライトの身を守るために追加の呪符が必要となるのだ。

 というか、そこまでして勝負すんの?という気がしなくもないが、もう既に四人ともやる気満々なので問題ない。


 ライトが魔物除けの呪符を手に持ち、駆け出す体制になる。

 準備が整ったところで、懐中時計を手に持ったレオニスがタイミングを図る。

 そして秒針が真上に到達する直前に、大きな声で合図を出した。


「用意……スタート!」


 レオニスの掛け声に、ライトが俊敏に反応して走り出した。

 バビューン!と駆け出したライトの背中が、あっという間に豆粒になっていく。

 その勢いを見ながら、レオニス達はひたすら感心している。


「おおー、ライトも足が速くなったなぁ」

「そりゃあな、今でも毎朝カタポレンの森の中を走り回ってんだろ? 森の中を走るより、平地を走る方が余程楽だろうしなぁ」

「おおお……さすがライト君、レオニスさんに育てられただけのことはありますねぇ」


 ライトの目覚ましい成長ぶりを目の当たりにし、三人とも感嘆の声を上げる。

 そんなのんびりのほほんとした会話が繰り広げられるが、それもほんの僅かのこと。ライトがスタートした後も、レオニスは頻繁に懐中時計の秒針の移動を見ている。

 三十秒前には一旦足を止め、ラウルとクレエもそこに立ち止まる。

 向かって左側から、クレエ、レオニス、ラウルの順に横並びになり、十秒前からレオニスがカウントダウンしていく。


「十、九、八、七……」


 レオニスがカウントダウンしている間、ラウルとクレエは無言で待ち構えつつ走る体勢に入る。


「……三、二、一、ゼロ!」


 レオニスの『ゼロ』の言葉が出た瞬間に、ラウルもクレエも猛スピードで走り出す。

 もちろんレオニスだって負けてはいない。三人横並びの状態のまま、猛烈なスタートダッシュが展開されていく。


 三人の猛者と一人の子供の、類を見ない真剣勝負。

 その幕が切って落とされた。

 ライト、レオニス、ラウル、クレエ、四人のエンデアンへの帰路の風景です。

 守護神二体と属性の女王二人、高位の存在が合計四者もいる場から離れたのだから、クレエがほっとして気が抜けるのも仕方ないですよねぇ(´^ω^`)

 その緊張を解すためかどうかは分かりませんが、レオニス熱望のリベンジマッチが急遽開催されることに。


 ホントにねぇ、レオニスってば負けん気が強くて強くて…(=ω=)…

 数日前から作者の脳内でずーっと『帰りも勝負するぞ!』と訴え続けてまして・゜(゜^ω^゜)゜・ ←根負けした人

 ま、それくらいに負けん気やら勝利への渇望がなければね、最上級の階級にまで上り詰めることなどできないでしょうけども。


 そして今回もその結果発表は次回に持ち越しですか。はてさて、一体どんな順位になるでしょうか?

 それはまた明日のお・楽・し・み☆(ゝω・)

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