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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第809話 情報収集

 アドナイから急ぎラグナロッツァに戻ったライトとレオニス。

 そのまま取るものもとりあえず、カタポレンの家に移動する。


 カタポレンの家の外では、ラウルが貝殻や蟹殻の焼却処理を行いがてら巨大野菜の下拵えや畑の手入れをしていた。

 ライトの身の丈程もある巨大なトウモロコシ。その皮やヒゲを、スパパパパ!と手早く毟り取っては、剥きたてのトウモロコシを空間魔法陣に収納していく。


 剥いた皮は一ヶ所にまとめておいて、収穫後の茎や葉っぱなどといっしょに風魔法で乾燥させて緑肥として畑に鋤き込む。

 ちなみにトウモロコシのヒゲは、先端の褐色部分を取り除き緑の部分だけを残して空間魔法陣にとっておく。

 ここら辺も全てライトから伝授された知識だ。


 ライト曰く『トウモロコシの剥いた皮や引っこ抜いた茎、根だけじゃなくて、ヒゲの緑の部分はサラダや天ぷらに使えるよー。あと、乾煎りしてお茶にしたりもできるから、とっておいてお料理に活用するといいよー』とのこと。

 実際にラウルも試しにそうしてみたところ、それらはとても美味しく食することができた。それ以来、ラウルは巨大トウモロコシのヒゲも全て捨てずに、立派な食材として活用している。

 俺が作って収穫した野菜を、美味しい実の部分だけを食するに留まらず、普通なら捨てる部分まで余すところなく活かす。

 うちの小さなご主人様は、本当に素晴らしい精神の持ち主だよな、とつくづく感心するラウルである。


 ラウルがそんなことを考えながら諸々の作業をしていると、カタポレンの家の中に強大な力を持つ何者かが現れた。

 それは、紛うことなき大小二人のご主人様達の気配である。

 しばらくして、帰宅したライト達が家から出てきたライト達を見てラウルが不思議そうな顔で近づいてくる。


「よう、ご主人様達。えらくお早いお帰りだな?」

「ただいまー!ラウルもここでずっと殻焼きと畑仕事してるの?」

「ああ。殻焼き処理のついでに、トウモロコシの皮を剥いたり畑の土の手入れをしていたところだ」

「そっかー、今朝そんな話をしてたもんね!ラウルもお仕事お疲れさま!」

「おう、ありがとよ」


 笑顔でラウルに駆け寄るライトに、ラウルも微笑みながらライトの頭をくしゃくしゃと撫でる。

 その一方で、ライトの後ろをのんびりと歩いてきたレオニスに、ラウルが問いかけた。


「で? もうアドナイだかでの用事は済んだのか?」

「いや、アドナイの冒険者ギルドから緊急依頼を受けてな。その下準備のために急遽戻ってきたところだ」

「そうなのか。俺に何か手伝えることはあるか?」


 冒険者ギルドから緊急依頼を受けたと聞き、ラウルの表情が曇る。

 レオニス程の人物に、冒険者ギルドから直接かつ緊急で依頼を出す―――間違いなく厄介な依頼であろうことは、ラウルにも察せられたからだ。

 しかし、心配そうなラウルにレオニスは事も無げにさらっと答える。


「いや、今のところは大丈夫だ。ただし、お前の力も借りたいとなったら遠慮なく頼むから、その時はよろしくな」

「おう、任せとけ。そしたら俺はここら辺で適当に作業の続きをしてるから、何かあったらいつでも呼んでくれ」

「はいよー」


 レオニスの『大丈夫』という答えを聞いたラウルに笑顔が戻る。

 ご主人様(レオニス)が大丈夫と言うなら、それは間違いなく大丈夫であることをラウルは知っているからだ。

 それに、いざとなったら自分(ラウル)を頼る、とレオニスが言ってくれたのも嬉しかった。

 ラウルはレオニスの言葉に安堵しつつ、諸々の作業に戻っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「さて、と……まずはアレ(・・)を出してくるか」

「レオ兄ちゃん、さっき言ってたアレ(・・)をとうとう出すんだね……」

「ああ。敵地に赴く前には、念入りな情報収集が欠かせんからな」

「何か有用な情報が得られるといいけど……」

「今度ばかりは手加減なんぞしていられん。何が何でも情報を引き出してやる」


 ライトとレオニスが、地味に物騒な会話をしながら家の裏にある道具置場に向かう。

 道具置場の扉の鍵を開け、二人でともに中に入っていった。

 道具置場の中には、これまでレオニスが世界各地で集めた数多の武器が置かれている。剣に長槍、杖、大鎌、それはもう様々な武器類が整理整頓された状態で置かれており、なかなかに壮観な図である。


 だが、レオニスはそれら豪華な武器類には目もくれず、それどころか真下の床を向いて何かを探している。

 そしてとある一点に目を留め、そこに向かって歩き出した。


「えーと……あったあった、コレだ」


 レオニスがそう言いながら、奥から引っ張り出してきたのは大きな魚籠。

 その魚籠からは、スピスピ~……という謎の音が聞こえてくる。

 それは、かつて屍鬼将ゾルディスの手先として暗躍していた、自称『ゾルディスの一の配下にして右腕』『側近中の側近』マードンであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 目的のものを見つけたレオニスは、魚籠を片手にライトとともに外に出た。

 魚籠の中では、相変わらずマードンが鼻ちょうちんを作りながら寝こけている。捕虜として捕らえられているというのに、何とまあ呑気なものだ。


 レオニスが魚籠をゆっくりも傾けて、そっとその中身を地面に出す。

 マードンは顔や身体に浄化の呪符を貼られて寝ていて、魚籠から出しても起きる気配は微塵もない。ある意味、こいつの主人である屍鬼将ゾルディスよりも大物かもしれない。


 レオニスがマードンを引っ張り出してきたのは、屍鬼化の呪いと単眼蝙蝠について情報を集めるためだ。

 そのためには、マードンを起こして会話ができる状態にしなければならない。

 そしてこいつを起こすには、全身に貼られている呪符を取り除く必要があるのだ。


 だが、呪符を全部剥がした途端にマードンが目が覚めて、飛んで逃げられてはマズい。

 冬眠にも等しい長期睡眠をしていたマードンが、寝起き直後でそんな機敏な判断や行動ができるとは到底思えないが。それでも逃亡のリスクを犯す訳にはいかない。

 マードンの額に貼られた一番強力な呪符だけを残し、他の呪符を一枚づつそっと取り除いていくレオニス。

 浄化の呪符が一枚だけになったところで、レオニスがラウルに向かって大きな声で呼びかけた。


「おーい、ラウルー、ちょっとこっちに来てくれるかー」

「はいよー」


 しばらく待っていると、ラウルがライト達のもとにやってきた。

 ラウルはのんびりとした足取りで合流し、レオニスに問うた。


「どうした、何か御用か?」

「ラウル、お前植物魔法が使えるようになったんだよな?」

「ああ、天空島のドライアド達の加護のおかげで、様々な植物魔法が使えるようになったぞ」

「そしたらどの植物でもいいから、とにかく蔓でこいつを縛れるか?」

「ン? このデカい蝙蝠を、か?」


 レオニスの頼みを聞いたラウル、縛り上げる予定のマードンを見て不思議そうな顔をしている。


「もちろん縛り上げることは簡単にできるが……こいつ、武器庫の籠の中に入ってたやつか?」

「そうだ。名前はマードン、かつてオーガの里を襲撃した主犯の一匹だ」

「何だとッ!?」


 レオニスの答えに驚きながら、ガバッ!とマードンの方に向き直るラウル。

 襲撃事件が起きた当時は、ラウルはまだオーガ達と交流はなかった。

 だが、ライトがもたらした縁により今ではラウルもオーガ達と親交がある。族長であるラキだけでなく、今やラウルはオーガの奥様方からも絶大な信頼を寄せられているのだ。


 そんなオーガの里を襲った襲撃事件の主犯が、今ラウルの目の前の地面で寝こけている大型蝙蝠だというではないか。

 ラウルが気色ばんだ様子でレオニスに詰め寄る。


「おいッ、何でそんな奴を生かしている!?」

「こいつはな、廃都の魔城の四帝の一角である【愚帝】の配下の側近だそうだ。襲撃事件の時には逃げられたが、後日全く別の場所で偶然出食わしてな。廃都の魔城の連中の情報を得るために、生かして捕えたんだ」

「だからって!このままずっと生かしておくのは危険過ぎるだろう!」

「……お前の目には、こいつがそんなに危険な力を持っているように見えるのか?」

「………………」


 ラウルがマードンの危険性を訴えるも、レオニスはそれに動じることなく受け答えしている。

 逆にレオニスに問いかけられたラウル、改めて己の足元に転がっているマードンを見遣る。

 スピスピと鼻を鳴らしながら、スヤッスヤに寝こけるマードン。その鼻息で、額に貼られている浄化の呪符がふよふよとそよいでいる。

 呆れるほど間抜けな図だが、それでも何とか気を取り直したラウルが言い繕う。


「そ、そりゃまぁ確かに、こいつ自体は相当間抜けっぽいが……それでも、どんな攻撃魔法を使ってくるか分からんし、変な菌だって持ってるかもしれんだろう?」

「まぁな、蝙蝠自体がばい菌の巣窟だってのは俺も聞いたことはあるがな」

「だろう?」

「だがそこら辺は、浄化魔法の呪符をいくつも貼ってるから問題ない。この呪符はピースが直々に描いたものだしな」


 ラウルの抗議に、頭をガリガリと掻きながら答えるレオニス。

 納得できていないラウルに言い聞かせるように、理路整然と説得していく。


「それにだな。もしこいつが、この呪符が全く効かんほどの強い力を持っていたとしたら、そもそも魚籠の中で寝こけるはずねぇだろ?」

「た、確かに……」

「ただ、お前の言うように用心するに越したことはないからな。だから手元に浄化魔法の呪符を何枚も用意してあるし、お前の植物魔法でぐるぐる巻きにして逃げられんようにしとくって寸法だ」

「そ、そうか……ならば……まぁ、いいか……」


 レオニスは、深紅のロングジャケットの内ポケットから徐に呪符を取り出してラウルに見せる。

 それは、ここに来る間にレオニスが前もって空間魔法陣から取り出して用意しておいたものだ。

 胸元から取り出した五枚の大きな呪符を、レオニスがひらひらとさせながらラウルに見せつける。

 それを見たラウルも、ようやく納得したのか少し安堵した顔になる。


「そしたらラウル、こいつの身体を蔓でぐるぐる巻きにしてくれ。あまりキツく縛ると、苦しがってギャーギャー喚くかもしれんから、抜け出せない程度に加減してやってくれ」

「了解。そしたらこいつを一旦畑の方に連れてくぞ」


 ラウルが畑の方に移動し、畑の土に何かの種を植える。

 そして種を植えた場所に手を翳し、魔力を注ぎ始めた。

 すると、種からニョキニョキと何かの芽が出てきて、それはどんどん伸びていって長い蔓になっていく。どうやらラウルはスイカの種を植えたようだ。


 蔓の先端がうねうねと動き、マードンの身体に巻きつき始める。

 マードンの身体が持ち上げられたかと思うと、そこからくるくるくるっ!とマードンに勢いよく巻きついていく。

 あっという間に『マードンのチャーシュー巻き』の出来上がりである。


「ありがとう、ラウル。助かったよ」

「どういたしまして」

「そしたらお前はもう畑作業に戻ってもいいぞ。仕事の邪魔してすまなかったな」


 マードンの逃亡の危険性を完全に封じたレオニス。

 植物魔法の蔓で縛り上げてくれたラウルを労い、畑作業を中断させてしまったことを謝る。

 だが、ここでラウルが意外なことを言い出した。


「いや、俺もこのままここにいていいか?」

「ン? そりゃ別に構わんが……」

「俺もこいつの話を聞いておきたいんだ。俺だってもう、オーガ達とは友達だしな」

「……分かった。ただし、たまに焼却炉の様子を見てこいよ? 焼却炉を稼働させたまま、長時間放ったらかしにするのは危険だからな」

「分かった、今ちょっと見てくるわ」


 レオニスがラウルの同席を認め、今殻を焼いている最中の焼却炉について言及する。

 その言葉に納得したラウル、早速家の向こう側に駆け出していき、焼却炉の様子を見てからすぐに戻ってきた。


「よし、じゃあ今からこいつの尋問を始めるぞ」


 レオニスの掛け声に、ライトもラウルも無言で頷く。

 カタポレンの森の中で、レオニス達によるマードンへの尋問が始まっていった。

 屍鬼将ゾルディスの一の配下にして、側近中の側近マードンの再登場です。

 炎の洞窟で偶然出食わしてとっ捕まえたのが第405&406話、ラウルが武器庫でマードン入りの魚籠を目撃したのが第511話。300話ぶりの登場ですね。

 ぃゃー、今回のような場面がいつか来ることを前々から想定はしてまして。つまり、マードンを再登場させるつもりで生かしておいたんですが。

 諸々あって、かなーり間が開いてしまいました。


 炎の洞窟でマードンと出食わしたのが、作中時間で二月の初旬頃。そして今は八月末なので、半年以上は魚籠の中で寝こけ続けていた訳ですね。

 リアルなら、筋力低下で寝たきり一直線ですが。もともとマードンは魔物だし、レオニスとしても死なないように魔石の補充をこまめにしてたので、全くの無問題なのです!(º∀º)

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