第800話 奇跡の組み合わせ
拙作をいつもお読みくださり、本当にありがとうございます。
今日は第800話到達です!諸々言いたいことはありますが、ひとまずそれは置いといてですね…( ̄ω ̄)…
よろしければこれからも、拙作の続く限りご愛読いただけたら嬉しいです。
今後とも、サイサクス世界の物語をよろしくご贔屓の程お願いいたします<(_ _)>
レオニスとラキ、フギンとレイヴン達が大事な話をしていた頃。
ライトとマキシは、客間の隅でルゥとレンとともにラニのブラッシングをしていた。
ちなみに『ブラッシング』という言葉は、ライトがルゥ達に教えた言葉だ。
それまでオーガの里にもふもふ系の生き物はいなかったので、ラニの歓迎の宴の時にそうした様々な言葉や概念などを教えていったのだ。
ちなみに今のマキシは人化の術で人の姿をしている。
一番最初にフギン達とともにルゥにブラッシングに呼ばれた時に、すぐさまルゥ達の前で「僕は人化できるので、ブラッシングは不要です!」と人化したのだ。
その時のフギンとレイヴンの、驚愕に染まる顔たるや。まさに見物であった。
目を大きく見張りながら、マキシを見つめる二羽の『ちょ、マキシ!お前だけ逃げるのか!?』という声なき抗議の視線に、人化したマキシもまたにこやかな笑顔で『兄様方も、人化の術の会得頑張ってくださいね!』と無言の視線で返す。
そんな八咫烏兄弟達のバチバチとした視線のやり取りに、ライトはアハハハハ……と苦笑いするしかない。
まぁ確かにねー、鳥にブラッシングってどうなんだろ? 翼や尾の部分は絶対にダメだろうけど、それ以外のところなら大丈夫かも?
頭や喉、胸元なんかはもふもふしてるっぽいし。
よし、今度マキシ君の身体で試させてもらおうっと!
ライトはそんなことを考えながら、八咫烏兄弟の微笑ましいやり取り?をニコニコと眺めている。
一方のルゥとレンは、人化したマキシを見てものすごく驚いていた。
「えッ!? カラスちゃんが、人の姿になった!?」
「あ、えーとね、このカラス達は特別なカラスで、八咫烏っていうすっごく賢くて頭が良い種族なんだ」
「ヤタガラス? そのカラスさん達は、皆人の姿になれるの?」
「ううん、人の姿になれるのはマキシ君っていう子だけなんだ。こっちがマキシ君の一番上のお兄さんのフギンさん、そっちにいるのが同じくマキシ君の三番目のお兄さんのレイヴンさん。二羽も人化できるように、今頑張って勉強してるところなんだ」
ルゥ達に八咫烏の人化の可否を説明しながら、八咫烏三兄弟を簡単に紹介していくライト。
ライトに紹介されたことで、それまで無言の会話をしていた八咫烏三兄弟は慌ててルゥ達の方に向き直り、それぞれ自己紹介を始めていく。
「はじめまして、私は八咫烏のフギンと申します。以後お見知りおきを」
「はじめまして!同じく八咫烏のレイヴンです。フギン兄様の弟で、マキシの兄ちゃんしてます。よろしく!」
「はじめまして、僕はマキシと言います。ライト君やラウルから、いつもオーガの話を聞いていました。今日こうしてお会いすることができて、とても嬉しいです!皆さん、よろしくお願いします!」
八咫烏兄弟達の三者三様の自己紹介を受けたルゥ達も、ニコニコ笑顔で自己紹介を始めた。
「はじめまして!私はルゥ、パパはオーガ族の族長をしていて、私は一番上のお姉さんなの。私、お喋りできる鳥さんって、初めて見たわ!皆とってもお利口さんなのねー。皆とお友達になれて嬉しいわ、これからよろしくね!」
「ぼくはレン、ルゥお姉ちゃんの上の弟だよ。よろしくね!」
「ワフワフン!」
ルゥとレンに続き、ラニもニコニコ笑顔で啼く。
これはきっと、ラニも自己紹介で名乗ってるのだろう。
そのことに気づいたルゥ達が、補足するようにマキシ達に向けて説明していく。
「この子はラニという名前で、オーガではないけれど私達の弟なの」
「ぼくの下にもう一人、ロイっていう名前の弟がいて、その次の弟がラニなんだよ!」
「そうなんですね!ラニ君、よろしくね!」
「ワォン!」
ブラッシングしてもらうつもりで、すでに床に『伏せ』の状態で座るルゥの背中を、ルゥとレンが優しい眼差しで見つめながら撫でている。
ルゥ達鬼人族とは、見た目からして全く違う黒妖狼のラニ。だが、明らかに異種族なのにルゥはラニのことを『私達の弟』と言い切った。
そこには確かな絆があって、そのことにすぐに気づいたマキシ達の心も温かくなる。
そしてもう一人、ここにはいない弟がいるとレンから聞いたマキシが、改めてルゥに問うた。
「ロイ君は……お母さんといっしょにいるのかな?」
「うん。ロイはまだ赤ちゃんだから、いつもお母さんが抱っこしたりおんぶしたりしてずっといっしょにいるのよ」
「そうなんだね。うん、赤ちゃんのうちはお母さんといっしょにいるのが一番だもんね」
「でもね、最近ロイも少しづつだけど、立って歩けるようになってきたのよ。だから、もうすぐ私達といっしょに遊べるようになると思うわ」
「その日がとても楽しみですね!」
「うん!」
二番目の弟、ロイはまだ赤ちゃんだと知ったマキシ達が納得している。
しかし、ルゥの話ではロイも最近二足歩行を始めたという。
二足歩行を始めた赤子というのは、ますます目が離せなくなるものだが。ルゥ達お姉ちゃんやお兄ちゃんがいれば、きっと大丈夫だろう。
そして今度はレンが、もう一頭の弟ラニについて話し始める。
「ラニも卵から生まれたばかりだけど、大きくなるのがとても早くて、ぼく達ともいっしょに遊べるんだよ!」
「「……た、卵……?」」
「そう、卵!ラウル先生に出してもらったたくさんのお肉をね、皆でた一生懸命に食べさせて、生まれたんだ!」
「「……お、お肉……?」」
ラニの誕生秘話を、ニッコニコの笑顔で語っていくレン。
マキシはラウル達からその話を既に聞いていて知っていたが、フギンとレイヴンには全く訳が分からないようだ。
卵から四つ足の獣が生まれるという話もさることながら、卵に肉を食べさせるというのもさっぱり意味が分からない。
フギンとレイヴンが、頭の上に『???』をたくさん浮かべていたが、そんなことはお構いなしにルゥがライト達に声をかけた。
「さ、そしたらまずはラニのブラッシングを始めましょ!」
「うん!」
「ラニのブラッシングが終わったら、その次にフギンちゃんとレイヴンちゃんのブラッシングも順番にしてあげるからね!」
「「は、はい……」」
ブラッシングなるものが一体何なのか、未だに分からないフギン達だが、今更断って逃げ出す訳にもいかない。
まずはラニにするというブラッシングがどんなものなのか、じっくりと観察することにした。
ライトに教えられた通りに、ラニの身体を最高級ブラシで丁寧に梳かしていくルゥ。このブラシも、ライトがラニとルゥ達のためにプレゼントしたものだ。
姉と慕うルゥの丁寧なブラッシングに、床に寝そべっているラニがうっとりしている。
とても気持ち良さそうなラニに、ルゥが優しい声で語りかける。
「ラニ、どう? 気持ち良い?」
「……わふゥん……」
「すっごく気持ち良さそうだね!」
「お姉ちゃん、ぼくもブラシしたい!」
「はい、どうぞ。あまり力を入れずに、ゆっくり優しくしてあげるのよ?」
「うん!」
弟のレンの願いに、ルゥが快くブラシを渡す。
レンのブラッシングはまだどことなくぎこちないが、それでも姉と同じくゆっくり丁寧に頑張っている様子がひしひしと伝わってくる。
幼い弟の懸命な姿に、姉のルゥだけでなくライトやマキシまで笑みが溢れる。
「はぁ……僕には同い年の妹しかいませんが、小さな弟というのもとても可愛いものですねぇ」
「今のぼくには弟も妹もいないけど、それでもやっぱり年下の子って可愛いよねぇ」
「マキシ君には妹がいるの? いいなぁ、私も妹が欲しい!」
ブラッシングを頑張るレンの微笑ましい姿を見守りながら、ライト達がそれぞれに呟く。
だが、フギンとレイヴンには幼子を愛でる余裕などない。
ラニの身体全体を、剣山のような道具を使ってゴシゴシと擦っている様子を見て震え上がっているのだ。
実際にはそんなに力を入れてゴシゴシと擦っている訳ではないのだが、フギンとレイヴンの目にはそう映るのだからどうしようもない。
もし両翼をあんなに強く擦られたら、一体どうなってしまうのだろう? もしかして、飛行に支障をきたすのではないか……?
青褪めながらプルプルと震えるフギンとレイヴン。その胸中は、まさに戦々恐々である。
だがフギンもレイヴンも、先程『異種族交流を推進していくぞ!』と心に誓ったばかり。ここで逃げ出したら、自分達を善意で誘ってくれたルゥやレン達の気分を害してしまうかもしれない。
それだけは、何としても避けたい。
いや、これまでのルゥの言動を見ていれば、彼女が明るく優しい性格であり、きっと怒り出すことはないだろうということも分かる。
だが、もしルゥ達気分を害さなかったとしても、オーガと交流を深める絶好の機会を逃すことに変わりはないのだ。
自らチャンスを潰すような真似だけは、絶対にできない。
例えこの羽根が、ブラッシングなる行為によってバッサバサのボロボロになろうとも―――オーガとの絆を深め、より良い出会いにしてみせる!
フギンとレイヴンは改めて心の中で誓い、腹を括り覚悟を決める。
そして、そろそろラニのブラッシングが終わり、いよいよフギンの番が回ってこようか、というところで客間のテーブル側にいた大人達の方から声がかけられた。
「おーい、フギン、レイヴン、ちょっとこっちに来てくれー」
レオニスからの呼び声に、フギンとレイヴンがガバッ!と振り返った。
八咫烏一族の恩人であり、ここオーガの里に連れてきてくれたレオニスが呼んでいるとあらば、何をさて置いても駆けつけなければならない。
「あ、はい!」
「今行きますー!」
フギンとレイヴンはレオニスに向かって慌てて返事をした後、ルゥ達の方に向き直る。
「申し訳ない、レオニス殿に呼ばれたので向こうに行ってきます」
「ホント、すんません!」
何度も頭を下げてペコペコと謝るフギン達に、ライトやルゥが慌てて返す。
「フギンさん、レイヴンさん、そんなに謝らなくても大丈夫ですから!」
「そうよ!レオちゃんの御用だもの、仕方ないわ!」
「ありがとうございます……」
「では、いってきます!」
ライト達の優しい言葉に、フギン達は感激しながらレオニス達のいるテーブル側にいそいそと飛んでいった。
彼らの飛んでいく後ろ姿が、何故だかとても安堵しているように見える気がするが、多分気のせいだろう。キニシナイ!
そして、フギンとレイヴンを見送ったルゥから、信じられない言葉が放たれた。
「さ、そしたらフギンちゃんとレイヴンちゃんが戻ってくるまで、マキシちゃんのブラッシングをしてあげるね!」
「ウキョッ!?」
「ささ、マキシちゃん、ホントの姿に戻って♪ ルゥはオーガの里で一番ブラッシングが上手なのよ♪」
「ぁぅぅぅぅ……」
ペカーッ!と輝かんばかりの眩しい笑顔に、マキシも断ることができない。
せっかく人化の術でブラッシング接待を回避したと思ったのに、よりによってフギンとレイヴンが不在になるとは大誤算もいいところだ。
流れ的にどうあっても逃げられなさそうな空気に、マキシはぁぅぁぅ、と口篭ることしかできない。
そんなマキシにライトがポン、とマキシの肩に手を置いてそっと囁いた。
「マキシ君、大丈夫。翼はブラッシングしないように、ちゃんとルゥちゃんに言ってあげるから」
「……は、はい……」
「頭とかお腹とかの、影響が少なそうなところだけにしてもらおうね」
「……よろしく、お願い、します……」
ライトの説得に、マキシも項垂れつつ同意する。
マキシは八咫烏一族のこれからを憂い、率先して外の世界を見て回りたい!と宣言した。
そんな自分が、異種族から向けられた厚意を無碍にする訳にはいかない。そのことを、マキシ自身が誰よりも一番よく理解していた。
マキシが観念したように、人の姿から八咫烏の姿に戻る。
人化の術を解いた瞬間、ボフン!という音とともにむっちりまん丸なマキシの本来の姿が現れた。
それを見たルゥとレンが、再び目を丸くしながら喜んでいる。
「うわぁ!マキシちゃん、カラスの姿もとっても可愛い!」
「そ、そうですか……?」
「うん!見た目もふっくらふわふわで可愛いし、つやつやな羽根もとーっても綺麗!」
「ぼ、僕、そんなこと初めて言われました……」
マキシの本来の姿を大絶賛するルゥ。褒められたマキシも、満更でもなさそうに照れ笑いしている。
マキシのテンションが上がったところで、ライトが後押しをするようにルゥに進言する。
「ルゥちゃん、翼の羽根はブラシを通すと毛が傷んじゃうから、ブラッシングしないでね。それ以外の、頭とか喉、お腹とかをそーっと梳かしてあげてね」
「うん、分かった!そーっと、そーっと、優しーくするわ!」
ライトのアドバイスを受けたルゥが、フンスフンスと鼻息も荒くブラシを握りしめる。
鼻息こそ荒いが、そーっと、そーっと、優しーくする!と言っているので、きっと大丈夫だろう。
ルゥに褒められて嬉しそうにしていたマキシが、改めてルゥに挨拶をする。
「ルゥちゃん、よろしくお願いしますね」
「任せて!もしブラシが痛かったら言ってね!」
「はい!」
オーガ族の族長の娘ルゥが、八咫烏族の族長の息子マキシの羽繕いをする―――異種族交流の、まさに鑑のような奇跡の組み合わせが実現した瞬間だった。
うッひょーい!今回で800話到達でーす!ㄟ( ̄∀ ̄)ㄏ
というか、800話過ぎてもライトの夏休みが終わらないとは!
正直作者自身も全く、本ッ当ーーーに全く!思っておりませんでしたぁ!><
『初めての夏休み』という新章を開始したのが、第618話のこと。
異世界転生したライトの、ラグーン学園での初めての夏休み。夏休み開始前日の一学期終業式、その午後にカタポレンの家や目覚めの湖にてライトの魔力テストを行った話を書いたのが、まるで昨日のことのように思い出されます……(遠い目
というか、100話前の第700話の頃が一番キツかった……(超遠い目
でも、今日のサブタイトル『奇跡の組み合わせ』とその内容は、節目の800話に相応しいかな?とも思ってみたり(・∀・)
リアルでは、立て続けに起きた身内の不幸や作者が細菌感染症に罹る等々、なかなかに波瀾万丈な日々でしたが。
それでもこうして日々書き綴り続けてこれたのも、ひとえに拙作を読んでくださる読者の皆様方のおかげです。
これからも、作者の力が続く限り頑張って執筆していきたいと思っております。
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