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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第779話 自己紹介と即座の決断

 ヴィヒトとともに、ライト達は里の外れの森の一角に移動した。

 ちなみにエディは己の持ち場に戻ったので、この場にいるナヌスはヴィヒトだけである。

 四人と二羽は、里の外れの方に移動しがてら初対面同士で軽く自己紹介をしていく。

 まずはライトがの口火を切った。


「まずは皆にヴィヒトさんを紹介するね!今レオ兄ちゃんの肩に乗ってるのが、ナヌスの里の族長でヴィヒトさん。ぼくとレオ兄ちゃんとは友達なんだ!」

「………………」

「ナヌスの人々は結界作りに長けているって話をさっきしたけど、結界だけじゃなくていろんな魔法を使えるすごい人達なんだよ!」

「………………」

「……って、ヴィヒトさん、何かすっごく緊張して固まっちゃってるようだから、ラウル達から先に自己紹介してくれる?」


 ライトがヴィヒトのことを軽く紹介しつつ、ふとレオニスの肩の方に視線をやると当のヴィヒトがカチコチに固まってしまっている。

 石化寸前で言葉も出ないヴィヒトに、ライトは苦笑いしながら自己紹介の順番をラウル達に回すことにした。


 何故こんなことになっているかと言うと。

 エディの時と同じく、ヴィヒトだけ小柄で里の外れまでの移動が大変だろうから、という理由でヴィヒトは先程からレオニスの肩に乗せてもらっていたのだが……


「ヴィヒト、俺の肩に乗るか?」

「い、いやいや!そそそそんな畏れ多いこと……」

「酷ぇな、俺は恐れられる程怖い人間じゃねぇぞ?」

「ぃゃぃゃ、その『恐れ』ではなくてだな……」

「いいから遠慮せずに乗れって!ちゃちゃっと移動しようぜ!」


 レオニスが気軽に発した提案に、焦りながら遠慮するヴィヒト。

 両者の言葉にかなりの齟齬が発生していることも、ヴィヒトの焦りに拍車をかける。

 だがレオニスは、持ち前のキニシナイ!精神を今日もフルに発揮する。

 ヴィヒトの両脇を両手でそっと包み掴んだかと思うと、とっとと己の右肩に乗せてしまった。


「どうだ、良い眺めだろ?」

「ハ、ハイ……」

「俺もこないだ、オーガの長老のニルに肩車してもらったんだがな? ぃゃー、あれは絶景だった!」

「ハ、ハイィ……」

「オーガ族の肩車の絶景には負けるが、ヴィヒトにしたら俺の肩でもそれなりの景色だろ? さっき俺の肩に乗せてやったエディも、すっげー喜んでたしな!」

「ハ、ハイィィ……」

「……ン? ヴィヒト、もしかして高いところが苦手か? すまんな、もうすぐ下に降ろすから少しだけ我慢してくれ」

「ハ、ハイィィィィ……」


 ヴィヒトの身体が落っこちないように、右手でヴィヒトの腰や背中を包むようにして支えながらニカッ!と笑うレオニスに、何を言われても小声で『ハ、ハイ……』としか答えられないヴィヒト。

 ヴィヒトは普段から、レオニスのことを『カタポレンの森の番人』として崇敬している。憧れの番人の肩に乗せてもらって、かなり緊張している。

 なかなかにちぐはぐな図だが、レオニスはヴィヒトがそこまで緊張する理由を高所恐怖症のせいかと考えているようだ。

 まかり間違っても自分が原因とは、露ほども思っていないのである。


 そしてラウル達もそんなことは知る由もないので、不思議そうな顔をしている。

 だが、初対面のヴィヒトへの自己紹介が必要なのは理解しているので、ライトの言葉に従い自己紹介を始めた。


「俺の名はラウル。プーリア族という妖精だが、今はライトやレオニスとともに人里で暮らしている」

「私の名はフギン、大神樹ユグドラシア様のお膝元にある八咫烏の里の族長ウルスが長男にて、以後お見知りおきください」

「俺はレイヴン、フギン兄様と同じく八咫烏一族の族長が三男、よろしく頼んます!」


 ラウル達が自己紹介を終えた頃、ヴィヒトがようやく我に返りレオニスに声をかけた。


「ああ、レオニス殿、ここら辺まで来ればもう大丈夫ですぞ」

「はいよー」


 ヴィヒトの呼びかけに、レオニスは夏の日差しの暑さから逃れるように木の木陰に腰を下ろす。

 お昼ご飯の時間にはまだ少々早いが、小腹を満たすために相談しがてらちょっとしたおやつでも食べようか、ということになった。

 早速ラウルが空間魔法陣を開き、ナヌスと八咫烏兄弟には新作おやつのたまごボーロを、ライトとレオニスと自分にはアップルパイを一つづつ出して皆に手渡した。

 皆で美味しいスイーツをまくまくと食べ始める。


「おお、このたまごボーロというのはサクサクしてて美味しいな!」

「これはうちの執事、ラウルの新作スイーツなんですよー」

「ラウルというのは、そちらの黒い服を着た御仁かな?」

「そうです。ラウルはナヌスの里に来るのは初めてなので、ヴィヒトさんとも初めましてですよね。改めて紹介します、今皆にスイーツを配ったのがラウル、あちらにいる大きな黒い鳥は八咫烏のフギンさんとレイヴンさんです」


 改めてライトから三者の紹介を受けたヴィヒト、ラウル達に向かって話しかけた。


「いやはや、先程はろくに返事もできずに申し訳ない……」

「いや、高いところが苦手な者は多いから気にすんな。ご主人様の肩車が高過ぎて緊張してたんだろ?」

「ぃゃ、そうではないのだが……そういうことにしておこう……」


 ラウルもヴィヒトが高所恐怖症だと思ったのか、そういうフォローに徹した。

 もちろんそれは全くの見当違いなのだが、ヴィヒト自身もいちいち訂正するのもかなり馬鹿らしいと思ったのか、『もうそれでいいや』と半ば諦めている。

 そして気を取り直して、ヴィヒトは改めてラウルに話しかけた。


「ラウル殿は、プーリア族だったか。名前だけは聞いたことがあるが、実際に会うのは初めてだ」

「だろうな。プーリア族も完全な引きこもり種族だから、里の外に出るヤツなんかいねぇし」

「しかし、見た目だけで言えば人族とほぼ大差ないのだな。いずれにしても、ライト殿とレオニス殿とも旧知の仲であるならば、我等ナヌスも心から貴殿を歓迎しよう」

「ありがとう。これからよろしく頼む」


 ラウルが差し出した手の指先を、ヴィヒトが両手で握る。

 ラウルと固く握手を交わした後は、今度は八咫烏兄弟の番だ。


「そちらの八咫烏の御仁は、フギン殿にレイヴン殿か。霊鳥として名高い八咫烏に、しかも族長一族の方々にお目にかかれるとは光栄だ」

「いえいえ、我等などまだまだ未熟者です……」

「おお、フギン殿はまだお若いであろうに、謙虚な方なのだな」

「いえいえ、フギン兄様は本気でそう思っておられますよ……かくいう俺も、ナヌスの里の結界の頑強さには心底感服いたしましたし……」

「おお、レイヴン殿も兄君に劣らず謙虚な方なのだな。やはり神格の高い霊鳥八咫烏の族長一族ともなれば、生まれながらにして品格をも備えておられるのだな!」

「「………………」」


 霊鳥に会えて光栄だ、と持ち上げるヴィヒトに、フギンとレイヴンはズズーン……とあからさまに凹んでいる。

 ヴィヒトはフギンやレイヴンの言葉を、謙虚さからくるものだと捉えているようだが、そうではない。

 ナヌスの里の結界相手に張り合って、見事惨敗を喫した八咫烏兄弟達は本当に己の未熟さを痛感していたのだ。


 先程のレオニスの認識の齟齬も大概だが、ヴィヒトの勘違いも相当なものである。

 だがその捉え方がポジティブな分、ヴィヒトの方がはるかにマシか。


「さて、そろそろ本題に入ろうか。俺達が今日ここに来たのは、ナヌス達に新たな結界作りを依頼したくてな」

「新たな結界作り、とな? それは一体、どこに作るおつもりで?」

「ここから少し離れたところにある、神樹ユグドラツィだ。その理由は、話せば長くなるが―――聞いてくれるか?」

「もちろん。森の番人殿が、何の理由もなくそのような依頼を我等に託すはずもなし。よろしければ、我等の結界が必要な理由をお教えくだされ」


 レオニスが切り出した、今日のナヌスの里来訪の目的を聞いたヴィヒト。顔色一つ変えずに、その理由を聞く。

 レオニスが語り始めた神樹襲撃事件のあらましを、ヴィヒトは静かに聞いていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「なるほど……そのような災禍が神樹の身に起きていたとは……」


 過日起きた神樹襲撃事件の話を聞いたヴィヒトが、その精悍な顔を歪めつつ呻る。


「確かに二十日程前に、森のざわつきがすごかった日があったが……あれは、神樹が襲撃されていたことによるものだったのだな」

「このナヌスの結界の中にいても、異変が分かったのか?」

「さすがに具体的に何が起きたのかまでは、我等には分かる由もなかったが……それでも森の空気がいつもと違って、悍ましさや憤怒、悲しみ、苦しみといった、様々な負の感情が満ち溢れていて―――何とも息苦しかったことは覚えている」

「そうか……」


 深刻な顔をしながら語るヴィヒトに、レオニスも静かに頷く。

 そういえば、オーガ族も神樹襲撃事件の時に異変を感じ取っていたな……とライトは心の中でルゥ達との会話を思い出していた。

 魔力に乏しく、魔力に関する適性や耐性に乏しいオーガ族ですら、神樹襲撃時の異変を感じ取っていたのだ。それを思うと、魔力が高く魔法に長けるナヌスがあの異変に気づかない訳がないのである。


「でな、神樹を襲っていた奴等を何とか退けて、ツィちゃんも目を覚まして無事助かったのはいいんだが……もう二度とツィちゃんをあんな酷い目に合わせたくないんだ。そのために、ツィちゃんを守る結界を作りたいんだ」

「確かに。自ら動くこと能わぬ神樹であれば、その自衛策として結界を用いるのは最適でしょうな」

「だろう? その結界作りに、ナヌスの力を貸してもらえないだろうか。もちろんそのために必要な材料集めは全て俺達がやるし、材料集め以外にも俺達で手伝えることなら何でもする。報酬だって、できる限りのことはするつもりだ」


 懸命に訴えるレオニスに、ヴィヒトは間を置かずに即時答えた。


「レオニス殿の依頼、承りましょう」

「!!……ありがとう、ヴィヒト!……でも、里の者達との話し合いもせずに、すぐに決めてしまっていいのか? もちろん俺としては、ヴィヒトが引き受けてくれるのはすごくありがたいことだが……」


 依頼を引き受けてくれたことに喜ぶレオニスだが、同時に心配もしていた。

 ナヌスのお隣さんでご近所付き合いのあるオーガの里ならともかく、ナヌスの里から神樹ユグドラツィのある場所はかなり離れている。

 健脚を誇るレオニスやライト、ラウルなら移動も簡単だが、小人族のナヌスがユグドラツィのいる場所まで行こうと思ったら、それだけで大仕事になる。


 結界作りを依頼するにあたり、ヴィヒト一人だけで行えるような代物ではないことは明白だ。

 他の者達との協議や同意も得ずに大丈夫なのか?とレオニスが心配するのも無理はなかった。


「心配召されるな。族長の意思は一族の意思……とまでは言わないが、我等ナヌスもカタポレンの森に生きる者。森の一員として、永き時を生き続ける神樹を敬う気持ちは皆等しく持っている」

「そうか……ツィちゃんがそれを聞いたら、きっとものすごく喜ぶだろうな」


 ヴィヒトが里の者達に同意を得ずに、すぐに承諾した理由を聞いたレオニスは嬉しそうに微笑みながら得心する。

 小人族(ナヌス)は神樹と直接関わったことはないが、それでもその存在は知っている。

 大神樹ユグドラシアを守る八咫烏と同様、森に生きるナヌス達もまた千年もの時を生きる神樹に対して尊敬の念を抱いているのだ。


「いと貴き神樹を守護するための結界。我等がその礎を作り、神樹をお守りする手助けができるのならば、これ程の栄誉はない」

「そう言ってもらえると俺も助かるし嬉しい。まずは神樹という存在に対して、どのような結界を作ればいいか、そしてその結界作りには何が必要なのかを俺達に教えてくれ」

「承知した。ここから先は、里の者達も交えて話を進めよう。先程も申した通り、この大仕事に対して異を唱える者はナヌスにはおらん」

「分かった。じゃ、里の中央広場に向かうか」


 族長ヴィヒトの同意と決断を得たライト達は、再び里の中央広場に向かった。

 異種族同士の眺めの良い肩車、レオニス&ヴィヒトバージョンです。

 ヴィヒトはもともとレオニスのファン?なので、推し当人からの肩車はさぞ天にも昇る心地でしょう!゜.+(・∀・)+.゜

 作者だって、もしも最愛の推しから何かしてもらえたら、それこそ鼻血大噴射しながら卒倒して脳震盪を起こす自信があります!(`・ω・´)

 しかし作者が長年慕い続けた推しは、只今絶賛行方不明中&一人は既に彼岸の地におられるという_| ̄|●

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