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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第777話 全幅の信頼の証

 モクヨーク池から、今日は目覚めの湖に移動したライト達。

 今回は前回と違って昼前に八咫烏の里を出たので、カタポレンの森の中も少し散策しよう、ということになったのだ。

 水中移動中の落下防止のため、レオニスの左右のポケットに入っていたフギンとレイヴン。ライト達が湖の畔に移動した直後、レオニスがポケットからそっと二羽を取り出して放ってやった。

 狭いポケットから解放された二羽は、早速元の大きさに戻り宙を飛びながら湖を見渡す。


「おおお……ここが、ウィカ殿がお住まいになられている『目覚めの湖』ですか。何と雄大な……」

「こないだツィちゃん様の救出に駆けつけた時は、夜だったからあまりよく見えなかったけど……日の光のもとで見る『目覚めの湖』は、こんなにも広大なんだな!」


 目覚めの湖を間近に見たフギンとレイヴンが、心底感動しながら湖をキョロキョロと見回している。

 彼らが知る水場とは基本モクヨーク池であり、それ以外だと里の近場にある巌流滝くらいしかない。

 目覚めの湖はモクヨーク池の何十倍、いや、百倍以上は大きな湖。雄大な湖面が広がる光景に、フギン達が感動するのも無理はない。


 フギン達が目覚めの湖に感動している間、ラウルが空間魔法陣から皿を取り出してウィカに差し出した。

 それは、前々から約束していたウィカへの報酬の一つ『ジャイアントホタテの貝柱の刺身』である。

 直径50cmはあるジャイアントホタテの貝柱に、浄化魔法をかけてからウィカ用にぶつ切りにしたものだ。『マグロのぶつ切り』ならぬ『ホタテのぶつ切り』である。


 大皿にドドン!とばかりに豪勢に山盛りに乗せられている、大きなサイコロ状態のホタテの刺身を美味しそうに頬張るウィカ。

 2cm以上の角切りホタテが食べ放題とは、何とも贅沢なご馳走だ。

 食べているウィカも『ンー!目覚めの湖の貝も美味しいけど、海の貝も美味しいねー!』と言いながら、もっしゃもっしゃと食べている。

 実にご満悦そうなウィカに、横で見ているライト達も嬉しそうに眺めている。


 ウィカが『ケプー♪』と軽いゲップをしながら、ラウル特製ジャイアントホタテの刺身を粗方食べた頃。フギンとレイヴンがウィカに向かって改めて頭を下げる。


「ウィカ殿、今日も我らをお運びいただきありがとうございます」

「あざーッす!」

「レ、レイヴン!お前、ウィカ殿に何て失礼な……」

『いいよいいよー!フギン君は本当に真面目さんだねぇ♪僕は別に全然気にしてないし、むしろレイヴン君くらい軽い子も好きだよー?』

「ぅぅぅ……ウィカ殿のお心遣い、痛み入ります……」

「あざーッす!俺もウィカ殿のこと大好きだし、すっげー尊敬してます!」


 フギンとレイヴン、二羽してウィカに礼を言うのはいいが、レイヴンの軽さにフギンが苦言を呈する。

 一方のウィカは特に気にしていないので、糸目笑顔で笑いながらフギンに話しかける。そう、ウィカ自身も主人(ライト)に似たのか、基本キニシナイ!なタイプなのでレイヴンの軽さは全く問題ないのだ。


『じゃ、僕は戻るよ。また三日後ね!』

「ウィカ、ありがとう!またよろしくね!」

『任せてー!ラウル君も美味しいご馳走ありがとうね!』

「どういたしまして。またご馳走してやるからな」

『うん!楽しみにしてるね!』


 ウィカはトトト……と水面を軽やかに走り、ライト達の方を一度振り返ってから水中に消えていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ウィカと別れたライト達は、のんびりとカタポレンの森の中を歩いていた。


「レオ兄ちゃん、これからどうするー?」

「目覚めの湖に来たついでと言っちゃ何だが、ナヌスの里に寄り道していこうと思っててな」

「あー、ナヌスね……近いうちに行かなきゃならなかったし、ちょうどいいんじゃない?」


 ライトとレオニスの今後の行動の相談に、ラウルが不思議そうな顔をしてライトに問うた。


「そのナヌスの里ってのは何だ?」

「あ、ラウルはナヌスの里には一度も行ったことがなかったっけ? えーとねぇ、ナヌスってのは小人族の一種で、オーガの里の隣にあるんだ」

「ほう、ならこの目覚めの湖の近くにあるってことか」

「そうそう。でね、オーガの里には侵入者対策として結界を作って運用してるでしょ? その結界を作ったのが、ナヌスの人達なの」


 ナヌスが何たるかを知らないラウルに、ライトが懇切丁寧に解説していく。

 ここまでライトが分かりやすく説明すると、ラウルははたと閃いたような顔になり、その表情がパッ!と明るくなっていった。


「オーガの里の結界を作ったってことは……ツィちゃんの結界を相談しに行くってことか!」

「そうそう、天空島のエルちゃんのところでもそんな話をしてたでしょ? ナヌスの人達は、結界作りの達人なんだ」

「ああ、そういやそんなこと言ってたな!」


 ナヌスの里に行く目的が理解できたラウル。

 うんうん、と頷きながらライトの話に納得している。


「ちなみにナヌスの作る結界は、悪意を持つ人族とか自分達よりはるかに大きな生き物なんかに反応して弾くんだって。だから、結界の中に入るには特別な許可証?みたいなアイテムが要るんだ。【加護の勾玉】っていうんだけどね、ぼくもレオ兄ちゃんもそれをナヌスからもらってるんだ」

「俺はその許可証を持ってないが……もしかして、このままじゃナヌスの里に入ることはできないのか?」


 ナヌスの結界の仕組みを聞いたラウルが、不安そうな顔でライトに問うた。

 ユグドラツィの結界について話し合いをするのだから、ラウルとしても是非ともその話し合いに加わりたいと思っている。

 だが、他者を弾く結界がラウルの行く手を阻んだら―――ラウルはその話し合いに参加することができない、ということになる。

 ラウルが一転して不安そうな顔になるのも、無理はなかった。


「ンー、そこら辺はぼくもよく分かんないんだけど……でも、幻獣のフォルとか水の精霊のウィカなんかは『森の友』と認定されるから、何もしなくても結界を素通りできるんだよね」

「そしたら俺はカタポレン生まれの妖精だから、その【加護の勾玉】ってのがなくても入れるかもしれないってことか?」

「うん、実際やってみないと分かんないけどね。……あ、ここら辺に結界があるはずだよ、ここからはゆっくり歩いてみようか」


 歩きながらナヌスの解説をしているうちに、かつてライトが結界に弾かれた場所に近づいてきた。

 ライト達は歩を進めるスピードを落とし、一歩一歩ゆっくりと奥に歩いていく。結界は完全な無色透明で、肉眼では捉えられないのだ。


 そうして歩いていくと、ラウルとフギン、レイヴンがある一点で足止めを食らった。


「……ここに何かがあって、前に進めんぞ……」

「ラウル殿もですか? 私もここから何か、柔らかい壁のようなものに阻まれてます……」

「俺もフギン兄様と同じく、柔らかい壁があって前に進めません……」


 ラウル、フギン、レイヴンが、必死に両手や両翼を前に突き出して押してみるも、そこから先に全く進めないようだ。


「あー、皆多分大きさ的にアウト判定が出たんだと思うー」

「何ッ!? 俺らの体格が大きいからダメだってのか!?」

「うん。だってここ、小人族の里だもん。いくら悪意や邪気がなくても、自分達より何倍も大きな生き物が入ってきたら踏み潰されちゃう危険があるでしょ?」

「そ、そりゃそうだが……」


 ラウル達が結界に阻まれて入れない理由は、ライトが推察した通りだ。

 かつてフォルやウィカが結界を素通りできたのは、悪意がないことに加えて体格が小さかったからだ。

 だがラウルの場合、例えその出自が『カタポレンの森で生まれた妖精』であっても、体格が人族のレオニスと大差ない大きさという時点でアウトだったのだ。


 これは、八咫烏兄弟二羽にも同じことが言える。

 魔力の大きさに比例して、体格も立派になっていく八咫烏。そのサイズは普通のカラスよりもはるかに大きい。

 その大きさは、ライトが両腕を回しても抱えきれない程であり、小人族にとっては十分な脅威となり得るサイズだった。


「くッそー、俺ほど善良な妖精はいないってのに……」

「全くです……我等八咫烏は神格の高い霊鳥として、その名を馳せているというのに……」

「……ま、身体の大きさ的にダメって言われたらしゃあないよなぁ。何しろ行き先は小人族の里なんだし」


 ラウルとフギンがぐぬぬ……と悔しがる中、意外なことにレイヴンだけは冷静に現実を見て受け止めている。

 普段から言動が軽くてチャラいと思われがちなレイヴンだが、その分変にプライドが高くなくて臨機応変に立ち回れるのだろう。

 これはやはり、三男坊という気軽な立場の成せる業であろうか。


「そしたら皆、ちょっと待っててねー。今からナヌスの人と交渉してくるから」


 ライトがラウル達にそう言うと、少し先に進んで木の上を見上げながら声をかけた。


「おーい、エディさん、いるー? ぼくだよー、ライトだよー」


 大きな声で呼びかけて、しばらくすると木の上から一人の小人が飛び降りてきた。毎度お馴染み、結界を見張る衛士のエディである。


「よう、ライト。久しぶりだな!」

「こんにちは!エディさんもお元気そうで何よりです!」

「おう、俺はこの通り、いつでも元気いっぱいだぜ!」


 ライトともすっかり顔馴染みとなったエディ、一切警戒することなく気安く話をしている。

 ライトが前回ナヌスの里を訪ねたのは、三月下旬の春休みの時。

 クエストイベントのお題の一つに出てきた『小人族の丸薬』を求めて訪ねて以来なので、五ヶ月ぶりのことである。


 ライトと和やかに話しつつも、少し先で待っているレオニス達をちろりと見遣るエディ。

 ナヌスの里を守る者として、ちゃんと職務を果たす立派な衛士である。


「ン? 今日はお連れさんが多いようだな?」

「うん、今日はレオ兄ちゃんとラウルと、あと他にも八咫烏二羽といっしょに来たんだー」

「あの紅い大きな兄ちゃん、レオニスだっけ? あれは前にも何度か見たことあるな。もう一人の黒くてデカい奴と、巨大なカラス二羽が入れなくて困ってるってことか?」

「うん、そうなんだー。だから、今からヴィヒトさんにお願いして【加護の勾玉】を借りようと思ってて」


 ライトが事情を話すと、エディが腰に着けているポーチのような袋から何かを取り出した。

 それは、紛うことなき【加護の勾玉】だった。


「ほれ、これを使いな」

「これ……【加護の勾玉】だよね? いいの!?」

「ああ、少し前から族長から預かっててな。『ライト殿やレオニス殿のお知り合いが来たら、貸し出すように』って言われてんだ」

「そうなの!?…………ありがとう!」


 エディの手のひらに乗せられた、五個の【加護の勾玉】。

 それは、ナヌスの族長ヴィヒトがライトとレオニスのために用意し、予めエディに渡しておいたものだった。


 ヴィヒトのその指示は『ライトとレオニスが連れてきた者達ならば、信用に値する』『我々は、ライトとレオニスが信用する者を無条件で受け入れる』というもの。異種族であるライトとレオニスに対しての、全幅の信頼の証であった。

 そのことを瞬時に理解したライトは、感激の面持ちでエディに礼を言う。


「エディさん、ありがとう!」

「いやいや、礼はうちの族長に言ってやってくれ。族長は、俺ら以上にライトやレオニスのことが大好きだからな」

「もちろん!後でたくさんお礼をするよ!じゃ、早速この【加護の勾玉】を借りていくね!」

「おう、慌てて走ってすっ転ぶなよー」


 エディから【加護の勾玉】三個を受け取り、踵を返して嬉しそうにラウル達のもとに駆け寄っていくライト。

 ナヌスの初めての人族の友の嬉しそうな背中を、エディは微笑みながら見守っていた。

 久しぶりのナヌスの里訪問です。

 作中でも書いた通り、前回のナヌス訪問は作中時間でいうところの三月下旬、春休み以来ですね。話数で言えば第471話に当たります。

 300話ちょいぶりのナヌス訪問ですが、前に出たキャラが歳月を経て再登場するのは作者的にもなかなか嬉しかったりします。

 新キャラ登場ももちろん楽しいですが、こうして時折既存キャラもなるべく活用していけたらいいなー、と作者は思いますです( ´ω` )

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