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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第774話 カイの作業場ともふもふ三昧

 カイを先頭に、カイの作業場へ向かったライト達。

 カイの作業場はセイの作業場より奥にあり、中もかなり広々としていた。

 部屋の中央にはとても大きな机があって、ドレス用の生地と思しき布も多数置かれている。

 布の他にもレースやリボン、紐などの副資材があるのが見える。


「うわぁ……ここでカイさん達の素敵なドレスが作られているんですねぇ……」

「この奥には剣や防具を打つ鍛冶場もあるんだけど、今日のところはこっちの裁縫場の紹介だけでいいかしら?」

「もちろんです!」


 カイの問いかけに、即時承諾するライト。

 夏真っ盛りの今、鍛冶の炉に火を入れたらきっとものすごく暑いに違いない。


「ごめんなさいね。今私達が鍛冶を担当するのは、アクセサリーの鋳金以外だともうレオちゃんからの依頼くらいしかないから……鍛冶をするのも、本当にたまにしかやらないのよね」

「カイ姉、いつもすまんな」

「そんなことないわ。ドレスを縫うだけじゃ、鍛冶の腕は落ちてしまうもの。鍛冶仕事を忘れないためにも、たまにはレオちゃんの武具の手入れをさせてもらわなくちゃね」

「そう言ってもらえると助かる」


 カイの話によると、近年はもう九割以上がドレスおよび装飾品関連の仕事ばかりだという。

 カイ達が孤児院から独立し、三人でアイギスを開店した頃は武具と服飾は半々くらいの割合でやっていた。

 だが、その服飾技術の高さが特に貴族達に好評を博して以来、服飾関連の仕事は増す一方。

 おかげで鍛冶をする暇はほとんどないほどになり、今や世間的には『アイギスと言えばドレスの超一流ブランド!』という認識が一般的である。


 作業場の中には、裁断用の大きな机の他にミシンと思しき装置や編み機などもある。

 ライトはそれらの機材を見ながら、カイに問うた。


「あれはもしかして……ミシン、ですか?」

「ええ、そうよ。ライト君、よく知ってるわね」

「ラグーン学園の図書室の本で見たことあります!多分というか、絶対に高い機械ですよね?」

「そうねぇ、それでも【乙女の雫】の一割程度だけどね」

「【乙女の雫】の一割…………」


 カイの作業場にあるミシンは、いわゆるアンティークミシンと呼ばれるもので、現代日本にあるような電動式ではなく足踏み式のミシンである。

 レトロ感溢れるお洒落な佇まいのミシンだが、カイにとっては現役バリバリに使いまくる愛機だ。

 そしてカイは愛機の具体的なお値段は明かさないものの、カイの言う【乙女の雫】の約一割というと推定200万G、日本円にして約2000万円相当。

 そのお値段に驚愕するライトだが、設備投資と思えばその価格も十二分に理解できるというものだ。


「ドレスや服の縫製は全てミシンで行えるから、服を作ること自体は然程手間はかからないのよ。生地の裁断も秘密兵器があるから、木型さえあればスイスイ切れるし」

「秘密兵器、ですか?」

「そう、これよ」


 カイが裁断用の机の上にあった、小刀を手に取ってライト達に見せた。

 それは『切り出し小刀』と呼ばれるタイプで、いわゆるアートナイフとかデザインナイフと同種の刃物である。


「これもセイの特製ヤスリと同じ、オリハルコンとヒヒイロカネの合金で作った小刀なの」

「おおお……切れ味すごそうですね……」

「どんな分厚い布でも革でも、まるで紙を切るようにスイスイと切れるのよ。こないだラウルさんに作ったお祝いの品、天空竜の革だってスパスパ切れちゃうんだから」

「何ソレすごい!」


 カイの秘密兵器の小刀も、セイの特製ヤスリ同様にオリハルコンとヒヒイロカネの合金でできているという。

 そのせいか、小刀部分は然程大きくなくて小振りだ。やはりオリハルコンもヒヒイロカネも稀少性の高い金属だからであろう。


「でも、縫製や型取りはスイスイできても、レース作りや刺繍が一番時間と手間がかかるのよね」

「あー、確かにそうですねぇ……刺繍もレースも一針一針手縫いで作るんですよね?」

「ええ。だから刺繍やレース作りは、私達三人が全員で暇を見ては作り貯めておくのよ」

「うわぁ……大変な作業だぁ……」


 アイギスのお店の表から見えるショーウィンドウには、ウェディングドレスのような白いドレスや黒のドレス、軍服やコートなどが飾ってある。

 それらのドレスにも、非常に繊細で美しいレースや刺繍がふんだんに使われているのをライトは見て知っていた。


「それでも最近は、ライト君が作ってくれる飾り紐のおかげでかなり助かってるのよ」

「そうなんですか?」

「ええ。特に男性用の貴族向けの礼服には、飾緒が欠かせないし」

「飾緒……金糸や銀糸で作るアレ、ですよね」

「そうそう、ここ最近ライト君に作ってもらっているアレね」


 飾緒というのは、主に軍服や礼服などに着ける飾り紐のことを言う。

 女性用のドレスに用いられることはほとんどないが、アイギスが貴族から受注するのは何も女性用ドレスばかりではない。

 男性用の礼服もそれなりに需要があるのだ。

 特に貴族の夫妻が『パーティーで着る礼服とドレスを、お揃いの生地で作りたい』という依頼も多いという。


「今まで飾り紐も、全部私達が一本一本編んでたんだけど。最近はライト君が紐作りといっしょに飾緒作りも請け負ってくれてるから、その分の時間を刺繍やレース作りに回せるって訳」

「そうだったんですかぁ。カイさん達のお役に立てて、ぼくも嬉しいです!」


 ライトは前から飾り紐をアイギスに納品していたが、紐作りの腕を見込まれて最近では稲穂結びやフィッシュボーン状の飾緒を作って納めることも多かった。

 手間隙がかかる飾緒をライトが仕事として請け負い、大量に作ってカイ達に渡すことでカイ達の作業の一つが減って助かっていた、という訳である。


 そんな四方山話をしながら、カイが副資材置き場から何かを持ってきた。

 それは、ライトが作った金糸の飾緒だった。

 煌びやかな紐に、マキシと八咫烏姉妹の目が釘付けになる。


「これを使って、マキシ君のお姉さん達へのプレゼントを作りましょう」

「「「えッ!?」」」


 カイの突然の提案に、それまで金色の飾緒に目を奪われていたマキシ達が驚きの声を上げた。


「僕の姉様達のために、そんなことをしてもらってもいいんですか!?」

「もちろんよ。初めて人里に来られたんだから、思い出の品として持って帰っていただきたいの」

「ムニン姉様、トリス姉様、良かったですね!」

「「ありがとうございます!」」


 カイからの厚意にマキシが大喜びし、ムニンとトリスもまた嬉しそうに礼を言う。

 光り物に目がない八咫烏達、カイからの粋なプレゼントが本当に嬉しいようだ。


「そしたら、普段過ごしている大きさになってもらえるかしら? この飾緒を、ネックレスというか首飾りにしてあげたいから、首周りの正確なサイズを図りたいの」

「「分かりました!!」」


 カイの要請の言葉が言い終わるや否や、それまでライトの肩に留まっていたムニンとトリスがパタパタと飛び立つ。

 裁断机の上に降り立ち、ボフン!と本来の姿に戻った八咫烏姉妹。その大きさたるや、大型犬と大差なさそうなビッグサイズである。


 元の大きさに戻った八咫烏姉妹を見て、カイ達が感嘆の声を上げる。


「まぁぁぁぁ……八咫烏がとても大きな身体をしていることは知っていたけど、改めて見ると本当に立派な体格ね!」

「ホントね……時々譲ってもらうマキシ君の羽根も、大きくて立派だけど……お姉さん達もとても大きくて艶やかで、綺麗な羽根をしてらっしゃるのね!」

「そしたら、早速首周りのサイズを図りましょうか」


 カイがメジャーを持ってきて、裁断机の上におとなしく留まっているムニンの首周りのサイズを図り始めた。

 だが、何故かメジャーをムニンの首に当てたまま動かないカイ。

 微動だにしないカイの、突然の謎の行動に皆が「「「???」」」と訝しがっていると、カイが小声でボソリと呟いた。


「…………もっふもふぅ…………」

「「!!!!!」」


 カイのうっとりとした呟きに、セイとメイの目が大きく見開かれる。

 カイが突如動かなくなったのは、ムニンの首周りに腕を回した時にそのふわもふな羽毛に埋もれたのが原因だった。

 そのことを瞬時に察したセイとメイが、ムニンの胸元に埋まったまま未だにうっとりしているカイに慌てて声をかける。


「カイ姉さん!そのメジャーを私にも貸して!トリスちゃんの首周りは私が図るわ!」

「いいえ、ここは接客担当である私の出番よ!」

「いやいや、それを言ったらアクセサリー全般を担当している私こそが相応しいわよ!」

「こればかりはセイ姉さん相手でも譲れないわ!」


 アイギス三姉妹の次女と三女が、己の欲望を剥き出しにして言い争っている。普段はとても仲の良い三姉妹が、ここまで言い争うのは珍しいことだ。

 突如騒がしくなったことに、ムニンもトリスもどうしたらいいか分からない。

 三姉妹の喧騒を見かねたライトが、セイとメイに声をかけた。


「あのー……ここにいる八咫烏は、ムニンちゃんとトリスちゃんだけじゃないですよ?」

「「!!!!!」」


 ライトの言葉に、セイとメイの首がギュルン!と回り、マキシの姿をその目に捉える。

 突如彼女達のターゲットとなったマキシは「!?!?!?」と絶句している。

 そんなマキシの肩に、レオニスがポン、と手を置いて諭すように話しかけた。


「ここはアイギスの平和を取り戻すためだ、マキシも一肌脱いでやってくれ」

「えッ!? えッ!?」


 マキシを凝視していたセイとメイは、二人して顔を見合わせながらコクリと頷く。アイコンタクトだけで何か決まったようだ。

 一方マキシは、レオニスの容赦ない言葉にキョロキョロと左右を見回しながら躊躇している。

 そんなマキシに、メイが目を爛々と光らせながら近づく。


「マキシ君!貴方も八咫烏族長一族の末弟だったわよね!」

「は、はい……」

「私はアイギス三姉妹の末妹、末っ子同士仲良くしましょうね!」

「は、はいぃ……」

「でもって、せっかくだからお姉さん達だけでなく、マキシ君にも飾緒の首飾りを作ってあげる!お姉さん達とお揃いの品を作りましょう!」

「は、はいぃぃ……」


 マキシの両手を握りながら、顔面10cm前まで迫るメイ。

 有無を言わさぬメイの超弩級のド迫力に、マキシは圧倒されてただただ頷く他ない。

 マキシの承諾を得られたメイは、張り切った様子でマキシの手をパッ☆と離し踵を返した。


「今から予備のメジャーを取ってくるから、マキシ君はその間に元の姿に戻っておいてね!」

「は、はいぃぃぃぃ……」


 八咫烏の羽毛のもふもふを存分に堪能した後、ムニンの首周りを図り終えたカイ、カイからメジャーを受け取って早速トリスの首周りを図りつつ、早速トリスのふわふわ羽毛に埋もれるセイ、そして自らもマキシの羽毛に埋もれるべく急ぎ予備のメジャーを取りに走るメイ。

 珍しく騒がしいアイギス三姉妹の姿に、ライト達はただただ『平和だなぁ』と思いつつ見守っていた。

 セイの仕事場披露の次は、カイの作業場のお披露目です。

 アイギスはドレスの超一流ブランドということで、カイの主な仕事も縫製関連が占めています。

 という訳で、今回はミシンの歴史を検索検索ぅ!(・∀・)


 ミシンって、1755年には登場してるのですね(゜ω゜)

 今あるミシンとは違う仕組みのものらしいですが、それでも260年以上も前からあったことに驚きです。

 しかもミシンの前身である編み機は1589年の発明だそうで、400年以上も前のことでもっと驚き!さらには近代ミシンの原理となったミシン針の発明ですら1810年、200年以上も前のこと。

 どれも人力式で電動式ではないし、これほど歴史あるものなら異世界に登場させてもいいでしょう!てことで、アイギスでの縫製はアンティークミシン使用ということにしました。


 他にも文中に出すために、型紙や小刀、刺繍やレース、飾緒なんかも検索しまくったり、昨日から今日にかけてずーーーっと下調べ三昧でした。

 でも、作者もハンドメイドは好きなので、下調べのためとはいえそこら辺を検索するのはなかなかに楽しかったです( ´ω` )

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