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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第757話 市場での買い物

 ライトとレオニスは朝のルーティンワークを終え、ラグナロッツァの屋敷に戻った。

 階下に行くと、何やら良い匂いがする。どうやらラウルが食堂で何かの料理を作っているようだ。


「ただいまー」

「おう、おかえりー」

「ラウル、何を作ってるの?」

「八咫烏でも食べれそうなタコ焼きを作ってんだ」

「ああ、それいいね!冷ましたタコ焼きなら、ムニンさん達にも普通に食べてもらえそうだもんね!」


 ラウルがタコ焼きを作っていると聞き、ライトも大賛成している。

 タコ焼きは、言ってみれば揚げドーナツの親戚みたいなもの。間違いなく八咫烏達が烏の姿のままでも食べられる、数少ないメニューの一つである。


 ラウルがタコ焼き用の鉄板を用いて、ヒョイヒョイと手際良くタコ焼きを焼き続けている。

 シュパパパパ!と息をつかせぬ勢いでひっくり返していくその様は、タコ焼き専門職人を思わせる凄腕だ。

 ちなみにタコ焼き用の鉄板も、かつて祭りの屋台の主人に頼み込んで鉄板だけ売ってもらったものらしい。

 タコ焼きを買いに来た客だと思ったら、開口一番『その鉄板を売ってくれ!』と言われた屋台の店主、さぞやびっくり仰天したに違いない。


 一方ムニンとトリスは、ラウルの作業の邪魔にならぬよう少し離れた出窓に留まり、じーーーっ……と見ている。その表情はとても真剣だ。

 八咫烏に限らず、野に生きる者達に料理をするという概念はない。故に、ラウルの作業の一つ一つが興味深いのだろう。


 出来上がったタコ焼きを皿に乗せ、ソースを刷毛で塗るラウル。

 瞬時に香ばしい香りが漂い、ムニン達の嘴から思わず涎が垂れそうになっているのはきっと気のせいではない。


「ラウルのそれが焼き上がったら、ぼちぼち市場に出かけるぞー」

「了解ー」

「ムニンとトリスは小さい姿になっといてくれ。そのままの体格じゃ目立ってしょうがないしな」

「「分かりました!」」


 レオニスの指示に、ラウルと二羽の姉達は素直に従う。

 マキシもそうだが、八咫烏は普通の烏より何倍も体格が大きい。そのままの姿でラグナロッツァの中を連れ回すのは、ほぼ不可能に等しかった。

 ラグナロッツァに来た時同様、早速文鳥サイズになったムニンとトリスがレオニスに問うた。


「またそのポケットに入ればよろしいですか?」

「いや、外を出歩く分には俺やラウル、ライトの肩などにでも留まってくれればいい。ただ、アイギスじゃないが店によっては動物不可なところもあるかもしれんから、その時はポケットに入っててくれるよう頼む」

「「分かりました」」


 レオニスとムニン達が問答している間に、ラウルもタコ焼きの仕上げを終えてエプロンを外し、出かける支度をしていた。

 朝食時には普段着だったラウル、今は黒の天空竜革装備一式を着ている。ラウル曰く『案内中に何があっても対応できるように』&『ご主人様達が戻ってきたら、すぐに出かけられるように着替えといた』とのこと。

 ラウルもだんだん冒険者としての心得を身につけていってるんだなぁ……とライトは内心で感嘆する。


「ご主人様達、お待たせ」

「よし、じゃあ皆で行くか」

「はーい!」


 準備万端整えたライト達、ムニンとトリスを連れてラグナロッツァの屋敷を出ていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「「……ぉぉぉぉぉ……」」


 数多の行き交う人々を見て、ムニンとトリスが嘆息を洩らす。

 ここはアクシーディア公国首都ラグナロッツァ、その中でも最も賑わうヨンマルシェ市場。多数の露店に行き交う人々、その繁盛ぶりにムニン達はずっと左右をキョロキョロと見回している。


「とりあえず、ラウルが行きたい店を先に回るか。ラウル、俺達はラウルについていくから案内頼むぞ」

「了解ー」


 まずはラウルの買い出しに付き合うことにしたライト達。

 ラウルは昨晩の話し合いの時に、果物屋や調味料の買い足しをしたい、と言っていた。その話の通り、まずは果物屋に寄るラウル。

 果物屋では、いつものおばちゃんが対応に出た。


「あーら、ラウルさん、いらっしゃい!」

「よう、おばちゃん。久しぶり」

「今日は皆でお買い物かい?」

「そうそう。今日は俺の勤め先のご主人様達と買い物ツアーしてるんだ」


 いつもは一人で買い出しに来るラウルが、今日は珍しく大人数で来ている。

 挨拶がてら雑談していた果物屋のおばちゃんが、ライト達にも挨拶をしてきた。


「仲が良くていいことだねぇ。坊ちゃん、旦那さん、こんにちは!」

「初めまして、こんにちは!うちのラウルがいつもお世話になってます!」

「まぁまぁ、何て賢い坊ちゃんなんだろうねぇ!」

「こんにちは。この果物屋はたくさんの果物があっていいな。しかも見るからに上物が多い、こりゃラウルがご贔屓にする訳だ」

「あらヤダ、旦那さんもお口が上手いねぇ!」


 ライトの挨拶を褒め、果物屋の商品ラインナップを褒めたレオニスの肩をバンバン!と叩く果物屋のおばちゃん。

 見るからに気さくなおばちゃんである。

 そんなおばちゃんと、いつものように商談?を始めるラウル。


「おばちゃん、今日のオススメの果物は何だ?」

「今朝入ったばかりの超大玉スイカがあるよ!」

「そりゃちょうどいい。他にも何かいいものあるか?」

「そうだねぇ、桃やメロン、ブドウなんかもあるよ!」

「メロンはもうそろそろ旬が終わる頃だよな。……よし、そしたらメロンと大玉スイカは全部くれ。あと、桃とブドウとバナナと……」


 果物屋のおばちゃんのオススメを聞きながら、あれもこれもと買い込んでいくラウル。その量は、とてもじゃないが買い物カゴの一つ二つじゃ済まない。

 その豪快な買い込みっぷりを見たライトが、思わず心配そうにラウルに問うた。


「ラウル、すっごい買い込んでるけど、そんなにたくさん使うの?」

「おう、ここ最近はスイーツ、特にマカロンの消費が激しくてな。他にも手土産でスイーツを持っていったり、出先のお茶会で振る舞うことも多いし」

「……ぁー、うん、そうだねぇ……」


 ラウルの爆買いの理由を聞いたライトとレオニス、ものすごく納得している。

 ここ最近、誰の仕業とは言わぬがマカロン食い尽くしの刑に遭ったりすることが多い。他にもライトやレオニスからスイーツのおねだりを受けたり、何しろラウルの作るスイーツの需要が高まる一方なのだ。

 そのことに改めて気づいたライトが、レオニスに向かって小声で囁く。


「レオ兄ちゃん、ラウルに渡す食費を増やしてやってね……」

「ああ、そうだな……ラウルのスイーツは、俺達にとってもはや立派な必要経費だもんな……」


 ライトの要請に、レオニスも大いに頷く。

 ライトもレオニスも、これまでラウルの料理に何度助けられたか分からない。

 属性の女王達とのお茶会を始めとして、銀碧狼アル親子や八咫烏の族長一族、果てはウォーベック侯爵家への手土産などでも絶賛大活躍している。


 特に初めて会う者に対して振る舞うラウルのスイーツ、その破壊力は筆舌に尽くしがたい。

 どんなに警戒心剥き出しの相手でも、一度ラウルの極上スイーツを口にすればすぐにその極上の味の虜にしてしまう。

 そう、ラウルの料理はライト達の冒険者活動においてもはや欠かせない必需品であり、必要経費扱いしてもいいくらい重要な地位となっていた。


「毎度ありー!」

「おばちゃん、またな」


 買い物を終えて果物屋を出たラウル。

 動物連れということで、なるべく店の外側にいたレオニスとともにいたムニンとトリスが小声で呟く。


「何か、とても甘い香りがするお店でしたねぇ」

「ええ、花の香りなら時折風に乗って里にも漂うことはあるけれど……」

「里にはあのような甘い香りのするクダモノ?というものは、全くないものねぇ」

「いつか我が里にも、あのような心躍る甘い香りが漂う日が来るといいわね」


 八咫烏の里に限らず、カタポレンの森の中で甘い果実がなる木は無いに等しい。

 強いて言うならば、闇の女王が住まう暗黒の洞窟最奥にも何か果実が実っていたが、あれはノーカンだろう。


 果物屋を出た一行。ヨンマルシェ市場の中をのんびりと歩きながら、レオニスがラウルに問うた。


「ラウル、次はどこに行くんだ?」

「行きつけの調味料店と、あとは牛乳屋にも行っておきたいかな。バターやチーズ、ヨーグルトなんかも欲しいし、何より生クリームを作るには大量の牛乳が要るからな」

「……よし、今日のラウルの買い物の金は全部俺が持とう」


 これから行きたい店を聞いたレオニスが、今日のラウルの買い物の代金を全部支払うという宣言をした。

 これは、今から行く牛乳屋で買う物のリストが明らかにスイーツ用だったためである。

 それを聞いたラウル、ギュルン!と首を90°向けてレオニスの顔をガン見する。その顔と瞳は、キラッキラに輝いている。


「いいのか!?」

「おう、お前の料理にはいつも助けてもらってるからな」

「そしたらさっきの果物屋の代金も持ってもらえるか!?」

「ぉ、ぉぅ、もちろんだ……」

「ありがとう、ご主人様!」


 レオニスの代金全額持ちを聞いたラウル、何と先程の果物屋の代金負担までおねだりしてきたではないか。何ともちゃっかりとした妖精である。

 果物屋での買い物は、レオニスが全額負担宣言する前の出来事なので本来なら不遡及扱いされても文句は言えないところだ。

 だが先程の果物屋の買い物も、全てラウルのスイーツに生まれ変わることは必然だ。ならばきっとライトもレオニスも、いずれその恩恵に与るであろうことは明白である。

 故にレオニスも、ラウルのおねだりを却下することはなかった。


 ラウルの要領の良さに、レオニスが思わず苦笑しながら答える。


「そしたら、店に寄る途中で冒険者ギルド総本部に寄っていいか? 今日はたくさん買い物しそうだから、口座から金を下ろしておきたい」

「もちろんだ。ついでにムニン達にも冒険者ギルドの中を見せてやれるしな」

「そしたらクレナさんにも会おうよ!」

「そうだな、それがいいな。じゃ、今すぐ総本部に行くか」


 レオニスの提案に、ラウルもライトも賛成する。

 特にラウルにとっては、これから思う存分買い物するための資金調達のための寄り道。否やがあろうはずもない。

 他の店に寄る前に、ライト達一行は冒険者ギルド総本部に向かっていった。

 久しぶりのヨンマルシェ市場です。

 作中でヨンマルシェ市場が出てきたのはいつぶりかしら?と思い、サルベージしてみたところ。第600話でラウルがアイテムバッグの号外を入手した時以来ですねー。

 その時も果物屋で買い物していたのですが、その果物屋と今話の果物屋は同じお店です。

 果物を買うならここ、調味料はこの店、牛乳ならここ、というように、ラウルには全てのジャンルにおいて行きつけのお店があります。

 と言っても、肉や魚は最近他の街で買い込むことが多いので、ラグナロッツァの肉屋や魚屋からは若干遠ざかりつつあるのですが。

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