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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第751話 三回目の里帰り

 天空樹のいる島から、ドライアドの泉がある島に移動したライト達。

 特にラウルにたくさん群がっていたドライアド達が、我先にとばかりに泉に飛び込んでいく。


『はぁー、食べた食べたぁー……』

『ふぃー……』


 まるでゆったりと温泉に浸かって寛いでいるかのようなドライアド達。中にはお腹を上にして、仰向けでプカプカと水面に浮かぶドライアドもいる。

 何とも自由奔放な精霊達で、見ているライト達もフフッ、と微笑んでしまう。


 ラウルの絶品マカロンを食べまくったおかげで、先程まで満腹でまん丸だった彼女達のお腹がみるみるうちにへこんでいく。

 ドライアド達の話によると、彼女達が泉に浸かることで天空島の木々に水が行き渡るのだという。

 ドライアド達のお腹に収まった数多のマカロン、その美味しい成分?が泉の水に溶けていくことで『甘くて美味しい水』となって木々のもとに届けられているのだ。


 身体がすっきり軽くなったドライアド達が、ライトやラウル、ウィカのもとに再び飛んでいく。


『今日も美味しいものをたくさんくれてありがとう!』

『天空島の木の皆も、お水がとっても美味しいって喜んでたわ!』

『ウィカちゃん、また私達といっしょに遊んでね!』


 ライト達にわらわらと群がり、口々に礼を言ったり遊ぼうとおねだりをするドライアド達。

 ライト達はドライアドに礼を言いながら、ウィカとともに水中移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ドライアドの泉から、八咫烏の里のモクヨーク池に移動したライト達。

 ライトがマキシの里帰りについていくのは、これが三度目のこと。

 ユグドラシアのもとに向かう道すがら、皆とのんびり歩きながらライトはこれまでのことを思い返していた。


 初めて八咫烏の里を訪れたのは、去年の暮れのこと。ライトが冬休みに入ってからすぐの、年の瀬も押し迫る頃だった。

 その時はドラグエイト便の翼竜籠に乗って巌流滝まで運んでもらい、そこから八咫烏の里まで歩いていった。

 結界内に入ってすぐに衛兵に囲まれるも、魔力を取り戻したマキシの雷魔法で見事に返り討ちにしたのがつい昨日のことのように思える。


 二回目は、今年の黄金週間二日目。ウィカの水中移動で巌流滝に移動し、そこから徒歩で八咫烏の里へ移動。

 初めての時と同じく、この時も八咫烏の治安部隊の衛兵達に邪険に扱われてレオニスとラウルがブチ切れていた。八咫烏の里の者達のマキシを見る目が未だに変わらない、その問題の根深さが伺えた。


 そして三回目の今回は、八咫烏の里の中にあるモクヨーク池に直接移動。

 初めて八咫烏の里の中にダイレクトに移動した訳だが、ライト達ももう三回目の訪問になることだし、衛兵がすっ飛んでくることもないだろう。

 もっとも、衛兵がすっ飛んできて文句をつけたところで、レオニスやラウルの逆鱗に触れて威圧されて終了だろうが。


 こうして八咫烏の里への移動手段がどんどん簡略化されていき、あれ程遠かった八咫烏の里への移動時間もほとんどかからなくなった。

 もちろんこれは素晴らしいことなのだが、翼竜籠に乗っての空の旅も楽しかったなー、また機会があれば翼竜籠に乗ってみたいなー、とライトは思う。


 そんなことをつらつらと考えているうちに、大神樹ユグドラシアのもとに辿り着いたライト達。

 大神樹ユグドラシアのもとには、マキシの親兄弟達が勢揃いしていた。

 マキシの姿を見た母親のアラエルと、双子の妹ミサキがマキシ目がけてすっ飛んでくる。


「マキシ、おかえりなさい!」

「母様、ただいま」

「マキシ兄ちゃん、おかえりー!」

「ミサキもただいま、元気そうで良かった」


 母と妹に抱きつかれて、微笑みながら二羽を抱きとめるマキシ。

 八咫烏の里にいた頃のマキシなら、母と妹のパワフルさに圧倒されて簡単に地面に押し倒されていたことだろう。

 だが、マキシの体内に巣食う穢れが祓われてから、もうすぐ一年が経つ。本来の力を取り戻したマキシは、魔力も腕力も日々メキメキと上がっている。

 そう、今のマキシはかつて無能者と蔑まれてきた頃のマキシとは違うのだ。


 マキシ目がけてすっ飛んでいった母と妹に続き、後からのんびりと父ウルスや兄姉達がマキシのもとに来た。


「おかえり、マキシ!」

「貴方も元気そうね!」

「マキシ、お前また魔力が上がったんじゃないか?」

「おお、爪の深紫色もさらに濃くなってるじゃないか、すごいな!」

「そ、そんな……僕はまだまだ未熟者で、兄様や姉様達の足元にも及びません」


 満面の笑みとともに、口々にマキシを褒め称える兄姉達。

 かつてのマキシは、兄姉達とここまで会話をすることはほとんどなかった。

 家族間では除け者にこそされてはいなかったが、それでもどこか腫れ物扱いのような空気はあった。生まれつき魔力が高い八咫烏族にあって、ほとんど魔力を持たないマキシにどう接していいのか、兄姉達にも分からなかったのだ。


 そんな溝やわだかまりは、マキシの魔力が皆無だった真の理由―――他者に無理矢理埋め込まれた穢れによって搾取されていた、という事実が判明したことで取り去られた。

 それだけではない。今の八咫烏の里にマキシを馬鹿にする者はもういない。ウルスが八咫烏一族の族長として、里の者達にかつてのスケルトン襲撃事件の真相を明かした上で以下のことを通告していた。


『今後マキシを貶す者は許さない』

『人知れずシア様を長年守り続けてきたマキシを貶すことは、シア様を愚弄するも同然』

『シア様を愚弄する者は八咫烏一族に非ず、即刻里から追放』


 このウルスの厳命により、八咫烏の里内でのマキシの立場は確固たるものになった。

 百年以上も虐げられてきたのに、何を今更―――と思うことなかれ。

 八咫烏達の寿命は長い。さすがに神樹のように千年以上も生きることはないが、それでも三百年や五百年くらいは生きる長命種族だ。

 それまでマキシに何もしてやれなかったからこそ、ウルスはマキシの未来を絶対に守ると誓った。今更だろうが何だろうがこれからの未来、将来こそが最も大事なのだ。


 様々な苦難を乗り越え、今では温かく迎えてくれる家族がいることをマキシは本当に嬉しく思う。

 家族に囲まれながら、大神樹ユグドラシアの根元まで近づいたマキシ。

 真上を見上げながら、ユグドラシアに声をかける。


「シアちゃん、こんにちは!」

『おかえりなさい、マキシ』


 にこやかな笑顔ととも交わす二者に、それ以上の言葉は要らなかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後ライト達は、ユグドラシアのもとで少し遅めの昼食を取ることにした。

 いつものようにライトが敷物を出して地面に敷いたり、ラウルが空間魔法陣から料理を取り出して並べたり、テキパキと準備を進めていく。

 今日もウルス達全員を昼食に誘ったので、敷物四つに料理も三ヶ所分とかなりのボリュームだが、もてなしの達人であるライト達に抜かりはない。三分もしないうちに、サクサクと全てを整えていく。


 もちろんユグドラシアへの手土産である氷の洞窟の氷を出すことも忘れない。一通りの支度を終えたラウルが、人の頭ほどもある巨大な氷をユグドラシアの根の上にいくつも積み重ねる。

 夏の暑い空気に晒された氷は、間を置かずに解けていく。

 皆より一足先に魔力たっぷりの氷を味わうユグドラシアが、思わず『何と冷たく美味しい水でしょう……』と嘆息を洩らしている。


 全ての準備が整ったところで、レオニスが食事の挨拶をする。


「いッただッきまーーーす!」

「「「いッただッきまーーーす!」」」


 レオニスに続きライト達も唱和する。

 マキシだけでなく、ウルスやアラエル達も手を合わせるようにして全員翼の先端をくっつけて挨拶している。彼らも既に『美味しいものをご馳走になる時のマナー』として身につけたようだ。


 大神樹ユグドラシアのお膝元で、和やかな昼食会が始まっていった。

 天空島訪問の次は、マキシの里帰りです。

 神樹襲撃事件によりお出かけ中断していた行き先のうちの一つで、第713話で挙げていた行き先候補の最後の一つですね(・∀・)

 そう考えると、ライトの長い夏休みもそろそろ終わりが見えてきました。


 本文の中で、ライトの回想?でこれまでの八咫烏の里への里帰りを振り返りましたが。ライトが心の中で思っていた『翼竜籠に乗っての空の旅も楽しかったなー、また機会があれば翼竜籠に乗ってみたいなー』というのは、作者の心情を反映したものでもあります。

 本当はドラグエイト便の面々、シグニスやプテラナ、ナディアなども再登場させたいのですが、なかなかその機会がなく(=ω=)

 いつかまた獣人族兄妹も出せたらいいな( ´ω` )

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