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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第748話 ふわふわもふもふの空の旅

 カタポレン産のトウモロコシを始めとして、ニンジンや枝豆、キャベツにレタス等々たくさんの巨大野菜を存分に食べたヴィゾーヴニルとグリンカムビ。

 一回り以上大きくなった身体で地面に座り、『クエプー♪』『コケプー♪』と軽いゲップを吐きながら満足そうな顔をしている。


「ヴィーちゃんとグリンちゃん、お腹いっぱいになったようだね!」

「そうだな。手持ちの野菜の九割くらいで満足してくれて良かった。今朝もたくさん収穫してきたのが幸いしたな」

「マキシ君もお手伝いご苦労さま!」

「いえいえ、これくらい何てことないです!」


 ついでとばかりに残りの皮付きトウモロコシを処理し続けるラウルに、ライトが駆け寄っていく。

 一方でレオニスは、女王達と会話をしている。


『ヴィーちゃんとグリンちゃんに、たくさんのご馳走をありがとう』

『ヴィーちゃん達があんなに喜んでるのは、とても久しぶりのことだわ!』

「そうか、気に入ってもらえたなら幸いだ」


 二人の女王がとても嬉しそうに微笑みながら、礼の言葉をレオニスに向けて述べる。

 女王達の心からの賛辞に、レオニスもまた嬉しそうに微笑む。


『もしできたら、またヴィーちゃん達用の野菜を持ってきてくれると嬉しいわ。身体が大きくなったということは、ヴィーちゃん達にもまだまだ成長の余地があるということだから』

『ええ。あの大きな野菜をたくさん食べれば、ヴィーちゃんもグリンちゃんも今よりもっともっと、さらに強くなれるってことだものね!』

「分かった、ラウルに神鶏達用の野菜をたくさん作っておくよう頼んでおこう」

『お願いね!そしたら貴方達、次はいつ来れるかしら?』

「そうだな、二羽分の野菜を用意するには少し時間がかかるかもしれんが……月に一回か二回は届けるようにしよう」


 女王達の要請に、レオニスも頷きながら承諾する。

 もともとオーガ用に作り始めた野菜だが、神殿の守護神達へのご馳走にもなるとは嬉しい誤算だ。

 しかもその野菜を食べれば、ただでさえ強い守護神達がさらに強くなれるという。邪竜の島の討滅戦に向けて、更なる戦力強化が期待できるという訳である。

 討滅戦に参加するレオニスにとっても、ヴィゾーヴニル達が強くなることは大歓迎だ。


 よし、五ヶ月後の討滅戦に向けて、ラウルにもより一層野菜作りに励んでもらうことにしよう。……つーか、ラウルのやることがどんどん増えていってる気がするが……ま、いっか。俺もなるべく水遣りとか手伝ってやることにしよう。それに料理も野菜作りも、もはや両方ともラウルの生き甲斐だしな!

 レオニスがそんなことを考えていると、ライト達がレオニスのもとに寄ってきた。


「ご主人様よ、ヴィーちゃん達への御礼もできたことだし、そろそろエルちゃんのところに行かないか?」

「ああ、そうだな、エルちゃんの顔も見ていかないとな」


 ラウルの提案に、レオニスも頷きながら肯定する。

 今日のライト達の天空島訪問には、天空樹ユグドラエルに会うという目的もあるのだ。

 レオニス達の話を聞いていた光の女王と雷の女王が、レオニスに話しかける。


『そしたらグリンちゃんの背に乗っていくといいわ』

『もちろんうちのヴィーちゃんにも乗っていいわよ!』

「守護神の背に乗せてもらえるなんて、光栄なことだが……そんなことしてもらっていいのか?」

『いいわよ。グリンちゃん達に美味しい野菜をくれた人達ですもの』

『ヴィーちゃんだって、喜んで乗せてくれるわよ!ねー?』

『コケケー!』

『クェケケコ!』


 女王達の申し出に一瞬戸惑うレオニス。

 だが、ヴィゾーヴニル達の返事が意外に乗り気なようだ。

 神鶏達の明るい表情を見たライト、この絶好の機会を見逃す訳がない。キラッキラに輝くワクテカ顔で、鼻息も荒く興奮気味にレオニスに声をかける。


「レオ兄ちゃん!ぼく、ヴィーちゃん達の背中に乗りたい!」

「そうか。じゃあ俺とライトはヴィゾーヴニル、ラウルとマキシはグリンカムビに乗せてもらうか」

「うん!」

『私達も乗せてー♪』


 ヴィゾーヴニルとグリンカムビ、二羽いるのでライト達も二人づつに分かれて乗せてもらうことにした。

 ライトを抱っこしたレオニスが飛び、ヴィゾーヴニルの背中に乗り込む。ラウルとマキシもグリンカムビの背に乗る。

 そして、それまで満腹でずっとベッドで寝そべっていたドライアド達が、いつの間にか外に出てきていてライト達の肩やら背中に乗ってきたではないか。どこまでもちゃっかりとした木の精霊達である。


 四人と数多のドライアドを乗せた二羽の神鶏が翼を広げ、空に羽ばたき始める。

 神鶏の背に乗ったライトが、女王達に向けて大きな声で挨拶をした。


「光の女王様に雷の女王様、今日もありがとうございました!」

『いいえ、こちらこそ美味しいものをたくさんご馳走になったわね。ありがとう』

『ええ、ヴィーちゃんにグリンちゃんにまで美味しいものを食べさせてもらったし。本当にありがとう、また遊びに来てね!』


 ライトは女王達との別れを惜しみつつ、大きく手を振る。

 レオニスやラウル、マキシもまたにこやかな笑顔で小さく手を振りながら女王達を見つめている。

 地上からの客人四人とともに、ユグドラエルのもとに向かい飛び立った二羽の神鶏。輝く大きな翼を羽ばたかせて飛ぶ姿は、とても凛々しく頼もしい。

 守護神達の勇姿を見つめながら、二人の女王は手を振りながらいつまでも見送っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 天空神殿と雷光神殿、二つの神殿がある島から天空樹ユグドラエルのある島に移動したライト達。

 ヴィゾーヴニルとグリンカムビが、ライト達を島の上に降ろすべくユグドラエルの根元の前に降り立つ。


 艶やかな神鶏の羽根の上を、滑り台よろしくスルスルッと滑って下りていくライト。

 ヴィゾーヴニルやグリンカムビの羽根が、まるで油でも挿したかのようにツルッツルのすべすべなのは、先程食べたカタポレン産の野菜のおかげだろうか。


 ライト達四人とドライアド達を、無事ユグドラエルのいる島に送り届けた神鶏達にライトが礼を言う。


「ヴィーちゃん、グリンちゃん、ぼく達を乗せてくれてありがとう!ヴィーちゃんの羽根、すっごくふわふわもふもふで、とっても気持ち良かった!」

『クケケェ♪』

『……コケ、コケケ?』


 ライトに羽根を褒められたヴィゾーヴニルが、嬉しそうに鳴き声を上げる。

 時間にしたら、たかだか一分程度の移動だったのだが。極上羽毛によるふわふわもふもふの空の旅は、飛行機のVIP席以上に快適だったようだ。


 すると、グリンカムビがラウルとマキシの方を向いて小首を傾げているではないか。

 これはきっと、グリンカムビがラウル達に『ねぇねぇ、ワタシの羽根や乗り心地はどうだった?』と尋ねているのだろう。

 グリンカムビの視線を受けたラウルとマキシ、ニッコリと笑いながら神鶏の期待に応える。


「グリンちゃんの背中もふわっふわのもっふもふで、まるで雲に乗ってるかのような乗り心地だったぜ!」

「ええ!すべすべでキラキラで、ほんのりと赤く輝く羽根がとても素晴らしいです!同じ鳥類として、僕が嫉妬してしまうくらいに素敵な羽根です!」

『クエエェェ♪』


 ライトの褒め言葉を上回る大絶賛に、グリンカムビも満足そうに鳴き声を上げる。

 たくさん褒められて満足したのか、二羽はともに空に飛び立っていく。二羽のいつもの定位置である、ユグドラエルの天辺に戻るのだろう。


「ヴィーちゃん、グリンちゃん、ありがとう!またねー!」


 天空樹の上に飛び立っていったヴィゾーヴニルとグリンカムビを、ライトは大きく手を振りながらレオニス達とともに見送る。

 そして改めて天空樹ユグドラエルに向き直った。


「エルちゃん、こんにちは!」

『ライト、レオニス、ラウル、そしてマキシ、ようこそいらっしゃいました』

『エルちゃん様、こーーーんにーーーちはーーー♪』

『ドライアドの皆もこんにちは。今日も元気そうで何よりですね』


 ライトの挨拶に、ユグドラエルが明るい声で四人を出迎える。

 ライトに続き、ドライアド達も一斉にユグドラエルに挨拶するのはご愛嬌というものである。

 そして、マキシがここに来るのは初めてのことなのに、ユグドラエルがマキシの名までちゃんと呼んで歓迎していた。

 そのことにマキシが非常に驚きながらも、ユグドラエルに挨拶をし始めた。


「ユグドラエルのエルちゃん、初めましてこんにちは。僕は、大神樹ユグドラシアのシアちゃんをお守りする八咫烏一族の一羽、マキシと申します。僕の名前までご存知だったなんて、光栄の極みです」

『マキシのことは、シアからもよく聞いておりましたよ。とても心優しくて、長い間シアを守り続けてきた英雄の如き強い子だ、と……シアは貴方のことを、そう言っていました』

「シアちゃんが……そんなことを言ってくれていたんですか……」


 ユグドラエルが語る話に、マキシが感激の面持ちで涙ぐむ。

 マキシ自身には、八咫烏の里に居た頃の良い思い出はほとんどない。だが、大神樹ユグドラシアを敬う気持ちだけは常にあった。

 そしてその気持ちは、八咫烏の里を離れて人里で暮らすようになった今でも、変わらずマキシの心の内にあり続ける。

 離れていてもマキシのことを想うユグドラシアの気持ちに、マキシの胸が熱くなる。


 マキシの自己紹介が済んだところで、今度はレオニスがユグドラエルに声をかけた。


「エルちゃん、久しぶり。具合の方はどうだ?」

『レオニスもこんにちは。おかげさまでこの通り、恙無く過ごせておりますよ』

「そうか、それなら良かった」

『それもこれも、全ては貴方方とヴィゾーヴニルのおかげです……我が妹、ユグドラツィの生命を救ってくれて、本当にありがとう……』


 レオニスの気遣いに、今度はユグドラエルが感極まり言葉に詰まる。

 きっと先日の神樹襲撃事件のことを思い出したのだろう。

 弱めの風が吹き、ユグドラエルの枝葉を揺らす。サワサワという心地良い葉擦れが響く中、ライト達はユグドラツィ生還の喜びを皆でともに噛み締めていた。

 雷光神殿訪問の次は、天空樹ユグドラエルとの再会です。

 先日の神樹襲撃事件では、ユグドラエル自身に直接害が及んだ訳ではありませんが。直接の負傷はなくとも、心の傷を深く負っている可能性もあります。

 ライト達はそれを心配して様子を見に行った、という訳です。


 それにしても、作中でレオニスが考えていたように、ラウルの働きの重要性がますます増加していってる気がするー。

 凄腕料理人というだけでなく、辣腕農家としての道を歩むことになろうとは……生みの親たる作者もびっくり仰天ですよ!∑( ゜д゜)

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