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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第741話 思いがけない副産物

 オーガの里で、飲めや歌えやの賑やかな宴が開かれた翌日。

 ライト達は休息日ということで、久しぶりに丸一日を各自自由行動日とした。


「さて、と……今日は久々の休みだけど、何をしよっかなー」


 朝のルーティンワークを早々に終えたライト。

 カタポレンの家の自室でベッドにゴロンと寝転びながら、今日の予定を考える。

 できればこのまま一日中ゴロ寝していたいところだが、そうはいかない。何故ならば、ライトの夏休みも残り十日を切っているからだ。


 夏休みが終われば、必然的にラグーン学園の二学期が始まる。

 そうなれば、今みたいに丸一日を自由に過ごせるのは土日祝日のみの日々に戻るのだ。

 夏休みや冬休みなどの長期休暇は、本当にあっという間に過ぎ去ってしまうのである。


「はぁー……夏休みももうすぐ終わりかぁ……ホンット、夏休みって終わるの早いよねぇ……何で?」


 ゴロ寝しながらため息三昧のライト、マイページを開いてタップしながら各種ページを見ていく。

 そして、ふと目に留まったのは職業習熟度の項目。

 現在のライトの職業は【僧侶】の光系四次職【聖祈祷師】である。

 この習熟度が、いつの間にか★3から一気に★7まで上がっていたのだ。


「あー、習熟度がすんげー上がってるな……これ、こないだツィちゃんにフルキュアをかけ続けてたせいかな」


 ライトは職業習熟度が劇的に上がっていた理由をすぐに思いつく。

 それは、先日の神樹襲撃事件の時。思い起こせば、ライトはずっとユグドラツィに向けて回復スキルをかけ続けていた。

 樹木相手に効くかどうかも全く分からなかったが、とにかくライトもじっとしていられなかったのだ。


 後日ユグドラツィが語ったところによると『真っ暗な中で、僅かにほんのりと温かい空気に包まれていた気がする』と語っていた。

 これはレオニスやラウル、マキシ達八咫烏の浄化魔法だけでなく、人知れずライトがかけ続けていたフルキュアの効果もあったに違いない。


 意識を深く閉じ込めて、話しかけても答えてくれないユグドラツィ。ただただ彼女の回復を願い、SPが0になる度にエネルギードリンクをこっそり一口飲んではひたすらフルキュアをかけるライト。

 その時に飲んだエネルギードリンクの量は、後で空瓶を数えたら何と二十本にも及んでいた。


 エネルギードリンク一本でSP500回復するので、その二十本分といえばフルキュア一万回に相当する。

 今の季節が真夏で、水分補給も兼ねていたから良かったようなものの、他の季節だったら何十回もトイレの往復が必要になりそうだ。


 何はともあれ、あの神樹襲撃事件という大厄災がもたらした思わぬ副産物を発見したライト。

 職業習熟度を上げるつもりでフルキュア連打した訳ではないが、せっかくなのでそれをさらに活かすことにした。


「……よし、そしたら今日は習熟度上げに素材集めも兼ねて、咆哮樹の柴刈りに行こうっと!」

「転職神殿の皆にも会いに行こう。ここ最近バタバタしてて全然会いに行けてなかったし」


 そうと決まれば話は早い。

 サクッと出かける支度をして、外にいるラウルに声をかける。

 今日のラウルは、殻の焼却炉の二基目と三基目を作りに来ているのだ。


「ラウルー、ぼく今からちょっと森の散策に出かけてくるねー」

「おう、気をつけて出かけてこいよ」

「うん、いってきまーす!ラウルも焼却炉作り頑張ってねー!」

「ありがとよ、いってらー」


 ガーディナー組から再度購入したらしき、山積みの煉瓦。それを、モルタルを手際良く塗りながら積み上げていくラウル。

 巨大野菜の栽培に成功してからというもの、殻肥料の消費はうなぎのぼりする一方。故に焼却炉の二基目どころか三基目まで一気に増設しているらしい。


 ホンット、ラウルってすごいなー。料理だけじゃなくて、掃除も洗濯も完璧で、しかも冒険者になってお金もじゃんじゃん稼いで!

 さらには農家顔負けの超美味しい野菜もたくさん作れるなんて、もう非の打ち所無さ過ぎじゃね? お婿さん候補筆頭間違いなしじゃん!

 何でもできるイケメン万能執事とか、一家に一人は絶対に欲しくなるよね!でもうちのラウルは誰にもあげないけど!


 ライトはそんなことを考えながら、ラウルに出かける挨拶をした後再び家の中に戻り、自室の転移門から転職神殿に移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『主様!お久しぶりですぅーーー!』

『ライトさん、いらっしゃい』

『パパ様ー!寂しかったですぅーーー!』

「ぉわッ!」


 ライトが挨拶をする前に、転職神殿に入った途端にミーナやルディがライト目がけてすっ飛んできた。

 ライトが最後にここに来たのは、夏休みに入る前のこと。ほぼ丸一ヶ月ぶりのご無沙汰だったので、ミーアはともかくミーナとルディはライトに会えなくてとても寂しかったようだ。


 速攻でライトの身体に抱きつくミーナに、ミーナの身体ごとライトに巻きつくルディ。

 傍から見たら、黄金の大蛇に締めつけられているようにしか見えない図である。


 しかし、ギッチギチに締めつけられているのではなく、あくまでも優しくふわりと巻きついているところがルディらしい。

 ルディの内側で半ば埋もれかけているライトは、皆に向かってようやく挨拶をした。


「ミーナ、ルディ、しばらく来れなくてごめんね……ミーアさんもご無沙汰してます」

『いえいえ、ライトさんにもいろいろとご都合がありましょうし』

『『ぴええええん……』』

『これこれ、ミーナ、ルディ、ライトさんが困ってますよ? こうして会いに来てくれたのだから、まずはご挨拶して再会を喜びましょう?』

『『はいぃぃぃ……』』


 泣きじゃくるミーナとルディを優しく諭すミーア。

 ミーアの言葉に、ミーナもルディも素直に従う。

 本当に仲睦まじい姉弟である。


 ライトに巻きついていたルディが離れて、ミーナも改めてライトの前に立ち挨拶をした。


『主様、こんにちは!またお会いできて嬉しいです!』

『パパ様、こんにちは!僕、また身体が大きくなったって、姉様達に言われたんですよ!』


 涙目をぐしぐしと手の甲で擦りながら、笑顔を浮かべるミーナにルディ。

 一人じゃないから大丈夫、皆といれば寂しくないだろう、とライトは思っていたのだが、それは大間違いだったことを思い知る。


 ミーアが使い魔の卵から孵化したのが四月初旬、ルディは五月下旬。

 二人とも、このサイサクス世界に生まれてからまだ三ヶ月や四ヶ月しか経っていないのだ。

 力天使と黄金龍、どちらも知性の高い種族ではあるが、やはり中身はまだまだ幼くて当然だった。


「二人とも、本当にごめんね……ぼく、夏休みに入ってからずっと、休む間もなくあちこち出かけなきゃならなかったんだ」

『主様、その『夏休み』というのは一体何ですか? 普段はラグーン学園、でしたっけ? 集団生活を学ぶ場に毎日通っている、というのは前にお聞きしましたが……』

「夏休みというのは、夏の間ラグーン学園が長期間お休みになることを言うんだ。他にも長いお休みがいくつかあるんだけど、その中でも夏休みは一番長くて三十日くらいあるんだ」

『はぁー……何だかイマイチよく分かりませんけど、人族の生活というのはかなり複雑なシステムなんですねぇ……』


 人族の生活の営みに疎いミーナが、頭の上に『???』をたくさん浮かべながらライトの話を聞いている。

 学校という教育システムがない種族には、きっとそれらは聞いただけではすぐには理解しきれずちんぷんかんぷんだろう。


『ライトさんはその長い休暇を利用して、普段は行けない遠い場所などに出かけていた、ということですよね?』

「そうですそうです!さすがミーアさん、分かってくれてありがとうございます!」

『そしたらパパ様、お出かけしたところのいろんなお話を、いっぱい聞かせてください!』

「もちろんだよ!……あ、そしたら美味しいおやつでも食べながらお話しよっか!」

『『賛成ーーー♪』』


 ルディが旅の土産話をおねだりしてきたので、ライトがおやつを出すという。この夏の出かけた先の土産話なら、それこそ一晩中かけて語り明かせるくらいにたくさんあるからだ。

 そしてライトの言う『美味しいおやつ』に、敏感に反応したのはミーナとルディ。両手を上げての大賛成ぶりである。


 早速ライトがアイテムリュックからいつもの敷物を出し、ミーアやミーナもライトを手伝う。

 こうして久しぶりの転職神殿でのお茶会が始まった。

 久しぶりの転職神殿の面々です。

 この後に繰り広げられるであろうお茶会での土産話や咆哮樹の柴刈りまで入れちゃうと、またすんげーギッチギチのギュウギュウ詰めになっちゃうので、軽めのところで一旦分割。

 ライトの職業習熟度も順調に進めば、例のあの御方の出番も近づいてきます。

 ……なーんてことを書くと、あの御方からの圧が作者にかかることにぃぃぃぃ_| ̄|●

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