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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第727話 新しい名前の由来

 レオニス達と分かれて、ラキ宅を出たライト。

 子供達がいるであろう鍛錬場に向かう。

 鍛錬場とは基本的に訓練の場であるが、子供達にとっても良い遊び場なのだ。

 そして鍛錬場には、ライトの予想通りオーガの子供達がたくさんいた。


「あッ、ライト君!いらっしゃい!」

「今日ライトが来てるってのは、さっきこいつから聞いたぜ!」

「もうお話は終わったの?」

「うん。ぼくは今日は別にあっちにいなくてもいいから、皆と遊びに来たんだ!」


 ライトの姿を見た子供達が、早速駆け寄ってきてライトを取り囲む。

 子供とはいえ、背丈だけならもうレオニス並みもしくはそれ以上の身長を誇るオーガ族。まるで冒険者ギルドで屈強な大人達に囲まれているかの図だ。


 すると、しばらくしてルゥが鍛錬場にやってきた。


「ライトくーーーん!こーーーんにーーーちはーーー!」

「あッ、ルゥちゃん、こんにちは!」


 元気に手をブンブン振りながら、ライト達のもとに走ってくるルゥ。

 その横には、何やら大きな黒い塊がいる。

 それは、先日ライト達が使い魔の卵にパイア肉を与えて孵化させた黒妖狼だった。


「……これ、こないだ生まれた子だよね? まだ生まれて間もないのに、すっごく大きくなったね!」

「うん!私の三番目の弟、ラニよ!」

「もう名前もつけてもらったんだ!格好いい名前をつけてもらえて良かったね、ラニ!」

「ワォン!」


 ラニと名付けられた黒妖狼を、びっくりしながら眺めるライト。

 その大きさは、馬のポニーくらいの大きさに成長していた。

 孵化した直後はルゥの腕に抱えられるくらいだったが、その時よりも二回りは大きくなっている。

 ラニが使い魔の卵から孵化してまだ二週間くらいしか経っていないというのに、驚きの成長ぶりである。


 ルゥがラニの名前の由来をライトに語る。


「ラニって名前はね、パパとニルのおじいちゃんから一文字づつもらったの。パパやニルのおじいちゃんのように、強くて逞しい男の子になりますように!って願いを込めて、皆で考えて決めたのよ」

「そうなんだ……すっごく良い名前だね!」

「ありがとう!ライト君にそう言ってもらえると、ルゥも嬉しい!」


 ルゥによると、ラニという名前は自分の父親で現族長のラキの『ラ』と、前族長で今は長老のニルの『ニ』の文字をくっつけたものらしい。

 オーガ族最強の族長と長老、その二人の名前の頭文字をもらうとは、ラニにとってこの上ない栄誉である。


 名付けのエピソードを聞きながら、ラニを思う存分もふり撫でるライト。

 黒々としたふわふわな毛並みはとても艶やかで美しく、手入れが行き届いていることが手に取るように分かる。

 そしてそれは、間違いなくラニがルゥ達ラキ家やオーガの人達に大事にされていることの証だった。


「ラニは皆と仲良くできてる?」

「ワフン!」

「レンやロイとも仲良しだし、里の子たちともよくかけっこなんかしたりして遊んでるの。ラニはとってもお利口さんなのよ!」

「そっか……ラニ、皆に可愛がってもらえて良かったね!」

「ワォーン!」


 ルゥの言葉を聞き、ライトは安堵する。

 ルゥ達には決して明かせないが、ラニはただの生き物ではない。BCO世界の創造神(うんえい)が作り出した『使い魔』という特殊な存在である。

 フォルが里の近くで見つけて拾ってきて、成り行き上オーガの里の中で孵化させてそのままオーガの里に預けることになった。

 果たして黒妖狼がオーガの里で馴染むことができるかどうか、ライトはちょっぴり不安だった。だが、もはやその心配は要らなさそうだ。


「早くラニのお披露目の宴を開けるといいね」

「うん、とっても楽しみ!でも……」

「ン? どうしたの?」


 宴の話になるも、何故かルゥの顔が翳る。


「こないだから森が騒がしいって、大人達が真剣な顔で話し合っていたの。私達子供にも分かるくらいに森の空気がおかしかったし、しばらくは外に出るなって言われてたのよ」

「そうそう。五日前くらいから森の空気が落ち着いてきて、ようやく外に出ていいってなったけど」

「十日くらい前だったっけ? 結界の外の空気がものすごくおかしくなったよね」


 オーガの子供達が、最近森で起きた異変のことを口々に語っている。

 時期的に考えて、それは神樹襲撃事件のことを指していた。


「ライト君も、カタポレンの森に住んでるんだよね? ライト君は何か感じた?」

「う、うん。実は大事件があってね……」


 斯々然々(かくかくしかじか)これこれこうで、とライトが神樹襲撃事件のあらましを掻い摘んで話して聞かせた。

 あの事件のことを人族相手に話す気はないが、オーガ族はこのカタポレンの森に住む一員。彼らはユグドラツィと敵対関係にある訳ではないし、同じ森に住む者同士ということで情報共有してもいいだろう、とライトは考えたのだ。


 ライトの話を聞いた子供達は、とても驚いた顔をしている。


「そんなことがあったのか……」

「私達はまだ里の外に出たことはないけど、里の近くに神樹があるってことだけはおじいちゃん達から聞いたことがあるわ」

「その神樹が襲われたなんて……神樹は無事助かったの?」

「うん。皆で悪い敵を追い払った後、ラウルが一生懸命ツィちゃんを看病して、今はもう元気に回復したよ」

「そっか、神樹が助かって良かったね!」


 事件の結果を聞いた子供達が安堵の表情を見せる。

 子供達は里の外に出ないので、今まで一度もユグドラツィを見たことがないという。

 如何に屈強なオーガ族であっても、非力な子供のうちはカタポレンの森は危ないから外出禁止、ということのようだ。


「その悪い奴って、前にうちの里を襲った奴と同じなのか?」

「多分そうだと思う……このカタポレンの森でそんな悪さをするのなんて、あいつらしかいないよ」

「あいつらって、誰だ?」

「森の外に『廃都の魔城』という場所があって、そこにいる『四帝』って奴等が世界中で悪さしてるんだ」


 神樹襲撃事件とオーガの里襲撃事件の犯人が同じだ、とライトから聞いた子供達。

 皆異口同音に憤慨している。


「森の外の平地には、酷いことをする奴等がいるのね……許せないわ!」

「そんな悪い奴等、俺が大きくなったら退治してやる!」

「もしまたこの里にちょっかいを出してきたら、絶対にボッコボコにしてやらぁ!」


 廃都の魔城の四帝の一角【愚帝】の配下の屍鬼将ゾルディスが、暗黒蝙蝠マードンと単眼蝙蝠の群れを用いてオーガの里に襲撃をかけた事件。

 昨年の晩秋に起きた襲撃事件は記憶に新しく、まだ一年も経過していない。そして子供達にとっても、忘れられない忌まわしい事件だった。


「よし、もっともっと強くなるために、鍛錬頑張るか!」

「そうね、私達も弓の練習を頑張らなくちゃ!」

「ライト君は、皆の鍛錬を見学しててね!」

「うん、皆頑張ってね!」


 自分達の里を襲った犯人が、再びこのカタポレンの森で神樹を相手に残虐な攻撃を仕掛けてきた―――このことは、オーガの子供達の闘争心に火をつけた。

 自分達の身を守るためには、もっと強くならなければならない。

 そのためには、日々鍛錬を積み重ねていく他ない。

 男の子も女の子も、それぞれに鍛錬を始める。


 男の子は木剣を振り、女の子はダーツで弓の腕を高める。

 ライトはラニとともに、両方が見える場所の木陰に移動して座りながら鍛錬の様子を眺めることにした。

 皆が自主的に鍛錬を始めたことに、ライトは彼ら彼女らの頼もしい姿に心から感心しつつ、ラニをもふもふしていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして、小一時間程が経過しただろうか。

 鍛錬場に、レオニスが現れた。


「おーい、ライトはいるかー?」

「あッ、レオ兄ちゃん!スパイキーさんの服はどうなったの?」

「おう、あれからオーガのお母さん達がたくさんの服を持ってきてくれてな。その中から状態の良い物を上下三着分、譲ってもらえることになった」

「そっか、それは良かったね!」


 当初の目的通り、スパイキーの服を入手することに成功したようだ。


「じゃあ、もうそろそろ帰るの?」

「ああ。ラウルとラキがまだ宴の料理の話をしていて、バッカニア達もリーネのママ友達にまだ囲まれてるが。もう少ししたら帰るから、先にお前を迎えに来たんだ…………って、その黒い狼みたいなのが、今度の宴の主役か?」


 ライトの横にいた黒妖狼を見たレオニスが、ライトに尋ねる。

 オーガの里で新たな仲間が生まれて、ラキ家の四番目の子として迎えることになった、という話はレオニスもライトやラウルから聞いていた。

 だが、実際に会うのはこれが初めてのことである。


「うん。ラニって名前なんだって!ラキさんの『ラ』とニルさんの『ニ』をもらったんだって、すっごく良い名前だよね!」

「そうだな。あいつらから頭文字をもらったなら、この黒い狼もきっとものすごく強くなるだろうな」


 ラニの名前の由来を、ライトが嬉しそうに語る。それを聞いたレオニスもまた、嬉しそうに微笑んだ。

 ラキとニル、二人ともレオニスの親友だ。親友の名から文字をもらうことの意味を、レオニスもまたよく理解していた。


「早くラニのお披露目の宴が開かれるといいな!……って、そういえば、宴の日取りはもう決まったの?」

「ああ。三日後に開かれることになった」

「三日後ね!今から楽しみ!」


 ラニや宴の話で二人が盛り上がっていると、鍛錬をしていたオーガの子供達がその手を止めて寄ってきた。


「レオちゃん、こんにちは!」

「おう、ルゥじゃないか。久しぶりだな」

「パパ達とのお話はもう終わったの?」

「ああ、用事はもう済んだぞ…………って、ルゥ、しばらく見ない間に皆大きくなったな?」

「えー、そうかなぁ?」


 ルゥと和やかに挨拶を交わしていたレオニス。先日のライト同様、子供達の目覚ましい成長ぶりに気づく。

 というか、目線が明らかにレオニスより高いのだ。これは嫌でも気づくというものである。

 ルゥの少し後ろにいたジャンも前に出てきて、話に加わる。


「ライトもこないだ同じこと言ってたよなー」

「ジャン、お前もまたデカくなったね……」

「そうかもな!最近ご飯が美味しくて、三杯はおかわりするし」

「そんだけ食ってりゃ背もニョキニョキ伸びるわなぁ……」


 ルゥだけでなく、ジャンまで背がかなり伸びていることに驚きを隠せないレオニス。

 ルゥとジャンは、少し前まではほぼ同じような身長だったが、今は明らかにジャンの方が背が高くなっている。

 そのうち子供達で背比べをし始めた。


 するとそこに、バッカニア達が現れた。

 バッカニアの後ろにいるスパイキーが、首の後ろに巨大な風呂敷包みを担いでいる。


「おー、レオニスの旦那、ここにいたのか」

「お、バッカニアじゃねぇか。お下がりの試着は終わったのか?」

「おかげさまでな。スパイキーにピッタリ合う服を五着分もらったぜ!」

「おお、三着分って話だったはずだが、増えたんか?」

「オーガの奥様方のご厚意でな。状態の良いものが思ったより多くあったんで、当初の予定より二着分多くもらえることになったんだ」

「そうか、そりゃ良かったな!」


 予想以上の成果に、レオニスの顔も綻ぶ。

 そしてバッカニアの後ろにいたスパイキーが、レオニスに向かって話しかけた。


「レオさんのおかげで、俺の服には当分困らなくなったよ。本当にありがとう」

「気にすんな。俺達仲間だろ?」


 風呂敷包みを担いでいるため、深々と頭を下げることができないスパイキー。首を軽く前に倒してペコリと礼をする。

 真摯で真面目なスパイキーに、レオニスも微笑みを浮かべながら肩に手をポン、と置いてスパイキーの礼に無言で応える。


「さ、そしたらラグナロッツァの屋敷に帰って、お前達の服に付与魔法を施すか。……って、ラウルはまだラキんとこにいるのか?」

「ああ。もうそろそろ話が終わるから、先にご主人様達を呼んできてくれって言われてな」

「そっか、じゃあそろそろ行くか」


 バッカニアの話を聞いたレオニスが、帰宅の宣言をする。

 ライトも座っていた木の根元から立ち上がり、名残惜しそうにラニを撫でながらルゥ達に声をかける。


「じゃ、ぼくも帰るね。皆、また三日後に会おうね!」

「「「うん!」」」

「レオちゃんも、またねー!」

「おう、ルゥ達も鍛錬頑張れよ!」


 オーガの里で三日後に催される宴での再会を約束し、ライト達は鍛錬場を後にした。

 スパイキーの上着問題の完全解決に加え、そのついでに宴の主役である黒妖狼も再登場です。

 その名前『ラニ』は作中での解説通り、ラキとニルの頭文字をそのままくっつけちゃいました。

 ハワイなどでは女の子向けの名前のようですが、もともとは男女どちらにもつけられる名前なんだとか。

 拙作の黒妖狼はオスですが、まぁ響き的にもそこまで女の子女の子してないからいいかな!ということで『ラニ』に決定。

 将来きっととても強くて大きい黒妖狼に成長していくことでしょう。

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