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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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708/1681

第708話 襲撃事件のその後

 作者からの予告です。

 私事で申し訳ありませんが、明日の昼に作者のコロナワクチン四回目接種の予定が入っています。

 副作用の出方次第なのですが、明日もしくは明後日の投稿をお休みさせていただくかもしれません。

 ご了承の程、よろしくお願い申し上げます。

 ユグドラツィが謎の黒い粘液に襲われた事件が起きた後。

 しばらくは何事もなく平和な日が続いた。


 黒い粘液体との戦闘に無事勝利を収めた日は、さすがに皆疲労困憊でどうにも動けなかった。

 思えばあの日は、ライトとレオニスは朝早くからピースとともに炎の洞窟やエリトナ山で火の姉妹達に会いに出かけていた。

 その日一日ずっと慌ただしく過ごした後、さぁ寝るかという段になって闇の精霊からその危機を知らされたライト達。

 そのままカタポレンの森に直行し、謎の敵に襲われたユグドラツィを救うべく激戦を繰り広げたのだ。二人とも丸一日動けなくなるのも無理はない。

 ユグドラツィの根元で泣き崩れたまま寝てしまったライトは、次に目を覚ました時には外は夕暮れになっていたし、あの体力お化けのレオニスですら昼をとっくに過ぎる頃まで泥のように眠っていたくらいである。


 マキシはラグナロッツァの屋敷に帰宅後、少しだけ仮眠した後にアイギスに出勤し、事情を話してしばらくは一日置きの勤務に変更してもらえることになった。


「まぁ、カタポレンの森でそんな大変なことが起きていたの……」

「それは心配ね。レオやマキシ君からいつも聞いていた、とても優しい神樹がそんな目に遭うなんて……可哀想に」

「お店のことは気にしなくていいから、マキシ君もお見舞いや看病頑張ってね」


 カイ達も、ユグドラツィの枝で作ったフォルの置き物を撫でながらユグドラツィの身を案じていた。

 アイギス三姉妹から、思い遣り溢れる言葉をもらったマキシ。この人達のもとで働けて本当に良かった、と心から思う。


 そしてすぐにラグナロッツァの屋敷に戻り、またユグドラツィとラウルのもとに行こうと思っていたのだが。如何せんどうにも身体が重たくて思うように動けず、そのまま自分の部屋で倒れ込むようにして寝てしまった。

 やはりマキシもライト同様、体力の限界をとうに超えていた。


 ラウルはレオニス達が帰った後、定位置の席に座りながらしばし微睡んでいた。

 次に目が覚めた時には、あの優しい声で『ラウル、いくら夏でもこんなところで寝ては風邪を引いてしまいますよ?』と起こしてくれることを願いながら―――



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして各々が、次の日からまた日常生活を過ごしていく。


 ライトが予定していた、夏休みのお出かけは当面延期となった。

 本来ならプロステスで炎の洞窟を訪ねた後は、ツェリザークの氷の洞窟を訪ねたりファングの街でオーダーしたライトのワンドやラウルのオリハルコン包丁を受け取りに行くはずだった。

 だが、大事な友であるユグドラツィの身にあんな大惨事が起きた今、浮かれ気分ですぐにどこかに出かける気にはとてもならない。

 まだ夏休みは三週間近くあるし、少しくらい先延ばししても全く問題はない。

 もう少しユグドラツィの様子を見てから、また改めて日程を組み直そう、ということになった。


 だが、だからといって何もしないでいていい訳ではない。

 事件の翌日丸一日をほぼ休養に当てたその次の日から、ライト達は再び動き出す。

 まず二日後の午前中に、ピースが再びカタポレンの家にやってきた。あの時はろくにできなかった、事件の振り返り総括をするためだ。

 人間の記憶というものは、日が過ぎる毎に薄れゆき細かいところが思い出せなくなっていく。そうならないうちに、少しでも早く振り返って様々な問題点を抽出しておかなければならないのだ。


 午前中の涼しい空気が夏の暑い空気に入れ替わる頃、レオニスとピースの二人でユグドラツィのもとに向かう。

 今は急ぎではないので、のんびり会話しながら歩いていく。


「あ、そういやレオちん、こないだ借りた魔力吸収用の魔導具。今のうちに返しとくねーぃ」

「ああ、あれか。今日は着けなくて大丈夫なのか?」

「うん、今日はこの森に来ることが分かってたからね、同じ効果を持つ魔力吸収の呪符をちゃんと用意して、既に使ってきたから大丈夫!」

「そうか、ならいいが……」


 ユグドラツィ襲撃事件の際に、普段カタポレンの森に入らないピースのために渡しておいた、魔力酔い防止の魔力吸収用魔導具。

 それをピースが空間魔法陣を開き、取り出してレオニスに返却した。

 返してもらったレオニスも、己の空間魔法陣を開いて魔導具を仕舞い込む。


「しっかし、呪符ってのは本当に便利でいろんなもんがあるんだなぁ。下手すりゃ魔導具持つよりもお手軽でいいんじゃねぇか?」

「まぁねー。でも、呪符って基本消費型のものが多いから、同じ効果のものならコスパとか長期的にみてやっぱり魔導具の方に軍配が上がるけどねー」

「そうだなぁ。お前は自前で呪符を描けるからいくらでも自由に使えるけど、そうじゃなきゃその都度毎回金払って呪符を買わなきゃならんもんなぁ」

「そゆことー」


 ピースが描き、自らも用いる呪符の有用性に、レオニスが心底感心する。

 例えばの話、今ピースが使用している魔力酔い防止の呪符。

 これは魔術師ギルドで購入する場合、ギルド内売店にて一枚700Gで販売されている。

 その効果は一枚で三十分。カタポレンの森に一時間滞在するのに1400G、日本円にして14000円相当である。

 一方、同効果を持つペンダントは一般的価格2万Gで、吸収効果は二時間程度保つ。そして一度使用した後は、三日程放置すれば吸収した魔力をゆっくりと空中に放ち、再び使えるようになる。つまりは繰り返し再利用可能ということである。


 初期投資金額20万円相当とはなかなかにお高い魔導具だが、呪符三十枚程度の価格で繰り返し百回は使用可能なのが売りだ。

 つまり、カタポレンの森に何度も足繁く通う者には、使い捨ての呪符よりも魔導具の方がはるかにコスパが良いのだ。

 言ってみれば、現代日本における充電式乾電池やモバイルバッテリーのようなものと思えばよい。


「なぁ、俺にも呪符の描き方教えてくんね?」

「いいけど、それなら小生の弟子として魔術師ギルドの幹部候補生になってもらうよ?」

「ンーーー……そりゃ無理だ、諦めるか」

「レオちん、諦めるの早ッ!」


 いつだか、レオニスも『俺も呪符が描けるようになれたらいいんだがなー』みたいなことを言っていた。

 それを実現させるには、魔術師ギルドの正規会員となりピースに弟子入りした上で、幹部候補生として将来の魔術師ギルドを担う役目も果たさねばらならないらしい。

 生涯冒険者として生きるつもりのレオニスには、到底受け入れられない話だ。故にレオニスも早々に撤退するのである。


 そんな話をしているうちに、ユグドラツィのもとに辿り着いたレオニス達。

 そこには傷だらけで痛々しい姿のままのユグドラツィと、首狩り蟲の残骸を片付けているラウルがいた。


「よう、ラウル。片付けご苦労さん」

「おう、ご主人様。ツィちゃんの周りがこんな蟲の死骸だらけじゃあ可哀想だからな。ツィちゃんが起きた時に、びっくりしちまう」

「だな。そしたら俺も手伝おう」

「小生もお手伝いするよ!」

「そりゃ助かる。そしたら俺は倒木の片付けをしたいから、蟲の死骸の始末はご主人様達に任せる。よろしく頼む」

「了解」


 挨拶も早々に、レオニス達もユグドラツィの周辺の後片付けを手伝い始める。

 ラウルはそれまでしていた首狩り蟲の死骸の片付けをレオニス達に頼み、倒木の片付けに着手し始めた。

 ユグドラツィの中から這い出てきた、黒い粘液体。それを浄化したヴィゾーヴニルの光の強烈な爆風に、ユグドラツィの周囲のかなり広範囲の木々が薙ぎ倒されていたのだ。


 蟲の残骸の片付けも大事だが、倒木をそのまま放置しておく訳にもいかない。

 早速ラウルは倒れた木々の処理を始める。

 まず枝葉を打ち落とし、丸太として使えそうな部分を切り分けて空間魔法陣に収納していく。打ち落とした枝葉や幹をカットした丸太以外の部分、土魔法で掘り起こした根っこなどを一ヶ所に集めて風魔法で乾燥させていく。

 ここら辺は、かつてカタポレンの家の周辺で巨大野菜を作るための畑を開墾した時の経験が大いに活きているようだ。


 するとここで、ラウルが蟲の残骸を集めていたレオニスに声をかける。


「おーい、ご主人様。先にツィちゃんの枝を一ヶ所に集めといてくれるか。風魔法で乾燥させて、蟲の死骸を焼く時に使うから」

「はいよー」


 ラウルの要請に、レオニスが軽く返事を返す。

 レオニスとピースは、ラウルが先に作っておいた深くて大きな穴に首狩り蟲の死骸を放り込んでいた。

 その後ラウルの頼み通り、先にユグドラツィの枝葉を一ヶ所に集めてレオニスが風魔法で乾燥させていく。


 本来なら、この枝葉の一つ一つが貴重な素材だ。何しろ世界に六本しかない神樹の枝葉なのだから。

 靭やかな枝はもちろんのこと、艶やかな葉っぱの一枚だって出すところに出せばかなりの値がつく貴重品である。

 だが、首狩り蟲の大鎌で切り落とされた枝葉を売り物にしたり、何かに使おうとは誰も微塵も考えない。

 その理由は、いくつか挙げられる。


 まず、首狩り蟲の体液が飛び散ってついているものも多数あるし、一見綺麗な枝に見えても何が付着しているか分からない。黒い粘液体が這いずったところなら、もしかしたらまだ呪いの残滓がある危険性もある。

 そして何より、今ある枝葉はあんな大事件によって出た産物であるということだ。今ここにある枝葉で死骸を燃やす以外の何かに使おうという考え自体、ユグドラツィへの冒涜のように思えてならないからだった。


 レオニスは途中から風魔法の乾燥をピースに任せて、自分は新たな深い穴を土魔法で作り始めた。

 首狩り蟲の死骸があまりにも多過ぎて、とても深い穴の一つや二つでは処理能力が追いつきそうにないからだ。


 ラウルが倒木の根っこを掘り起こした跡を利用して、深い穴を増産していくレオニス。

 穴を掘り起こして山積みになった土は、また後日ラウルが畑に使うというので、一ヶ所に積んでおく。

 こうして深くて大きな穴を十個ほど作り、時折乾燥させた枝葉を混ぜながら首狩り蟲の死骸を放り込んでいく。

 穴の半分くらいになったら、ピースが火魔法で穴の中を焼いていく。


 ツィちゃんが起きた時に、綺麗な景色を見せてあげられるように―――その一心で、ラウル達は黙々と働き続けていた。

 ユグドラツィ襲撃事件のその後と後片付けの様子です。

 ぃゃー、これまでの流れを再確認すべく改めて直近の過去回を読み返してみたら。何と事件の日は、ライト達はプロステスの炎の洞窟&エリトナ山お茶会&プロステス領主邸訪問という、とんでもねー過密スケジュールをこなした直後のことでした。

 こりゃー体力お化けのレオニスでもキッツいよねー……ライトがユグドラツィの根元で泣き疲れて寝ちゃうのも当たり前っつか、よく最後まで起きていられたね、君……


 そして前書きでも予告として書きましたが、明日は作者のコロナワクチン四回目接種の日です。

 ぁー、また副作用出るんかなぁ……出ても発熱だけで済めばいいなぁ……

 つか、あと何回コロナワクチン接種すりゃいいんですかね?

 とにかく早よコロナ禍終われ!と願う作者です。

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