【第700話到達記念SS】とある日の紳士と淑女と子供達
今日はサブタイトルにもあります通り、700話到達を記念したSSをお送りします。
本編とは全く関係のないお話ですが、閑話休題として楽しんでいただければ幸いです。
「♪もぅーーー、一ッ週ぅ間、寝ぇーーーるぅーーーとぉーーー、おーーー正ぉーーー月ぅーーー♪」
寂れた裏路地から、そんな陽気な歌が聞こえてくる。
ここはラグナロッツァの端の方にある、貧民が住むエリア。
陽気な歌が聞こえてくるのは、貧民エリアの中でも一際ボロい建物。ラグナロッツァ孤児院である。
「ねぇねぇ、今日はクリスマスでしょ? サンタさん、来てくれるかなぁ?」
「もちろん今年だって来てくれるよ!ねぇ、シスター?」
「そうだねぇ……私がここに来たのは最近のことだから、この孤児院にサンタさんが来てくれるかどうかは全く分からないんだけど……」
今日は十二月二十四日、年の瀬も押し迫ったクリスマスイブである。
朝からサンタさんの到来を心待ちにしている子供達に、シスターマイラが苦笑しながら答える。
すると子供達は、呆れたような顔でフフッ……と笑いながら、マイラに向かって自信満々に語る。
「シスターったら、知らないの? サンタさんってのはね、良い子のところには必ず来てくれるのよ!」
「そうだぞ!いつも良い子にしてた子には一年に一度、クリスマスの日にご褒美としてとびっきりのプレゼントをくれるんだぜ!」
「そうそう!僕達いっつもお利口さんにしてたもん!だから今年も必ず来てくれるよ!」
「……だったらお前達のところには、プレゼントは一つも届かないんじゃないかねぇ?」
日頃からマイラの言うことをあまり聞かない子達に限って、その有り余る元気でサンタさんの存在を信じきっている。
とてもじゃないが、子供達の言う『いつも良い子にしてた子』に当て嵌るとはマイラには到底思えない。
ついぽろりと本音が零れてしまったマイラだが、そんなマイラの皮肉に耳を傾けるような子供達ではない。彼ら彼女らの耳は、己に都合の悪いお小言など完全スルーする仕様になっているのだ。
「サンタさん、今年はどんなプレゼントを持ってきてくれるかなー?」
「今からすっごく楽しみー♪」
「いつもはお昼前に来てくれるよねー」
「皆、サンタさんへのプレゼントは用意した?」
「「「うん!」」」
マイラそっちのけで、ずっときゃいきゃいと盛り上がっている子供達。
何かと手のかかる子供達だが、それでもサンタさんを心待ちにしてワクテカしている顔は子供らしさに溢れていて愛らしい。
いつも以上に賑やかな子供達を見て、マイラも小さく微笑む。
すると、礼拝堂入口の扉についている呼び鈴がチリン、チリン、と鳴り響いた。
「あッ!!サンタさんが来た!!」
呼び鈴の音を耳聡く聞きつけた子供達が、一斉に礼拝堂に向かって駆け出していく。
子供達が全力で走り出すのを見て、マイラが慌てて子供達を呼び止めた。
「ちょ、待ちなさい、お前達!そんな勢いで礼拝堂に入ったら、今度こそ床が抜けちまうよ!!」
「大丈夫大丈夫!」
「シスターも早く行こー!」
「ああ、もう、本当にお待ちったら!!」
オンボロな建物の中を、子供達全員がお構いなしにバタバタバタ!と全力で駆けていく。
だが、マイラにしてみればたまったものではない。
常にギシギシと不穏な音を立てる床がいつ抜けるか、そりゃもう気が気ではない。運営費がカツカツなこの孤児院で、今床が抜けて大穴が開いてしまっても修繕するアテなど全くないのだ。
「こりゃ雨漏りの修繕依頼より先に、床の修繕依頼を緊急優先で出さなきゃならないかねぇ……」
「でも雨漏りの方も、かなり酷くなってきているし……というか、私がここに来てからすぐに雨漏り修繕依頼を出したのに、未だに受けてもらえてないし……」
「もっともあの報酬額じゃ、見向きもされないのも仕方がないことだけどね……ハァ……」
子供達はさっさと礼拝堂に行ってしまったが、マイラだけはブツブツと愚痴りながらそろーり、そろーり……と床のご機嫌を伺いつつ、慎重な足運びでゆっくりと移動していく。
そうしてマイラが礼拝堂に辿り着いた頃には、子供達が一人の男を取り囲んでいた。
その男は見るからに筋骨隆々の見事な恵体をしていて、真っ赤な生地に白いふわふわの縁取りの上下服を着ている。同様の帽子とフサフサの白髭も着けていて、いわゆる『サンタクロース服』というやつだ。
そしてその右肩には、彼の身体よりもはるかに大きな白い袋を背負っている。
「やぁやぁ、子供達。今年も良い子にしていたかい?」
「「「うん!!」」」
「ンッフォゥ、それは素晴らしい!そんな良い子の君達には、今年もサンタさんから素敵なプレゼントをあげようじゃないか!」
「「「やったーーー!」」」
典型的なサンタクロースを模した、ムキムキマッチョなサンタさんの周りで大喜びしている子供達。
ムキムキサンタが徐に白い袋を床に置き、中からプレゼントを一つづつ取り出して礼拝堂の椅子の上に並べて置いていく。
「さぁ、一人一つづつ持っておいき。どれも素敵なプレゼントばかりだが、もしイマイチだと思ったら他の子と話し合って交換しても良いぞ」
「「「はーい!」」」
「それと、決してプレゼントの奪い合いをしてはいけないぞ? 物の取り合いで喧嘩するような悪い子がいたら、私は来年からここに来れなくなってしまうからな?」
「「「はーーーい!」」」
光り輝く笑顔を絶やさぬムキムキサンタの優しい指導に、子供達も素直に言うことを聞いている。
僕はこれ!私はこれ!俺はこのデカいの!等々、子供達は皆ワクテカ顔でわいわいとプレゼント選びをしている。
「ねぇ、サンタさん、早速プレゼントを開けてもいい!?」
「ああ、いいとも。皆で喜びを分かち合うといい」
「やったーーー!」
「皆がここでプレゼントを検めている間、私はシスターとお話をしてくる。皆、良い子にしてるんだぞ?」
「「「はーーーい!!」」」
早速プレゼントを開け始めた子供達。
その間にムキムキサンタは、礼拝堂の隅で子供達を見守っているシスターのもとに近づいていく。
「お初にお目にかかります、シスター。私はこのラグナロッツァにて冒険者ギルドの総本部マスターを務めております、パレン・タインと申します。以後お見知りおきを」
「……まぁまぁ!こちらこそ、冒険者ギルドの皆様方にはいつもお世話になっております!ご挨拶が遅れて申し訳ございません、私の名はマイラと申します。どうぞ気軽にマイラとお呼びくださいまし」
子供達に聞こえない程度の声で、ムキムキサンタの方から先に名乗りを上げる。胸に手を当てながら恭しく頭を下げるその姿は、実に紳士然とした優雅な振る舞いだ。
そしてマイラの方も、そのムキムキサンタの正体を知り慌てて自らも名乗る。
マイラは今年の秋にこのラグナロッツァに転勤してきたばかりなので、そのムキムキサンタが一体誰なのか全く分かっていなかった。
なので、子供達との交流の様子をずっと訝しがりつつ見ていたのだが。それが冒険者ギルドの総本部マスターとは、夢にも思わなかった。
総本部マスターとは、その組織の頂点に立つ者。全ての冒険者達の頂点に立つ程の人物なら、不審者などと疑う余地は全くありはしない。
「シスターマイラ、ですか。気高くも美しい貴婦人に相応しい、とても素敵なお名前ですな」
「あら、イヤですわ……冒険者ギルドの総本部マスターともなれば、社交辞令がお上手ですのねぇ」
「いやいや、私は嘘が下手なことで有名なのですぞ?」
「うふふ、そういうことにしておきましょうか」
初対面ながらも、和やかに会話するパレンとマイラ。実に見目麗しく話し方もとても理知的で、まさに理想的な紳士淑女の図である。
その一方で、子供達は次々とプレゼントを開封しては中身を確認している。
「わー、僕のはダンベルだ!」
「私のはプロテイン粉のセット!」
「こっちは……何ナニ、エキスパンダー?」
「あッ、これはお料理の本ね!えーと……『筋肉を作るためのメニュー100選』???」
皆それぞれに選んだプレゼントを手に、『???』が混ざった不思議そうな顔をしている。マスターパレンのチョイスするプレゼントに、センスを求めてはイカンザキ、ということか。
しかし、しばし不思議そうにしていた子供達の顔に、再び満面の笑みが戻るのにそう時間はかからなかった。
親兄弟のいない孤児院の子供達にとって、その中身もさることながら『誰かからプレゼントをもらえる』ということ自体が大きな喜びなのだ。
「使い方はよく分かんないけど、シスターなら分かるかな?」
「いや、シスターよりもバッカニアの兄ちゃん達に聞いた方がいいんじゃね?」
「それもそうかー。バッカ兄ちゃん達、次はいつ来てくれるかなぁ?」
「前に来た時に、もしかしたらそのうちちょっと遠くに修行に行くかもー、とか言ってたよねぇ」
「バッカ兄ちゃん達も、ああ見えてかなり忙しいんだよな。いろんなお仕事してて人気の高いパーティーだってよく聞くし」
「「「うんうん」」」
子供達には使い方がよく分からない、謎のプレゼント。その相談相手?に、中堅パーティー『天翔るビコルヌ』のリーダーの名前が挙がっている。
バッカニアにスパイキー、ヨーキャの三人からなる『天翔るビコルヌ』は、この孤児院から出ている激安ボランティア依頼を何度も受けている。
そのため孤児院の子供達とも顔見知りで、とても仲が良いのだ。
一人一個のプレゼントをもらえた子供達の笑顔を、少し離れたところで見ていたマイラ。彼女の顔にも嬉しそうな笑みが浮かぶ。
「子供達全員にプレゼントをいただけるなんて、何とお礼を言っていいものやら……本当にありがとうございます」
「いやいや何の、礼には及びませんぞ。未来ある子供達に、輝ける将来への道を指し示してやるのが我ら大人の務めですからな!」
「全く以て、貴方様の仰る通りです」
賑やかな子供達を眺めながら、マイラがぽつりぽつりと語る。
「私はつい最近ここに赴任してきたばかりで、この首都ラグナロッツァの右も左も分からない田舎者ですが……貴方様のような素晴らしい御方が、冒険者ギルドの長であると知り安堵いたしました。孤児院へのご来訪、心より感謝いたします」
「こちらこそ、シスターの御尽力にはただただ頭の下がる思いです。これからも、未来ある子供達を正しく導いてくだされ」
互いに頭を下げ合うマイラとパレン。
そんな二人のもとに、プレゼント開封の儀を終えた子供達がドタドタと駆け寄ってきた。
「シスター、見て見てー!こんな素敵なプレゼントをもらったよー!」
「まぁ、それは良かったねぇ。サンタさんにお礼を言ったかい?」
「皆でこれから言うの!ねー!」
「「「うん!!」」」
子供達は顔を合わせた後、横一列に並んでピシッ!と背筋を伸ばしながら整列する。
そして大勢の子供達がパレンを取り囲む二重三重の輪になり、全員が整ったところで最年長の男の子の「せーの!」という掛け声の後に、一斉に「サンタさん、ありがとう!!」というお礼の言葉を発した。
各々が選んだプレゼントを、両手もしくは両腕に大事そうに抱える子供達。その声はとても大きくて溌剌としている。
そんな子供達の礼の言葉に、常に笑顔のパレンの顔がさらに綻ぶ。
「皆本当に良い子達だな。サンタさんもまたこれから一年頑張るから、皆も日々何事にも頑張って大きくなるんだぞ」
「「「うん!!」」」
礼を言い終えた子供達が、次々とパレンに群がって抱きついていく。
子供達にとってパレンは、プレゼントをくれるサンタさんというだけではない。不遇な自分達にも惜しみない愛情と声援をくれる、正真正銘正義のヒーローだった。
「ねぇねぇ、サンタさん、今年は私達からもサンタさんへのプレゼントを用意してるのよ!」
「ンフォ? サンタさんなのに、プレゼントをもらってもいいのかね?」
「もちろんさ!だって、皆を喜ばせてくれるサンタさんにだってご褒美がなくちゃ!」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか、君達。では、遠慮なくプレゼントをいただくとしよう」
「うん!ちょっと待っててね!」
子供達はそう言うと、全員礼拝堂の一番前の席に向かって走っていく。どうやら子供達は、そこにサンタさんへのプレゼントを事前に置いて用意していたようだ。
駆け出す子供達を見て、マイラが慌てて「だから!お前達!走っちゃ駄目って何度も言ってるだろう!?」と叫ぶも、次の瞬間ハッ!とした顔で己の口を押さえる。
自分の真横にパレンがいたことを、すぐに思い出したようだ。
そしてマイラは口元に手を当てたまま「あらヤダ、私としたことが大声を出すなんて、はしたない……オホホホホ……」と笑って誤魔化す。
素の顔と余所様向けの顔が交差するマイラ、大人にありがちだが何とも愛らしい仕草にも見える。
礼拝堂の隅から戻ってきた子供達が、再びパレンを取り囲んで一斉にプレゼントを差し出した。
子供達の手には折り紙や小石、押し花、手紙などが握られていて、パレンの顔に向けて皆高々とプレゼントを掲げる。
「サンタさん、今年も素敵なプレゼントをありがとう!」
「サンタさんもお仕事頑張ってね!」
「また来年も来てね!」
子供達がパレンに差し出したプレゼントは、傍から見れば取るに足らないものばかりだ。
だが、子供達にとってはそれら一つ一つが大事な宝物であり、サンタさんを想いながら用意したもの。今自分達ができる精一杯を、子供達なりに尽くしたのだ。
子供達の心からの礼の品を見たパレンは、垂れた糸目の目尻がさらに垂れる。
恵比須顔の如きニッコニコの笑顔の口元は、真冬の雪原よりもさらに白い歯が燦然と輝く。
「ンッフォゥ……こんなにも素晴らしいプレゼントをもらえるとは、サンタ冥利に尽きるというものだ」
「そしたら、忘れないようにすぐに白い袋に入れて!」
「ちゃんとサンタさんのおうちに持って帰ってね!」
「ああ。君達からのプレゼントを置き忘れていく訳にはいかんからな」
子供達に促されたパレンが、プレゼントを入れてきた大きな袋に子供達からの贈り物を仕舞っていく。
そして全部仕舞って袋の口を縛ったパレンは、子供達の方に向き直る。
「では私はこれにて失礼する。他にもまだ私のプレゼントを待つ子供達がいるのでな」
「そうだね!まだまだサンタさんのお仕事はたくさんあるもんね!」
「他の子達にもプレゼント配るんだろ? 仕事頑張ってな!」
「また来年会おうね!」
「ああ、それまで皆もシスターのお手伝いや勉強を頑張るんだぞ」
「「「うん!!」」」
相変わらずパレンにくっついて離れない子供達。その頭をパレンがワシャワシャと撫でまくる。
そうして一通り全ての子供達の頭を撫で終えた頃、子供達が自然とパレンから離れていく。
帰るために礼拝堂の入口に向かうパレンの後を、子供達がぞろぞろとついて歩く。全員で外までお見送りするつもりのようだ。
礼拝堂の入口の扉を開けると、冬の寒気が礼拝堂の中に吹き込んでくる。
「うおッ、寒ッ!」と凍える子供達に、パレンは「風邪を引いたらいけないから、皆は中に戻りなさい」と促す。予算の都合で贅沢などできない孤児院には、子供達全員に四季折々の陽気に合わせた服など用意してやることができないのだ。
それ故に、真冬だというのに子供達の服も薄着数枚しか与えられていなかった。
薄着で寒さに堪えきれない子供達は、「サンタさん、またね!」「元気でね!」と別れの言葉を口にしながら次々と礼拝堂の奥に戻っていく。
そして入口に残ったのは、マイラとパレンの二人きりになった。
「今日は本当にありがとうございました。子供達のあんな笑顔を見たのは、ここに来てから初めてのことのような気がします」
「何の何の。私が好きでやっていることですから、どうぞお気になさらず」
「この孤児院に、毎年訪ねて来てくださっているのですか?」
お礼を言いがてら、パレンのムキムキサンタ歴を問うマイラ。
前任者が横領という不祥事を起こし、マイラはその後釜として新たに赴任した。懲戒解雇でろくな引き継ぎもされていないため、これまでのラグナロッツァ孤児院の出来事や行事、経緯などをマイラは全然知らないのだ。
「ええ。私が冒険者ギルドの総本部マスターに就任してから始めたことなので、もう十年くらいなりますか」
「まぁ、そんなに長く続けていらっしゃるのですね……その尊いお志、本当に素晴らしいですわ」
「ぃゃぃゃ、先程も申しましたが……これは未来ある子供達への投資でもあるのですよ。将来有望な冒険者になってくれれば、私も冒険者ギルドも助かる!という、私利私欲まみれの下心も大いにありますからな。ハッハッハッハ!」
パレンの言葉から、子供達へのプレゼントは全てパレンの私財から出ていることを察したマイラ。その志に、大いに感銘を受けている。
マイラからひたすら絶賛されるのが照れ臭いのか、パレンは己の行いを私利私欲、下心などと茶化しつつ高笑いする。
だが、そんな照れ隠しすらも爽やかな笑顔に満ちていて、彼の高潔さをひた隠しにすることなど到底できなかった。
「しかし……この孤児院もいい加減建て直しするなど、もっとできることがあるはずなのに……力になれず、本当に申し訳ない」
「そんな!そうしたことはお国や行政がすることであって、貴方様が気に病むことではございません!」
「……シスターマイラは、本当に心優しい御方ですな。きっとここの子供達も、シスターマイラのお導きにより立派に成長することでしょう」
紳士と淑女が、静かな微笑みを湛えつつ互いの目を見つめ合う。
二人の瞳は、良き理解者を得られたことに対する喜びに満ちていた。
「では、そろそろお暇させていただこう。子供達も中で待っておるでしょうしな」
「……そうですね。パレン様も、どうぞお身体にお気をつけて……そしてこれからも、アクシーディア公国の未来をお導きくださいませ」
二人は深々とお辞儀をした後、パレンが踵を返し静々と歩いていく。
そして三歩ほど進んだところで、ふと何かを思い出したのか再びマイラの方に振り向いた。
「……ああ、そういえばシスターマイラは、アクシーディア公国生誕祭をご存知ですか?」
「ぇ? え、ええ、来月の一月十七日がアクシーディア公国の建国記念日で、その前後の日を合わせて三日間に渡って盛大な祭りが催されるのですよね?」
「そうです。その公国生誕祭に、我が冒険者ギルドも店を出しておりましてな。よろしければ是非とも子供達と皆でお越しください。私も三日間店におりますので、精一杯おもてなしさせていただきますよ」
「……!!まぁまぁ、ギルドマスターから直々にお誘いいただけるなんて、何という光栄でしょう!是非とも子供達とお伺いさせていただきますわ!」
パレンからの粋な誘いに、マイラは喜びで頬を赤く染めながら頷いている。
「では、また会える日を楽しみにしております」
「ええ、私達も心より楽しみにしております……!!」
パレンが再び一礼し、白い袋を肩に担ぎつつ今度こそ薄暗い裏路地から去っていく。
冷たい寒気が時折マイラの頬を撫でる中、彼女はパレンの赤い背中が見えなくなるまでずっと見送り続けていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その時にかわした約束、アクシーディア公国生誕祭が来るのはそこから早くても二十三日後。
アクシーディア公国生誕祭の冒険者ギルドの店で、コスプレマスターであるパレンの真の姿———祭りのコンセプト『生誕祭に相応しき姿』(第351話参照)を見たシスターマイラがどんな反応だったか。
それは、読者の皆様方のご想像にお任せすることにしよう。
今日はななしの読者様からのご提案を受けて、700話到達を記念して閑話休題的なSSを掲載することにしました(・∀・)
ぃゃー、今までSSとか挿話とか全くしたことないんですが。しかも500話とか100話とか、如何にも記念日的な時にもしてこなかったというのに。
何で700話なんて中途半端な時にこんなんしてるかというと。それはもうひとえに、本編がキツい日が長く続いているからであります……
結果8000字近いボリュームとなってしまいましたが、ほんの少しの間だけでも一息ついて、息抜きできる回が欲しかったんですぅ_| ̄|●
題材もななしの読者様の提案に乗っかって、クリスマスネタにしました。
本日は12月16日、リアルタイムでももうすぐクリスマスが近づいてきているのでちょうどいいかなー、と(・∀・)
サブタイトルが川柳調になっているのは、偶然&ご愛嬌というもの。
本編は厳しい戦いが続いていますが、箸休めと思って挿話を楽しんでいただけると嬉しいです。
ちなみにサブタイトルの『第○○○話』は、次回以降もそのまま継続して加算していきます。
何でかというと、小説内の各話内の右上にある数字。あれ、投稿した部数に対応してるんですよねぇ。
なので、本編外の挿話だからといって話数を差し引いてしまうと、その数字とズレるという事態に…( ̄ω ̄)…
それは作者的にすんげー気持ち悪くて耐えられそうにないので、今後も挿話であっても話数カウントは全部通しでいきます!




