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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第684話 ピースの要望

 ピースの提案により、魔術師ギルドプロステス支部から一番近い公園でピースの朝食を摂ることになったライト達。

 ようやく仕事から解放されて、ウッキウキのルンルンステップで先頭を歩くピースの後をついていく。


「あッ、あの大きな樹の木陰で食べよーぅ♪」

「ピィちゃん、朝ごはんは持ってるの?」

「うん、小生も空間魔法陣使えるからね、食べる物はそこそこ持ってるよ!」

「そっか、なら安心だね!」


 24時間営業のコンビニなどないこのサイサクス世界。

 ピースの朝食の心配をしたライトが問いかけるも、空間魔法陣に食事のストックがあるから大丈夫と答えるピース。

 さすがは魔術師ギルドの総本部マスターを務めるだけのことはある。


 早速ライトが木陰の下に敷物を敷き、三人で座る。

 ライトやレオニスはラグナロッツァで朝食を摂ってきたので、朝食を食べるのはピースのみ。ピースは空間魔法陣を開き、中からおにぎりとお茶入りの水筒を取り出した。

 早速おにぎりを食べ始めるピース。もっしゃもっしゃと頬張りながら食べるその姿は、どことなくリスやハムスターなどの齧歯類を彷彿とさせる。


「ピィちゃん、秘書の人から仕事を持たされて先にこっちに来たって聞いたけど……何の仕事を持たされたの?」

「あー、えっとねぇ、主に熱晶石関連のお仕事かなー。ほら、今は夏真っ盛りでしょ? この時期はプロステスで熱晶石の生産が盛んになるから、熱晶石を作る魔法陣のお手入れやら何やらでここのプロステス支部が特に超忙しくなるのよねー」

「あー、そっかぁ、プロステスの熱晶石作りは今が一番忙しいもんねぇ」

「そゆことー」


 ライトの質問に、ピースは朝食のおにぎりをまくまくと食べながら答えていく。

 ピースが有給休暇中だというのに仕事を持たされたというのは、その行き先が他ならぬプロステスだったことに原因があるようだ。

 ピースの答えに、ライトも納得しつつ頷いている。

 それは、プロステスの姉妹都市であるツェリザークという都市を知っていれば必然的に分かることであった。


 冬に冷晶石を生産するツェリザーク、その晶石生成装着である魔法陣の運営管理は魔術師ギルドの管轄である。

 そして熱晶石は冷晶石の逆バージョンであり、熱と冷の温度差はあれどやっていることは完全に同じだ。

 冷晶石の繁忙期が冬ならば、熱晶石の繁忙期は夏。プロステスの熱晶石生産界隈は、今この時期が最も忙しいのである。


 そんな世間話をしながら、ピースはおにぎりを二つ三つ食べてお茶を飲む。

 お茶の水筒をササッと空間魔法陣に仕舞うあたり、どうやら朝食はそれで摂り終えたようだ。


「さて、そしたら今日はどこをどう回る? まずは一番の目的である炎の洞窟に行くか?」

「そだねー。皆でプロステスに来たのは、小生が炎の女王に会いたいっておねだりしたからだもんね!」

「じゃあ今から炎の女王様に会いに行こっか!」

「賛成ーーー!」


 行き先も決まったところで、敷物をササッと片付けるライト。

 早速三人は炎の洞窟に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 プロステスの外に出てから、炎の洞窟に向かってのんびりと歩いていくライト達。

 炎の洞窟に近づくにつれて、どんどん熱気が強くなっていく。

 まだ時刻は午前十時前だというのに、地面からはゆらゆらとした空気が立ち上る。

 晴れ渡る空とジリジリとした焼けつくような空気は、まさに真夏の炎天下そのものである。


「うへー、(アッチ)ィ……」

「そうだねー、街の中にいるより外壁の外の方が断然熱いねぇ」

「それでもだいぶマシになった方じゃないか? 何なら俺達が前に来た春の時の方が熱いくらいだったし」


 決して追いつくことのできない陽炎を前に、ひたすら歩いていくライト達。

 ライトはアイギス特製マント、レオニスは深紅のロングジャケットの付与魔法のおかげで、この炎天下でもバテることなく歩けている。

 もちろんピースが着用しているローブにだって、冷却性能がついていない訳ではない。ただ、仕事上がりで疲れているのか、もしくはもともと暑いのが苦手なのか、とにかく少しバテているようだ。


 そんなピースを見たライトが、マントの内側に常備している魔力回復用の飴玉をピースに差し出した。


「ピィちゃん、これ舐めるといいよ」

「おおッ、これは魔力回復のアメちゃんだね!? ありがッとーう!…………ンー、仕事の後の疲れた身体にアメちゃんは効くねぇ♪」


 ライトが差し出した飴玉を、早速口に放り込むピース。やはり少し疲れていたようだ。

 ならば、とばかりに今度はレオニスが空間魔法陣からグランドポーションを取り出して、ピースに差し出した。


「疲れてるならこれ飲め。体力回復にはポーション類が一番だ」

「ポーション不味い……キライ……」

「何ッ!? お前、これ一番高級なグランドポーションだぞ!? つーか、今から炎の洞窟に入るんだから、贅沢言わずに体力回復しとけって」

「う"ーーー……分かったぁ……」


 せっかくの厚意を無碍にされたレオニス、ガビーン!顔になる。

 今回レオニスがピースに差し出したのは、グランドポーション。いつもレオニスが飲むエクスポーションではなく、その二つも上のランクの上級品である。

 そう、これでもレオニスはレオニスなりに、ピースに対して精一杯気を遣っているのだ。


 レオニスは脳筋族なので、回復策に関しては某栄養ドリンク剤じゃないが『ファイトーーー!一本ーーー!』で何でも済ます傾向にある。

 だが、脳筋族のレオニスとは違ってピースは魔術師。

 呪符作成や魔導具作成などの折に、魔力回復のエーテル類は飲みつけていてその不味い味にも慣れている。しかし、体力回復のポーション類はまず絶対と言っていいほど飲まないのである。


 しかし、今から炎の洞窟に入るためにも体力回復しとけ、と言われれば、さしものピースも反論できない。炎の洞窟に行きたい!と言ったのは、他ならぬピース自身なのだから。

 渋々ながらも了承し、ライトからもらった飴玉を舐め終えた後にレオニスからのグランドポーションをチビチビと飲むピース。

 その道中で、ピースがふと思い出したように己の要望を口にした。


「あー、そだ、そういやレオちん達はいつも洞窟の中では魔物除けの呪符を使ってんだよね?」

「ああ。炎の女王は洞窟の最奥にいるが、そこまで行くのに魔物に邪魔されずにサクサク進みたいからな」

「実はさー、炎の洞窟の魔物の中で狩りたいやつがいるんだよねー。だから、今日は魔物除けの呪符無しで進んでもいい?」


 ライト達は洞窟などでは、効率重視で魔物除けの呪符を使うことが多い。それは効率重視であるとともに、ライトの身の安全をも優先するという側面が強い。

 だが今日は、何やらピースが狩りたい魔物が炎の洞窟にいるという。


「おう、そりゃまぁ別に構わんが……何を狩りたいんだ?」

「マンティコア!小生がいつも使う呪符作成用の筆ね、実は材料が全部マンティコアで出来てんのよ」

「そうなのか?」

「うん。筆の毛はマンティコアの獅子の(たてがみ)と山羊の髭の半々ブレンドで、柄はマンティコアの蛇の尾で出来てんのよ」


 ピースが炎の洞窟で狩りたいのは、マンティコアだと言う。

 マンティコアとは、獅子と山羊と竜、三つの頭を持ち背中に竜の翼が生えている魔物で、エビルキマイラや暗黒の魔獣の色違いコピペである。


 その三種類の中では、マンティコアは真ん中の強さだ。

 まずエビルキマイラが初期フィールドのボスとして登場し、その次に炎の洞窟のマンティコアが出てくる。暗黒の魔獣はレイドボスだったが、後に通常フィールドにも進出するようになる。

 そして炎の洞窟はBCOの中では中級フィールドに相当し、マンティコアはリポップする通常モンスターである。


 そんなマンティコアを、ピースが欲する理由。それは、マンティコアが呪符を描くための筆の素材だからだ、というではないか。

 その理由を聞けば、いつもピースの呪符の世話になっているレオニスに否やはない。


「お前が呪符を作るために必要ってんなら、そりゃ何としてもマンティコアを多めに狩っていかなきゃならんな」

「ありがとう!ぃゃー、ありがたいことにここ最近レオちんからの呪符作成依頼が多いからさー、そのための筆の予備を多めに用意しときたいんだよね!」

「いつもすまんな。お前の呪符には、俺達は本当にいつも助けられている」

「うん!ピィちゃんが作る呪符は本当にすごいよね!」


 ピースの願いを快く承諾したレオニスに、ピースもまた笑顔で礼を言う。

 だが、礼を言いたいのはライト達の方である。

 ピースに作ってもらった呪符のおかげで、何度窮地を救われたことか。特に今から行く炎の洞窟、その主である炎の女王は『ピースの勘』という理由で持たされた浄化魔法の呪符により、その命を救われたのだから。


 改めてピースに礼を言うレオニスと、ピースが作る呪符の凄さを大絶賛するライト。

 そんな二人に、ピースが慌てて両手を横に振る。


「そんなそんな!こちらこそだよー!レオちんが出してくれる呪符作成依頼は、いっつも書類仕事に埋もれている小生にとって本当に、本当に唯一の癒やしのひと時なんだからさ!」

「そうか……ならこれからも、ピースにはたくさんの呪符を描いてもらわなきゃな」

「うん!そのためにはマンティコアを何匹も仕留めて、ピィちゃんの筆の予備をたくさん作っておいてもらわないとね!」

「レオちん、ライっち……ありがとうね」


 仕事とお互いの利益に繋がるためとはいえ、自分の要望に対しここまで快く応じてくれることがピースには嬉しかった。

 そうして話していくうちに、三人は炎の洞窟の入口に辿り着いた。


「今日は魔物除けの呪符を使わんからな、気を引き締めていくぞ」

「うん!ライっちの護衛は小生に任せて!」

「レオ兄ちゃん、ピィちゃんの目的のマンティコアは、なるべく傷をつけないように仕留めてね!」

「おう、任せとけ。じゃ、行くぞ」

「「うん!!」」


 洞窟入口前で、改めて気合いを入れるライト達。

 さらなる熱気が漏れ出る中、三人は炎の洞窟の中に入っていった。

 いよいよピースと行く炎の洞窟探検です。

 今回はいつものように魔物除けの呪符を使わず、出てくる魔物を倒して進むライト達。

 炎の洞窟は炎の女王の住処で、その眷属?である魔物達を倒しまくって大丈夫なのか?と思うでしょうが、そこら辺は大丈夫。

 もともとこうした洞窟などのダンジョン系魔物は、奥に行かせないための防御壁のようなもの。いくらでもリポップするそれらを倒せないようでは、ダンジョンボスを倒すどころか最奥に辿り着くことすらできません。


 まぁ、傍から見れば『本当にそれでいいの?』と思わなくもないのですが、そこはBCOというゲームがベースの世界。もうシステム的にそういうものなのだ、ということで皆無意識のうちに納得しているのです。

 というか、リポップする通常魔物くらいは存分に狩れるようにしておかないと、今後ライトが魔物由良の素材が必要になった時に取れなくなっちゃいますしね…(´^ω^`)…

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