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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第682話 ライトの夏休みの宿題・観察日記編

 エンデアンでの長い一日を無事終えた翌日。

 この日は丸一日完全休暇である。


 本当は丸二日休みたいところなのだが、明後日からは一泊二日でピースと炎の洞窟に出かける予定が入っている。

 自分達だけならいくらでもスケジュール調整できるが、ピースもいっしょに出かけるのでそうもいかない。魔術師ギルドの総本部マスターの有給休暇はとても貴重なものなので、兎にも角にもピースの日程を最優先しなければならないのだ。


 とはいえ、炎の洞窟なら先日火の女王とともに出向いたばかりだし、エリトナ山遠征や海底神殿、シュマルリ山脈遠征などに比べたら危険度はかなり低いだろう。

 それに、もし万が一危険な場面に遭遇したとしても、レオニスとピースがいれば問題ない。現役最強の金剛級冒険者と魔術師ギルド総本部マスター、この二人がいれば多少の危険など些事にもならない。

 そんな訳で、今日は特に準備などすることもなく各自のんびり過ごす予定だ。


 レオニスは森の警邏だけ済ませて、後は一日カタポレンの家でゴロ寝。さすがに昨日のエンデアンのあれこれはかなり疲れたようだ。

 ラウルはエンデアンの海鮮市場で購入したもののチェックや研究。特に新しい調味料類の味見や食材との組み合わせ研究は欠かせない。

 ちなみにラウルは炎の洞窟には同行しないので、ライト達が一泊二日で出かけてる間にジャイアントホタテの貝殻の焼成に励む予定である。


 そしてライトも今日一日は、ラグーン学園の夏休みの宿題に取り組む予定だ。

 今日は一日レオニスがカタポレンの家にいるので、魔物の解体やらレシピ生成などもできそうにないし(万が一にもその現場をレオニスに見られたら困る!)、何より夏休みに入ってから本当に休む間もなくお出かけ三昧の日々なので、家でゆっくりできる数少ない休暇日のうちに宿題を進めておかなければならないのである。


 午前中は魔石回収や畑の水遣りのルーティンワークなど、やるべきことを一通りこなす。

 そして遅くに起きたレオニスとともに、のんびりと昼食を摂りながら昨日のクレエの話などを聞く。

 クレエがディープシーサーペントの件でショックのあまり卒倒した、と聞いた時には『あのクレエさんが!?』とライトもびっくりして心配していた。

 だがレオニスの話では、レオニスがライト達と帰る頃には目を覚まし、体調もさほど酷くもなく何とか立ち直ってくれそうだ、と聞いて安心する。


 昼食を摂り終えた後、ライトは自室に戻って宿題の支度を始める。

 前世での学生時代は、それこそお約束のようなダラダラとした夏休みを過ごしていたライト。夏休み終了三日前まで放置しては、ラスト三日間ずっとヒーヒー言いながら死に物狂いで何とか宿題を片付けていた苦い記憶が蘇る。

 ライトも過去の苦い経験を教訓にし、早め早めに宿題を片付ける努力はしていた。のだが…………


「くっそー、もっと早くに宿題全部片付ける予定だったのに……予想以上に過密スケジュール過ぎて、宿題どころかクエストイベントすらほとんど進められん……」

「でも!明日からはピィちゃんとお出かけ!また炎の女王様や火の女王様にも会えるし!すっごい楽しみー!」

「よーし、そしたら今日はさっき書き留めてきたデッドリーソーンローズちゃんの成長記録を、観察日記として書こう!」


 なかなか進まなかった夏休みの宿題を、今日こそは進めるぞ!と気合いを入れるライト。

 ライトは早速机に向かい、これまで見てきたデッドリーソーンローズの観察模様を日記として書き起こし始める。

 その大まかな内容は、以下の通りである。



 ====================



 1.デッドリーソーンローズの根と球根を一部分だけ残し、他の全てを取り除く。根は半分残し、球根は小指の爪の先ほど残す。他の花や葉、茎、蔓は全てとっておく。


 2.球根と根を残した箇所に、水をたっぷりかけてから再び土を被せる。土はギュウギュウに固めずに、ふんわりと優しく盛るのがポイント。


 3.土を被せて約1分後に、デッドリーソーンローズの新芽が発芽する。新芽の高さ約3cm。この時点ではまだほとんど動けないので、襲われる危険性は無し。


 4.発芽から約10分で茎が伸びて葉も大きくなり、根元から小さな蔓が二本出てくる。茎の高さ約15cm。この蔓が伸びてくると、蔓を使った鞭のような攻撃もできるようになるので要注意。


 5.発芽から約20分で花の蕾が出てくる。地面から花の蕾まで約30cm。花には毒を含む花粉があるので要注意。ガスマスク着用必須。


 6.発芽から約30分で開花。地面から花まで約50cm、花の大きさは約20cm。花だけでなく葉も蔓も大きくなり、近くにいる者をバシバシ襲う。目を狙われても防げるように、ゴーグル着用必須。


 7.完全開花以降は、刈り取られるまでずっとそのままの姿形を保つ。花は毒々しい紫色で、デッドリーソーンローズの名の通りバラのような八重咲き。花粉は濃い赤色で、花の中央に蛇の舌のような真っ赤な雌しべと小さな雄しべがある。蔓ほどではないが、雌しべも伸縮して攻撃してくるので要注意。


 8.葉は蔓の先に生えている。縁がギザギザで割と鋭いので、毟る時には手袋着用推奨。蔓は伸縮自在で、最長で約2メートル先まで伸ばせる。蔓にも小さなトゲがあるので、近寄る際には盾の装着推奨。



 ====================



 これを、ライトが描いた拙い絵とともに詳細に記していく。

 ちなみに今日の午前中、いつものルーティンワーク終了後にライトがすぐに帰宅しなかったのは、デッドリーソーンローズの育成の様子を昼までずっと観察していたからであった。



 …………

 ………………

 ……………………



 朝のルーティンワークを終えたライトは、準備万端整えてデッドリーソーンローズの生息地に向かう。

 右手には定規、左手には懐中時計を持ち、時間やデッドリーソーンローズの全長などを都度測りながら、その成長の様子を事細かにメモ帳に書き記していくライト。その熱心さは、さながらその道の研究者を思わせる。


 だが、当のデッドリーソーンローズにしてみれば『フザケンナコノヤロー!』である。

 さすがに新芽の時には、手である葉っぱも足である蔓も満足に出せなかったが、デッドリーソーンローズはカタポレンの森の魔力を吸って成長する。

 分刻みでニョキニョキと伸びていき、あっという間に獲得した棘だらけの蔓や葉、毒を含む花粉や伸縮する雌しべなどを駆使して、敵であるライトを全力で攻撃する。


 だが、健闘虚しくデッドリーソーンローズの攻撃はライトには全く届かない。何故ならライトはゴーグル兼ガスマスクを装着しており、アイギス特製マントと合わせて完全武装で観察に挑んでいたからだ。

 人間の急所である目を狙おうが、毒入り花粉を撒き散らそうが、蔓で首を締めようが、その攻撃の尽くを弾き返すライト。蔓が勢い余ってメモ帳の上に伸びた日には、ペンを持ったライトの右手でペシッ!と跳ね返される始末。

 そう、何をどう逆立ちしてもデッドリーソーンローズの攻撃は、ライトには通用しないのである。


 そうしてデッドリーソーンローズの観察を五株分ほど繰り返し、データ採取に努めるライト。一株だけの観察では、株の個体差が生じてデータにばらつきが出るかもしれないからだ。

 とりあえず、五回も観察すりゃデータとして十分だよね!と思いつつ、全長や蔓の長さだけでなく花の色や形、全体像などもきちんと絵として書き留めておくライト。

 観察日記のメモを書き終える頃には、デッドリーソーンローズの頭である八重の花はガックリと項垂れ、その蔓もしおしおと地面にぺたりとついて心なしか萎れて見える。


「よし、書けた!デッドリーソーンローズちゃん、ご協力ありがとう!また来るねぇー!」


 すくっ!と立ち上がり、大きくなったデッドリーソーンローズに向かって軽やかな言葉をかけ手を振りながら颯爽と駆け出すライト。

 ライトが走り去るその後ろ姿を、萎れたデッドリーソーンローズがブルブルと小刻みに震えながら恨めしげに見送っていたような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!



 ……………………

 ………………

 …………



 ライトのそうした努力の甲斐あって、詳細かつ立派な観察日記が仕上がった。

 しかし、とてもじゃないが初等部二年生が書く植物観察日記とは到底思えない代物である。というか、植物観察日記ではなくほぼ魔物の観察日記と化している気がしないでもない。


 だがライトとしては、実に大真面目に取り組んでいたりする。

 身近な植物を取り上げて観察するのは、低学年のお約束の宿題だからな!と信じて疑わないライト。やはり人外(レオニス)が育てる(ライト)もまた人外な思考になるのは、もはや避けられない宿命なのか。


 そうして午前と午後の日の明るい時間をほとんど費やした、ライトの植物(系魔物)観察日記は完成した。

 ペンを机の上に置き、日記を引き出しに仕舞って椅子の上で思いっきり腕を上に上げて背伸びするライト。

 ンーーーッ……という小さな声が自然と洩れる。


「やったー!デッドリーソーンローズちゃんの観察日記、全部書き終えたぞーーー!」

「後は読書感想文を書くだけだ!……って、それはまた次の休みの日にしよう……今日は大きな宿題を一つ終えたことだしね!」


 勉強机から立ち上がったライトは、キャッホーイ!と叫びながらベッドにボフン!と勢いよく飛び込んだ。


 ベッドの上で仰向けに寝転びながら、真横にある窓の外の風景を眺めるライト。

 茜色に染まりつつあるカタポレンの森の空。その夕焼け色の空は、どことなく炎の女王の鮮やかな橙色を思わせる。

 翌日からのお泊まりのお出かけに、今から心が弾むライトだった。

 夏休みのお出かけの合間の、のんびりとした休暇日です。

 といっても、ライトはラグーン学園の夏休みの宿題もしなければならないので、完全オフとはいきませんが。

 ちなみに作者も例に漏れず、夏休みの宿題は終了間近になってから慌ててやり始めるタイプでした。

 いろいろと人生経験を積んだ今ならば、早くにできるものはとっとと終わらせて、観察日記などの期間を要するものはこまめに記録しておくのですが。ま、それも今となってから思うことであって、子供の当時は何年経っても全然できませんでしたねぇ(´^ω^`)


 そして今回ライトの観察日記のモデルとなった、デッドリーソーンローズちゃん。

 ライトとしてはもうすっかり仲良しさん気分なのですが、これでも一応魔物なんですよねぇ(´^ω^`)

 BCO内でのランクは弱っちい雑魚モンスターですが、普通の人間だったら棘や蔓で大怪我することも大いにあるので、良い子は安易に近づいてはいけません><

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