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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第678話 海鮮市場でのあれこれ

 ラギロア島の向こう側にある海底神殿から、エンデアンに戻ったライトとレオニス。

 行きと同じくエンデアンの外壁が見える辺りまで海中移動し、周囲に人気がないことを確認してから上陸する。

 二人して鼻の頭までを海上に出し、キョロキョロと周辺を窺うその様子は実に胡散臭さMAXである。


 誰にも見つからないように上陸した後は、エンデアンまでのんびりと歩きながら昼食代わりのバー状クッキーを食べるライトとレオニス。

 昼食の時間などすっかり過ぎてしまったが、海中では昼食の摂りようもない。かといって今からエンデアンで改めて食事していたら、後の予定が詰まってしまう。

 という訳で、こんな時に役に立つのがラウル特製バー状クッキーである。


「このクッキー、なかなかに美味(ンめ)ぇな」

「でしょでしょー? 歩きながらでも食べられるように、ラウルに作ってもらったんだー」

「バニラ味に珈琲味にフルーツ味、チョコ味、いろんな味が楽しめていいな。俺もラウルに頼んで作ってもらうかなー」

「いいと思うよー。遠征中の休憩時間とかにも食べられるしねー」


 二人してクッキーを食べながら、のんびりと雑談する。

 このバー状クッキー、実はライトの発案でラウルにお願いして作ってもらったものである。

 イメージやコンセプトとしては、前世で超有名だった某カ□リーメイトそのまんまで、今回のような歩き食べを前提とした携帯食が欲しかったのだ。

 歩きながら食べるなど甚だしく行儀が悪いが、冒険者たるものいつでも摂れる栄養源は必須でしょ!という理論で正当化するライトである。


 そうしてエンデアンの街に入ったライト達。

 そこからラウルと待ち合わせの約束をしている海鮮市場に向かう。

 海鮮市場は冒険者ギルドエンデアン支部からさほど遠くない場所にあるので、エンデアン支部を目指して歩けば自然と辿り着ける。

 海鮮市場のあるエリアに近づくにつれ、道行く人も少しづつ増えていく。


「やっぱエンデアンも賑やかな街だねー」

「そりゃあな、ここはサイサクス大陸の中でも屈指の港湾都市だしな。新鮮な魚介類はもちろんのこと、他国の貿易船なんかも来るし」

「そうなんだね!……あ、そろそろ海鮮市場に入る、かな?」


 広い道の左右に、魚や貝類、海藻などを売る露店が増えてきた。

 ラグナロッツァの市場では見られない光景だけに、ライトは興味津々で海鮮市場を眺めて回る。

 そうしているうちに、道の向こうからラウルがやってきた。


「おーい、ご主人様達よ、おかえりー」

「あッ、ラウル!ただいまー!」


 ラウルの顔を見て、一目散にラウルのもとに駆け寄るライト。

 レオニスは後からのんびりと歩いている。


「もう殻処理のお仕事は終わったの?」

「ああ、ギルドに頼まれた依頼書は全部こなしてきた」

「すごいね!貝殻何枚分引き受けてきたの?」

「十箇所以上は回ったからなぁ……軽く千枚は超えてると思うが、枚数多過ぎてちゃんと数えてないわ」

「せせせ千枚……すすすすごいね……」


 ラウルの仕事の成果にびっくりするライト。

 ライトもジャイアントホタテの大きさは知っている。ラウルやレオニスの身の丈と大差ないくらいの巨大なホタテだ。

 その殻を千枚以上も一手に引き取るとは、想像を絶する量である。


 しかし、その殻も全て肥料として畑の肥やしとなるので何ら問題はない。

 ラグナロッツァの屋敷内で細かく砕き、カタポレンの家の横の焼窯で焼成するという手間はかかるが、それも野菜作りの一環と思えばラウルには苦にもならない。

 これからもラウルが作る美味しい野菜の糧として、ジャイアントホタテの殻は立派に再利用されていくのだ。


「そしたら、もう海鮮市場でのお買い物もたくさんしたの?」

「ああ、ぼちぼちな。どれも美味しそうな魚介類がたくさんで、目移りばかりしちまう。……あ、そうだ、ライトの同級生の子のイヴリンちゃんのいる店も見つけたぞ」

「イヴリンちゃんに会えたの!?」

「ああ、さっきまでその店にいたんだ。これからライトもイヴリンちゃんの店に行くか?」

「うん!行く行く!」


 ラウルがイヴリンの店を見つけたと聞き、ライトの顔がパァッ!と明るくなる。

 夏休み前に、イヴリンがエンデアンのおばあちゃんの家に行くから、海鮮市場に来てくれたら会えるかも!なんて話をしていたライト達。

 お店を見つけたら立ち寄るね、という約束もちゃんと果たせそうだ。


 すると、後から追いついてきたレオニスがライト達に話しかけてきた。


「ラウルも殻処理お疲れさん。俺は一足先に冒険者ギルドに報告しに行ってるわ」

「おう、ご主人様もおかえり。何だ、ギルドに報告しなきゃならんことがそんなにたくさんあるのか?」

「まぁな、例のデッちゃん関連で、ちょっと話が長引きそうなんでな……」


 レオニスはライト達には同行せず、先に冒険者ギルドエンデアン支部に行くという。

 主に海底神殿の海の女王や、ディープシーサーペントのデッちゃんの話を報告しに行くらしい。

 確かにデッちゃん関連の話は長引きそうだな、とライトは内心で思う。特にディープシーサーペントの襲来のお目当てがクレエだったことを考えると、それを知った冒険者ギルド側はかなり紛糾するに違いない。

 先日のレオニスが長時間事情聴取に拘束されたように、今回もちゃちゃっと報告してちゃちゃっと帰る訳にはいかなさそうだ。


「そうか。じゃあライトは俺といっしょにイヴリンちゃんの店に行ってるか。イヴリンちゃんも、ライトが店に来るのを待ってるってよ」

「うん!!」


 ラウルのお誘いに、ライトは一も二もなく承諾する。

 冒険者ギルドへの各種報告は、レオニス一人で大丈夫だろう。というか、子供のライトがいっしょについていっても特に尽力できることもない。


「二人とも、海鮮市場を見終わったら冒険者ギルドに来いよ。そん時にまだ俺が報告し終わってない可能性もあるが、そしたら終わるまでエンデアン支部内で待っててくれ」

「分かった!」

「了解」


 こうしてライト達は、再び別行動で分かれていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レオニスと分かれて、イヴリンのいる店に向かうライトとラウル。

 程なくして、お目当ての店が見えてきた。


「お、見えてきたぞ。あの店だ」

「へー、結構大きなお店なんだね」


 二人がだんだんと店に近づいていくと、店の外で待っていたイヴリンがライト達の存在に気づいた。

 気づいた途端に手を振りながら、ライト達のもとに元気良く駆けてくる。


「あッ!ライトくーーーん!」

「イヴリンちゃん、こんにちは!」


 ライト達の目の前まで走ってきたイヴリン。

 ライトの手を両手で握り、花咲く笑顔で話しかける。


「夏休み前にした約束、守ってくれたのね!」

「うん!今日はレオ兄ちゃんやラウルといっしょにエンデアンに来たからね、イヴリンちゃんのお店にも絶対に行きたかったんだ!」

「ありがとう!もう今日はお店はお仕舞いだけど、ラウルさんにライト君が帰ってきたって聞いてずっと待ってたのよ!」


 再び店の方に歩きながら、仲良く話しているライトとイヴリン。

 空はまだ明るく、店仕舞いにするにはまだ早い時間だというのに、イヴリンの店はもう店仕舞いだという。

 そのことを不思議に思いつつ、ライトがイヴリンに問う。


「もう店仕舞いなの? イヴリンちゃんのお店って、早くに閉めちゃうの?」

「ううん、いつもはもうちょっとお店開いてるんだけど。今日はラウルさんがうちのお魚を全部買ってくれたから、もう売る物がないんだ。だから店仕舞いなの!」

「えッ!? ラウルが全部のお魚を買い占めたの!?」


 ライトはイヴリンの話にびっくりしながら、横にいたラウルの顔を思わず見上げる。

 すると、ライトの視線を受けてラウルが事も無げに答える。


「ああ。イヴリンちゃんの店にあった魚介類は、どれも新鮮で良い物ばかりだったからな」

「にしたって、買い占めるとなると大金だったんじゃないの……?」


 ライトが心配そうな顔でなおもラウルに問う。

 どうもライトとしては、イヴリンが自分の同級生だから、ラウルが自分に気を遣って買い占めたのでは……?と思っているようだ。

 そんな杞憂を吹き飛ばすべく、ラウルがはっきりと答える。


「いや、これでもかなりのお買い得だったぞ? イヴリンちゃんのおばあちゃんがかなりまけてくれたし。なぁ、イヴリンちゃん?」

「うん!うちのおばあちゃんも、遠くからはるばるエンデアンに来たラウルさんのことが気に入ったみたい!」

「それに俺は、食材に関して妥協することは絶対にない。いくら知り合いがいる店でも、物が良くなければ買わん。それはライトもよく知ってるだろう?」

「!!……そっか、うん、そうだね」


 ラウルの言葉に、ライトはハッ!としつつ納得する。

 そう、ラウルが料理に関することで適当に済ますことなど絶対にない。

 それは食材に関しても同様で、ラウル自身が『これは良い物だ』という確信を持たなければ進んで買うことなど絶対にあり得ないことだった。

 そんなラウルが納得して買ったものなら、それは間違いなく良い物なのだ。


 そんな話をしているうちに、イヴリンの祖母の店に辿り着いた三人。

 店の中にはイヴリンの祖母だけでなく、数人の他店の店主がいて祖母と雑談をしていた。


「おばあちゃん、ライト君が来てくれたよ!」

「おやおや、イヴリンの学校のお友達かい? よく来たね」

「イヴリンちゃんのお祖母さん、初めまして、こんにちは!」


 優しい笑顔で出迎えてくれたイヴリンの祖母に、元気良く挨拶するライト。

 その祖母の横にいた他の店主達が、ラウルに近寄っていく。


「なぁ、兄ちゃん。この店の魚を全部買っていったって、本当か?」

「ン? ああ、本当のことだが。それがどうかしたか?」

「もしまだ財布に余裕があるなら、うちの品も見ていかないか? ここの婆さんの店の魚も上等で良い物ばかりだが、ここに負けないくらいに良い品があるぜ」


 一体何事かと思えば、どうやらその店主達もラウルに買い物していってほしいらしい。

 イヴリンの祖母が店の中で雑談する程度には交流がある者達だ、そこまで胡散臭いキャッチャーや客引きでもないだろう。

 そうした買い物の勧誘に、ラウルはしばし考え込む。


「ンーーー、もう少しだけならまだ購入する余力はあるが……魚を見る俺の目は厳しいぞ?」

「望むところだ、兄ちゃんを満足させる自信はある」

「何なら魚介類だけじゃなくて、魚醤とかの珍しい調味料もあるぞ?」

「何? 珍しい調味料、だとぅ?」


 店主達のラウルの気を引く巧みな話術に、ラウルの目が次第に輝いていく。

 特に『珍しい調味料』などという、ラウルにとっては絶対に聞き逃せない魅惑的な誘い文句まで織り込まれては、ラウルも無視できない。


「……ライト、ちょっとだけ他の店で買い物してくるから、ここで待っててくれるか?」

「うん、いいよー。でもあんまり使い過ぎないようにねー」

「おう、分かってる。じゃ、行くか」

「ラウルさん、いってらっしゃーい!」


 イヴリンの祖母もイヴリンも、ラウルを引き留めることなく快く送り出す。

 その店主達は二人にとっても馴染みであり、信用できる人物だということを知っている。

 他所者のラウルを騙して品質の悪いものを売りつけることはないし、もともと彼らの店でも良い物を売っているということを確信しているからこそ快く送り出すのだ。


 いそいそと買い物に出かけたラウルを見送ったイヴリンが、今度はライトに向かって話しかけてきた。


「ねぇ、ライト君。そういえばさ、夏休みの宿題はどこまでやった?」

「ンーとねぇ、植物の観察日記を書き始めたところ。イヴリンちゃんはどう?」

「プリントとかはもう全部終わったんだけど、読書感想文がまだなんだよねー」

「あー、ぼくも読書感想文まだだー。早いとこ書かないと」


 ラウルの帰還を待つ間、夏休みを過ごす子供達ならではの話題に花を咲かせるライトとイヴリンだった。

 ライト達もようやくエンデアンに戻り、三人のエンデアンの日帰りお出かけも終盤になってきました。

 最後はイヴリンとの約束通り、イヴリンのおばあちゃんのお店訪問を果たしたライト。いつものラグナロッツァではなく、ほぼ知らない遠い地で同級生と会うというのも何だか楽しいですよね(・∀・)

 ラウルも海鮮市場の店主達の巧みな話術に乗り、買い物ツアー続行決定。

 さらなる散財確定ですが、まぁ午前中にアホほど仕事をこなしまくったので、自分へのご褒美として珍しい調味料とか買うのも良いでしょう。


 そして今話は第678話。夏休み編が始まってから、丸二ヶ月が過ぎました。

 あと一週間もすれば師走に突入なのですが、作中時間は八月一日という…( ̄ω ̄)…

 これもう絶対に年内には夏休み終わりませんですよねー('∀`)

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