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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第657話 巨大野菜の収穫

 翌日の休息日二日目。

 朝早くからラウルがカタポレンの家に来た。

 ラグナロッツァの屋敷とカタポレンの家を繋ぐ転移門はライトの部屋にあるため、朝っぱらからラウルが襲撃してくるようなものである。


 とはいえ、ライトは朝のルーティンワークのために既に起きているので、何ら問題はない。

 この日も朝のルーティンワークから戻ってきたら、自室にラウルがいてライトを待っていた、というだけのことである。


「あっ、ラウル、おはよー」

「おはよう、ライト。朝から修行ご苦労さん」

「今日持っていく野菜を採りに来たの?」

「そうそう、今日オーガの里に持っていく野菜の収穫をしに来たんだ」

「じゃあ、いっしょに収穫しようか!」


 ライトは帰ってきて早々、ラウルとともに再び家の外に出る。

 家の東西南北に一面づつ切り拓かれた広大な畑には、今が最も旬のトマトやキュウリ、茄子、ズッキーニなどの夏野菜や、玉葱に人参、キャベツにレタスなどの通年使える定番野菜が植えられている。

 直径30cmくらいありそうな赤々としたトマトや、長さが70cmほどある青々としたキュウリ、そのキュウリよりもさらに長い長茄子―――見るからに艶やかさに溢れていて、如何にも美味しそうな瑞々しい巨大野菜達が畑でたくさん実っていた。


「今実ってるの、全部収穫していく?」

「そうだな……トマトやキュウリなんかは俺が色を見ながら採るものを選ぶから、ライトは玉葱や人参を掘り起こして抜いておいてくれ。玉葱と人参はもう全部収穫の時期だから、一つ残らず抜いてくれて構わん」

「分かったー。抜いたのは全部四阿に置いておくねー」

「よろしくな」


 二人は手分けして野菜を収穫していく。

 そこに、朝の森の警邏に出ていたレオニスが帰ってきた。


「ただいまー。……お、何だ何だ、二人して野菜の収穫作業してんのか?」

「あ、レオ兄ちゃん、おかえりー。そうそう、今日はラウルがここの畑の野菜を持ってオーガの里に料理教室をしに行くんだってー。ぼくもいっしょにオーガの里に連れてってもらうから、収穫のお手伝いしてるのー」

「おう、ご主人様、おかえり。朝早くから森の警邏ご苦労さん」

「ラウルも料理教室の先生頑張ってるんだな」


 帰宅の挨拶と雑談をしながら人参を掘り起こしているライトを見て、レオニスがその横に来てアドバイスをする。


「ライト、そんないちいち手で野菜の周りの土を掘るよりも、こないだやった土魔法を使うといいぞ」

「……あッ、そういやこないだ魔力のテストしたっけ!あの時の土魔法を応用すればいいの?」

「そうそう。普段から日常生活の中に取り入れるようにすると、使う時のコツを掴めたり精度や威力も上がったりして良い練習になるぞ」

「そっか!早速やってみるね!」


 ライトはもともと日本人で、このサイサクス世界に生まれてからもまだジョブも得ていない一見(・・)非力な子供。それ故日常生活の中で魔法を使うという概念が全くなく、魔法の存在をすっかり失念していた。

 だが、先日の夏休み突入直前の日に、ライトも魔力テストをした際には様々な魔法を使えることが分かった。

 ならば、それらを使わなきゃ損というものである。


 それまでは芋掘りのように、丁寧に人参の周囲の土を手で掘っていたライト。その手を止めて立ち上がり、両手を翳して人参の周囲の土を退かすイメージをする。

 すると畑の土がモコモコと動き出し、ライトのイメージ通りに人参の周りの土が盛り上がって人参の横に退いた。


「やった、できた!レオ兄ちゃん、こんな感じ?」

「そうそう、その調子だ。他のも全部それでやってみな」

「うん!」


 土魔法が成功したことに気を良くしたライト、他の人参や玉葱も同じ要領でどんどん土を除けては作物を収穫していく。

 土を除けることができれば、巨大な根菜類の収穫も楽ちん楽勝である。

 ライトが土魔法を駆使している間に、レオニスは玉葱や人参を採って四阿のテーブルの上に積んでいく。二馬力での作業で、収穫もサクサクと捗るというものだ。


 50cmくらいある人参に、30cmほどある大玉の玉葱が四阿のテーブルに山と積み重なっていく。

 人参も玉葱も葉っぱごと収穫するので、結構な量が嵩張ってなかなかに壮観な図である。


「ラウルー、俺もこの野菜少しもらっていいかー?」

「おう、半分くらいまでなら好きなだけ持っていっていいぞー」

「ありがとよー」


 ライトの収穫を手助けしながら、レオニスがラウルに野菜のおすそ分けをおねだりする。

 レオニスもちょくちょくオーガの里を訪ねるようだし、彼らへの手土産として最適なのはもちろんのこと、非常食として備蓄しておくのも普通にアリだ。


 栽培主であるラウルの許可をもらえたので、レオニスは玉葱や人参についた土を軽く手で払ってからそのまま空間魔法陣に収納していく。

 玉葱と人参を十本づつ収納したところで、レオニスは手を止めた。これだけの巨大野菜だ、十個づつもあれば十分だろう。


 ライトは収穫後でボコボコになった畑の土を均してから、ラウルのもとに駆け寄っていく。

 ラウルはラウルで、トマトやキュウリをもいでは空間魔法陣に収納していた。


「ラウルの方も収穫できたー?」

「おう、今採れるもんはだいたい採った。後はライト達が採ってくれた根菜類を収納するだけだ」

「ラウルよ、トマトやキュウリも今度もらっておいていいか?」

「もちろんだ。採った後にたっぷり水遣りをしといてくれ」


 三人は四阿に移動し、ラウルはライト達が収穫した根菜類を空間魔法陣にどんどん収納していく。


「さ、これでオーガの里に持っていく野菜は準備できた。ライト、玉葱と人参を収穫した後の畑を手入れしたいから、少し待っててくれるか?」

「うん、いいよー。ぼくもその間に部屋からアイテムリュックとか持ってきて、出かける支度をしてくるねー」

「おう、いってらー」


 ライトは一体家の中に戻り、その間にラウルは空間魔法陣から貝殻や蟹殻を焼いて砕いた殻肥料やトウモロコシの緑肥を取り出す。

 それを収穫後空っぽになった畑の土に撒いて、混ぜ込んでいく。肥料を鋤き込んでおくことで、次の野菜を育てる準備をするのだ。

 そんなラウルの作業している姿を見て、レオニスが感慨深そうに呟く。


「各地で溜まって厄介者だった氷蟹の殻や砂漠蟹の殻、ジャイアントホタテの貝殻が、こんな風に役に立つとはなぁ……」

「全くだ。殻処理依頼様々だぜ」

「お前もそれがなけりゃ、冒険者になろうとは思わなかっただろうしなぁ」

「……そうだな。ライトに勧めてもらってなければ、今頃はまだラグナロッツァでお前んとこの執事をしてるだけだったろうな」


 レオニスの言葉に、ラウルもまた感慨深げに呟く。

 ラウルがこうしてカタポレンの森で野菜を作るようになったのも、もとを辿ればラグナロッツァの屋敷での家庭菜園計画の延長線上。

 ラウルがラグナロッツァで家庭菜園したいと言った時に、ガラス温室を作る資金を稼ぐためのアドバイスとして、ラウルに冒険者になることを勧めたのがライトだった。


 そのアドバイスを即時取り入れて、ラウルはサイサクス史上初の妖精族の冒険者となった。

 その後はネツァクやエンデアン、ツェリザークといった殻処理問題に悩む各地を回り、殻処理依頼を積極的にこなしながら達成報酬を稼ぎ、さらにはその殻を肥料に作り変えて己の畑に撒いて使うという、皆が得する仕事ぶりを発揮している。


 ライトがラグナロッツァに出てくるようになるまでは、こんな未来になるとはラウル自身全く思ってもいなかった。

 小さくても偉大なもう一人のご主人様に、ラウルはただただ感謝するばかりである。


 レオニスと二人でそんな話をしながら、肥料の鋤き込みも終えて地面を均したところで、アイテムリュックを背負ったライトが家から出てきた。

 ライトの肩にはフォルがちょこんと乗っている。今日はフォルもいっしょにお出かけするようだ。


「ラウル、お待たせー!畑の手入れはもう終わったー?」

「おう、もう済ませたぞ。じゃ、オーガの里に行くか」

「うん!」

「二人とも、気をつけていってこいよ。ラキにもよろしく言っといてな」

「はーい!」「おう」


 ライトとラウルはレオニスに見送られながら、オーガの里に出かけていった。

 オーガの里にお出かけする前の、巨大野菜収穫の風景です。

 オーガ族の身長は5メートル超えで、人族と比べるとだいたい三倍くらいなので、ラウルがカタポレンの畑で作る野菜も人間サイズのものの約三倍程度の大きさを想定しています。

 そのために、トマトの大きさやキュウリ、茄子の長さなどを検索して調べては、その三倍の数字を巨大野菜のサイズとして設定しました。

 直径30cmのトマトとか、30cmの玉葱、70cmのキュウリなど、ホントにあったらデカいだろうなー。


 ……にしても、オーガの里に行く前の収穫段階だけでまるまる一話使ってもた…( ̄ω ̄)…

 この調子では、本当にライトの二学期始まるのが年越しになってしまうぅぅぅぅ……_| ̄|●

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