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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
様々な出会い

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第65話 新設転移門の試運転

 朝食を終えて双方出立の準備を整え、アル達が先に帰る時間になった。


「アル、シーナさん、また来てね」

「ワォンワォン!」

『ええ。ライトにもレオニスにも、今回はとてもお世話になりましたね。心から礼を申します』

「気にすんな、アルもシーナももう俺達の友達なんだから」

「そうそう、だからいつでも気軽に遊びに来てくれていいんだからね!」

「ワウワウ!」

『友達……そうですね、種族は違えど貴方方は私達母子にとっても大事な友です』

「銀碧狼に友として認めてもらえるなんて、光栄の極みだ」

「うん、種族なんて関係ないよね!」


 ライトもレオニスも、嬉しそうに会話を交わす。


『では、行きましょうか。名残惜しいですが、またお会いしましょう』

「アルもシーナさんも、森の散策気をつけていってきてね!」

「そうだな、また目覚めの湖でイードに会ったら、よろしく伝えておいてくれ」

「ワォン!」

『目覚めの湖……』


 何故かシーナだけが、心なしか凹んでいるように見える。

 まぁ、その気持ちは分からないでもないが。

 如何に森の王者銀碧狼といえど、イードほどの巨大なクラーケンはさすがに脅威に感じても無理はない。


 シーナは人化の術を解き、凛々しく美しい銀碧狼の本来の姿に戻る。


『では、さようなら。また会う日まで、お二方ともお元気で』

「アル、シーナさん、またね!」


 高く弧を描いた美しい跳躍で、その場を出立するシーナとアル。

 ライトとレオニスは、手を振りながらしばしその後ろ姿を見送っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「さて、じゃあ俺達もラグナロッツァに行きますか」

「了解ー」


 二人とも出かける支度は準備万端整えていたので、アル達を見送った後すぐに転移門のある部屋に向かう。

 今日はこのカタポレンの森の自宅から、ラグナロッツァのレオニス名義の屋敷に新設した転移門へと移動する初めての日である。


 本来なら一昨日あたりに転移門の試運転をするはずだったが、ライトの体調不良により延期となっていた。

 体調不良といっても病気などで具合が悪いのではなく、例の職業関連の精神的なショックで気絶してしまったのが原因なのだが。


 ライトとレオニスの二人は、カタポレンの森の家にある転移門の前に来た。


「ライト、ここにもお前の掌紋認証登録するから、こないだのように左の手のひらを石柱に置いてくれ」

「はーい」


 ライトもだんだん慣れてきたのか、物怖じすることなくさっさと事を進める。石柱に左手をべったりと張り付けて、ライトの掌紋認証登録を済ませる。


「レオ兄ちゃん、できたよー」

「よし、そしたらそのまま左手を翳して操作画面を出すんだ」


 レオニスに言われた通り、操作画面を出すライト。

 ライトの背後にレオニスが立ち、ホログラムのような半透明の淡い水色の操作画面を覗き込む。


「こないだ説明した通り、ここが行き先欄だ」

「行き先の新規登録方法なんかはまた今度教えるが」

「今日はひとまず一度ラグナロッツァの家に行くぞ」

「はーい」


 レオニスが操作方法の解説を続ける。


「この操作画面は、石柱に手を翳している間はずっと出ている。手を離せば画面は間もなく消える」

「手を翳している間に、翳していない方の手の指先で行き先欄を2回触ること」

「2回触るのは、万が一行き先指定を間違えた時に即すっ飛ばされないようにするための、確認作業ってとこだ」


 よく出来た仕組みだ、とライトは内心感心する。

 間違えて触ってしまって、全く意図しない場所に飛ばされてしまったら困るし、移動エネルギーである魔力の無駄遣いにもなってしまうからだ。


「行き先欄は、1回触ったら青、2回触ったら緑になる」

「もし行き先を指し間違えた場合は、2回目に同じ場所を触らずに正しい場所を触ればいい。2回目の緑点灯になるまでは転移は作動しないから、やり直しはいくらでも効く」


 色分けすることで、誤操作防止しているようだ。


「そして、操作画面の下のこの横棒。これは今現在いる転移門が有している、移動エネルギーの量を示している」

「この濃い水色部分がエネルギー量。多ければ多いほどエネルギー残量も多いことを示す」

「指定した転移先に対して、魔法陣の中の質量を移動させるエネルギーが足りない場合は【移動不可】という赤い文字が操作画面に出てくる」


 現代日本における、自動車のガス欠のようなものか。


「その場合は当然、転移はできない。新しい魔石を補充するなり、荷や人を減らすなどの調整が必要になる」

「エネルギー補充の魔石は、石柱の背面の方に魔石を置くための収納箇所がある。そこから魔力の少なくなった水晶を取り出して、新しく魔石を置き換えるんだ」


 ガソリンメーター、あれもきちんと把握して早め早めのガソリン補充をしておかないと、後々になってそれはもう大変なことになるのだ。

 そう、万が一国道のド真ん中でガス欠起こしてにっちもさっちもいかなくなった日には、心底目も当てられないことになる。


「とりあえず、こんなとこかな。今教えたことを一通り覚えれば、普段使いする分には十分事足りるはずだ」


 あのー、レオ兄。

 転移門て、普段使いするような代物でしたっけ?


「じゃ、今回は実践ってことで、ライトが操作してくれ」

「はーい」


 ライトはホログラムの操作画面の中から【ラグナロッツァ邸宅】という文字がある行き先欄を、ゆっくりと指先で押す。

 1回目は青色の点滅、続けて2回目を押すと緑色の点滅状態になる。

 しばらく点滅していた緑色は、3秒ほどで完全な緑色になり、ヴィィィィン……という微かな音とともに転移門が作動する。

 目の前が一瞬だけ砂嵐画面のように振れたかと思うと、次の瞬間には景色が全く違うものになった。

 それまでカタポレンの森の家の転移門のある部屋にいたのに、気がつけばそこはラグナロッツァの家の宝物庫の中だった。


「おおお、本当に冒険者ギルドの転移門と完全に同じなんだね……」

「ああ、転移は無事成功だな」


 感心したようにライトが宝物庫の中を見回すと、前回初めて来た時と様子が違う。

 物を置ける台があったり、衣服をハンガーごと掛けられるハンガーパイプ付きの立派な棚が設えられている。

 もはやこれは立派なウォークインクローゼットだ。


「……これ、ラウルが作ってくれたのかな?」

「だろうな、あいつこういった日曜大工的な作業も得意だし」


 黒い巻き髪の美しい青年が、トンカチ片手に釘を口に咥えて日曜大工作業に勤しむ姿が脳裏に浮かぶ。

 何ともシュール……ではなく、ほのぼのとした絵面だ。

 料理だけでなく日曜大工まで得意な美青年とは、お婿さんとして引く手数多なのではなかろうか。


「じゃ、下の階に下りるか」


 宝物庫から出て執務室に入り、さらに執務室から出てすぐ横の階段を下りて階下に移動する。

 すると、どこからともなくラウルが現れた。


「よう、ご主人様達、ようこそお越しで」

「おう、ラウルこそ留守番ご苦労さん」

「あっ、ラウル!お久しぶり!」


 ライトはラウルに会えた喜びで、ラウルに全力で抱きついた。

 ライトがラウルと会うのはまだ2回目なのだが、前回の美味しいお茶と絶品のアップルパイですっかり懐いてしまった。


「おう、ライト、元気にしてたか?」

「うん!……あ、ちょっとだけ体調崩しちゃって、少しお休みしてたの。だからここに来るのも、予定より遅くなっちゃった」

「何だ、具合悪かったのか?あまり無理すんなよ?」

「うん、今はもう大丈夫。心配してくれてありがとう」


 ラウルもライトにすっかり気を許しているようだ。


「あっ、あと、宝物庫の中の棚はラウルが作ってくれたんだよね?」

「もちろん。つーか、俺以外に普段この屋敷にいる奴はいないからな」

「すごく綺麗に作ってくれて、とっても嬉しい!ありがとうね、今度ラウルに何か御礼しなくっちゃ」

「いいってことよ、これもこの屋敷に住まう執事の仕事さ」

「そうそう、これくらいは働いてもらわなきゃな」


 レオニスがニヨニヨと笑いながら、ライトとラウルの会話に混ざる。

 そんなレオニスをラウルはちろりと見遣り、ライトの方に身体を向き直す。


「こんなこと言う奴は放っておくか。さ、ライト、あっちで俺と美味しいおやつタイムでもするか?」

「うん!するする!」

「え、ちょ、待、俺だけ除け者?」

「うるせー、お前はライトを見習って気遣いというものを覚えやがれ」

「そうだよー、レオ兄ちゃん。ラウルがぼくのために一生懸命頑張って棚とか作ってくれたんだから、御礼くらいちゃんと言えるようにならないとダメだよ?」

「ぐぬぬぬぬ……」


 二人にやり込められて、ぐうの音も出ないレオニス。

 ラウルはライトをひょい、と片腕で抱っこして、食堂の方に移動し始める。


「さ、今日のおやつはブルーベリータルトだぞー」

「わーい!ラウル、牛乳はある?」

「もちろんあるぞ、ブルーベリータルトに牛乳はよく合うからな」

「お、おい、ちょっと待て!ライトを抱っこしていいのは俺だけだぞ!」


 しばし呆然としていたレオニスは、ハッ!と我に返り、慌てて食堂に向かう二人を追いかける。


「ラウル、レオ兄ちゃんはちょっとだけ子供っぽいところあるけど、許してあげてね?」

「ああ、分かってるさ。俺もあのご主人サマとはそれなりに付き合い長いからなwww」

「そっか、ありがとうね」

「どういたしまして、小さなご主人様」


 ライトとラウル、二人はレオニスに聞こえないように小声でもしょもしょと会話する。


 ラウルの腕の中でくすくすと楽しそうに笑うライト、それを見てさらにヤキモチを焼いてキーキー騒ぐレオニス、何事もないかのような澄ました顔で食堂に向かうラウル。

 普段は静かなラグナロッツァの邸宅が、一気に賑やかになった瞬間だった。

 作中の『国道のド真ん中でガス欠云々』は、何を隠そう作者の実体験であります。しかも、片側二車線の天下の国道と、同じく片側二車線の大通りたる県道を相手取った、前科二犯という救えない粗忽者……

 車を日々運転する皆様。ガソリンは早め早めのこまめに補充することを、この私めはそれはもう強く、強く!オススメいたしますです……

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