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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての夏休み

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第644話 たくさんの出会いと再会の約束

 白銀の君の背に乗り、目覚めの湖の小島からユグドラツィのもとに向かったライトとレオニス。

 白銀の君は、少し離れたところに見える一際大きな大木を目指して飛んでいる。


『あちらに見える大きな木が、神樹ユグドラツィ様ですよね?』

「ああ、その通りだ。やっぱ言わずとも分かるか」

『もちろんですとも』


 レオニスが行き先を指示するより先に、白銀の君がユグドラツィを認識する。

 千年の時を生きる神樹ともなると、そこら辺の木々とは全く異なる。枝葉は伸びて幅が大きくなり、その高さも周囲の木々の何倍にもなる。一目見ただけで、他の樹木とは全然違うことが分かるのだ。

 その威風堂々たる威容は、白銀の君が常に寄り添うユグドラグスにも通じるものなのである。


 白銀の君はユグドラツィ目指して真っ直ぐに飛んでいく。

 そうして程なくしてユグドラツィのもとに辿り着いた。

 白銀の君はゆっくりと降下していき、ユグドラツィの近くに降り立つ。地面に降り立った後、ライトとレオニスも白銀の君の背から降りて地面に立つ。


「ツィちゃん、こんにちは!」

「よう、ツィちゃん」

『ライトにレオニス、ようこそ。そして、白銀の君もよくぞいらっしゃいました』

『はっ!ユグドラグス様の姉君であるユグドラツィ様にお会いできて、誠に光栄でございます!』


 ユグドラツィと初めて対面する白銀の君。

 ライトとレオニスの軽ーい挨拶の後に、恭しく跪き頭を下げながら畏まった挨拶をする。


『…………ん』

「「『……ン?』」」

『ツィちゃん』

『え"ッ!?』


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる白銀の君。

 そう、ユグドラツィはライト達が身につけている分体入りアクセサリーで、天空島での出来事を全部見知っているのだ。

 ユグドラツィに早速ちゃん付け呼びの訂正ダメ出しを食らい、面食らったまましばし固まる白銀の君であった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『天空島でも、いろいろあったようですね』

「ああ。念願叶って、ようやく天空島に行くことができた」

「ぼくも素材集めしたり、光の女王様や雷の女王様に会えて、すっごく楽しかったです!」

『それは良かった。貴方達も楽しそうでしたし、ドライアド達もとても愛らしかったですし』


 ライト達が先程までいた天空島の話を咲かせる一行。

 ライト達だけでなく、その一部始終を見ていたユグドラツィの声も明るく弾む。


『私も良いものを見せていただきました。そして何より―――エル姉様の御姿を拝見することができて……本当に感激しました』

『ツィ姉様にラグス、そしてエル姉様……皆のもとに私の分体も渡り、今では簡単な会話までできるようになって……』

『ライト、レオニス……貴方達には、どれ程感謝してもし足りません……本当に……本当に、ありがとう』


 ユグドラツィの言葉が、次第に途切れ途切れになり、風もないのにユグドラツィの枝葉がさわさわと揺れ動く。

 その葉擦れの音は、感動に打ち震えるユグドラツィの心を表しているかのようだ。


 約二百年前に神樹となり、神樹族の一員となったユグドラツィ。神樹の叡智を得たことにより、世界には自分の他に四本の神樹が存在していることを知った。

 その百年後には、新たに生まれた竜王樹ユグドラグスも加わり、自分に弟ができたことを心から喜んだユグドラツィ。

 だが、その喜びを分かち合える者は、当時誰一人としていなかった。


 他の神樹もそれぞれ遠い地で神樹となり、神樹族として他の兄弟姉妹を思う孤独な日々を過ごしていた。もちろんユグドラツィもその一本であった。

 しかし、これまではただただ遠くから思いを馳せるだけだったが、今は違う。

『これから俺達が、世界中の景色を見せてやる』―――そう言ってくれたライトとレオニスのおかげで、様々な景色だけでなく兄弟姉妹と会話までできるようになったのだ。


 本来ならあり得ないような奇跡、そしてその奇跡をもたらしたライト達との運命の出会いに、ユグドラツィは心の底から感謝していた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そこから皆で小一時間ほど会話をしただろうか。

 今日の天空島の話だけでなく、竜王樹ユグドラグスの話もたくさんした。

 それはユグドラツィのリクエストでもあり、末弟のことをよく知る白銀の君に昔話や思い出話を聞かせてほしい、とおねだりしたのだ。

 我が君命!の白銀の君も、ねだられるまでもなく我が君エピソードを語る。


 例えば神樹になる前の、白銀の君の父母の代からユグドラグスの成長を見守っていたこととか、ユグドラグスの横で昼寝していた白銀の君の父の寝返りで危うく根っこからひっくり返されそうになったこと。

 白銀の君に横恋慕した不届き者の獄炎竜に、あわや丸焼きにされそうになったこと、樹木の天敵であるキノコが苦手で、押しも押されぬ立派な神樹になった今でもキノコの姿を見るだけで声が震えてしまうこと等々。

 様々なエピソードを嬉々として語る白銀の君に、ユグドラツィも嬉しそうに聞き入っていた。


 だが、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、カタポレンの森から見える空も茜色が強くなってきた。

 ふと白銀の君がつい、と空を見上げたかと思うと、再びユグドラツィに向かって恭しく頭を下げる。


『ツィちゃん様。もっともっとお話ししていたいところですが、私もそろそろ我が君のもとに帰らねばなりません』

『……ああ、そうですね。もうだいぶ日も傾いてきましたね。長々と引き留めてしまってごめんなさい。貴女のお話があまりにも楽しくて、ついつい聞き入ってしまいました』

『いいえ、そんな!ツィちゃん様が謝ることなど何一つございません!』


 帰りを切り出した白銀の君にユグドラツィが謝るも、慌てて止める白銀の君。

 ユグドラエル同様、ユグドラツィのことも『ちゃん様』をつけて呼ぶことになったようだ。神樹を敬いつつも神樹達の願いを懸命に叶えようとする白銀の君、その板挟み的な苦労が忍ばれるというものである。


『今日は思いがけず、二柱もの我が君の姉君にお会いできて、本当に嬉しゅうございました』

『こちらこそありがとう。ラグスの話をたくさん聞けて、私もとても嬉しかったです』

『……またいつの日か、ここに来てもよろしいですか?』

『もちろんですとも!』


 再訪の可否を尋ねる白銀の君に、ユグドラツィも嬉しそうに快諾する。


『いつの日かなどと言わず、遠慮なくいつでも訪ねて来てくれていいのですよ。何故なら白銀、貴女もまた私の大事な友なのですから』

『……!! ありがたき幸せに存じます……!』


 ユグドラツィに友として認められたことに、白銀の君が感動の面持ちで再び頭を垂れる。

 尊敬して止まない神樹から、友と認めてもらえる―――白銀の君にとって、これ程光栄なことはなかった。


「さ、じゃあそろそろ目覚めの湖に戻ろうか」

『ええ、そうしましょう。ツィちゃん様も、どうぞこれからもますますのご健勝を―――遠く離れたシュマルリの地から、ユグドラグス様とともにお祈りしております』

『ありがとう、白銀。また貴女に会える日を、心より待ち望んでおりますよ』


 別れの挨拶を和やかに交わす、ユグドラツィと白銀の君。

 ライトとレオニスを背に乗せた白銀の君。ユグドラツィの背よりも高く飛び、再び目覚めの湖に戻っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライトとレオニスが白銀の君とともに、再び目覚めの湖の小島に降り立つ。

 小島の上では、敷物の上で寛ぐラウルとウィカ、水の女王にアクアもいた。ちなみにイードは小島の近くでのんびりと遊泳している。


「ただいまー」

「おかえりー」

「待たせたな」

「ご主人様達もお疲れさん」


 白銀の君の背から降りて、ラウルの横に駆け寄り小声で言葉を交わすライト達。

 何故小声なのかというと、水の女王がラウルの膝枕ですやすやと寝ているからだ。

 実は小島の上空に到達した時点で、ラウルの膝枕&水の女王が寝ている様子が降り立つ前から見えていた。なので、寝ている水の女王を起こさないように配慮して、小声での会話となっているのである。


 敷物の上で、胡座をかいて座るラウルの太腿の上に頭を乗せて、すっかり寝ている水の女王。

 スヤァ……と眠る水の女王を、ライトとレオニスがそーっと覗き込みつつその寝顔を眺める。


「何だ、褥に帰る前にもう寝ちまったのか」

「ああ。ご主人様達が出かけた後、ここで皆でおやつを食べていたんだがな。食べ終わってすぐに『ねもい~』と言ってな、この通りもう夢の中さ」

「きっと初めてのお出かけで、すごく疲れたんだよ」

「だろうな……しかも初めて出かけた先が天空島なんて、緊張しない訳がないわな」


 先程よりもさらにひそひそ声になるライト達。

 水の女王はラウルの膝で『んにゃむにゃ……』と呟きながらぐっすり寝ている。その寝顔は完全に無防備で、起きている時の愛らしさとはまた違う格別な愛らしさである。


 レオニスはラウルのいる場所から離れて、小島の横で泳いで待機しているイードの近くに飛んでいき声をかけた。


「おーい、イード。ラウルの膝で寝ている水の女王を、アクアといっしょに褥まで運んでやってくれ」

「シュルリュリ!」

「起こさないように、そっとな」


 レオニスに頼まれたイードが小島の傍まで寄り、その長い触腕を伸ばして水の女王をそっと持ち上げる。

 そしてゆっくりとアクアの背に下ろして乗せた。

 うつ伏せ状態でアクアの背中に寝そべる水の女王。起きる気配は全くない。どうやら水の女王は、一度寝ると滅多なことでは起きない性質らしい。


 水の女王の枕になっていたラウル、枕の役割から解放されたので敷物やら食後の食器やらをササッと空間魔法陣に収納して片付けていく。

 そしてライトやレオニスとともに、アクアの背に乗せられた水の女王の寝顔を覗き込む。


「水の女王も、お疲れさん」

「初めてお出かけできて、良かったですね!」

「しばらくゆっくり休みな」

『ふふふ……お疲れさまです』


 アクアの背の上で、スヤッスヤに寝ている水の女王に向かってライト達が小さな声でそれぞれ言葉をかける。

 寝ている水の女王に、聞こえるはずもないのだが。それでも今日の様々な出来事を思うと、労いの言葉の一つもかけたくなるというものだ。


 アクアがイードとともに、ゆっくりと水の中に潜っていく。

 イードはアクアの背に乗ったまま寝ている水の女王の身体をそっと押さえながら、背中から落ちないように支えている。

 そうしてアクア達は水の中に帰っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 水の女王達を見送ったライト達。


「じゃ、最後の仕上げだ。俺達も白銀の君をラグスの泉まで送っていくか」

「うん!ウィカ、もうひと頑張り、よろしくね!」

「うにゃっ」


 ライトとレオニスが、水中移動の担い手であるウィカに声をかける。

 ウィカは天空島からの帰りに呼ばれただけなので、まだ普通に元気いっぱいである。

 もっとも、天空島にいる間はドライアド達にモテモテで、それこそ向こうにいる間中ずっともみくちゃにされていたので、その疲れは多少あるかもしれないが。


「ああ、ラウルは先にラグナロッツァの屋敷に戻っていいぞ。何なら今晩の晩飯の支度でもしててくれ。俺達も白銀の君を無事送り届けたら、すぐに戻る」

「了解。ウィカももう一働き頑張ってな」

「うなッ」

「白銀の君もお疲れさん。また会おう」

「ラウルもお疲れさまです。また会いましょう」


 先に帰宅していい、とレオニスに言われたラウル。ウィカと白銀の君に挨拶をして、カタポレンの家のある方向に飛んでいく。

 飛んでいくラウルの背中を見て『あー、ラウルも飛べていいなー。レオ兄も飛べるし、俺だけ飛べないの悲しい。俺も早く空を飛べるようになりたーい!』と心の中で叫ぶライト。

 ライトの夢が叶う日は、果たしていつのことか。

 そんなライトの心の叫びなど知る由もないレオニスが、白銀の君に向かって声をかける。


「白銀の君、待たせたな。じゃ、ぼちぼち行こうか」


 白銀の君をシュマルリ山脈のラグスの泉に送っていけば、後はライト達もラグナロッツァに帰るだけだ。

 今日の天空島の旅の締めとして、ウィカとともに白銀の君を送り届ける。そのために、ライト達もその背に乗ろうと横に立ったのだが、何とここで白銀の君が頭を横に振る。


『レオニス、ライト。貴方達までラグスの泉に来なくていいです。ここで別れましょう』

「ン? 何故だ? せっかくならシュマルリ山脈まで見送るぞ?」

「そうですよ、白銀さんのおうちまでちゃんと送りたいです!」

『貴方達のその気持ち、本当に嬉しいしありがたいと思っています。ですが、ウィカに送ってもらうだけで十分です。何故なら……』


 意外なことに、ここで別れようという白銀の君にレオニスもライトも驚きつつ食い下がる。

 だが、白銀の君は固辞したままその意志は変わらない。しかも、ただ単にライト達に遠慮しているのではなく、何やら別の理由があるようだ。


『ここでまた大人数でラグスの泉に行けば、鋼鉄達が駆けつけてくるでしょう』

「あー……うん……そうだな……」

『まぁ何しろあの者達ときたら、特にこのウィカが大好きで大好きで仕方ありませんからね。さすがに今からあの者達の相手をする余力はありません……』

「そ、そうですねー……アハハハハハ……」

「うにゃ?」


 小首を傾げるウィカをちろりと見遣りながら、ここで別れようと言った理由を語る白銀の君。彼女の言うことに、ライトもレオニスも苦笑いしながら納得している。

 シュマルリ山脈のラグスの泉周辺に住む、鋼鉄竜、獄炎竜、氷牙竜、迅雷竜。これら中位ドラゴンは総じてウィカのことが大好きだ。何ならもう『ウィカ親衛隊』と呼んでも差し支えないかもしれない。


『ですので、ウィカ。貴方も私をラグスの泉に送ってくれたら、すぐにこの目覚めの湖に戻りなさい。もう日も暮れますし、貴方も今からあの者達の相手をすることはありませんからね』

「うにゃッ」


 白銀の君が、ウィカにも言い含めるように話しかける。

 ラグスの泉にウィカが長居すれば、それこそ鋼鉄竜達がウィカの気配を敏感に察知してすっ飛んでくるだろう。

 もうだいぶ日も傾いてきているというのに、今から中位ドラゴン達と遊ぶ訳にもいくまい。彼らにとっ捕まる前に、とっとと帰りなさいね、という白銀の君の気遣いである。


 白銀の君は改めてライトとレオニスの方に向き直り、別れの言葉代わりの礼を言う。


『レオニス、ライト、今日は本当にありがとう。我が君のお言葉を姉君に伝えることができただけでなく、他にもたくさんの貴重な経験をさせてもらいました』

「どういたしまして。何だかんだで俺達も楽しかったぜ」

「ぼくも、白銀さんの背中に乗せてもらって空を飛ぶことがてきて、すっごく楽しかったです!」

『そう言ってもらえると、私もこの上なく嬉しいです。またともに空を飛びましょう』

「はい!」「おう!」


 再会だけでなく、空の旅の約束もしてくれた白銀の君に、ライトだけでなくレオニスもまた破顔しつつ元気よく応える。

 白銀の君は少しだけ湖の中に入ってから小島の方に向き直り、小島の上にいるライトとレオニスに向かい合う。


 ライトは白銀の君に向かって大きく手を振り、レオニスも小さく手を振っている。二人のお見送りに、白銀の君も微笑みを浮かべる。

 そしてウィカが白銀の君に触れたかと思うと、二者ともするりと湖の中に吸い込まれていく。

 ライトとレオニスに見送られながら、白銀の君はシュマルリ山脈に戻っていった。

 ユグドラツィと白銀の君の初めてのご対面から、白銀の君がラグスの泉に帰るまでを一気にお送りしました!(・∀・)

 というか、そろそろホントに締めなければ……


 さて、皆様はお気づきになられておりますでしょうか?

 ライトの夏休みである『初めての夏休み』の章に入ってから、早25話。リアルでは一ヶ月弱ほど経過しておりますが。何と!この天空島の旅は日帰り旅行で、しかも!夏休み初日なんですよ!(白目

 うひー!25話も書いたのに、これでまだ夏休み一日目とか一体どゆこと!?

 ……まぁ、夏休み前日の終業式の日に魔力テストとかしちゃってるのも、話数が嵩んでいる原因の一つなんですけども。


 あとはまぁ、天空島でのやること、やらねばならなかったことが文字通り山積みだったことに加え、水の女王の飛び入り参加等々本当にギュウギュウ詰めの旅でした。

 明日からは、もうちょいのんびりできる?……ぃゃ、そんな暇もなくあちこち動き回るんだろうなー…(=ω=)…

 リアルでは冬にまっしぐらですが、拙作の夏休みはもしかしたら年越しになるかもしれません・゜(゜^ω^゜)゜・

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