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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第601話 初収穫の成果

 ラウルがカタポレンの森の家の横に、新しい畑を作ってからしばらく後のこと。

 ライトの朝のルーティンワークに、もう一つ仕事が増えた。

 それは『ラウルの畑に毎朝水遣りをする』という仕事である。


 今畑に植わっているのは、トウモロコシと枝豆の二種類。

 種蒔きと苗の育成は、ラウルがラグナロッツァのガラス温室にて進めている。小さな園芸用ポットに種を蒔き、芽が出てある程度苗が育ってから畑に植えていた。


 カタポレンの畑の方も、本当はずっとラウルがつきっきりで観察できればいいのだが、そうもいかない。執事としての仕事だってあるし、料理の仕込みや市場への買い出しだってある。

 やりたいことがあれこれと増える一方のラウル。日々大忙しである。

 そんな訳で、ライトはラウルからカタポレンの畑の水遣りと観察を頼まれたのだ。


 ちなみにカタポレンの畑の作物は、基本的に人間用ではなくオーガ族向けとして作物を巨大化させる、という目標がある。

 そのために、水遣りするにもただの水ではなくブレンド水を使う。そう、いつも神樹達にやっているように、各種回復剤を水に混ぜるのだ。


 HP回復のポーション類と、MP回復のエーテル類、どちらがより大きい作物になるか全く分からないので、とりあえず三列に苗を植えて『A:ポーション列』『B:エーテル列』『C:ポーション&エーテル列』に分けて水を与えてみることにした。

 ここで使用する回復剤は、エクスポーションとアークエーテルである。


 いつも使う木製バケツに普通の水を満たし、一杯につき回復剤二本分を入れてよく混ぜる。これを如雨露に移して苗にたっぷりとかけていく。

 ちなみに苗はいつ巨大化してもいいように、2メートルくらい間隔を開けてある。


 カタポレンの畑で初めて作る作物は、トウモロコシと枝豆―――ラウルからその話を聞いたライトは、ラグーン学園の中等部の図書室で農業関連の本を手当たり次第読み漁った。

 そうして得た知識『どちらも根元に土を寄せる』『トウモロコシは一番上の雌穂を残して、下の雌穂は取り除く』『枝豆は頂芽を摘んで、側枝を増やす』などをラウルに伝え、二人して適宜実践していくこと約五日。

 どちらとも立派な実をつけるに至った。


 そして週末の土曜日の朝。

 この日は皆で目覚めの湖にピクニックに行く日だ。

 目覚めの湖の仲間達にもラウルを紹介するために、ラウルも伴にピクニックに行くことになっている。

 カタポレンの家で待ち合わせをし、ラウルが来てから畑に向かうライトとラウル。家の横の畑で、二人して天を仰ぎ見る。


「ぃゃー、どれも大きく育ったねぇ……」

「おう、これじゃ他の木と大差ねぇな……」


 デカデカと育ったトウモロコシや枝豆を前にして、首を真上に向けつつ呟くライトとラウル。

 その大きさたるや、トウモロコシは周囲の木々と並ぶ高さになり、枝豆ももっさりと生い茂っていてちょっとしたジャングルのような様相を呈している。


 外見だけの大きさで言えば、ポーション類のA列が最も大きい。一番小さいのはエーテル類のB列、ポーションエーテル混合のC列はその中間。ひと目で判別できるくらいに差がついた。

 水遣りも如雨露を使っていたのは最初の二日だけで、三日後からはもうバケツの水をそのまま作物の根元に直接ザバザバとかけていたくらいだ。

 もはや大木にも等しい巨大なトウモロコシを前に、ライトもラウルも己が小人かアリンコにでもなったような気分になる。


「やっぱポーション列が一番大きく育つねー。味の方はどうか分かんないけど」

「そうだな、でもエーテル列も普通のサイズに比べたら倍以上は大きくなったな」

「でも、最初の苗の時にはこんな大きくなかったよねぇ?」

「ああ、種蒔きと苗はラグナロッツァの温室でやったんだが。ここまでになると、やはりカタポレンの森の魔力が大きく影響しているのかもしれん」


 予想をはるかに上回る成果に、ライトもラウルも天を見上げながら意見交換をしている。

 とりあえず実物を見るために、ラウルが飛んでトウモロコシの実や枝豆を一つづつ収穫する。

 最も大きく育ったA列のトウモロコシなど、ライトの身体ほどもある。枝豆の方も、大きなものはライトが両手で持たなければならないほどだ。


「うわー、すっごい大きいね!これならオーガの人達でも十分食べられるんじゃないかな!」

「そうだな、あとは調理法だな。直接焼くだけじゃ、火が通りきらなくて生焼けになりそうだ」

「あー、そうだねぇ……そしたら茹でるとか蒸すとかの方がいいのかな?」

「ま、そこら辺はまた俺が考えつついろいろと試行錯誤してみるわ」

「ぼくにも味見させてね!」

「おう、美味いか不味いかも分からんが、せっかくだからライトやご主人様にもその味をみてもらわんとな」


 地面に並べて置かれた作物を見ながら、あれこれと相談するライトとラウル。

 トウモロコシと言えば『焼きトウモロコシ』が定番だが、巨大過ぎて表面しか焼けずに実の根元が生焼けになる可能性が高そうだ。

 調理法などはラウルにお任せするとして、その成果を味わうのが今から楽しみなライトであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 カタポレンの森の畑での初収穫から三日後。

 朝ラウルから「こないだのトウモロコシを晩飯に出すから、今日の夜はご主人様といっしょにこっちで食ってくれ」と誘われたライト。

 ラグーン学園から帰宅した後、その日の宿題を済ませてからワクテカで晩御飯を待つ。

 レオニスもその日は早めに帰宅し、早々に食堂に入ってきた。二人とも、カタポレン産の野菜のお味がかなり気になるようである。


「お待たせー」

「「おおお……」」


 テーブルでおとなしく座っている二人の前に、ドドン!と置かれた大皿の数々。

 焼きトウモロコシに茹でトウモロコシ、茹でた枝豆に枝豆のマッシュサラダ。カタポレンの森で採れた、初めての野菜である。


 焼きトウモロコシは10cmくらいの輪切り状態で、茹でトウモロコシは芯を取り除いて粒状にしたものを茹でたようだ。

 枝豆は、砂漠蟹を茹でた巨大な寸胴鍋で茹でている。せっかくなので鞘付きのままで出してあるが、何しろ全てがデカい。

 枝豆の中身の豆が、レオニスの広げた手程もある。トウモロコシはレオニスの拳より一回り大きいくらいか。

 普通の人間ならば、これらを一粒二粒食べただけでお腹いっぱいになりそうだ。


 そして、サイズの確認もだが、何より最も気になるお味の方はと言うと―――


「……お? 思ったより結構イケるな?」

「ホントだね!ちゃんとトウモロコシや枝豆の味がする!」


 トウモロコシや枝豆をもっしゃもっしゃと食べていた、ライトとレオニス。驚きの表情を浮かべながらも、思った以上にちゃんとした味であることを絶賛している。

 まずは何も味をつけない状態で、素材の味をそのまま味わう二人。

 しばらく食べ進めてから、今度はマヨネーズやらドレッシングやらをかけて味変しながら食べていく。


「これ、どの列のやつ?」

「C列。ポーションとエーテルを1:1で混ぜた混合のやつだな」

「へー、そうなんだー。他のはどうだったの?」

「Aのポーション系は、とにかく大きくなるけどやはりその分味も大味に感じる。Bのエーテル系は、素材の味は一番濃いが大きさが若干物足りない」

「そっかー。やっぱり半々のブレンドが一番良い結果が出たんだね」

「お前ら、俺の知らんところで何か難しいことしてんのね……」


 ラウルの料理の試行錯誤の結果に、ライトも納得する。

 それらの研究発表と論議を繰り広げている二人の横で、蚊帳の外のレオニスが何やら呟いている。


「ラウル、次の野菜は何を作るかもう決めてあるの?」

「ああ。とりあえず生食可能なトマトとキュウリを作ってみるつもりだ」

「ああ、生食できる野菜なら調理方法を工夫しなくても食べられるもんね!」

「そゆこと」


 種蒔きから実がなるまで約一週間。

 一週間で巨大な野菜が収穫できるとは、予想以上の素晴らしい成果である。

 もし万が一、サイサクス世界に食糧危機が訪れるような事態になっても、この栽培方法さえあればきっと乗り切れるだろう。


「……ま、何にせよラウル、お前の畑が順調に収穫できているなら良いことだ」

「ああ、これもご主人様の理解と協力のおかげだ。改めて礼を言わせてくれ、ありがとう」

「礼なんざ要らんさ。お前が美味しいものを作ってくれれば俺達も嬉しいし、ラキ達オーガ族も美味しいものが食べられるようになるんだからな」

「そうだな」


 己の我儘を聞き入れてくれるご主人様(レオニス)で、本当に良かった、とラウルは心の底から思う。

 そして、それなりの成果を得られたことに気を良くしたラウル。カタポレンの森の畑の拡張計画を出すのは、これより数日後の話である。

 のごぉぉぉぉ、突発性残業発生により投稿時間遅延と中身少なめになってしまいました(;ω;)


 それはさて置き……本日はカタポレンの森の畑の成果です。

 一週間もあれば巨大野菜が作れるようになるなんて、まるで夢のようですよね!

 まぁもともと各種魔法がある世界なので、何でもアリっちゃ何でもアリになるんですけども。

 ちなみにこの巨大野菜がサイサクス世界で一般化されていないのは、ひとえに栽培地問題ですね。つまり、これまで誰一人としてカタポレンの森で農業をしようとしたことがなかっただけなのです。

 実際常人には長時間滞在できる場所ではないので、それも致し方なしなのですが。

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