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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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600/1681

第600話 とあるビッグニュース

 拙作をいつもお読みくださり、本当にありがとうございます。

 今日は第600話到達です。気がつけば、もう600話。月日が経つのは本当に早いものですねぇ。

 よろしければこれからも、拙作の続く限りご愛読いただけたら嬉しいです。

 今後ともよろしくご贔屓の程お願いいたします<(_ _)>

 その日、とある出来事によりラグナロッツァ中が沸きに沸いていた。

 貴族平民の身分問わず、誰もがその話題で持ちきりである。

 その話題を真っ先に知ったのはラウル。市場で買い物をしている時に、路上で「号外だよ、号外ーーー!」と叫びつつチラシを売る者がいたからだった。


「号外? この時期に号外が出るようなことなんてあったか?」

「いンやー、さっぱり思いつかないねぇ。何だろうね?」


 果物屋で買い物をしていたラウル、号外の呼び声に店のおばちゃんといっしょに頭の上に『???』を浮かべている。

 チラシ売りは通りをゆっくり歩きながら移動していて、果物屋の方に少しづつ向かってくる。

 果物屋の前にチラシ売りが通りかかったところで、ラウルがチラシ売りを呼び止め一部を購入してチラシを得た。


 ちなみにそのチラシは一部10G。

 チラシ一枚に約100円とはお高く感じるが、このサイサクス世界にはそこまで大量の紙は溢れていない。

 紙はそこまでものすごーく貴重品という訳でもないが、現代日本のように湯水の如く消費できる代物でもない、という微妙な立ち位置だ。よって号外も無料ではなく、有料販売になるのである。


 さて、そのチラシを得たラウル。果物屋のおばちゃんとともに気になるその内容を見ていく。


「何ナニ……『大スクープ!世界初の『アイテムバッグ』がラグナ大公に献上される!!』だと……ほう、ようやくそこまできたか」

「アイテムバッグってのは何だろうねぇ?」

「見た目の容量以上に物を収納できる鞄のことだな。言ってみれば、俺が使う空間魔法陣の効果が付与された鞄ってとこだ」

「へーーー、ラウルさんのように空間魔法陣が使えるようになるってことかい!? そりゃすごいねぇ!」


 号外チラシは、アイテムバッグが国家元首であるラグナ大公に献上されたことを知らせるものだった。

 そのことを果物屋のおばちゃんにも教えてあげるラウル、何気に今日も紳士である。

 ラウルはさらに記事を読み進めていく。


「小さな手提げ鞄程度の大きさなのに、収納容量はおよそ100リットルも入るスグレモノ!か……100リットルというと、大きめバケツの五杯六杯ってところか」

「手提げ鞄に、それだけの量の物が入れられるってこと? それだって十分すごいことじゃない!」

「まぁそうだなぁ、日々普通に買い物とかする分には十分な量だな」


 ラウルが手に持つチラシを、ラウルの横から覗き込みながら興奮気味に語る果物屋のおばちゃん。

 普段から容量無制限にも等しい空間魔法陣を使っているラウルにしてみれば、100リットルしか入らないアイテムバッグなど玩具や児戯にも等しい。

 だがそれは、本当に極一部の特異な者達だけが持つ感覚であり、世の大多数の人間は果物屋のおばちゃんと同じ感想を持つのである。

 その証拠に、ラウルのようにチラシ売りからチラシを買って読んでいる人達が、路上で「へー、すごいね!」「本当にそんなすごいものがあるんだ!?」と口々に驚いている様子があちこちで見える。


「私らもいつか、そのアイテムバッグ?とかいうものが買えるようになるといいねぇ。そしたらうちも商品の仕入れとか配達とか、今よりもっと楽になるんだけど」

「ラグナ大公に献上されたくらいだ、何年か後には俺達平民にも買えるようになってるんじゃないかな」

「あらヤダ、ラウルさんってば面白いこと言うねぇ。ラウルさんはそんなもん買う必要ないじゃない!」


 ラウルの言葉に、果物屋のおばちゃんがアハハハハ!と豪快な笑い声を上げながらラウルの背中をバンバンと叩く。

 実際ラウルがアイテムバッグを買うことなど、絶対にないだろう。それもこれも、全ては空間魔法陣を教えてくれたご主人様(レオニス)のおかげである。


「……っと、お会計の途中だったね。中断してすまなかったね、お代は700Gね」

「ン? もうちょい買ったぞ? 金額間違ってないか?」

「いいのいいの、さっきの号外をいっしょに見せてもらったお礼だよ!」

「そうか、ありがとう」


 今日のラウルの果物屋での買い物は、750Gのお会計になるはずだ。だがその端数は、号外を見せてくれた礼として果物屋のおばちゃんの厚意で切り捨ててくれたようだ。

 号外は一部10Gなのに、50Gもオマケしてくれたら果物屋の損になるというのに。気の良いおばちゃんである。


 ラウルにしても、こうしたちょっとしたオマケや温かい厚意を受けるのはとても嬉しい。

 普段クールなラウルだが、人の温かさに触れると自然と柔らかな笑みが浮かぶ。

 お代の700Gを支払い、購入した様々な果物とともに先程の号外チラシも空間魔法陣に仕舞うラウル。

 全部の品を仕舞い終えた後、ラウルはおばちゃんに声をかけた。


「じゃ、またな」

「まいどあり!」


 果物屋を出たラウルは、次の目的地である調味料店に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その翌日のラグーン学園。

 ここでも昨日の号外のことで話題が持ちきりだった。

 朝ライトが2年A組の教室に到着し、自分の机に座って一時間目の支度をしている間もいつもより教室内のざわつきが大きく感じる。


「ライト君、おはよーう!」

「リリィちゃん、おはよう!」

「ねぇねぇ、ライト君もあの話、聞いた!?」

「あの話って、どの話?」

「アイテムバッグの話よ!」


 リリィの元気いっぱいな朝の挨拶も早々に、早速その話題を振られるライト。

「あの話」だけでは何のことか分からないので、とりあえず問い返してみたが。やはり話題はアイテムバッグのことらしい。


「うん、ラウルから聞いたよ。何か号外が出てたらしいね?」

「そうそう!うちの向日葵亭でも号外を買った人達が結構いて、皆その話ばかりしてるわ!」

「皆おはよう。皆で早速アイテムバッグの話かい?」

「おはよう、ジョゼ!ジョゼももう知ってるの?」

「うん、昨日父さんが勤め先でその話を聞いてきたみたいなんだ」


 話の途中で、登校してきたジョゼが加わる。

 宿屋兼定食屋をしているリリィだけでなく、ジョゼまでアイテムバッグの話を知っているとは驚きだ。

 ジョゼは自分の家のことをいつも『万年貧乏平子爵』と言っているが、職場で号外内容を知るあたり父親のリール子爵は案外良いところにお勤めしているのかもしれない。


「皆知るのが早いわね!」

「そりゃ号外が出るくらいだからね、どこもこの話で持ちきりさ」

「皆おはよーう!」

「イヴリンちゃん、おはよーう!」

「皆さん、おはようございます」

「ハリエットちゃんもおはよーう!」


 ライトの机のもとに、イヴリンとハリエットも合流する。

 いつものラグーン学園での朝の風景だ。

 その後も話題はアイテムバッグの話が続いていく。


「この中で一番最初にアイテムバッグを手に入れるのは、やっぱりハリエットちゃんかなぁ?」

「だろうねー。大公がもらった後は、貴族の人達の中でも偉い順番からどんどん買っていくんだと思うよー」

「ハリエットちゃん、もしアイテムバッグを手に入れたらいつか見せてね!」

「いいえ、まだそうと決まった訳では……それに、もし手に入れるとしても本家の伯父様が一番先でしょうし」


 イヴリンやジョゼの予想に、ハリエットが慌てて両手をブンブンと左右に振りながら否定する。

 実際ジョゼやハリエットの予想は正しい。

 ハリエットはウォーベック侯爵家の流れを汲む、由緒正しい伯爵家の令嬢だ。今ここにいる子供達の中で、一番最初にアイテムバッグの実物を目にする可能性大である。

 だがそれとて、本家のウォーベック侯爵家を差し置いて分家であるハリエットのウォーベック伯爵家が先に手に入れるのも、絶対にあり得ない。


 そんな中、ハリエットが話の矛先を変えるかの如くライトの方に視線を向けた。


「私よりも、もしかしたらライトさんの方が先に入手するのではないですか?」

「え? ぼく?」

「ええ、だってライトさんの保護者はかの英雄ですもの。きっとライトさんのために、いち早く入手なさると思いますわ!」


 ハリエットの言葉に、イヴリンやジョゼ、リリィも「あー、そうかもねー」と頷いている。

 実際もしライトがアイテムバッグを持っていなければ、レオニスがいろんな伝手を駆使して入手し、ライトに買い与えることだろう。

 だが、ライトは既にアイテムリュックを持っている。しかもそれはアイテムバッグの上位版、容量制限無しなので新たにアイテムバッグを入手する必要などないのだ。

 もちろんそんなことはハリエット達には明かせないのだが。


「ンー、でもさー、普通に売り出すとしてもものすごいお値段でしょ? さすがにうちのレオ兄ちゃんでも、そんなすぐには買えないと思うなー」

「だよねー。号外のチラシの予想では、何年後に500万Gで売り出すだろう、とか書いてあったよねー」

「500万Gとか、訳分かんない。私達が大人になる頃には、もう少し安くなってるといいんだけどなー」

「もう少しどころか、かなり安くなってくれないと僕達にはとても買えないね」


 ライト他全員がため息をつく。

 昨日の号外チラシには、一般販売を開始した場合の価格を500万Gと予想していた。

 500万Gとは日本円にして5000万円、田舎で新築の庭付き一戸建てが買える価格である。


 何とも空恐ろしい値段だが、アイテムバッグとはそれ程に革新的なアイテムなので、その値段も普通にあり得る話だ。

 一般庶民には絶対に手が届かないが、大富豪や豪商などお金に余裕のある層は喜んで買うのだろう。


 また、その値段はともかくアイテムバッグの存在がこうして一気に広まったことは、ライトとしては嬉しかった。

 アイテムバッグが世に広まれば、物流改革が起こることは間違いない。


 事の始まりは、ライトのおねだり。まだ空間魔法陣が使えないなら、その代わりとなるものがほしい!という願望から、レオニスとフェネセンが共同開発したものだ。

 ライトの望みを叶えるだけでなく、世の発展に寄与するようにと願い作った品。

 昨日の号外チラシは、その願いが叶うための大きな一歩でもあった。


「私達がおじいちゃんおばあちゃんになる頃には、何とかなるかしらね?」

「何年か先になると思うけど、きっとぼく達でも頑張れば買えるくらいの値段にはなると思うよ」

「そうなの?」

「うん。アイテムバッグのことは、冒険者ギルドでも前からすごく話題になっててね。うちのレオ兄ちゃんも、そんなようなこと言ってたんだ」

「そっかー、ライト君のお兄さんって現役の冒険者だもんね!」


 レオニスから聞いた話、という体で希望的観測を皆に伝えるライト。

 高くて買えない……と今から絶望するよりは、そのうち買えるようになる!と皆に思ってほしかったのだ。


「そしたらさ、いつかリリィのお年玉でも買えるようになるかしら!?」

「さすがにお年玉価格は無理じゃない? もしそうなったとしても、その頃には僕達はお年玉もらう側じゃなくてあげる側だろうね」

「大丈夫!お年玉価格になったら、ジョゼに買ってプレゼントしてもらうから!」

「どうして僕がリリィちゃんに買ってあげる話になってんの……」

「そこはほら、幼馴染のヨシミってヤツで!」

「幼馴染にお年玉もらうなんて、聞いたこともないよ……」


 どこまでも楽観的なリリィに、ジョゼのツッコミが追いつかない。

 元気いっぱい常にパワフルなリリィには、ジョゼも敵わないらしい。

 同級生達の仲睦まじいわちゃわちゃとした会話を、ライトは嬉しそうに眺めていた。

 久しぶりのアイテムバッグ話です。

 アイテムバッグの動力源である魔石の話は、これまでもちょくちょく出てきていましたが。アイテムバッグの存在の進展は、かなーり久しぶり。

 見た目以上に収納できるアイテムバッグというのは、異世界ファンタジーにおいてはド定番のアイテムですが、リアルでも欲しいですよねぇ。

 とはいえ、こんな物理法則無視の品が作れるようになったら、それこそどこでもドアとか宇宙戦艦のワープ航法も実現できそうな気がする。

 そんなのが日常生活に浸透するころには、きっと月や火星の移住も実現してますね!

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