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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第593話 贅沢なひと時

「はー、食った食った!ごちそうさん!」

「獲れたての貝や魚、すっごく美味しかったね!」

「やはりカタポレンの森の魔力を含む水で育つと、大きさだけでなく味も良くなるのかもしれんな」


 昼食を食べ終えたライト達が、膨れたお腹を満足げに擦る。

 贅沢な昼食の後は、食器類を片付けて小島の中央にある林に移動して、木陰で皆でゴロ寝。これもまた何とも贅沢なひと時である。


 木陰から射す木漏れ日がキラキラと光る。

 満腹感に満ちたライト、木陰のもとで浴びるそよ風の気持ち良さにすぐにうたた寝を始めてしまった。

 あー、風が涼しくて気持ち良いー……皆で美味しいご飯も食べたし、そろそろ今日の本題に入らないとなー……と思いながら寝転んで、その三分後には微睡みに沈んでいた。


「……何だ、ライトはもう寝ちまったのか」

「美味いもんを腹いっぱい食った後に寝転べばな、眠くもなるさ」

「まぁなー。それに、ここ最近は何だかんだでずっと忙しくしてたからな」

「全くだ。黄金週間の間なんて、一日も休まずにどこかしら出かけてたもんなぁ」


 ライトの横にいたレオニスとラウルが起き上がり、すっかり寝入ってしまったライトの顔を覗き込む。

 無防備な寝顔を晒し、スヤァ……と眠るライト。相変わらず寝顔だけは年相応に愛らしい。


『人間というのは、寿命が短い分忙しく動かなきゃいけないものなのねぇ』

「そうだなぁ。俺達人間が属性の女王や妖精のようにのんびり生きてたら、あっという間にジジイになっちまうわ。ホント、水の女王やラウルが羨ましいよ」

「このご主人様達なら、千年くらい余裕で生きそうだがな」

「ラウル……お前ね、俺達のこと一体何だと思ってんの?」

「いやいや、ご主人様達ならきっとできるって。俺、割と本気でそう信じてるんだぜ?」


 何気に人外ブラザーズを揶揄するラウルに、レオニスがジロリンチョ、と睨み心外そうな顔でむくれる。とはいえ、ラウル的には半分くらいは本気でそう思っているようだ。

 ライトとレオニスの間、ライトの真横に寝そべっている水の女王。腹這い状態で上半身だけ起こし、ライトのほっぺたをぷにぷにと突っついている。

 子供のすべすべお肌を突っつくのは気持ち良いようで、ずっとぷにぷにぷにぷにしている。

 ライトがぐっすり寝ているのをいいことに、マシュマロのような弾力を存分に楽しんでいる水の女王。その顔は穏やかな笑みに満ちている。


 ちなみにウィカはラウルの膝でお昼寝、イードとアクアは小島の近くの湖面でゆったりと遊泳している。

 皆それぞれに午後の麗らかなひと時を満喫しているようだ。

 するとここで、レオニスが水の女王に向かって話しかけた。


「なぁ、水の女王よ。一つ折り入って相談があるんだが」

『なぁに?』

「俺、近いうちにシュマルリ山脈の南方に出向かなきゃならん用事があるんだが―――」


 ライトが話そうと思っていた本題を、レオニスが切り出した。

 光の女王や雷の女王に会うためには、天空神殿のある天空島に行かなければならないこと。基本空を飛べないレオニス達が天空島に行くために、大型飛行種族であるドラゴンの力を借りようと思っていること。

 ドラゴンの力を借りるには、ドラゴンの生息地であるシュマルリ山脈南方を直接訪れる必要があること等々。

 それらを順序立てて説明していくレオニス。

 水の女王も、ふむふむ……と時折相槌を打ちながら、静かにレオニスの話に耳を傾けていた。


「―――という訳で。シュマルリ山脈南方に近い善十郎の滝に、アクアの力で俺を運んでもらえないかな。往復でなくてもいい、行きの片道だけでも助かるんだが」

『いいわよ』

「……いいのか?」

『ええ。私からもアクア様にお願いしてあげる』


 特に難色を示すことなく、あっさりとレオニスの願いを聞き入れた水の女王。

 少しは渋られる覚悟もしていたレオニス、あまりにもストレートに通ってしまって逆に拍子抜けしている。


『だってそのシュマルリ山脈の南方に向かうというのは、貴方達が天空島に行くために必要なことなのでしょ?』

「あ、ああ。悲しいことに、今の俺達の力だけでは天空島に行く手段がなくてな」

『そして貴方達が天空島に行くのは、私のお姉ちゃん達―――光の女王や雷の女王に会って、お姉ちゃん達の無事を確認するためよね?』

「ああ。炎の女王に頼まれたからな」


 拍子抜けしているレオニスに、水の女王がいくつかの質問をしていく。

 彼女の質問全てを首肯し、肯定していくレオニス。

 レオニスの答えを聞いた水の女王は、にっこりと微笑む。


『だったらそれは、私の願いを叶えてくれるためのものでもあるもの』

『光のお姉ちゃんや雷のお姉ちゃんが無事であることを、私も知りたいの』

『それに……もし万が一空のお姉ちゃん達に、炎のお姉ちゃんのような異変や危機が起きていたら―――』


 笑顔の後に、少しだけ表情を曇らせる水の女王。

 もし炎の女王のように、彼女達にも危機が迫っていたら―――そのことを想像して心配しているのだろう。

 伏し目がちに俯いていた水の女王が、顔を上げてレオニスの目を真っ直ぐに見据える。


『レオニス、貴方がお姉ちゃん達を助けてくれるわよね?』

「ああ、もちろんだ。俺の持てる力全てで属性の女王達を救い出す」

『絶対に、絶対にお姉ちゃん達を助けてあげてね?』

「……この世に絶対なんてものはないし、確約もできん。俺は全能の神じゃない、ただの人間だからな。だがそれでも……万が一の時は、出来る限り力を尽くすことを誓おう」

『……お願いね』


 これまで、数多の危機を乗り越えてきたレオニス。

 人族の中では間違いなく最強無比の傑物だが、それでもただの人族であることに変わりはない。

 神でも何でもないレオニスには、絶対という確約はできなかった。


 そして水の女王の方も、それが理解できる故にそれ以上無理は言わなかった。

 目覚めの湖から動けない自分の代わりに、他の姉妹の様子を見に行ってくれるだけでも御の字なのだから。


 空も飛べない、水にも長く潜れない。力も然程強くもなければ、魔法に長けた種族でもない。脆弱な人の子の身でありながら、属性の女王達のもとを訪れる―――これがどれだけ厳しく難しいことか、水の女王でも容易に推察できた。

 なのに、この人族達は自分達の願いを叶えようと懸命に動いてくれている。ならば私も彼らを支えるために、私のできることをしよう。水の女王はそう考えたのだ。


『ただ、アクア様にお願いするにしても、やっぱりライトの口添えがあった方がいいと思うわ。ライトはアクア様の親御様ですもの、アクア様だって二つ返事で承諾してくださるはずよ』

「親御様……じゃ、アクアの親御様であるライトが目を覚ましたら、改めてアクアにお願いしにいくとしよう。それまで俺達も少しのんびりするか」

『そうね……こんなに気持ちの良い風を浴びるのは、すごく久しぶりだわ……』


 レオニスと水の女王は、再びコロン、と地面に寝転がる。

 ライトの向こう側にいるラウルは、ウィカとともに既に昼寝している。

 爽やかなそよ風に頬を撫でられつつ、寝転んだ数瞬後にはライトと同じ微睡みの世界に落ちていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふぁぁぁぁ……よく寝たぁぁぁぁ」


 ライトが昼寝から覚めて起きると、他の皆はまだ昼寝していた。

 気持ち良さそうに寝ているレオニスやラウル、ウィカや水の女王の寝顔を眺めるライト。大人達もライトに負けず劣らず、無防備な寝顔である。


「レオ兄ちゃんもラウルも、何だかんだでずっと忙しそうにしてたもんねー。……って、あ、そうだ、アクアにお願いしなくちゃ」


 ライトは寝ている皆を起こさないように、木陰からそっと抜け出してアクアのいる湖の方に向かう。

 湖面ではイードが晒し木綿のように、でろーん……と揺蕩っている。さてはイードもお昼寝中か。

 一方アクアは起きているようで、少し離れた沖合で優雅に泳いでいるのが見える。


「ぉーぃ、アクアー」


 あまり大きな声は出さないように、手を大きく振りながら小声でアクアに呼びかけるライト。

 そんな小声でもアクアには届いたようで、ふいっ、とライトの方を見たかと思うと、ズドドドド……と小島に向かって爆進してきた。

 そのまま浜辺にドスン!と到着したアクア。

 ライトは慌ててアクアを制する。


「シーッ、静かにして、皆まだお昼寝してるから!」

「クルゥ?」

「……うん、大丈夫、皆起きてないようだから」

「キュルルゥ」

「アクアはホントに良い子だね!」

「クァァァ♪」


 長い首を『撫でて、撫でて♪』とばかりに下に下げて、頭をライトの前に突き出すアクア。

 ライトはアクアの要望を聞き届け、存分にその頭を撫でてやる。


「ぼく、アクアにお願いしたいことがあるんだ。皆のお昼寝の邪魔をしないように、小島の周りをのんびりと泳ぎながらお話しようか」

「クルルゥ♪」


 ライトはアクアの背に乗り、アクアとともに小島の周りをゆったり回りながら、本日の訪問目的である例の本題の話をしていった。

 小島でのんびりお昼寝タイムです。

 作中時間は五月の下旬。寒くもなく暑くもなく、お出かけにはちょうどいい季節です。

 黄金週間からこっち、皆ずっと忙しく動いていましたからねー。ぽかぽか陽気に包まれたら、あっという間にうたた寝しちゃって当然ですね。


 五月下旬というと、幼稚園や小学校は遠足、中学校は林間学校が催されるイメージ。もっともそれは作者の体験からくるものであって、今の時代はまた違うかもしれませんし、地域差もありそうですが。

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