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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第592話 思わぬ盲点

 湖底神殿周辺で、いそいそと水草を採取して空間魔法陣に入れていくラウル。

 ライトとレオニスも、ラウルの近くで食材採取の手伝いをしている。

 ラウルにはいつも、美味しいご馳走やスイーツを作ってもらっているのだ。たまにはこうしてラウルの食材ゲットの手伝いをして、感謝の意を示すのも良いだろう。


 水草採取の後、ラウルは貝類も空間魔法陣に入れようとした。だが、生きた状態の貝を入れることができずに、何と空間魔法陣に弾き返されてしまった。

 跳ね返された衝撃で、ラウルは「ンがッ!」と小さい悲鳴を上げつつガビーン!顔になる。空間魔法陣の唯一のタブーである『生き物不可』をすっかり忘れていたラウル、大ショックである。


 ぐぬぬぬぬ……と打ちひしがれるラウルに、ライトが救いの手を差し伸べる。


「ねぇ、レオ兄ちゃん、貝を入れられる魚籠とか持ってない? 貝は一度籠に入れて小島に水揚げして、雷魔法か何かで締めれば空間魔法陣に入れられるようになると思うよ」

「おう、あるぞ、ちょっと待ってな」


 ライトの問いかけに、レオニスが己の空間魔法陣から巨大な籠を取り出した。

 それはライトの背丈以上の高さがある、本当に大きな籠だ。この巨大な籠に、レオニスは一体何を入れて使っていたのだろう。


「あ、ありがとう、ご主人様達……」

「さ、ラウルも元気出して!この籠いっぱいに貝を入れて水揚げしようね!」

「お、おう。皆に美味しい貝料理を振る舞わんとな!」


 何はともあれ、ライトの機転と励ましに気を取り直したラウル。

 空間魔法陣に入れ損ねた貝を改めて拾い、今度はレオニスが出した巨大な籠にポイポイー、と次々に放り込んでいくラウル。

 貝を収穫していくうちにラウルのモチベーションも次第に上がっていき、籠が満杯になる頃にはすっかり元気になっていた。


 いっぱいどころか、山盛り状態になるまで貝が入った巨大な籠。相当な重量になっているに違いない。

 だが今日は、レオニスもラウルもそれぞれロングジャケットを着用している。二人ともかなりの力持ちだ、この程度の籠ならば中身満杯であろうとも軽々と持ち上げるだろう。


 そうして籠いっぱいに貝を拾ったライト達。一度小島に上がることにした。

 今度はイードやアクアの背には乗らず、皆で泳ぎながら小島を目指す。イード達の背に乗ってゆったりと遊覧するのも良いが、自分の手足を使って泳ぐのもまた心地良い。


 ちなみに籠は、イードが小島の際まで運んでくれた。

 背負い紐に触腕を通し、山盛りの貝が零れ落ちないように他の触腕で塞ぎ押さえながら運んでいくイード。

 籠を持ち優雅に泳ぎながら運ぶその姿は、まるで近所にお買い物にでも出かける奥様のようだ。


 小島に到着したライト達。ここは前回ライト達がピクニックに来た時に、お昼ご飯やおやつを食べた場所と同じ小島だ。

 レオニスがイードから籠を受け取り、貝を浜辺の上に置く。

 籠をひっくり返してザバー、と中の貝を一気に浜辺に広げるレオニスの、何と豪快なことよ。

 籠をひっくり返した後は、貝が湖水に浸かるように水辺のギリギリのところに置いて並べていく。


「今からこの貝に雷魔法を打ち込むから、皆少し離れてな」


 レオニスの言葉に、ライトやラウルは貝を広げてある場所から一斉に駆け出して大きく距離を取る。

 レオニスの魔法は強力なものが多いので、巻き添えで電撃を食らっては敵わないからである。

 ウィカはラウルの頭にちょこんと乗り、水の女王はライトと手を繋いでいっしょに走る。イードもアクアも、それぞれ小島の裏側にスイー、と移動する。

 ライト達が避難している間、レオニスは「ぁー、出力は弱めのやつにしとかないとな……」などとブツブツと呟きながら考え込んでいる。


「レオ兄ちゃーん、いいよー!」

「…………お前ら、離れ過ぎじゃね?」


 ものすごーく遠くにまで離れたライトが、レオニスに向けて大きな声で準備OKを告げる。その声にレオニスが振り返ると、はるか遠くに避難したライトがレオニスに向けて手を振っていた。

 豆粒とまでは言わないが、小島の反対側の対岸まで遠ざかったライト達を見たレオニス。若干呆れたような小声で文句をつける。

 もっともその文句は、遠くにいるライト達には聞こえようもない。


 ライトからの言葉を合図に、レオニスは徐に手を翳し雷魔法を放つ。

 レオニスが何やら唱えた数瞬後、バリバリバリ!という轟音を立てながら数多の雷が水辺に迸る。

 電撃により、湖面にもバシャバシャと衝撃が走る。レオニスが放った雷魔法の威力の凄まじさが伺えるというものだ。

 レオニスに言わせれば、これで弱めにしたというのだから驚きである。


 レオニスは湖面の衝撃が落ち着いてから浜辺に寄り、水辺にしゃがみながら指で水をチョン、チョン、と触っている。

 そうして静電気が起きたり感電しないことを確かめてから、手近なところにある貝を一つ取り上げた。

 その貝が空間魔法陣に入るかどうか、試しに自分の空間魔法陣を開いて入れてみる。

 するとその貝は、スイッ……と空間魔法陣に収納された。


 そして立ち上がってふと湖面を見ると、少し離れた湖面に何匹かの魚がぷかぷかと浮いている。

 貝を締めるために放った雷魔法が、近くを泳いでいた魚までをも感電させてしまったようだ。

 湖の水に浸していたおかげで雷魔法がよく効いたらしく、全ての貝を一撃で仕留めていた。さすがはレオニス、ただの脳筋ではなく魔法の威力もかなり強いようだ。


「おーい、ラウルー、貝を空間魔法陣に入れられるようになったぞー」

「おお、ホントか!?」

「おう、ついでに他の魚も浮いてきたぞ。もったいないからそれもちゃんと頂こう」

「了解ー」


 ライト達に聞こえるように、大きな声を張り上げるレオニス。

 その言葉を聞いたラウルが、急ぎ駆け寄ってくる。

 レオニスの横に到着したラウル、早速貝を一つ手に取り空間魔法陣に入れる。

 ラウルの空間魔法陣にも貝が無事収納できたことに、ラウルは大喜びだ。


 貝をポイポイー、と空間魔法陣に入れていくラウル。

 貝を半分くらい収納したところで、雷魔法の副産物の魚がずっと浮いたままなのが気にかかるのか、ラウルが湖に入り魚を収穫し始めた。沖に流されたら再び水に沈んでしまうかも……と心配したのだろうか。

 浮いていた約十尾を、全て拾い空間魔法陣に入れ終えたラウル。ホクホク顔で浜辺に戻り、レオニスを手放しで大絶賛する。


「貝だけでなく魚まで同時に仕留められるなんて、さすがはご主人様だ!」

「どういたしまして。この籠はお前にやるから、また貝や魚を獲る時とか好きなように使え」

「いいのか!? ありがたく頂戴する!」


 貝を入れるために使った巨大な籠を、レオニスはラウルに譲ると言った。

 この先ラウルの方がきっと、この籠を使う機会も多いだろう。魚介類はもちろんのこと、オーガ向けに作った巨大な野菜なんかも入れられるはずだ。

 だったら滅多に使わない俺よりも、ラウルが持っていた方が有効活用できるだろう―――レオニスはそう思ったのだ。


 嬉しそうに再び貝を拾い始めたラウルに、少し後ろで見守っているライトもレオニスも微笑んでいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ラウルが貝の収納を一通り終えた後、ライト達は早めの昼食を摂ることにした。

 浜辺に近いところで、昼食の準備をするライト達。

 ライトやレオニスが敷物を敷いたりしている傍で、ラウルが何やら大きな道具を出してきた。

 それは特大の七輪。砂漠蟹を手に入れた時にも、焼き蟹を作るのに大活躍した調理器具だ。


「この七輪で、今獲ったばかりの貝を焼くぞー」

「わーッ、すごいねラウル!」

「おお、この目覚めの湖で浜焼きか!贅沢だな!」


 何とラウルは、この目覚めの湖で獲れたばかりの貝類を浜焼きにするという。

 目覚めの湖は淡水湖なので、海の浜焼きとはまた違うかもしれないが。それでもかなり贅沢なグルメである。

 ラウルの浜焼き宣言に、ライトもレオニスも大喜びである。


 七輪に炭を入れ、手際良く貝を焼いていくラウル。

 貝は網に乗せる前に、一つ一つラウルが浄化魔法をかけてから焼いている。

 イード達が日々食べているものなのだから、多分大丈夫だろうとは思うのだが。それでも一応食中毒予防として、念の為に浄化魔法をかけておくのだ。


 しばらくすると、貝が焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。

 ラウルが貝を焼く間、レオニスは少し離れたところで焚き火を作り、感電した魚を串刺しにして塩焼きにしている。

 もちろんこの魚も、レオニスが浄化魔法をかけてから焼いている。


 一方ライトはアイテムリュックから『魔物のお肉たっぷり激ウマ絶品スペシャルミートボールくん』を出し、浜辺近くに敷いた二つの敷物の上にそれぞれ並べている。

 距離を開けた二つの敷物に分けているのは、イード用とアクア用に分けて置くためだ。


 ちなみに本日のミートボールくんの大きさは、直径約1メートル。今までイード達にあげてきた中で、最も大きな超特大サイズである。

 これをイードとアクアに各二十個づつ用意してある。

 これだけのボリュームがあれば、イードもアクアもきっと満足してくれるだろう。


 このミートボールくんだけは、今でもライトがイードのために手ずから作ってストックしている。

 料理の達人ラウルのおかげで、今では様々な美味しいものを食べられるようになった。だがそれでも、未だにイードが一番喜ぶのはこのミートボールくんなのだ。

 それ故今でもライトは、カタポレンの森で初めての友であるイードのために、心を込めて彼の大好物を作り続けるのである。


 いそいそとご馳走を運ぶライトやレオニスを、既に敷物の上でおとなしく待っている水の女王やウィカはニコニコしながら見守っている。

 湖面で待機しているイードやアクアも、にこやかな様子で眺めている。

 お昼ご飯の準備が終わるまで、皆お行儀良く待っている。実に賢くて良い子達である。


 そうしてようやく支度を終えた頃には、特大七輪の貝の浜焼きや魚の塩焼きも出来上がった。

 最後に焼きたての貝や魚の塩焼きを皿に移し、皆の分を配る。空いた特大七輪には、おかわり用に次の貝を乗せておく。

 全ての準備ができたところで、皆で両手を合わせる。

 イードも触腕二本を合わせ、アクアも頑張って鰭をパタパタさせている。


「では……いッただきッまーす!」

「「「『いッただッきまーす!』」」」

「うにゃッ!」「シュルァ!」「キュイ!」


 レオニスの掛け声に、ライトにラウル、水の女王も続いて唱和する。

 ウィカやイード、アクアもちゃんと唱和している、らしい。

 食事の挨拶の後は、皆それぞれに食べたいものに手を伸ばしていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おおお、この浜焼き、すんげー美味ぇな!」

「熱ッ!……ふぅ、ふぅ…………焼き魚もすっごく美味しーい!」

『何コレ、すっごく美味しーい!』

「うにゃにゃにゃーん♪」


 焼きたての浜焼き貝に塩焼きの魚、その美味しさに舌鼓を打つライト達。

 水の女王やウィカも、浜焼き貝や焼き魚の味が気に入ったようだ。

 水の女王やウィカの分は、ライトやラウルが串を外したり貝殻から身を取り出してお皿に乗せてあげている。


 彼女達はライトのように猫舌ではないので、お皿に貝を乗せてもらったらすぐに頬張っている。

 見た目は黒猫なのに、熱々の食べ物を頬張れるウィカ。

 ウィカが水の精霊であることを知らなければ、ものすごく摩訶不思議な光景に違いない。


 水の女王やウィカだけでなく、イードやアクアもライト特製ミートボールくんを美味しそうに頬張っている。

 ライトはこの平穏なひと時の幸せを噛みしめつつ、皆の美味しそうに食べる姿を嬉しそうに眺めていた。

 目覚めの湖でののどかなピクニック風景です。

 しかし、思わぬところで空間魔法陣の制限に引っかかってしまったラウル。

 一応拙作に出てくる空間魔法陣やアイテムバッグ類も、生きている状態の生物は収容不可ということになっています。

 でもまぁ確かにねぇ、貝なんて魚以上に生き物って意識があまり働かないかも( ̄ω ̄)

 それにラウルの場合、普段は市場で切り身とか塊肉とかを買う側なので、揚げたての水産物が生き物というのはラウルにとっては完全な盲点だったのです。


 でもって、レオニスの攻撃魔法が久々に出てきました!威力高くてバリバリと鳴る雷魔法とか、きっと見た目も派手でカッコイイですよねぇ( ´ω` )

 でもねー、肝心の使用場面がねー、戦闘シーンじゃなくて『生きた貝を締めるため』ってのがねー、何とも拙作らしいというか……絵面的に全く締まりがないという…( ̄ω ̄)…

 なので、唱える呪文もゴニョゴニョウケケのまま魔法名は出さないことに。

 生活魔法として便利な使い方をすることも、もちろん普通にアリなんですよ?

 だけど、だけど!カッコイイ呪文や魔法は、せめてハイファンらしく戦闘シーンで使いたい!という作者の、ささやかーな願望もあるのです><

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