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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第591話 コミュ力おばけ

 翌土曜日。

 この日は朝から目覚めの湖に出かけることになった。

 それは前日の話し合いの通り、アクアやウィカに善十郎の滝までの移動をお願いするためである。


 行くメンバーは、ライトにレオニスにラウル。

 今回の件で、ラウルまでついてくる必要はないのだが。

「俺、ウィカ以外に会ったことないんだが」というラウルの言葉に始まり「そういやラウルって、目覚めの湖の主イードやアクア、水の女王にはまだ一度も会ったことないよね」という話になって、ラウルの同行が決定した。


 そういえば以前、皆で小島ピクニックした時に水の女王も『美味しいご馳走の御礼を言いたいから、今度その妖精もいっしょに連れてきてね!』と言っていた。

 今日もアクアとの交渉ついでに、ラウルも連れて皆で小島ピクニックしよう!と思うライト。

 ここ最近のライトの土日は、ひたすらBCO関連で我武者羅に動くことが多かった。だが、たまにはBCO系の作業から解放されて、のんびりとした休日を過ごすのも良いだろう。


 朝早くにカタポレンの家を出て、目覚めの湖に向かうライト達。その足取りは皆軽やかだ。

 特にラウルの表情はとても晴れやかで、新たな出会いに胸を膨らませている様子がありありと分かる。


 少し前までは、カタポレンの森を毛嫌いしていたラウル。

 ラウルの生まれ故郷であるプーリアの里で、生まれてこの方良い思い出などほとんどないので毛嫌いするのも致し方ない。

 だが、ここ最近はマキシの八咫烏の里への里帰りに付き合ったり、友達の神樹ユグドラツィに会いに行ったり、挙げ句の果てにはカタポレンの家の横に畑まで開墾してしまった。


 一度は失われかけたカタポレンの森との縁を、少しづつではあるが再び取り戻しつつあるラウル。

 目覚めの湖の皆とも仲良くなってくれるといいな、とライトは心の中で密かに願う。


 そうして到着した目覚めの湖。

 湖面は穏やかに凪いでいて、今日の晴れやかな日差しが反射してキラキラに輝いている。

 ライトは先頭に立ち、桟橋の先端で湖面に向かって大きな声で呼びかけた。


「おーい、イード、ウィカ、アクアー、ぼくだよー、ライトだよー!」

「皆、いたら出てきてー。水の女王様も、良かったら皆といっしょに遊ぼうー!」


 ライトの呼びかけに、時を置かずしてすぐにイードやウィカ、アクアが出てきた。

 そしてその数瞬後にも、水の女王が御出ましになった。

 本来なら水草の褥の中にずっといなければならない水の女王だが、ライトにその名を呼ばれたことで喜び勇んで出てきたようだ。

 水の女王がワクテカ顔なことからも、彼女がウッキウキであることが手に取るように分かる。


『ライト、久しぶりね!レオニスもいっしょなのね、よく来てくれたわ!』

「シュルルル♪」

「うなぁーん♪」

「クルルァ♪」


 水の女王が先陣を切り、ライト達を歓迎する。

 イード、ウィカ、アクアも皆嬉しそうに笑顔で迎えてくれる。

 ライトは早速ラウルを呼び寄せ、目覚めの湖の友に向けて紹介した。


「皆にぼくの大事な仲間を紹介するね!彼の名はラウル、レオ兄ちゃんの家で執事をしてるんだ。いつも皆に美味しいご馳走を作ってくれる、凄腕の料理人でもあるんだよ!」

『まぁ、貴方があの美味しい食べ物を作っているの?』

「おう、只今小さなご主人様からご紹介に与ったラウルだ。ウィカには何度か会ったことがあるが、他は皆初めてだな。ご主人様達同様、今後ともよしなに頼む」

『ラウルね。私は水の女王、こちらこそよろしくね!』

「うにゃッ」

「キシュルルゥ」

「クァァァァ」


 ライトの紹介に、ラウルも自ら進んで自己紹介をする。

 森の友同士、臆することなく自然と会話ができている。

 あのぶっきらぼうなラウルが、こんなに大きく成長して……と、ラウルの横や後ろにいるライトとレオニスが感激でホロリと涙ぐんでいる。


『そしたら今日は、何して遊ぶ?』

「あ、その前に。水の女王様、ラウルにも水中で動けるように加護とか与えてあげてもらえますか?」

『あ、そうね、そうしないとラウルとも遊べないものね。分かったわ、ちょっと待っててね』


 ライトの要請に納得した水の女王、早速目を閉じ念じ始めた。

 そうして手のひらの上に出来上がった水の勲章を、ラウルに向けて差し出した。


『はい、どうぞ。これを持っていれば、貴方も水中で自由に動けるようになるわ』

「おお、そんなすごいものをもらってもいいのか?」

『もちろんよ。だって貴方はライトとレオニスの大事な仲間なんでしょ? それに、貴方が作ってくれる料理はとても美味しいし。私も含めて皆の大好物なのよ』

「お褒めに与り光栄だ。そういうことなら、俺も遠慮なく受け取ろう」


 快く水の勲章を作ってくれた水の女王に、少しだけ戸惑いつつも最後はありがたく受け取るラウル。

 これでラウルも水中で自由に動けるようになった。

 今後ますます冒険者として活躍していくであろうラウルにとって、この水の勲章は大いに役立ってくれるだろう。


「じゃあまずは……初めて目覚めの湖に潜るラウルのために、イードとアクアに乗って皆で水中遊泳しようか!」

「お、それいいな。水の中をゆっくり遊泳するってのは、何度経験しても楽しいよな」

「ぼくはアクアに乗るね!レオ兄ちゃんとラウルはどっちに乗る?」

「俺はイードに乗るかな……」

「俺もイードの方に乗るわ……」


 いつもはイードの背に乗せてもらっているが、さすがに三人分を乗せるのは大変かな、と思い二手に分かれて乗ることを提案するライト。

 ライトはアクアを選び、レオニスとラウルはイードを選んだ。

 レオニスもラウルも、さすがに水神の背に乗るのは畏れ多くて憚られたようだ。


 ライトがアクアの背に跨り、レオニスとラウルは平べったく横たわったイードの背に乗る。

 水の女王は、前回同様レオニスの胡座の中にちょこんと座り、ウィカはライトの肩に乗る。


「じゃ、皆で目覚めの湖遊泳ツアーに行こう!出発進行ー!」

「キシャァァァァ!」

「キュルルァー!」


 ライトの出発の合図に、イードもアクアも元気良く応える。

 皆を乗せたイードとアクアは、静かに湖の中に潜っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 目覚めの湖の中を、ゆっくりと泳いでいくイードとアクア。

 湖面から届く日の光がキラキラと輝いていて、何とも幻想的な光景だ。

 この光景を初めて目にするラウルはもとより、何度か見ているライトやレオニスもその神秘的な光景に見惚れている。


「ラウル、初めての水中遊泳はどうだ?」

「おおお……水の中でも普通に呼吸できて、しかも会話までできるとは……この水の勲章ってのは、すごい力を持ってるんだな!」

『フッフーン☆ でしょでしょ? 女王が生み出す勲章は、ホントにスゴイ物なのよ?』


 先程水の女王からもらった水の勲章、その威力のすごさにラウルが感嘆する。

 ラウルからの絶賛を受けた水の女王が、鼻高々といった様子で受け答えしている。

 もっとも、レオニスの膝の中でちんまりと座るその姿は、女王の威厳もへったくれもないのだが。

 しかし威厳は微塵もなくとも、その分愛らしさは反則レベルで甚大である。


 一方アクアに乗ったライトは、アクアに向かって話しかけていた。


「アクア、また大きくなったね!」

「キュルゥゥゥゥ♪」


 ライトが自分を褒めていることが分かるのか、アクアが嬉しそうな声を上げる。

 ライトが目覚めの湖でこうしてゆっくりと過ごすのは、三ヶ月ぶりのことだ。

 前回レオニスとともに来た時には、湖底神殿の祭殿でアクアが進化を遂げた。

 その際にアクアの背には皮膜型の一対の翼が生え、額の角が一回り大きくなった。

 その時と比べると、皮膜の翼はより大きく立派なものになり、身体そのものもまた一回り以上大きくなっている。


 ライトはレオニス達と離れている今のうちに、『アナザーステータス』でアクアのレベルチェックをすることにした。



 ==========



【名前】アクア

【種族】アープ

【レベル】34

【属性】水

【状態】通常

【特記事項】単独接触禁忌指定第一種



【HP】64360

【MP】19010

【力】4040

【体力】4770

【速度】5760

【知力】3010

【精神力】3690

【運】2020

【回避】5060

【命中】3030



 ==========



「うッひょー……相変わらずすごい数値だ」


 アクアのステータスを見たライトは、思わず独りごちる。

 聞かれて困る相手が今は周りにいないので、こうした呟きも問題ない。


 三ヶ月ぶりに会うアクアのレベルは、前回より9上がっていた。

 ライトが特に何もせずとも、アクアは自力でレベルアップしている。実に素晴らしいことだ。

 目覚めの湖の中での日々の食事により、レベルアップしていることは間違いない。


 何もせずともこの成果なのだから、もしライトがアクアのための食事を用意して与えれば、今よりもっと早いスピードで成長していくだろう。

 ただし、アクアのための食事を別途に用意するだけの余力が今のライトには到底ない。

 甚だ残念無念ではあるが、ここはしばらく放任主義継続一択である。


 レベル50を超えたら、次の進化が起こるかなー。アクアの進化の条件は全く分かんないけど、50とか100とかキリのいい数値の時に変化が起こりそうだよね。

 よし、次にレベル50を超えた時にまた湖底神殿にいっしょに行ってみよう。夏休み中に行けたらいいな!


 そんなことを、アクアの背の上でつらつらと考えるライト。

 そうしているうちに、例の湖底神殿近くまできたようだ。


「ライトー、湖底神殿が見えてきたけど、どうする? 中を見に降りるかー?」

「ンー、ラウルが見たければいっしょに降りるけど、ラウルはどうするー?」

「あー、俺は神殿の中よりも、神殿の外にある貝類や水草類を採取したい」

「「…………」」


 ライトとレオニスは、既に湖底神殿の探索をしたことがある。

 なので今回は、この中でまだ一度も湖底神殿に行ったことのないラウルにその判断を任せた。

 そのラウルの答えは『神殿より食材!』であった。

 いわゆる『花より団子』を地で行く、実にラウルらしい答えである。


 でもまぁここはとりあえず、ラウルの希望を優先させてやることにしたレオニス。

 レオニスがイードに「湖底神殿の手前で下ろしてくれ」と伝えて、アクアもイードとともに湖底神殿の近くに下りてライトを下ろした。

 湖底神殿の周りはところどころに水草が生い茂り、岩の欠片かと見紛うような拳大の大きな貝がいくつも転がっているのが見える。


「おおお、昆布やワカメに似ているが、おそらくは違う水草なんだろうな」

「ラウル、水草や貝類を拾うのもいいけど、あまり獲り過ぎないでね? 貝や魚、水草もイードやアクア達のご飯だからさ」

「おう、分かってる。根こそぎ獲ったりしないから、そこは安心してくれ」

「……ホントかなぁ?」


 イード達のご飯である水草や貝類を、たくさん獲り過ぎないようにラウルに釘を刺すライト。

 こと珍しい食材に関しては、目の色を変えてありったけ買い込むラウル。いつもの調子でごっそり獲っていかれたら、イードやアクアのご飯が足りなくなっちゃう!とライトが心配するのも当然の流れである。


 だがそこはラウルもちゃんと弁えているらしく、ジロリンチョ、と半目で睨み疑いの目を向けるライトにはっきりと宣言する。


「ホントだって、俺は嘘はつかないからな。それに、味も種類も分からんうちから大量に獲ったってしょうがないだろ?」

「ぃゃ、それだともし美味しかったら後で大量に獲るってことになるじゃん……」

『水草や貝類なら、たくさん獲っていってもいいわよ?』


 なおも疑いの眼差しをラウルに向けるライトに、横にいた水の女王が話しかけてきた。


『目覚めの湖は、カタポレンの森の魔力を存分に受けているおかげで、水草や魚貝類の成長もとても早いのよ。アクア様が降臨なされてから、食事としてたくさん食べてらっしゃるけど、それでもアクア様が食い尽くすには至らないわ』

「え、そうなんですか?」

『ええ。食糧が減るどころか、むしろ少しづつ増えているくらいよ。それはきっと、水神アープの御威光によるものだと思うわ』


 水の女王の話によると、この目覚めの湖はカタポレンのど真ん中という場所柄のせいか、湖底に生える水草や魚介類の成長がかなり早いのだという。

 湖の主であるイードだけでなく、アクアが住民として増えたことにより食糧難に陥りそうなものだが。むしろ以前より魚介類が微増しているという。

 それは水の女王が言うように、おそらくは水神アープがいることで目覚めの湖の環境に何らかの影響を与えているのだろう。


 その話を聞いたラウルが、パァッ!と顔を輝かせて水の女王に問いかけた。


「じゃあそしたら、ここら辺にある貝類や水草を多めに持って帰ってもいいか?」

『ええ、いいわよ。そもそも目覚めの湖はとても広大ですもの、ここら辺の水草や貝類を獲ったくらいでアクア様やイーちゃんのご飯が減る心配などないわ』

「ありがとう!そしたらここの食材で何か美味いもの作って、次にここに来た時に皆に振る舞ってやるからな!」

『まぁ、美味しいものを作って持ってきてくれるの? 嬉しいわ!』


 嬉々として問うたラウルに、水の女王も事も無げに快諾する。

 確かにこの目覚めの湖自体、かなり面積が広い。ラウルが多少欲張って多めに魚介類を獲ったところで、湖全体に生息する魚介類や水草の1%にも満たないだろう。

 もっとも、無限の収納力を誇る空間魔法陣持ちのラウルだけに、決して侮ってはならないのだが。


 ラウルが次回の訪問時に、目覚めの湖産の食材を使ったご馳走を振る舞うと聞き、水の女王も大喜びしている。

 水の女王自らラウルの手を両手で握り、ふよんふよん、と水の中で飛び跳ねている。

 ただでさえ美味しいことが確定しているラウルの料理に、地元産の食材が使われるというのだ。水の女王が大喜びするのも当然のことである。


「……ラウルって、ホントにすごいよね……」

「ああ、あの貪欲なまで食材への意欲は本当に尊敬するわ」

「しかも、水の女王様の胃袋までガッチリ掴んでるし……」

「あれもラウルにしか出来ん業だよなぁ……俺も今度ラウルに料理を習うかな……」

「ぼくもラウルに料理習おう……」


 ラウルのコミュ力おばけぶりに、ライトもレオニスも半ば呆然としつつ眺めている。

 自称人見知りの激しい軟弱者だったはずのラウル。もしかしたらかつての人見知りだのコミュ障だのは、生まれ故郷のプーリアの里限定だったのかもしれない。


 ここ最近のラウルの各地でのモテっぷりに、自分もラウルに料理を習うか……と真剣に考え始めたライトとレオニスだった。

 久しぶりの目覚めの湖の面々の御出ましです。

 第442話以来なので150話ぶりですねー(・∀・)


 そして今回、アクアのステータスを出すのは三回目なのですが。

 これまで何となーく適当に書いていた数値を改めて、新たに算出式を制定することにしました!

 もうね、その都度『あれ、あの子のステータスってどんな数値にしてたっけ……』と都度毎回過去回をサルベージするのがほとほと嫌になりまして……

 今回水神アープ=アクアのために、新たに制定したアクア専用の算出式。後ほど過去二回分のステータス箇所も訂正しておかねば……(((((  ̄ω ̄)

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