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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第579話 冒険者ギルドツェリザーク支部の依頼

 二日間のお休みをいただき、ありがとうございました。

 予定通り、本日より更新再開します。

 基本平穏なライトの平日。それでもここ最近は何かと忙しい。

 使い魔の孵化の餌に用いるグランドポーション、その生成のための下準備に懸命に勤しんでいるからだ。


 まず、毎朝のルーティンワーク中のついでに採取できるものを集める。闘水に必要な『赤棘花の蔓』や『単眼蝙蝠の羽』などだ。

 赤棘花の蔓のもとであるレッドキャップフラワーはそこら辺に生えているし、単眼蝙蝠は名も無き小さな洞窟周辺によく出没する。


 単眼蝙蝠と言えば、あのオーガの里襲撃事件で屍鬼将ゾルディスの手先として使われていた魔物だ。ライトも単眼蝙蝠を見かける度にそのことを思い出しては、十匹以上の群れでないことを確認してから物理必中スキル『手裏剣』を用いて確実に仕留める。

 もともとリポップする通常魔物ではあるが、最近は間引きの意味も兼ねて積極的に狩るようにしているのだ。


 他にも『濃縮アークエーテル』や『濃縮イノセントポーション』等、先に作っておけるものは平日のうちにどんどん作っておく。

 次の日曜日に転職神殿で使い魔の卵を孵化させるには、平日からの仕込みが欠かせないのだ。


 そうして迎えた週末土日。

 まず土曜日の午前中は、グランドポーション作りのための素材集めに飛び回るライト。

 少し遠出して『巨大蜈蚣の硬皮』のもとであるギガントワームを狩ったり、手当たり次第レッドキャップフラワーを刈り取ったり。


 午前中目一杯を素材集めに費やした後、カタポレンの家で一汗流してからラグナロッツァの屋敷に向かう。

 お昼ご飯を食べた後に、ラウルとともにツェリザークに行くためだ。

 もちろんラウルに約束は取り付けてある。二日前のおやつの時にツェリザーク行きに誘ったところ、ラウルから二つ返事でOKが返ってきた。


 食堂に行くと、そこには何やら料理中のラウルがいた。


「ラウル、今日はお昼ご飯の後にツェリザーク行く約束したの、覚えてるー?」

「もちろんだとも。俺がライトとの約束を忘れるはずないだろう?」

「だよね!良かった、そしたらお昼ご飯食べたらすぐにツェリザーク行こうね!」

「おう、そのための腹拵えもしっかりしとかないとな」


 ラウルは料理をしながら、空間魔法陣から既に出来上がっている品を出してライトの前に並べていく。

 ライトは出されたものを先に食べ、ラウルも調理中のものをある程度まで作り上げてから自分の昼食を食べ始める。

 そしてほぼ二人同時に食べ終え、食器を流しに下ろしてから屋敷を出立した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 冒険者ギルドの転移門を利用するため、ラグナロッツァの冒険者ギルド総本部に向かうライトとラウル。

 今日のラウルは黒の天空竜革装備一式を着ていて、実にスタイリッシュで格好良い。

 ラウルの横を歩いているライトも、実にご機嫌である。


「今日のラウルは一段と格好良いね!」

「ご主人様からこんな最高級の祝いの品をもらったからな。今日はライトの護衛としてしっかり働かんとな」

「今日のツェリザークは街の外に出る予定はないけどねー」

「そういやツェリザークには何しに行くんだ?」


 今更ライトに今日のツェリザーク行きの目的を聞くラウル。

 先日ライトに「ラウル、今度の土曜日にいっしょにツェリザーク行かない?」と誘われた時に「おう、いいぞー」の一言で済ませてしまうのが原因なのだが。

 この妖精、良くも悪くも大雑把な性格である。


「今日はツェリザークにあるルティエンス商会ってお店に行きたいんだー」

「それは何を売っている店なんだ?」

「ンーーー……いろいろ? 骨董品とか魔導具なんかを売ってるお店でね。面白いものとか変なものとか、とにかく珍しい品がたくさんあるんだよねー」

「そうなのか。珍しい包丁とかもあるといいな」


 ルティエンス商会=雑貨屋のような店と聞いたラウル、真っ先に思いつくことは『珍しい包丁が欲しい』ときた。

 何が何でも料理に結びつけるあたりが実にラウルらしい。

 しかし、あの店は『ハデスの大鎌』などという激レア武器も置いてあるくらいだ。もしかしたら包丁類の一つや二つ、案外あるかもしれない。


 そんな話をしているうちに、冒険者ギルド総本部に到着したライト達。

 ラグナロッツァからツェリザークに転移門で移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 冒険者ギルド総本部からツェリザーク支部に移動したライトとラウル。

 まずは冒険者ギルドの売店に向かう。

 するとそこには、ぬるシャリドリンクの専用棚がさらに二段増えているではないか。前にも増して人気抜群のようである。


「おおお……ぬるシャリドリンク、ますます人気出てるっぽいねー」

「ま、人気が出て増産体制も整ってきたなら良いことだ」

「でも相変わらずお一人様一本限定みたいだよ」

「今日二本買えりゃいいさ。何なら帰りにもう一回買っていけば四本になるし」


 事も無げに語るラウルの何とクールなことか。

 今日のラウルは黒の天空竜革装備を着ているので、より格好良くクールに見える。

 一人一本のぬるシャリドリンクを購入した後、今度はツェリザーク支部の依頼掲示板を二人で見に行った。


 掲示板には様々な依頼書が貼られている。

 狗狼の毛皮や凍砕蟲の糸、氷蟹そのものの捕獲等の依頼に混じり、たくさん出ているのが『氷蟹の殻処理依頼』だった。

 このツェリザークの最もメジャーな特産品、それは氷の洞窟にいる氷蟹である。その需要や消費量も格段に多く、ネツァクの砂漠蟹やエンデアンのジャイアントホタテと同様に殻処理依頼もかなり溜まっているようだった。


「ふむ、やっぱりこのツェリザークにも氷蟹の殻処理依頼が山ほど出てるな」

「そしたらラウル、今日ここに来たついでに殻処理依頼も何件か引き受けていく?」

「そうだな、ラグナロッツァの温室家庭菜園の他にも今度畑を作ることにしたからな。蟹殻肥料はいくらあってもいいし、せっかくツェリザークに来たんだから氷蟹の殻もいただいていくか」

「え、畑??」


 ライトの問いに頷きながら答えるラウル。

 砂漠蟹の殻、ジャイアントホタテの貝殻に続き、氷蟹を第三の蟹殻肥料として活用するつもりらしい。

 ラウルの畑開墾話をそこで初めて聞いたライト、びっくりしながらラウルに問うた。


「畑なんて一体どこに作るの?」

「カタポレンの森の家の横。ご主人様にも許可は得てある」

「そうなんだ……で、その新しい畑で何を作るの?」

「オーガ用の野菜。通常品種よりもっと大きい野菜を作りたいんだ」

「あー、オーガ用かぁ……そうだね、オーガの人達に普通の野菜はちっこいもんね」


 ラウルの話にライトも納得する。

 オーガ族向けの野菜を作りたいというラウルの姿勢に、感心することしきりである。

 それに、氷蟹の殻をラウルが入手するのは実はライトにとっても都合がいい。ライトは早速ラウルに頼み込んだ。


「ねぇラウル、そしたらさぁ、氷蟹の殻の丸ごと一匹分と、他に鋏と甲羅を何個かぼくにも譲ってくれる? 砂漠蟹と同じように、工作に使いたいんだ!」

「おう、いいぞ。とりあえず今日は五十匹分は持って帰るつもりだしな」

「ありがとう!」


 ライトの申し出を快諾するラウル。

 ここでも特にその理由は聞かずに快諾してくれることが、ライトにとっては本当にありがたい。

 ラウルの大雑把さは、ライトにとって良い方向に動いてくれることが多くて助かる。


 ちなみにライトが氷蟹の鋏や甲羅を所望したのには、ちゃんとした理由がある。

 まず蟹系魔物は、その爪や甲羅、脚などが強化素材の交換素材になったり、レシピ生成の原材料になる。その上、クエストイベントのお題として出される可能性もかなり高いのだ。


 現にクエストイベントの8ページ目のNo.38にて、ネツァクのサンドキャンサーが由来の『砂漠蟹の大鋏』がクエストのお題となっていた。これはパラリシスパイシードリンクの原材料指定にも繋がっている。

 今やっているクエストイベントが、この先何ページ続くかはまだ分からない。だが、蟹系魔物の素材が出てくることは大いにあり得る。


 また、今のクエストイベントでは出てこなくても他のクエストイベントで出てくる可能性だってあるし、今後新たなレシピ生成の原材料になるかもしれない。

 よって、蟹系魔物の素材はライトとしても是非とも積極的に入手しておきたかった。


「じゃあ、ラウルは今から殻処理依頼をこなしに行く?」

「そうだな、とりあえず数件引き受けてくるか。その間ライトはどうする? 俺といっしょに依頼先を回るか?」

「うーーーん……ぼくはルティエンス商会で待ってていい? いろんな品物があるお店だから、ラウルが迎えに来てくれるまでゆっくりとお店の中を見たいんだ」

「そうか、じゃあまずはそのルティエンス商会ってとこに行くか。店の場所さえ分かれば、依頼を完了させた後に迎えに行けるし……って、一応聞くが、そのルティエンス商会ってのは安全なところなんだよな?」


 ライトがルティエンス商会で待つという話に、ラウルも一度は頷いたものの改めてその安全性を確認する。

 ラウル自身はルティエンス商会に一度も入ったことがないので、当然といえば当然の流れだ。


 いや、よくよく考えればラウルはライトの護衛という名目でライトについて来ているので、本来ならば離れ離れになるのはよろしくないのだが。かと言って、複数の殻処理依頼をこなすのにあちこち連れ回すのも忍びない。

 それなら安全な場所でラウルの帰りを待っててもらう方が、ラウルとしても安心できるというものだ。


 ラウルの問いかけに、ライトは明るくはっきりとした声で答える。


「うん、ルティエンス商会は前にもフェネぴょんやクレハさんといっしょに入ったことがあるよ。その時は、レオ兄ちゃんへのお土産を買いに行ったんだ。クレハさん曰く、ツェリザーク でも指折りの老舗なんだって」

「そうなのか。老舗っていうくらいなら安心か」

「それに、レオ兄ちゃんも大珠奇魂の交換で何度か出入りしたお店だし。ラウルも安心していいよ」

「大珠奇魂……ああ、結界に使うとか何とかで集めてたやつか」

「そそそ、それそれ、その時に利用したお店だよ」

「ご主人様も使っている店なら大丈夫だな」


 ライトはルティエンス商会の安全性をラウルに説き、ラウルもライトの話を聞いて安心したようだ。


 ライトは本来の目的であるルティエンス商会でゆっくりと過ごせて、ラウルもその間に氷蟹の殻処理依頼をこなせる。

 ラウルが氷蟹の殻を手に入れることで、ラウルは新たな肥料の原材料を入手できて依頼料も稼げて、ライトもそのお零れに与り蟹系魔物の素材が手に入る。

 まさに両者Win-Winの良いこと尽くめである。


「じゃ、今から依頼を何件か引き受けてくる。ライトはさっきの売店でも見ながら待っててくれ」

「はーい」


 ラウルはライトにそう言うと、氷蟹の殻処理依頼書を根こそぎ持って受付窓口に向かっていった。

 それらの中でどれが緊急性が高いか等、窓口でオススメ案件を選んでもらうのだろう。

 ライトもラウルの指示に従い、再び売店に向かっていった。

 前々話の計画通りに予定をこなしていくライト。

 ラウルもライトに誘われるままツェリザークに同行し、第三の肥料として氷蟹の蟹殻確保に動き出すあたりちゃっかりしてます。

 というか、砂漠蟹やジャイアントホタテの殻とかアホほど引き受けてるけど、そんなにたくさん引き取ってどーすんの? 大量過ぎて使い切れなくね? と思いましたでしょう?

 ところがどっこい、カタポレンの森に新たに開墾する畑に肥料として使っちゃうのでチャラなのです。

 煉瓦製の焼窯も作り上げて肥料化の手段も確立したので、これからまたガンガン殻処理依頼をこなして依頼達成報酬もガッポリ稼げることでしょう。

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