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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
平穏な日々

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第569話 諸々の相談

 レオニスがアイギスでラウルへの冒険者登録祝いの品を受け取る、数時間前のこと。

 この日の午前中、レオニスは魔術師ギルドにも立ち寄っていた。


「よッ、ご苦労さん」の一言だけで、スススー、と受付を通り過ぎ、ギルドマスター執務室に直行するレオニス。

 ノックをしてから扉を開けると、そこにはいつものように書類の山と格闘するピースがいた。


「よう、ピース、今日も仕事頑張ってるな」

「あッ、レオちん!我が救世主!」


 ピースがガバッ!と顔を上げ、椅子から一目散に降りてレオニスに駆け寄り飛びつく。相変わらず木登りの猿状態である。


「今日はどしたの? 呪符百枚の受け取りに来たのん?」

「ああ。それもあるが、他にもいろいろと話しておきたいことがあってな」

「うんうん、まずは座ってお話しよ!」


 大木(レオニス)からピョイ、と飛び降りた小猿(ピース)、執務室奥の給湯室に自ら出向きお茶やら茶菓子やらを載せたワゴンを運んできた。

 ギルドマスター直々に茶を運ぶなど、他所ではあまり見ない光景を不思議に思ったレオニスがピースに問うた。


「ピース、お前ギルドマスターなのに専属の秘書とかいないの?」

「いるよ? 一応いるんだけどさ、彼女の主な仕事は小生への書類を毎日山ほど掻き集めて、それを小生の目の前にドカーン!と突きつけることなんだよねー」

「そ、そうか……それならお前が自分で茶を淹れて運んでても仕方ないのか……」

「そゆこと。おかげさまでね、小生おもてなしのお茶を淹れるのも達人級になっちゃったよ!」


 レオニスの向かいに座り、自分用のマグカップに淹れたお茶をズズズ……と啜るピース。

 毎日毎日何をそんなに書類に埋もれるのか、と不思議に思うレオニスだが、ピースが目を通さねばならない案件は本当に多い。


 新しい魔導具や呪符の草案、研究室の実験結果などのレポート、全支部から上がってきた魔術に関する最新論文等々。そのどれもが疎かにはできない重要な案件であり、しかも一件一件のボリュームがかなり多いのだ。

 ピースからそんな話を切々と聞かされたレオニス、俺だったら絶対に三秒で寝てるわ……と真剣に思う。


「あ、レオちんからのご依頼の浄化魔法呪符『究極』百枚、できてるよー」

「ありがとう、そしたらその代金はこれで頼む」


 ピースはお茶を載せてきたワゴンの下段から呪符の入った篭を取り出し、レオニスは空間魔法陣から十数個の魔宝石を取り出してそれぞれテーブルの上に置いた。

 レオニスが呪符の枚数を数えて確認している間、ピースは色とりどりの魔宝石を順番に手に取り眺めている。


「これ、全部四週間充填物?」

「ああ、原石の方は前に頼まれた四週間充填のやつな。で、研磨済みの方もその後新たに充填開始した。研磨済みはとりあえず二週間の充填が完了している」


 レオニスが再び空間魔法陣を開き、今度は研磨済みの魔宝石を数個新たに取り出した。

 それらの魔宝石をレオニスから直接手渡されたピース、一目見てその美しさに感嘆する。


「おおッ、何という美しい色合い!想像以上に綺麗だね!」

「まぁな、原石よりも研磨後の方が色味とかは分かりやすいわな」

「うーん、やっぱ原石より研磨後の方がいいなぁ……」


 ルビー、サファイア、エメラルド、ただでさえもともと美しい宝石達が、カタポレンの森の魔力を充填されたことでより輝きと深みを増している。

 それは宝石に関して目利きでもない、素人のレオニスやピースにも分かるくらいに際立っていた。


 それまでうっとりしながら魔宝石を眺めていたピース、ふとレオニスの方に向き直った。


「ねぇ、レオちん、今後うちにくれる魔宝石は全て研磨後のでお願いできる?」

「そりゃ構わんが……やっぱ研磨済みの方がいいのか?」

「ほら、うちでの魔宝石の主な使い道は、今のところ全てアイテムバッグの動力源だからさ。装飾面で完成されたものの方が、何かと使いやすくて都合良いのよ。原石の魔宝石もいずれは研究対象にしたいけど、今はアイテムバッグ普及の方が最優先だからね」

「ああ、そりゃそうだな。じゃ、宝石の研磨はカイ姉達に頼んで協力してもらうとするか」

「ありがとう!よろぴくね!」


 ピースの要望とその理由に納得したレオニスは、即断即決で承諾する。

 またアイギスに新たな仕事を持ち込むことになるが、宝石の研磨ならセイが最も得意とする分野であり、セイの手にかかればちょちょいのちょいーで完了してしまうことをレオニスは知っている。


 宝石研磨の十個や二十個程度なら、その都度ラウルのスイーツをセイ姉専用として差し入れすりゃ喜んで引き受けてくれるだろ……と頭の中で算段をつけるレオニス。

 アイギス三姉妹の中で、ラウルのスイーツを最も愛してやまないのはセイだ。間違いなくレオニスの作戦は大当たりするだろう。


「その対価と言っちゃなんだが。浄化魔法の呪符を追加でまた百枚、できれば早急に用意しといてくれるか?」

「もちろんいいよー。小生の描く呪符より、これから作ってもらう魔宝石の方が絶対に単価お高いからね!……でも、まだそんなにたくさんの浄化魔法呪符が要るのん?」

「ああ。この百枚は、エリトナ山の死霊兵団の残骸処理で全部使い切ることが既に確定してるからな」

「あー、そういやこの百枚の注文はそれが目的だったねぇ」


 レオニスの追加注文に、快く応じるピース。

 商品としての単価で考えるあたり商人モード全開だが、魔術師ギルドの頂点として安定した経営を常に考えるのもまたギルドマスターの務めである。


「他にも四帝が撒き散らした穢れは、世界中にたくさんあることが予想される。それらは見つけ次第その場で祓わなきゃならんからな、ピースの作る浄化魔法の呪符は今後常に多めに持ち歩きたいんだ」

「小生の作る浄化魔法呪符が、そんなにもレオちんのお役に立てるなら光栄だねぇ」

「何しろあの呪いにも近い穢れは強力過ぎてな……さすがに俺一人じゃどうすることもできん。ピースの力を借りてこそ成せる業だ、これからもよろしく頼む」


 レオニスはピースの力を借りるべく、改めて頭を下げる。

 そんなレオニスに、ピースは慌てて声をかける。


「そんな、レオちん、頭なんて下げなくてもいいよ!小生とレオちんの仲じゃないか、水臭いなぁ。我が愛しの救世主の頼みとあらば、小生は何を差し置いても真っ先に聞き届けるよ!」

「……書類仕事を真っ先に差し置いて、か?」

「さッすがレオちん、よく分かってるジャマイカ♪」

「そりゃあな、何しろ俺はお前の救世主らしいからなwww」


 軽く揶揄うレオニスに、ピースも笑顔で肯定する。

 このノリの軽さもまた師匠(フェネセン)譲りか。

 魔術師ギルドのマスター執務室に、二人の屈託のない笑みが満ちた瞬間だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「あ、そういやピースにもう一つ相談したいことがあるんだが」

「ン? 何ナニ、なぁに?」


 少し冷めたお茶を二人して啜りつつ、レオニスがピースに相談を持ちかけた。


「これは穢れ祓い繋がりの話なんだが。俺達が属性の女王達の安否の確認を請け負っていることは、お前も知ってるだろう?」

「うんうん、そのためにあちこちに散らばる属性の女王達のもとを訪ねて回ってるんでしょ? ホントに大変な任務だよねぇ」

「で、だ。目下の一番の問題は、光の女王と雷の女王なんだよな」

「ぁーーー、確かにねぇ……それ、天空島に直接行かなきゃならないヤツだよね?」


 レオニスの話に、ピースも上目遣いで空を見ながら同意する。

 全ての属性の女王の安否を確認するということは、光の女王や雷の女王がいるとされる天空島へも出向かなければならないことを意味している。

 そしてその天空島は、誰もが気軽に行けるような場所ではないことはピースも当然知っていた。


「前はフェネセンの絨毯に乗せてもらって行ってたんだが。今またフェネセンはどこにいるか、全く分からなくてな……」

「我が師は生まれながらにして生粋の風来坊だからねぇ……我が師を確実に捕まえる術があるなら、小生が真っ先に会得したいところだよ」

「他にも何か、天空島に行くための良い方法はねぇかな? できれば俺一人じゃなくて、複数人数で行ける方法がいいんだが」


 レオニスの問いかけに、ピースは目を閉じしばし考え込む。


「ンーーー……天空島に行くなら、竜族とかの大型飛行種族に乗せてもらうのが一番確実だとは思うけどねぇ……」

「やっぱお前でもそう考えるよなぁ……翼竜ってのは、天空島があるあたりまで飛べるもんなんかな?」

「ぃゃー、翼竜じゃちょーっと厳しいと思うなぁ……翼竜単体ならともかく、人を乗せて高く飛ぶには体格が小さいでしょ」

「翼竜篭では御者が直接翼竜に乗って操っているが、それでもダメか?」

「翼竜篭はそんなに高い高度で飛ばないし。それにあれは、慣れた飼い主だからこそできることであって、翼竜との信頼関係が要ると思うよ?」

「そうか……さりとて飛竜も簡単に借り受けられるもんでもないしなぁ……そうなると、さて一体どうしたもんか……」


 ンぬぅーーー……と二人して口をへの字にし、眉間に皺を寄せて難しい顔をしながら考え込む。

 翼竜以外で人族が扱える大型の飛行種族といえば、他には飛竜くらいしかない。

 だが、飛竜は竜騎士団用の乗り物として国家がその使役権を独占する生き物だ。一個人が気軽に飼えるものでもないし、竜騎士団に頼み込むような伝手もなければ大義名分もない。


 いや、レオニスの目的である属性の女王の安否確認は、竜騎士団の手を借りるほどの立派な名分にはなるだろう。もし女王達に異変が起きていれば、それこそプロステスのように周辺の街に多大な弊害が生じる可能性はかなり大きいのだから。

 だが、レオニスとしてはそこまで大事にする前に何とか自力で解決したかった。国家に借りを作るのは、どうしてもレオニス自身気が進まなかったのだ。


「ぃゃ、俺一人だけならな? すんげー頑張れば、何とか天空島まで飛んでいけるとは思うんだ。だがこの任務は、なるべくライトといっしょにやりたいんだよな」

「ぇー……レオちんだけなら、頑張れば天空島に行けるんだ……?」

「まぁな。そんな訳で、複数人で天空島に行ける安全な方法を探してるんだがな……」

「うん、レオちんの感覚は相変わらずおかしいよね!」


 何気なく呟くレオニスの言葉に、さしものピースも半ば呆れ返りながら乾いた笑みを浮かべる。

 そもそも人族が空を飛べること自体がおかしいのだが、単身なら天空島まで行けるとなると、もはやおかしいを通り越していっそ神々しい。

 レオニスが人族を卒業する日は、もうすぐそこまで来ているかもしれない。


「ンー……そしたらさ、シュマルリ山脈で野良のドラゴンを捕まえるってのはどう?」

「野良ドラゴン、か?」

「うん。野良ドラゴンなら国や竜騎士団の管轄じゃないから、どこからも文句は出ないし。それに、レオちんなら野良ドラゴンとも友達になれるんじゃなぁい? プププ☆」

「ふむ、そうか……案外それもいいかもしれんな。そしたら近いうちに、本格的にシュマルリに遠征に出かけてみるかな」

「……え、マジ?」


 ピースが出した案『野良ドラゴンとお友達になっちゃえ!作戦』。ピースとしては冗談半分で言ったことなのだが、レオニスはそれを真に受けて『なかなか良い案だ』と思ったようだ。

 これには言い出しっぺのピースもびっくりである。

 だが、オーガ族とも友達になれるレオニスのことだ。もしかしたら本当にドラゴンとも友達になれるかもしれない。


「ぁー、うん……まぁね、レオちんならきっとできるよ!」

「だといいがな。とりあえず、天空島の光の女王と雷の女王は一番後回しにするとして、先に他の女王の安否を確認しつつドラゴンと接触してみるか」

「頑張ってね!……あ、そういえば。小生、レオちんに言っとかなきゃいけないことがあったんだ」

「ン? 何だ?」

「実はね……」


 異次元レベルのレオニスを、まるで仏像か何かを拝むかのように合掌していたピース。

 ふと何かを思い出したように、伝えたいことがあるという。

 一瞬だけ俯いたピース、次の瞬間にはニパッ☆とした満面の笑みになった。


「小生の!有給休暇!取れる時期が、やっと昨日決まったのよ!」

「え、マジ? そりゃ良かったな!で、いつ頃休めそうなんだ?」

「えーとねぇ、八月の一日から七日までの一週間!」

「そりゃまたすげーな、よくそんな長い休みが取れたな?」

「こないだの黄金週間中も、小生頑張ってずっと働いたからね!」


 ピースがそれはもう嬉しそうに、ニッコニコの笑顔で有給休暇取得成功を高らかにレオニスに報告する。

 ピースが有給休暇を取るのは、プロステスの炎の洞窟に行くためである。炎の女王に会って、浄化魔法の呪符の作成者として穢れ祓いに貢献したことを存分に褒めてもらうのだ。

 人から褒められることが何より大好きなピース。有給休暇で休めること以上に、炎の女王との謁見を何よりも渇望しているのだ。


「あ、でもね、ラグナロッツァの外に出る場合は、先にその行き先をギルドに申請しとかなきゃいけないのよ。万が一小生の判断が必要な事態が起きた時に、ギルドが小生と連絡取れないのは非常にマズいからさ」

「そうか、それならプロステスに行く日取りも早めに決めとかないとな」

「うん!そしたらプロステスには何日くらい泊まろうかなー、レオちんもいっしょにどこかにお泊まりする?」

「ンー……俺もお前と同じで、あまり長くラグナロッツァを離れると後で怒られるんだが。まぁ一泊二泊程度ならいいだろ」

「やったー!小生、ラグナロッツァを出てお泊まりの旅行するのなんて、ホンット久しぶり!」


 ピースの有給休暇を利用したプロステス行きの話が、何だかどんどん観光旅行のような様相を呈してきた。

 だが、八月初旬ならライトも夏休み中だし、レオニスとしても連れ立って行くには都合が良い。


「炎の洞窟行きは、他の女王の安否確認報告も兼ねるから、ライトも連れて行くことになるが。それでも構わんか?」

「もちろんもちろん!むしろライっちといっしょにお泊まりのお出かけできるなんて、小生にとって最高のご褒美だよ!」

「そうか、そう言ってもらえるとありがたい」


 ピースはライトと知り合ってまだ日が浅いが、彼が敬愛する師匠の親友ということで、ピース自身も何かとライトのことを気にかけてくれている。レオニスにしてみれば、実にありがたいことだ。


「じゃ、ぼちぼち俺は帰るが。八月のプロステス行きの詳細は、また近いうちに話し合おう。ライトにも話しておかなきゃならんしな」

「うんうん!追加注文の『究極』呪符も、また少しづつ作り溜めておくからね!」

「よろしくな」


 ピースに伝えたいことを一通り話し終えたレオニスは、ご機嫌なピースに見送られながらギルドマスター執務室を後にした。

 魔術師ギルドにて、ピースとの相談会です。

 レオニスは冒険者ギルド所属ですが、魔術師ギルドとも結構付き合いが長く、切っても切れない縁があります。

 特にここ最近は穢れ祓いのための浄化手段として、またアイテムバッグの普及にも尽力せねばならないので、お互いにますます欠かせない存在となりつつあるという。


 というか。黄金週間がようやく完了したばかりだというのに、またも夏休みの予定が一つ二つ入ってしまいました…( ̄ω ̄)…

 リアルでは只今絶賛夏休み中ですが、拙作の夏休みは果たして一体何日かかることでしょう? 今から恐ロシアな作者です_| ̄|●

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