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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
黄金週間

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第566話 競売祭りの直前

 シリウス大サーカスショーを皆で楽しんだ翌日。

 この日は五月六日の日曜日。長らく続いた黄金週間もいよいよ最終日である。

 そして今日は、レオニスが出品者として参加する競売祭りが開催される日でもある。


「へー、いろんなお宝が出品されるんだねー」

「絵やら宝石やらのことは、俺にはさっぱり分からんがな」

「武器や防具も出るんだー」

「今回そこに出てるやつは、歴史的価値? 骨董品的な価値のあるもんらしい」

「あー、それじゃレオ兄ちゃんにはあまり興味なさそう」

「俺達冒険者にとっちゃ、武器防具なんざ使えてなんぼのもんだからな。ま、貴族の邸宅に飾られる分にはいいだろうさ」


 朝食を食べた後、居間で競売祭りのプログラムを見ながら話しているライトとレオニス。

 絵画に宝石、武器や防具といった様々なジャンル二十六品目がずらりと並ぶ。

 その中で、今回レオニスが出す【水の乙女の雫】と【火の乙女の雫】は最初と最後に配置されていた。つまり、レオニスの品が一番バッターと大トリを務めるということである。


「一番最初と一番最後なんてすごいねー」

「まぁな。乙女の雫なんて、滅多に出てくるもんじゃないからな」

「どっちも高値で売れるといいね!」

「そうだな、それであのオンボロ孤児院を建て直してやりたいからな。1Gでも高く売れることを願うばかりだ。……さ、そろそろ出かけるか」


 レオニスが座っていた席から徐に立ち上がる。

 競売祭りの開催は午後一時からだが、出品者は最終確認その他のため二時間前に会場入りすることになっている。


 出品者の関係者として同行できるのは一名まで。これは出品者が身辺警護のために、護衛を引き連れていくための規定である。

 ちなみに入札参加者側になると、一人につき二人まで随伴者の入場が許可される。これは、出品者側よりも入札者側の方が身分の高い貴族や豪商が多いためだ。


 こうした人達は、よりしっかりとした護衛を必要とする。護衛を二人雇ったり、あるいは護衛一人と家族や知人一人などで入ることもできる。

 ただし随伴者にも事前審査があり、きちんとした身分証を提示できなければ随伴の許可は下りない。

 かなり厳重な体制だが、それには当然理由がある。

 競売祭りの会場は、ラグナ宮殿の中にあるのだ。

 しかもそれは中央本殿の真横、宮殿別館ともいえる迎賓館。広大なラグナ宮殿の中でも中央本殿に最も近い建物である。


「おおお……これが迎賓館……すごいねぇ」

「この迎賓館ってのは、俺も今まで外側しか見たことがないんだよな。中に入るのは生まれて初めてだ」


 迎賓館をど真ん前にして、しばし見上げながら呆然とするライトとレオニス。

 遠目からでも立派な建物であることが分かったが、入口間近まで来るとその圧倒的な豪奢さがもっとよく分かる。


 この迎賓館は主に外国からの賓客を迎えたり、ラグナ大公一族が関わる国家行事などで使われる施設である。

 貴賓を迎える宿泊施設や談話室などはもちろんのこと、広大なダンスホールもあるという。

 まさにアクシーディア公国という国家の威信を表し示す建物であり、その威風堂々とした佇まいにただただ圧されるばかりである。


 ちなみに今日の競売祭りは、迎賓館内のダンスホールで行われるようだ。

 ダンスホールに多数の椅子を置いて、オークション用の舞台を拵えるというのも何だかおかしな気もするが。国内外の王侯貴族や豪商が多数集まる場なので、警備も盤石なものにせねばならない。

 その点迎賓館ならば、大人数を収容する広さと厳重な警備体制を兼ね備えた最適の場である。


 迎賓館の入口で、レオニスが冒険者ギルドカードと競売祭り出品者用の証明証を提示し中に入る。

 身分証を提示するのは、これでもう三回目だ。一回目は外周部の正門、二回目は内周部の門、そして三回目はここ迎賓館入口。

 ラグナ宮殿の中央本殿に最も近い場所だけあって、厳重な警備体制が敷かれているのだ。


 入口入ってすぐのところで、身体検査をしている騎士に大剣や右脇の短剣などの武器類を預ける。

 レオニスは深紅のロングジャケットの前側を開けて、中に危険物を仕込んでいないことを騎士達に見せる。

 ライトもレオニスに倣い、着けていたウエストポーチの口を開けて中を騎士達に見せる。

 そうして通行にOKが出てから、騎士に案内されてようやく奥の控え室に通された。


 控え室の中には、ティモシー他ラグナ官府側の執行役員がいた。

 役員の他にも、他の出品者と思しき人物が何人かいるのが見える。

 レオニスが控え室に入ってきたのを見て、ティモシーが小走りで駆け寄ってきた。


「こんにちは、レオニスさん!」

「よう、ティモシー。今日はよろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いいたします。では早速ですが、あちらの机にどうぞ」


 ティモシーに案内されて、控え室の一角にあるテーブルの席に着くライト達。

 向かいに座ったティモシーが、小脇に抱えていたファイルから二枚のチケットを差し出した。


「こちらがレオニスさんの分の観覧席です。席は入札者達と同じエリアで、全席自由となっております。もしホール内にお知り合いの方がいらっしゃいましたら、隣同士で座っていただいても構いません」

「王侯貴族の知り合いなんざ少ないから、そんな心配もないと思うがな」


 レオニスがそんな各種説明を受けている中、ライトは物珍しさで部屋の中をキョロキョロと見回している。

 ぃゃー、ラグナ大公とかラグナ宮殿って、BCOでは名前しか出てこなかったんだよなー。だからどんな人かとかどんな場所だとか全く知らないし、ぶっちゃけBCO世界の幽霊部員のような存在だったけど。こうして見ると、このサイサクス世界では本当にちゃんと実在してるんだなー。……などと、かなり失敬なことを考えている。

 やはり美味しいとこどりの切り貼り継ぎ接ぎだらけなゲームと、現実として生きる世界では大違いなのである。


「入札者側の入口は開始時間の一時間前、正午から解放されます。それまではこちらでゆっくりお過ごしください」

「ありがとう」


 一通り説明が終わったようで、レオニスとティモシーが席を立つ。

 ぽけーっと部屋の中を見回していたライトも、慌てて席を立ちレオニスの後をついていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 競売祭り開始三十分前。

 入札者側の席はもうかなり埋まっていて、八割方くらいの席に誰かしら座っている。

 気合いが入っている人などは、護衛とともに朝から入口の前で待機していたらしい。よほど欲しいお目当ての品でもあるのだろうか。


 レオニス達は別に、舞台のド真ん前に陣取って見たい訳ではないので、開場直後に後ろから二番目くらいの列に早々に座る。

 舞台上にはホログラム装置があり、出品物の映像を大きく映す仕組みとなっているので後方でもちゃんと見えるのだ。

 ライトとレオニス、二人してのんびりと競売祭りの開始を待っていると、突然後ろから声をかけられた。


「やぁ、レオニス君」

「ン?……ああ、ウォーベック侯爵じゃないか。久しぶりだな」

「こんなところで大陸一の英雄に会えるとは、奇遇にして幸運だ」

「まーた歯の浮くような台詞を……」

「ははは、これはすまない、いつもの癖でつい、な」


 レオニスに声をかけてきたのは、商業都市プロステスの領主アレクシス・ウォーベックであった。

 軽口を叩くレオニスに、アレクシスは笑いながら応じる。

 普通の貴族なら気色ばんでいきり立つところだが、軽く受け流せるところが気さくなアレクシスらしい。


 そして、アレクシスの横には弟のクラウス・ウォーベックと護衛と思しき騎士が一人いる。

 クラウスの姿を見たライトは、早速昨日の礼を言う。


「あッ、ハリエットさんのお父さん!昨日はありがとうございました!」

「こんにちは、ライト君。昨日はハリエットといっしょに楽しんでこれたかい?」

「はい!とっても楽しかったです!」

「そうか、それは良かった」


 昨日ハリエットが持ってきてくれた特別チケット。そのおかげで、あの大行列に並ぶことなく見晴らしの良いVIP席でサーカスショーを堪能できたのだ。

 愛娘とその同級生達の分まで特別チケットを手配してくれたのは、他ならぬクラウスである。

 とびっきりの笑顔で礼を言うライトに、クラウスもまた優しい笑みを浮かべる。


「昨日の御礼に、今度またラウルの新作スイーツを持っていきますね」

「何ッ、ラウル君の新作スイーツとな!? それは是非とも楽しみにしているよ!」


 ライトの言葉に、クラウスが身を乗り出して食いついてきた。

 いつものクラウスなら、言葉上だけでも『ははは、そんな気にしなくていいよ』というところだが。ラウルの新作スイーツとなれば話は別だ。

 変に遠慮することなく素直に喜ぶクラウスに、ライトも思わず笑ってしまう。


 そんなライト達の横で、レオニスもまたアレクシスと話をしていた。


「何だ、ウォーベック侯爵もオークションに参加しに来たのか?」

「黄金週間中は、中央視察と称してあちこち回るのでな。この競売祭りも視察の一環として、何年かに一度は見に来るのだよ」

「何か入札したり落札するのか?」

「そうだなぁ……私としては、レオニス君が出した乙女の雫二種が非常に気になるところではある」


 アレクシスは侯爵として、そしてプロステス領主として中央視察に来ているという。

 実際に入札したり落札するかはさて置き、商業都市を名乗るプロステスの領主としては巨額の金が動くオークションに興味を示すのは当然である。


「というか、ここでずっと立ち話というのも何なので。私達も君達の隣に座らせていただいてもよろしいかね?」

「ン? こんな後方でいいのか?」

「もちろん。どこの席に座ろうと、観覧や入札に差し支えなどない」

「まぁな。自由席だし、こんな後ろで良ければウォーベック侯爵達も自由に座るといい」

「そうさせてもらうとするよ」


 アレクシスはそう言うと、レオニスの横の空いている席に三人で座った。

 並びとしては、ライト・レオニス・アレクシス・クラウス・護衛騎士、の順である。


「ところでレオニス君、この【火の乙女の雫】とは炎の女王のものかね?」

「いや、それはエリトナ山に住む火の女王からもらったものだ。炎の女王のものなら【炎の乙女の雫】になるはずだ」

「そうなのか……炎の女王由来のものならば、何が何でも何としても我がプロステスの象徴として落札するところなのだが」


 アレクシスが残念そうに呟く。

 確かにこれが炎の女王がもたらした【炎の乙女の雫】ならば、プロステス領主の名と意地にかけて絶対に落札していたであろう。


「残念ではあるが、高い買い物をせずに済んだと思うことにしよう」

「【炎の乙女の雫】なら、いずれもらえると思うがな」

「「何ッ!?!?」」


 レオニスが何気なくぽろりと口にした言葉に、アレクシスとクラウスが目を点にしながらギュルン!と首を90°向けてレオニスの顔をガン見する。


「近いうちに、炎の女王に頼まれた依頼の途中経過を報告しに行かなきゃならんしな」

「その時に、炎の女王の乙女の雫をいただける、ということか……?」

「そんな約束は全くしてないがな。でもまぁうちのライトが上手いことおねだりすれば、多分もらえるだろ。あの【火の乙女の雫】も、そうして手に入れたしな」

「そ、そうなのか……」


 半ば呆然としつつあったウォーベック兄弟。

 すると突然アレクシスがレオニスの手を取り、ガシッ!と掴んだではないか。


「うおッ!? な、何だ、どうした急に!?」

「レオニス君!もし炎の女王から乙女の雫を授かったら、私にも分けてくれないか!? 金に糸目はつけん、君の言い値で買おうじゃないか!」

「あ? そりゃもちろん構わんが……」

「ありがとう!ありがとう!もし【炎の乙女の雫】が入手できたら、すぐに連絡をくれたまえ!レオニス君からの吉報を、心より待っているよ!」


 ガシッ!と掴んだレオニスの手を、上下にブンブン振りながら歓喜するアレクシス。

 レオニスが快諾してくれたことが、よほど嬉しいようだ。

 アレクシスの横にいるクラウスも、ライトに向かって「ライト君!炎の女王へのおねだり役、頑張ってくれたまえ!」と興奮気味に話しかける。

 目をキラッキラに輝かせながら、フンスフンス!という鼻息まで聞こえてくるクラウスの気迫に、ライトは「は、はい……」と苦笑しながら応じる。


 炎の洞窟とともに生きるプロステス。

 そのプロステスを故郷に持つ者にとって、炎の女王は崇敬して止まない存在なのだ。

 ライトとレオニスは、大喜びする二人の様子を見て改めてそれを思い知る。


 そんな会話をしていると、ホール内にアナウンスが流れてきた。


『只今より、競売祭りを開始いたします』


 それまで雑談でざわついていた会場内が、一気に静かになる。

 こうして黄金週間三大イベントである競売祭りが始まっていった。

 ようやく!黄金週間最終日&ラストイベント、鑑定祭りがやってまいりました!

 思い返せば、この黄金週間章が始まったのが7月1日。そして今日は7月31日。気がつけば丸々一ヶ月かかってしまいましたよ!Σ( ゜д゜)

 ぃゃー、作者自身こんなに回数嵩張るとは夢にも思わず(=ω=)

 アレだな、八咫烏の里への里帰りと海の女王訪問が効いたんだな!(;ω;)


 とはいえ、ここら辺のお出かけも、ライトが長期休暇の間でないとなかなか行けないし。黄金週間の次の連休となると、必然的に夏休みになるし。

 夏休みは夏休みで、既にあれやこれやの予定がいくつも入ってるんですよねぇ…(=ω=)…

 てな訳で。結局今のうちにこなせる問題は後回しにせず、積極的にこなしておくべきなのだ!ということにしておく作者でした。

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