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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
黄金週間

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第565話 興行の余韻

 今回は物語の区切り上、文字数少なめです。

「はぁー……すっ……ごく楽しかったねぇ」

「うん……すっ……ごく楽しかったぁー」

「すっ……ごい曲芸だったねぇ……」

「うん……あんなすっ……ごいの、私初めて見たぁー」

「私も初めて見ましたわ……すっ……ごかったぁー」


 ポーッと上気した顔で呟く五人の子供達。

 先程サーカスショーの演目が全て終わり、一旦幕を閉じる。その後観客の大拍手が沸き起こり、三度のアンコールを経て大成功のうちにショーは完全に終幕を迎えた。

 五人ともまだその余韻に浸っているようだ。


 エビルキマイラの火の輪くぐり、グラトニーエイプの玉乗り、コブラロードの空中ブランコ、ダークグランジーの綱渡り等々、どれも見応えのある演目ばかりで、それはもう夢中になって舞台を見入っていた子供達。

 やはりサーカスというのは、古今東西異世界問わずで人々を魅了し虜にする偉大なショーなのだ。


 ちなみにエビルキマイラはマンティコアや暗黒の魔獣の色違い、グラトニーエイプは毛むくじゃらのゴリラのような体躯の良い猿型魔物、コブラロードは首が平べったいコブラのような蛇型魔物、ダークグランジーは八本の触手脚と巨大な一つ目の頭部に触覚目玉を七本生やしている陸上型蛸系魔物である。

 どれも大型の魔物で、特定の地域に行けばエンカウントする魔物だ。


 これらの魔物は凶暴なことでも知られているが、シリウス大サーカス団はどうやって従属させているのだろうか? ライトとしても非常に気になるところではあるが、ここら辺は企業秘密として絶対に外部に明かされることはないだろう。


 自分達以外のVIP席の観客が一通り捌けたところで、ウィルフレッドがライト達に声をかける。


「さ、そろそろ僕達も外に出ようか」

「「「はーい」」」


 まだテント内の熱気も冷めやらぬ中、ライト達は下に降りていった。

 そして、入場口から少し離れた場所に別のテントを見つけたライト。

 興行ショーに欠かせない、お約束の関連グッズ売り場である。


「あッ、あっちにグッズ売り場があるよ!皆で見に行く!?」

「行く行くー!」

「せっかくショーを観に来たんだから、お土産屋さんも見るだけでも見ないとね!」


 皆して早速スススー……とテントに吸い込まれるようにテントに入っていくライト達。案の定テントの中はかなりの繁盛である。

 各種魔物の絵葉書にマグカップ、エビルキマイラのお盆にコブラロードの抱き枕、ダークグランジーのぬいぐるみなどもある。見ているだけでも楽しくて飽きない品揃えだ。


 今回も皆ちゃんとお小遣いを用意してきたようで、思い思いにグッズを眺めては気に入った品を購入している。

 ちなみにライトが自分用に購入したのは『カラフルグランジーの特大ぬいぐるみ』だ。特大サイズだけに、その大きさはライトの身体半分以上という巨大さである。

 そしてそのお値段何と1200G。ライトが今日レオニスからもらった大銀貨一枚を軽く超えていた。


 だが、一目見てすごく気に入ってしまったライトに迷いはない。その場で抱き抱えながら速攻で会計まで行き「これ、持ち帰るために背負う紐とかいただけますか!?」と尋ねたほどである。

 他にもレオニスにグラトニーエイプの毛でできた小銭入れ、ラウルにエビルキマイラのコースターセット、マキシにコブラロードの抱き枕等を購入していくライト。これだけの買い物ができたのは、レオニスからの小遣い以外にアイギス相手の仕事で稼いだお金の一部を持ってきていたからだ。

 そうして一通り買い物を済ませてテントの外に出る頃には、山篭りにでも行くのか?と見紛うほどの出で立ちになっていた。


 太くて長いコブラロードの抱き枕を、両手で持ち抱えるライト。そしてその背にはデデーン!と御座すカラフルなグランジー、まるで妖怪に覆い被さられているようだ。

 くッそー、レオ兄やラウルがいたら空間魔法陣に入れてもらえるのに……と思うライトだが、ここにいないものはしょうがない。

 早いとこアイテムバッグが世に普及することを願うばかりである。


 買い物を先に終えて外で待っていたイヴリン達は、そんなライトの異様な姿に目を大きくしながらびっくりしている。


「うわぁー、ライト君、たくさん買ったねぇ!」

「うん、どうしてもこの特大ぬいぐるみが欲しくて、思いきって買っちゃった!」

「いいんじゃない? 今日の思い出としても素敵な選択よね!」

「ええ、ライトさんらしくてとても良いと思いますわ」

「荷物たくさんで大変そうだから、途中まで僕が持とうか」

「あ、ありがとうございます!」


 ライトの奇っ怪な姿を笑うことなく、にこやかな笑顔で出迎える同級生達とその兄。皆心根の優しい子達である。

 茜色に染まりつつある空の下、皆で帰路に就く。

 広場から一番家が近いリリィが去り、イヴリン、ジョゼが去り、しばしライトとウォーベック兄妹の三人で歩く。


「ハリエットさんのお父さんのおかげで、今日はすっごく楽しかったです!」

「ふふふ、我が父上は僕以上にハリエットのことを愛してるからね!愛しい娘の喜ぶ笑顔見たさに、いつもは使わないような人脈を目一杯発揮してそうだよ」

「お兄様ったら、またそんな恥ずかしいことを……」


 重度のシスコンであるウィルフレッドが、己の父のことも褒め称える。彼は単なるシスコンではなく、父母も含めて全ての家族を深く愛しているのだろう。

 そんな兄の言葉に、ハリエットが少しだけ俯きながら頬を紅潮させる。その仕草や表情は決して嫌がっているのではなく、照れ臭さからきているようだ。

 仲の良い親子という感じがひしひしと伝わってきて、ライトの心も和む。


 道中ではこの黄金週間中のウォーベック家での過ごし方、首都観光やその視察案内の話などを聞いているうちに、ウォーベック邸の前に着いた。

 楽しい時間というものは、本当にあっという間に過ぎていくものだ。

 ウォーベック邸の門扉の前で、ハリエットが名残惜しそうにライトに向かって話しかける。


「ライトさん、今日はありがとうございました。私もとても楽しい一日を過ごせました」

「そんな!こちらこそ本当にありがとう!……あ、これ、ぼくからのほんの気持ち」

「???」


 ライトはズボンのポケットから小さな袋を差し出し、ハリエットに手渡す。

 不思議に思ったハリエット、その場で小袋をそっと開けて中を見る。するとそこには、小さなロケットペンダントが入っていた。


 銀色の楕円形のペンダントトップ、その表にはシリウス大サーカス団の紋章が刻まれており、チェーンも同じ銀色で統一されている。

 ちなみにペンダントトップの中まではまだ見ていないが、中にはエビルキマイラの獅子の顔がウィンクしているデフォルメ絵が入れられている。


「ライトさん、これ……」

「うん、こんなに楽しい一日にしてくれたハリエットさんへの御礼!……あ、もちろんハリエットさんのお父さんにも、約束通り近いうちに御礼を持っていくからね!」

「ありがとうございます……」


 ライトの心ばかりの御礼が入った小袋を、ハリエットは嬉しそうにそっと握りしめる。

 その間ライトは、ウィルフレッドに持ってもらっていたコブラロードの抱き枕を受け取り、再び両手で抱え持つ。


「じゃ、また学園で会おうね!」

「はい!また明後日、学園でお会いしましょうね!」


 両手が塞がっているので、手は振らずにペコリと頭を下げるライト。明るい笑顔でウォーベック兄妹に別れの挨拶をし、レオニス邸に向かって歩き出していく。

 その後ろ姿を、ハリエットはずっと手を振りながら見送っていた。

 ライトが同級生達と行く二回目の興行ショーです。

 文字数的には、次の話のさわりを入れてもよかったのですが。ここは皆と楽しく過ごしたサーカスショーの余韻に浸りたいところなので、いつもより短めの区切りとしました。


 作者も二回くらいサーカスショーを観に行ったことがありますが、ああいう催し物ってワクワクしますよねぇ。

 そして、数ある演目の中で最も作者の印象に残っているのがバイクショー。

 バイクがぐるぐる走り回るのはいいんですが、バイクが引いてからもしばらくの間排ガス臭かった…(=ω=)…

 自動車もないこのサイサクス世界に、作中でバイクを登場させる訳にはいかないので、こうして後書きネタに回されるのですが。


 あ、そういえば作中で出したコブラ。肋骨により頚部の皮膚を広げることができるそうで、それで敵や獲物を威嚇するのだとか。エリマキトカゲと同じようなもんですかね。

 でもってあれって生物学的に『フードコブラ属』に属するんですね。フードとはもちろんそのままの意味で、威嚇用の襟を指すのだとか。

 作者はまた一つ賢くなった! ←無駄知識

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