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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
黄金週間

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554/1681

第554話 ラギロア島の玄関口 ウスワイヤ

 黄金週間四日目。

 今日はライトとレオニス、ラウルとマキシ、二組に分かれての行動だ。


 ライト達はラギロア島に行くため、明け方には支度を済ませて屋敷を出る。曙色に染まる空が、美しくも清々しい。

 冒険者ギルド総本部に向かう道すがら、ライトはレオニスに様々な質問をしている。


「ラギロア島に一番近いウスワイヤ、だっけ? そこには直接行けるの?」

「いや、ウスワイヤは本当に小さな港町でな、あの町に冒険者ギルドはないんだ。だから、ウスワイヤに行くには最寄りのエンデアンから移動しなきゃならん」

「エンデアンからウスワイヤまでは、どれくらいの距離があるの?」

「馬車での移動なら丸一日ってところだが、俺達なら走って小一時間程度で着くくらいか」


 レオニスの話によると、ウスワイヤという町は『ラギロア島へ行く拠点』という以外には本当に何の役割もないところらしく、そのため冒険者ギルドの出張所さえないという。

 距離的にエンデアンから然程離れていないということもあり、ウスワイヤはエンデアンの管轄範囲に含まれているのだ。


 あの閑古鳥の聖地、ディーノ村にだって冒険者ギルド出張所があってクレアもいるのに……と思わなくもない。

 だがディーノ村とは、かつてそれなりに数多の冒険者達で賑わった最前線であり、レオニスやグランを輩出した由緒正しい冒険者の町だ。そして地理的に考えても、カタポレンの森やシュマルリ山脈に隣接している。

 それら諸々のことを鑑みれば、今でもディーノ村が防衛拠点として重要視されているのも当然のことである。


「海の女王様のところには、廃都の魔城の四帝の手先が行ってるのかな?」

「その可能性は限りなく低いと思うがな」

「何で?」

「奴等が世界征服を目論んでいるとしても、海の覇権まで狙っているとは思えん。陸と海はそれこそ何から何まで勝手が違うからな。もし海にまで魔の手を伸ばそうと思ったら、それは少なくともサイサクス大陸全土を手中に収めてからの話だろうよ」

「あー、そっかぁ、そうだよねぇ」


 レオニスの答えにライトは得心する。

 言われてみれば、BCOの冒険ストーリーでも海を舞台にした重要な話は出てきたことがなかった。海が舞台となるのはせいぜい夏の季節限定イベントくらいで、それも『浜辺でBBQ!モンスターを倒して食材をゲットせよ』とかいうかなり脳天気なものだった。


 また、廃都の魔城の四帝の性質を考えても、海や水場に特化した能力を持っていないことは明らかだ。

 ラグナ教エンデアン支部で発見された聖遺物は三叉槍という形状だったが、それも聖なる状態でのこと。聖なる状態の聖遺物を、悪の枢軸である四帝が十全に扱える訳がない。

 以上の観点により、海の女王がいるという海底神殿に廃都の魔城の四帝の魔の手が伸びている可能性は限りなく低いと思われる。


「だが、炎の女王から他の女王の安否確認を頼まれたからには、海の女王のもともちゃんと訪ねなきゃな」

「そうだよね。ぼく達の憶測だけで大丈夫、なんて言い切れないもんね」

「そゆこと。それに、属性の女王達に会える機会なんて滅多にないからな。属性の女王探しできるなんて、冒険者冥利に尽きるってもんだ」

「それ分かる!属性の女王様達って、本当に綺麗でカッコよくて凛々しくて……できることなら全員に会いたい!」


 前半では炎の女王に託された使命を全うしていた二人だが、後半ではぶっちゃけ単なる冒険オタである。

 しかし、冒険者なんてものは皆本質的にはそんなものだろう。

 未知の場所で、未知の生物と出会い、時には死闘を繰り広げ、時には仲間を見つけ、様々な出会いやお宝を求めてひたすら世界中を探索していく。それがサイサクス世界における冒険者というものだ。

 もっとも、冒険者の仕事はそればかりでもないのだが。


 そんな話をしているうちに、冒険者ギルド総本部に辿り着いたライトとレオニス。

 いつものように奥の事務室の転移門を使い、エンデアンに向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「よう、クレエ」

「あら、レオニスさんじゃないですか。おはようございますぅ」

「クレエさん、おはようございます!」

「あら、ライト君もごいっしょなのですね。おはようございますぅ」


 エンデアン支部の受付窓口にいたクレエに、朝の挨拶をしに行くライトとレオニス。

 総本部の受付窓口にクレナはいなかったが、エンデアンではクレエが早番で朝早くから勤務しているようだ。


「本日はどのようなご用件でエンデアンにいらしたのですか?」

「ラギロア島に行こうと思ってな」

「まぁ、ラギロア島ですか。黄金週間中はラギロア島で過ごす人も多いですからねぇ。レオニスさんもバカンスにいらしたのですか?」

「ま、そんなところだ」

「レオニスさんにしては珍しく優雅な休日じゃないですか。何とも羨ましい限りですねぇ」

「俺だってたまには骨休めしたいし、ライトも海で遊ばせてやりたいんでな。日頃カタポレンの森を警邏してるんだ、一日くらい森から出て海に出かけたって罰は当たるまいよ」


 海の女王に会いに行く、という本当の目的をわざわざ言うこともないので、ここはクレエの質問に乗っかってバカンスに来た、ということにして適当に誤魔化しておく。


「ということは、今日はラギロア島かウスワイヤ、あるいはエンデアンでお泊まりですか?」

「いや、今ラグナロッツァの屋敷に客人が来てるから日が暮れる前に帰るつもりだ」

「あらまぁ、それはお忙しいことですねぇ」

「もしかしたら海で遊ぶのに夢中になり過ぎて、どこかで泊まるかもしれんがな。ま、そうなった場合俺はラギロア島もしくはウスワイヤにいるということで、冒険者ギルドも把握しといてくれ」

「承知いたしました」


 泊りがけになるかどうかはまだ分からないので、ここも適当にぼかしておくレオニス。

 冒険者ギルドがレオニスの居場所を把握できていないのは、組織として非常にマズいこととされる。なので、このようにぼかしつつ伝えておかなければならないのだ。

 最高位の冒険者というのも、自由なようでいてそれなりに柵や制約があるのである。


「じゃ、帰りにまた寄らせてもらうわ」

「レオニスさんもライト君も、お気をつけてお出かけしてくださいねぇー」

「はい!いってきまーす!」


 クレエに見送られながら、ライトとレオニスは冒険者ギルドエンデアン支部を後にした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 港湾都市エンデアンの城壁の外に出たライトとレオニス。

 もちろん城壁の外には、人の姿などほとんど見当たらない。あっても別の都市に向かって出発したばかりの馬車が一台二台、少し離れたところに見えるくらいか。


「ウスワイヤって、どっちの方向にあるの?」

「あの馬車の向かう方向の反対側、こっちの海沿いの道をひたすら真っ直ぐ進めばウスワイヤに行ける」


 レオニスの指し示した方向には、未舗装ではあるが行き交う人々の足で自然に踏み固められた筋状の道ができている。

 海沿いで木々もない荒野、その少し向こうに海が広がっているのが見える。

 ここからは人目を気にすることなく行動できる。


「さ、そしたらこの道に沿ってウスワイヤに行くぞ。俺の後を走ってついてこいよ」

「うん!何ならこないだのエリトナ山の時よりも早く走っていいよ!」

「お、言ったな?そしたらこないだよりもっとスピード上げて走るぞ? 遅れんなよ? 行くぞ!」

「うん!!」


 ハイポーションを片手に持ちつつ、大きく出たライト。その言葉に、レオニスが一瞬だけ驚いたような顔になる。

 だがそれも、すぐに不敵な笑みに変わる。ニヤッ、と笑った後、行くぞ!という掛け声をきっかけに疾走を開始したレオニス。

 もちろんライトだって負けてはいない。レオニスの疾走とほぼ同時に駆け出すライト。

 人外ブラザーズは、ウスワイヤの町目がけて走り出していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 二人がエンデアンから駆け出して、走ること約五十分。

 人の手の入ったもの何一つ見ることのなかった殺風景な景色から、何やら壁らしきものが遠目からでも見えてきた。


「あッ、あれがウスワイヤの町?」

「だな。ぼちぼちスピード落とすか」


 ウスワイヤの町を目前にしたライト達、走るスピードを落として徒歩に切り替える。

 町の手前の荒野で、ライトもレオニスもそれぞれ歩きながらハイポーションやエクスポーションを飲んでいる。

 実にお行儀が悪いが、町に入る前で誰もいないし空瓶はちゃんと各自持ち帰るのでOK!である。


 ラギロア島の経由地という役割しかない街にしては、結構頑強そうな城壁に囲まれている。

 レオニスから事前に聞いていた話では、もっとこぢんまりとした港町を想像していたライト。ちょっと意外である。

 出入口も大きな門構えの立派な門で、他の都市に比べても遜色ない造りだ。

 そこでレオニスは身分証明書として、冒険者ギルドのギルドカードを提示する。


 ギルドカードを確認した門番が門を開き、ライト達は無事ウスワイヤに入ることができた。


「小さな港町っていう割には、かなり厳重な警備なんだね」

「そりゃそうさ、ここは高位の貴族なんかも来る高級バカンス地だしな。住民自体は少ないし冒険者ギルドも置かれちゃいないが、その分エンデアンから派遣された警備体制はしっかりしてるし、店や宿屋なんかも高級なもんが揃ってるんだ」


 確かにレオニスの言う通りで、貴族も利用する場所なら厳重な警戒が必要である。だが、冒険者ギルドはいざという時に頼りになる組織だが、ならず者や強面が出入りするイメージもある。

 そうした者達を忌避する貴族も少なからずいるので、貴族御用達の地にはなるべく置きたくない、というのも分かる気もする。

 屈強な冒険者ギルドの代わりにエンデアン行政がウスワイヤの治安を担っている、という訳だ。


 門を潜って街並みを見ると、建っている建物の数こそ少ないがどれも品のある店が多いような気がする。

 ラギロア島にバカンスに来た人達は、この街でいろんなものを買い込んでから島に渡るのだろう。


 そんな話をしながら海側に歩いていくと、定期船の発着場が見えてきた。

 発着場の横にある小屋の窓口を覗き込むレオニス。


「船の出発時間を聞きたいんだが」

「行き先による。平民エリアと貴族エリア、どっちに行く予定だ?」

「平民エリアだ」

「平民エリアへの定時便は朝八時半、昼十二時半、夕方四時半だが、今の時間帯なら三倍の料金を払えばすぐに出発する」

「そうか、なら三倍払うから今すぐ向こう側に二人運んでくれ」

「一人900G、二人で1800Gだ」


 聞けば定時の前後三十分以外の時間帯なら、三倍の料金を出すことで運行を引き受けるという。

 本来なら片道で一人300Gのところを、今すぐ渡りたければ三倍の900G払え!とはなかなかにぼったくりな気もするが、定時の時間外に即時出立するための特急料金と思えば致し方なしか。


 時刻は朝の七時少し前。ここで一時間もボケーッと待つ気はないので、さっさと特急料金を支払ってラギロア島に渡ることを決めたレオニス。

 レオニスは深紅のロングジャケットのポケットから財布を取り出し、1800Gを支払ってライトとともに船に乗り込む。

 二人を乗せた船は、ラギロア島に向けて出航した。

 海底神殿の最も近くにある島、ラギロア島に到着です。

 いつものライトやレオニスなら、わざわざお金を払って船になど乗らずとも空を飛ぶなり水中を泳いで島に渡るところなのですが。

 ラギロア島は有名なバカンス地であり、特に黄金週間中はそれなりの数の人がラギロア島に滞在しています。

 そこに突然人が飛んできたら、まぁ普通に大騒ぎなりますよねー( ̄ω ̄)

 他にもラギロア島は貴族が出入りする島なので、島自体に結界を張るなどの厳重な警備が敷かれている可能性もあります。そんな場所で空や海から入るとか、普通に不法侵入に問われてお縄になっちゃう><

 故にここは、正規の方法で島に渡るのが最善なのです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 海に進出してない、という事は幹部級が軒並み「この川、深いっ!」で窒息ダメージ受けて「murmur chant pray imvoke」する羽目になってしまうのか?
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