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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
黄金週間

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第545話 水の試飲会 in 八咫烏の里

「さて。そしたら俺達、ここらで昼飯にしたいんだが。シアちゃんといっしょに話しながら食べたいんで、ここで食ってもいいか?」

「シア様が許可なさるならもちろん構わん。シア様、如何いたしますか?」

『私が断る理由などありません。皆で賑やかな食事をするのも良いでしょう』

「ありがとうございます!じゃあ皆で支度しようか!」


 レオニスがウルスとユグドラシアに許可を取り、ライト達は早速昼食の準備に取りかかる。

 レオニスが空間魔法陣からいくつもの敷物を取り出し、繋げるように並べていく。今回はテーブルや椅子は使わないようだ。

 その理由は『マキシの家族達といっしょに食べるため』である。


 二十畳はあろうかという敷物の上で、ラウルがテキパキとご馳走を並べていく。

 ペリュトンの唐揚げ、パイア肉の串焼、砂漠蟹のボイル、蒸しジャイアントホタテとレタスのサラダ等々、どれもラウルの自慢の逸品である。

 その食欲をそそる香ばしい匂いに、ウルス達も思わずゴクリと喉を鳴らす。


「さ、マキシ君のお父さんやお母さん、お兄さん、お姉さん、ミサキちゃんもいっしょに食べましょう!」

「……我等もご相伴に与っても良いのか?」

「もちろんです!……あ、その前にレオ兄ちゃん、シアちゃんにあげるアレを出してくれる?」

「ああ、アレな、了解」


 ライトの頼みに、レオニスが空間魔法陣からいくつもの木製バケツを取り出す。それは、ライトがいつもユグドラツィに手土産として出している『ブレンド水』である。

 今日の午前中に、ラグナロッツァの屋敷でライトとレオニスがともに用意しておいた、ユグドラシアへのとっておきの手土産だ。


「これはぼくがいつもツィちゃんに差し入れしている、ブレンド水です!」

「「「『……ブ、ブレンド、水???』」」」

「はい!いろんな場所で採取した美味しい水に、魔力回復剤を混ぜたものです。ツィちゃんはいつも美味しいと言って、喜んで飲んでくれてるんですよー」

「うちのライトはいっつも面白ぇこと考えるが、これは特に神樹のツィちゃんに喜んでもらいたくてやってることなんだ。ま、そんな胡散臭いものは入ってないし、ツィちゃんも好んで飲むものだから安心してくれ」

『そ、そうなのですか……ツィはいつも貴方方に気遣ってもらっているのですね』


 最初は怪訝そうに見ていた八咫烏の面々やユグドラシアも、それがユグドラシアを喜ばせるためのものと知って安堵している。

 ユグドラシアの弟妹であるユグドラツィが、普段から喜んで飲むものならばユグドラシアにとっても安心安全なものに間違いはない。


「では、本日のメニューを紹介しますね!左側の三つは巌流滝の清水がベースで、向こうから順にハイエーテル、アークエーテル、セラフィックエーテルが一本づつ入っています。ラウル、その三つをいつものようにシアちゃんに順番にかけてあげてー」

「了解」

「次、右側の三つ。これは氷の洞窟近辺の雪解け水がベースです。こちらにも先程の魔力回復剤が一本づつ入っています。ツィちゃんは、この雪解け水がとっても大好きなんですよ!レオ兄ちゃん、ラウルがブレンド水をかけ終えた後にこの三つも距離を置いてかけてあげてねー」

「了解ー」


 各バケツの水を覗き込みながら、ライトの解説を真剣に聞き入る八咫烏一族一家。

「ほほう……産地によって水の味も違うものなのか」「そこに魔力回復剤なるものを入れれば、神樹にとってさらに美味なる水になるのね……」等々、感心するように呟いている。

 ライトの指示で、ユグドラシアに水をかけていくラウルとレオニス。阿吽の呼吸で根元と幹の境目あたりにかけていく様は、もはや完璧に手慣れたものである。


「シア様、ライト殿の言う『ブレンド水』なるもののお味は如何ですか?」

『何と……今までに味わったことのない、とても美味なる味です』


 ウルスの問いかけに、ユグドラシアが感嘆の声を洩らす。

 ユグドラシアも周辺の他の木々同様、時折降る雨とカタポレンの森の魔力だけで生きている。普通に考えて、自然に降る雨水に味もへったくれもない。

 だが、水の産地が変わればその味も違ってくるものだ。ライトは神樹のために、いつも厳選された水だけを差し入れする。

 そんな名水に魔力回復剤を入れるのだ。魔力を活力源とする神樹族にとって、美味しくならない訳がないのである。


『特に最後の方の三種の水……ツィが気に入っているというのもよく分かります。空から降るだけの雨水とは明らかに違い、魔力が豊富で実に味わい深い』

「おお……そんなに違うものなのですか」

『最初の方の巌流滝の清水、これももちろん美味しい水でした。水と一口に言っても、こんなにも違うものなのですね。神樹となってから、これまで長い時を生きてきましたが……こんな経験は初めてのことです』


 ユグドラシアの滑らかな語り口に、ウルスも目を見開きながらともに感嘆する。

 千五百年を生きてきた大神樹ユグドラシアが、生まれて初めて経験することだと言う。その衝撃、感動は如何ばかりのものか。

 ユグドラシアの静かな感動と喜びを感じ取ったウルスは、意気込みながらとある提案をする。


「氷の洞窟はここから遠く、我等にはその雪を運んでくるのはさすがに無理ですが……巌流滝ならばここから近いですし、毎日水を汲んでシア様に差し上げましょう」

『……良いのですか? 近いと言っても、この里から巌流滝まではそれなりに距離があると思いますが……』

「シア様、問題ございません。弛みきった衛兵達の根性と体力を鍛え直すためにも、もってこいの鍛錬となりましょう」

「そうですわ!水をたっぷり汲んだバケツはそれなりに重いですし、それを持っての里との往復は基礎体力を向上させるのに最適です!」

「もちろん衛兵達だけを扱き使う訳ではありません。我等も等しく日々の鍛錬として日課に取り入れましょう」


 ウルスの案に若干戸惑うユグドラシアに、長兄フギンと長姉ムニンが問題ないと言い切る。それどころか、アラエルまでもが巌流滝との往復を日課に取り入れると言い出したではないか。

 八咫烏は魔力の高さで有名な種族だが、その思考回路はもしかしたら微妙に脳筋族寄りかもしれない。


「それは良い。ついてはライト殿、このバケツなる容れ物を我等にいくつかお譲りいただけるだろうか?」

「もちろんいいですよ!十個もあればいいですか?」

「ああ、それだけいただければ十分だ」

「じゃああと四つ、空のバケツを出しますねー」


 細君の案に同意し、バケツを所望したウルスにライトも快く応じる。

 八咫烏の里にバケツなどという水汲み用の道具はないので、ウルスが所望するのも当然のことである。

 今ユグドラシアにあげたブレンド水、そのバケツが六個でているのであと四個出せば十個になる。

 ライトは自分のアイテムリュックから、まだ何も入っていない空きバケツを四個取り出した。


「これで全部で十個ですね。皆さんで使ってください」

「ライト殿、感謝する。この礼に、我等からも何か差し上げられるものがあればいいのだが……何か欲しいものはないか?」

「ンーーー……あ、そしたらモクヨーク池のお水を少しもらえますか?」

「モクヨーク池の水、か? もちろん。そんなものでよければ、いくらでも持っていってくだされ」

「ありがとうございます!そしたらお昼ご飯の後に採取させてもらいますね!」


 バケツ十個を譲渡してもらった礼に、ライトはモクヨーク池の水を希望した。

 モクヨーク池とは、八咫烏の里にある沐浴のための溜池だ。これもまた水の一種であり、八咫烏の里に来なければ手に入れられない品である。


 名のついた場所の水ならば、いつかクエストイベントのお題に出てくるかもしれない。もしクエストイベントに出てこなくても、それはそれでユグドラツィへの土産になる。

 敬愛する兄姉の住む土地の水ならば、きっとユグドラツィも喜んでくれるだろう。

 そうした諸々の目論見により、もはやライトは立派な水コレクターと化していた。


「よし、じゃあ俺達も昼飯食うか」

「うん!さぁ、ウルスさん達も皆この敷物の中に来てください、皆でいっしょにお昼ご飯を食べましょう!」

「父様、母様、兄様も姉様もミサキも、皆でラウルのご馳走をいただきましょう!」

「はーい♪」


 ライトやマキシの言葉を受けたウルスは、自ら前に進み出る。


「ライト殿達のご厚意、是非ともいただこう」

「ありがとうございます。お邪魔させていただきますね。さ、貴方達も入りなさい。皆でいっしょにいただきましょう」

「「「「「はい!」」」」」


 アラエルもウルスに続き敷物の中に入り、子供達にも中に入るよう声をかける。母親に声をかけられた五羽の子供達は、次々と敷物の中に入っていく。

 ちなみにミサキだけは、ライトとマキシが声をかけた時点でウッキウキで入っていった。マキシの横にちょこなんと座るミサキ。間違いなく一番乗りである。


「では皆さん、マキシ君をお手本にして手、いや、羽を合わせてください」

「こ、こうか?」

「そうですそうです、皆さんお上手ですね!」


 食事の挨拶のために、ライトが八咫烏達に手を合わせるように促す。

 マキシは言われずとも既に両翼を前にして合掌のように翼の先を合わせており、マキシの所作を手本にして皆が翼の先端を行儀良く揃える。

 神格の高い霊鳥である八咫烏が、九羽揃って翼を合わせる様子はなかなかに面白おかしい壮観な図である。


「じゃ、レオ兄ちゃん、挨拶よろしくね。皆さんもレオ兄ちゃんの挨拶の後に、同じ言葉を唱和してくださいね!」

「おう。……いッただッきまーす!」

「「『いッただッきまーす!』」」


 ウルス達に混じり、ユグドラシアまでもが昼ご飯の挨拶を唱和する。

 ライト達のように飲み食いできないユグドラシアには、先にブレンド水をご馳走したのだが。気分だけでも皆とともに食事をしたいらしい。

 ユグドラシアの思わぬ参戦に、ライトとマキシは顔を見合わせた後に笑い合う。相変わらずおちゃめな大神樹である。


 大神樹のお膝元で八咫烏族長一族を交えたランチタイムは、こうして和やかに始まった。

 大神樹ユグドラシアに、いつものお約束の手土産を渡す回です。

 本当はねー、神樹も人化できればいいんですけどねー。そしたら食事やスイーツなどの美味しいものを、ライト達とともに食べることができるようになるんですが。

 でも、それしたらもう何でもアリになっちゃいそうで……って、拙作は異世界ハイファンタジーなので、既にそれなりに何でもアリな世界な気がしないでもないですが。

 それか、神樹の枝で球体関節人形を作って分体を入れれば良いかしら? でもなー、人形はやっぱり人形だし。

 顔の表情とか全く変わらないままだと、さすがに怖いですよねぇ…( ̄ω ̄)… うーん、やっぱ却下か。

 とりあえずは分体入りアクセで、ライト達とともに過ごしてもらうのが一番良さそうですね。

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