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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新たな目標

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第526話 次の行き先

 そうしてライトがシーナの身体の半分くらいブラッシングした頃。

 ラウルがアルを連れてライト達のもとにやってきた。


「おーい、こっちはブラッシング終わったぞー」

「ワウワウ♪」


 ツヤッツヤのふわふわな毛並みになったアル、とてもご機嫌で足取りも軽い。

 アルだけでなく、ラウルまでが心なしか肌艶が良くなっている、気がする。アルのもふもふ成分を思いっきり堪能したことで、ラウル自身も存分に癒やされまくったおかげだろうか。


「あー、そしたらラウルもシーナさんのブラッシングを手伝ってくれる? シーナさんもいいですか?」

『ええ、いいですよ。小さなアルよりも身体の大きな私の方が、梳る手間も時間もかかるでしょうしね』

「ありがとうございます!ラウルもよろしくね!」

「おう、任せとけ」


 シーナのブラッシングにラウルが加わった。

 背中などの高い位置は空を飛べるラウルに任せ、ライトは手の届く範囲を梳かしていく。

 身体が大きなシーナだが、二人でブラッシングすれば作業もどんどん進む。

 シーナは終始ご満悦な表情で、うっとりとしている。

 そうして十分程度が過ぎ、シーナのブラッシングが完了した。


「シーナさん、ブラッシング終わりました!どうでしょう、まだ物足りないところとかありますか?」

『いいえ、どこにも不満はありません。十分に梳かしてもらいましたよ』

「そうですか、それは良かった!」

『……ふぅ……ブラッシング?とやらを受けるのも久しぶりですが、とても良いものですねぇ』

「ぼくも貴重な毛をたくさんいただけて、とても嬉しいです!」


 複数のブラシやコームを使い分けた丁寧なブラッシングに、シーナも大満足のようだ。

 そしてライトの方も、抜け毛がたくさん採れて大満足である。

 しかも今は冬から夏に向かって毛が生え変わる時期。いつもよりたくさんの抜け毛が、それはもうごっそりと大量に採れたのだ。

 貴重な銀碧狼の毛を採取するのに、実にベストなタイミングと言えよう。


『さて、貴方方はこれからどうするのですか? また雪拾いに戻るのですか?』

「雪拾いは後でしますので、アルともう少し遊びたいです!……って、ラウル、いいかな?」

「もちろんいいさ。日が暮れない程度に好きなだけ遊んできな」

「ありがとう!」


 シーナの問いに、ライトはアルと遊びたい!と即答する。

 だがそのすぐ後にラウルの存在を思い出してか、ラウルの方に振り返り遊んでもいいかを尋ねるライト。

 そんなささやかな願いに、ラウルが否やを唱えることなどない。

 快く送り出すラウルに、ライトはパァッ!と明るい顔になり、アルのいる方に駆け出していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ひたすらアルと追いかけっこをするライト。

 雪原の中を銀碧狼の子相手に遊ぶといっても、せいぜい追いかけっこをしたりアルの背中に乗って走るくらいしかない。

 だが、その追いかけっこが何やらおかしい。ライトが地面を一蹴りすると、それなりに高い木の上の方までジャンプしてしまうのだ。

 その跳躍力で木と木の間を飛び移るライト。まるでモモンガのような機動力である。


 木の上を飛び移るとか、追いかけっこになってなくね?と思わなくもない光景だが、アルはその木の下を嬉しそうに追いかけていく。アルはライトと遊べれば何でもいいようだ。

 そんな仲睦まじく遊ぶ子供達の様子を、保護者組は椅子に座りながらのんびりと眺めていた。


『アルもまぁ、あんなにはしゃいで……ライトと会えて遊べるのがよほど楽しいと見えます』

「ライトも楽しそうで何よりだ。ここ最近はご主人様とあちこち出かけてて、休みの度に本当に忙しそうにしてたからな。こうして友達と遊ぶ時間も必要だろう」


 シーナがぽつりと呟いた言葉に、ラウルも同意する。

 少し前までは春休みで、毎日のように出かけて多忙だったライト。

 春休みが終われば、今度はラグーン学園での学園生として勉学に励む日々が続く。

 それらは全てライトのためではあるが、たまには頭を空っぽにして遊んだり、休暇を思いっきり楽しむ余暇も必要である。少なくともラウルはそう思う。


 今日のツェリザーク行きは、ラウルからの提案で始まったことだ。自分の誘いで、思いがけずライトにとっても存分に羽を伸ばすことができて良い機会になったようだ。

 その様子に、ラウルとしても本当に良かったと思っていた。


『しかし……全ての属性の女王達のもとに赴くなど、人の子の身にしては手に余る使命でしょうに……』

「まぁな、普通の子供じゃとても務まらんだろうな。……いや、普通の子供どころか大人ですら手に余るだろう」

『聞けば既にいくつかの女王に謁見済みのようですが……』

「あー、確か炎の女王から始まって、水の女王、火の女王、闇の女王、だったか? そこら辺には既に会ったようだな」

『何と……既にそんなに多くの女王に謁見したのですか……』


 ラウルの話に、シーナは驚愕する。

 属性の女王とは、各属性の精霊の頂点に立つ者。通常なら女王に会うだけでもかなり困難なことなのだ。

 それを既に四体もクリアしていると聞けば、驚愕するなという方が無理な話である。


『こうしてアルと遊んでいる姿は、普通の子供にしか見えませんのに…………って、ぃゃ、よくよく考えたら木から木へ飛び移るのは、普通の子供にはできない気がしますが』

「そうか? 子供ならあれくらい元気があってもいいと思うぞ?」

『……そういうものですかね?』

「ああ、そういうもんだ」


 目の前で木から木へ、ピョイ、ピョイピョイー、と元気良く飛び移るライトの姿を眺めながら、シーナは訝しげな顔になる。

 シーナもそれなりに長く生きてきたが、跳躍力だけで木の間を飛び移る者などあまり見たことがない。

 それが可能なのは、猿系もしくは小型の獣系の魔物くらいのもので、少なくとも人族にできる芸当には思えない。

 できても身体能力が高い獣人くらいか。


 だがラウルに言わせれば、あれは『元気な子供のあるべき姿』の範疇であるらしい。


「つーか、ライトの育ての親が誰なのか、あんたも知ってるんだろう?」

『ぇ、ぇぇ、まぁ……』

「あのご主人様に育てられてるんだ、あれくらい元気にもなるさ」

『……そうですね……』


 シーナはレオニスと長い付き合いがある訳ではない。会った回数だけで言えば、両手の指の数にも満たない回数だ。

 だがその僅かな回数の間に、シーナは何度驚愕させられたことか。その力はシーナですら計り知れないことを、シーナは既に実感している。

 そんなレオニスに育てられた子供が、普通の範疇に収まる訳がないだろう? 己の目の前にいる眉目秀麗な妖精にそう言われれば、心底納得してしまう自分がいた。


『本当に、あのレオニスという人族には驚かされてばかりです』

「まぁな。妖精の俺を拾って人里に住まわせてくれるくらいには、かなり破天荒なご主人様だ。だが、ライトはそのご主人様をも上回る破天荒さだぞ?」

『そうなのですか?』


 シーナにしてみれば、ライトの育ての親レオニスが一番破天荒だと思っていたが、ラウルに言わせればそうではないらしい。

 きょとんとしているシーナに、ラウルがその持論を語って聞かせる。


「ああ、考えてもみな。あんた達銀碧狼の親子に始まり、目覚めの湖の主、幻獣カーバンクル、水の精霊ウィカ、小人族、鬼人族、属性の女王、これら全部がライトの友達だ」

『……』

「それだけじゃないぞ、神樹ユグドラツィに大神樹ユグドラシア、八咫烏の族長一族。皆ライトの友達だ。そして妖精族の俺だって、ライトの親友で、仲間で、家族だ」

『…………』

「ここに、稀代の天才大魔導師フェネセンやら育ての親レオニスやらが親友や家族として加わるんだ。これを破天荒と言わずして何と言う?」

『………………』


 ラウルの言葉に、シーナはただただ無言のまま頷かざるを得ない。

 今ラウルが挙げたライトの交友関係は、ラウルが知る範囲内のものだ。この他にも、水神アープのアクアや暗黒神殿のノワール・メデューサのクロエ、転職神殿の巫女ミーアや新しい使い魔ミーナ、鮮緑と紅緋の渾沌魔女ヴァレリアなど秘密の交流もたくさんある。

 だがそれらの秘密の部分がなくても、表向きの交友関係だけでも十分過ぎる実績であった。


「ライトはまだまだ育ち盛りの子供だ。これからいろんな友達と出会っていくだろうな。それこそ種族を問わずたくさん増えていくに違いない。俺はそれが今から楽しみでならん」

『そうですね……我が子アルも目覚めの湖の主と縁を得たように、ライトを介してたくさんの知己が増えていくことでしょう。私もとても楽しみです』

「子供が成長していく姿を近くで見られるのは、本当に楽しいもんだ。ま、育児ってのは楽しいことばかりじゃない、とも言うがな」

『全くです』


 今度は雪の上でゴロゴロと転げ回り、キャッキャと騒いでいるライトとアル。せっかく綺麗にブラッシングしたばかりなのに、もうびしょ濡れのドロドロになってしまったではないか。

 自分達がドロドロに汚れてしまったことに気づいたライト、慌ててラウルのもとに駆け寄ってきた。


「ラウルー!ぼくとアルに洗浄魔法かけてー!」

「おぉおぉ、こりゃまた盛大に汚したな!せっかくさっきブラッシングしたばかりだってのに」

「あッ……ごめんね、ラウル」


 遠目でも汚れて見えたそれは、間近で見るとさらに酷い泥汚れだというのが分かる。

 ラウルはそれを咎めた訳ではないのだが、思わず出てしまった言葉にライトがすぐに恐縮し謝る。

 せっかくラウルがアルを綺麗にブラッシングしてくれたのに、と少ししょんぼりとしてしまったライト。

 そんなライトを宥めるかのように、ラウルが優しく語りかける。


「ああ、別に怒ってる訳じゃないから気にすんな」

「……ホント?」

「おう、ホントだぞ。俺が今までに一度でもライトに嘘をついたことがあったか?」

「ううん、ない」

「だろう?」


 ラウルの言葉に、ライトはこくりと頷く。

 妖精であるラウルは、人族のように嘘はつかない。人里に長く住んだ今でも、その本質は全く変わらない。

 ライトもそのことをよく知っているからこそ、ラウルの言葉は素直に信じることができた。


「子供は遊んでなんぼ、服だって汚して当たり前の生き物だ。ただ、汚れはともかくそのマントは大事に扱えよ? アイギスで作ってもらった品なんだろ?」

「うん。ぼくが大きくなってからも使えるようにって、カイさん達が特別に作ってくれたんだ」

「だったらライトが冒険者登録してからも使えるように、大事に着ていかんとな」

「うん!!」


 ラウルの優しい忠告に、ライトは元気良く頷いた。

 魔力を通すことで、寒暖どちらも使えるスグレモノのマント。生地だって表裏どちらも最高級のものを使用しているし、丈も将来伸びる背丈に合わせわて長くできるように裾上げの幅を大きくとってある。

 例えばライトがパレンのように、よほどのゴリマッチョにでもならなければ大人になってからも十分使えるだろう。


 マントを脱いで、ラウルに渡すライト。ライトから渡されたマントに、ラウルが洗浄魔法をかけていく。

 洗浄魔法をかけている横で、アルがシーナに『アル……貴方もまた派手に泥んこになったものですね……』と呆れたようなお小言をもらっている。


 もちろんその程度のお小言でへこたれるアルではない。

 シーナの呟きに、「ワフォン!」と満面の笑み&扇風機の如き尻尾ブンブンで応える。

 我が子のあまりにも強靭な精神に、シーナはがっくりと項垂れる。おそらくは、わりとよくある光景なのだろう。


 そんなアル達親子に、ラウルがマントに洗浄魔法をかけながら声をかけた。


「アルもそれじゃ帰れんだろ。こりゃ洗浄魔法かけるより風呂に入った方が早いな。……そうだ、今から黄泉路の池でひとっ風呂浴びていくか?」

『黄泉路の池、ですか? あそこに入るのは禁k』

「ワォン!」

『え? 貴方、黄泉路の池に行きたいの? あれはお風呂じゃないわよ?』

「ワフワフ♪」


 シーナが躊躇しているところを、アルが被せるように歓喜の声を上げる。

 アルはライト達と暮らしていた一ヶ月の間、毎日のように風呂に入れてもらっていた。故に風呂は怖いものではなく気持ち良いものだと知っているし、ラウルの『風呂』という言葉に敏感に反応したのだ。


「お風呂かー、いいね!黄泉路の池って要は天然の温泉だもんね!まだここら辺は普通に寒いけど、ラウルの風魔法ですぐに乾かしてもらえば風邪も引かないよ!」

『ぇ、ぁ、その……』

「大きなタオルも何本かあるしな。皆安心して入っていいぞ」

「やったー♪」

「ワォンワォン♪」

「じゃ、黄泉路の池に移動するぞー」

「はーい!」

『ぅぅぅ……』


 あれよあれよという間に、黄泉路の池に行くことになった。

 天然の温泉に浸かれることに、ワクテカ顔のライトとアル。アルに至っては、再び尻尾が全力全開でブンブンと振れている。

 こんなに喜んでいる子供達の顔を見ては、シーナも否やとは言えない。

 こうして四者は黄泉路の池に向かっていった。

 ライトとアルの、再会を全力で喜びながら遊ぶ回です。

 子供の頃って、何でか泥遊びとか砂弄りとか楽しかったですよねぇ。

 今にして思えば、何がそんなに楽しかったのか不思議でなりませんけども。

 そうした感性の移り変わりこそが、歳を取っていく証拠なんでしょうね。


 ちなみにライトが木から木へ飛び移るところを見たシーナは、その人族らしからぬ機動力?に我が目を疑いましたが。そもそもシーナは人族と出会うこともあまりない上に、実はそこまで珍しいことではないかもしれません。

 ジョブの中には【スーパー忍者】や【軽業曲芸師】なんてのがあるかもしれませんし、そうでなくてもレオニスやクレアくらいの技量があれば木の間を飛び移ることも余裕で可能です。

 ただし、それを子供の身でできるかどうかとなると話はまた別ですが。


 そして!次回!ついに!待ちに待った!温泉回です!

 はぁぁぁぁ、ようやく拙作にも温泉回が巡ってきました!

 作者は今から楽しみです!

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