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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての春休み

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第504話 ココの心遣い

 ノワール・メデューサの名付けという、世にも類い稀なる重大な任務を無事達成したライトとレオニス。

 当初の目的でもある闇の女王の無事も確認できたし、ライト達もそろそろ帰ろうか、ということになった。


 闇の女王が庭園に咲く色とりどりの花々を摘み、ノワール・メデューサ改めクロエのココが木に成っている身を腕いっぱい抱えるくらいにもぎ取り、それぞれライトとレオニスに渡した。


「こんな貴重なものを、こんなにたくさんぼく達にくれるんですか?」

『何、先程ご馳走になった礼だ。あれ程に美味なるものではないが、ここに咲く花々や実はどれもこの地にしかない珍しい品。今日の土産に持ち帰るが良い』

「良い土産をもらえて良かったな、ライト」

「うん!」

『♪♪♪』


 闇の女王達から受け取った土産の品々を、ライトとレオニスはそれぞれ半分づつに分けながら、空間魔法陣やアイテムリュックに大事そうに仕舞い込む。

 その間に、闇の女王はその手のひらの上に闇の勲章を作り上げた。


『其の方等は闇の女王たる吾が認めし者。その証を受け取るがよい』

「ありがとうございます!」

「ありがたく頂戴する」


 ライトとレオニス、それぞれに一つづつ手渡された闇の勲章。

 円形の中心に向かって渦を巻くような模様になっている。

 これもまたとても大事な品なので、受け取ってすぐにそれぞれ仕舞い込むライトとレオニス。


『もしこの地に再び万が一死霊使いが現れたら、吾から其の方等に闇の精霊を遣わして知らせよう。其の方等の住処は、この暗黒の洞窟から近い場所にあるのだよな?』

「ああ、ここから近い距離に俺達の住む家がある。もし俺達に何か連絡したいことができたら、この近所で人間の気配がするところを探してくれりゃいい。俺達以外にカタポレンの森に住んでいる人間はいねぇからな」

『そうよな、そもそもこの魔の森カタポレンに住まうことのできる人間自体おらんわな……』


 闇の女王がレオニス達に連絡を取りたい時のために、事前に打ち合わせをしておくレオニス。

 もし暗黒の洞窟に死霊使いが現れたら、廃都の魔城の四帝の手先を殲滅して奴等の戦力を削るチャンスだ。その絶好の機会を逃さないためにも、こうした綿密な打ち合わせや連携は欠かせない。


『それと、闇の勲章を持つ者は洞窟内の円陣同士でどこにでも移動できるようにしよう』

「えーと、それは例えば一層の円陣から三層まで飛べたりするようになる、ということですか?」

『三層だけではない、この暗黒神殿のある部屋にも直接来れるようになる。一層の円陣に入る時、行きたい層を念じればよい』

「本当ですか!? ありがとうございます!やったね、レオ兄ちゃん!」

「ああ、次にここに来る時にだいぶ楽になるな」


 闇の女王の取り計らいに、ライトもレオニスも歓喜する。

 普通にのんびり歩けば、洞窟入口から三層最奥まで約三時間かかる。それが一層突き当たりまでの約一時間歩くだけで、どの層にも任意に行けるようになるのだ。

 もちろんそれは暗黒神殿への直行のみならず、素材採取や魔物狩りのために二層、三層を選んで行くこともできる。

 とてもフレキシブルで、実にありがたい追加機能である。


 ちなみに闇の女王の話によると、この暗黒神殿のある空間は位置的には三層と同じくらいの深度にあるらしい。

 ただし三層最奥とは直接繋がってはおらず、かなり離れた位置に独立しているのだとか。そのため往来専用の円陣が敷かれており、この暗黒神殿に繋がるのは三層最奥の円陣のみだという。

 もちろんその三層最奥の円陣は、普段は誰にも見えないように隠している。

 その円陣の使用権限を持つのは、闇の女王唯一人。

 本来の道順である三層最奥の円陣を経由せずに、一層の円陣から暗黒神殿のある最奥層に直接行き来できる。それは闇の勲章同様『闇の女王が認めし者』である証なのだ。


 するとここで、ココが己の身体をペタペタと触り出した。

 それは何かを探しているようだ。

 ココの異変?を一番最初に気づいたライトが、ココに向かって話しかける。


「ン? ココちゃん、どうしたの?」

『……(キョロキョロ)……』

「……もしかして、ココちゃんもぼく達に何かあげられるものがないか、探してるの?」

『……(コクコク)……』


 闇の女王が二人に闇の勲章を授けるのを見て、ココも二人に何かあげたい!闇の女王がしていたように、ココにも何か渡せるものはないかしら?と思い、探していたらしい。

 だが、ココは先程生まれたばかりの身。まだ力の使い方など全く分からず、どうしていいかもさっぱり分からないようだ。


 思うようなものが見つけられず、口をへの字にしながらしょんぼりと項垂れるココ。

 そうかと思ったら、ニパッ!とした顔でパッ☆と頭を上げたかと思うと、やにわに己の蛇髪をガシッ!と数束鷲掴みにして引っ張りだしたではないか。

 どうやらココは、己の生きた蛇髪をライト達に分け与えたいらしい。

 ココに両手でむんず!と掴まれた蛇髪、涙目になりながらシャー!シャー!と小さく鳴き喚き、ココの手の中でうねうねと暴れている。蛇髪達の生死を賭けた必死の形相が、何とも哀れである。

 蛇髪達の懸命に逃げようとする姿を見たライトが、慌ててココを止めにかかる。


「ちょ、ちょちょ、ココちゃん!髪の毛引っこ抜かないで!?」

『……(フンス!)……』

「ココちゃんはまだ生まれたばかりなんだから、無理しなくていいんだよ!? というか、今日はココちゃんの誕生日なんだから、ココちゃんはプレゼントをもらう側!何もあげなくてもいいの!」

『……???……』


 ライトの懸命の説得もあまり効かず、その手を緩めようとしないココ。だがライトは諦めずに、今日はココが生まれた日!ココが主役の誕生日!と懸命に訴えかける。

 そんなライトの必死の訴えに、ようやくココの手が止まった。

 首を傾げつつ、ライトをじっと見つめるココ。

 するとそこに、闇の女王やレオニスも話に加わってきた。


『ココ様、ライトの言う通りですよ。今日は尊き貴女様がこの暗黒神殿に降臨なされた、この上なく素晴らしくも目出度き日。今日だけは吾等からの祝福を、その御身を以て一身に受けてくださるだけで良いのです』

「そうだぞ、ココ。今日はお前の誕生日なんだからな。それに、今さっき生まれたばかりじゃ力の使い方も全く分からんだろう?」

『…………』


 闇の女王とレオニスの優しい語り口に、ココは首を傾げたまま静かにその言葉に聞き入る。


『レオニスもこう申しておりますし、彼等への贈り物はまた次回来た時に改めてお渡しすればよろしいかと』

「俺達のために髪を引っこ抜くなんて、そんな無茶はしないでくれ。生まれたてのココの身体に、もし万が一にも何か異変が起きたら……俺もライトも闇の女王も、ここにいる皆が悲しむぞ?」

『…………』


 レオニスや闇の女王の言葉を聞いたココ、ようやく己の蛇髪から手を離した。

 闇の女王が通訳をしていたことからも分かるように、ココは皆の言葉をある程度理解できる知能が既にあるようだ。

 命拾いした蛇髪達の、ホッ……としたため息とともに安堵に満ちた表情が何とも面白おかしい。


 それでもやはりライト達に何もしてあげられないのが悲しいのか、しょんぼりと俯くココ。そんなココを慰めるように、頭をそっと優しく撫でるレオニス。

 一番最初の出会いの時のように、ココはレオニスの身体にギュッ、と抱きついた。その姿はまるで父親に甘える子供そのものだ。


 そんな和やかな二人の様子を見て、ライトがぽつりと呟く。


「ココちゃんとも、いつかお話できるようになるといいな……」

『案ずることはない。ココ様もそのうち、時を置かずして其の方等とも意思疎通できるようになる』

「本当ですか!? そしたらぼく、ココちゃんに『お兄ちゃん』って呼んでもらえるかな!?」

『ああ、ココ様は尊き御方。今日はまだ生まれたばかりで会話もままならぬが、その秘めたる御力は日々増していくであろう。そして他者との意思疎通程度など、ココ様ならばすぐに会得なさる』


 ライトが零した呟きに、闇の女王が明るい展望を指し示す。

 ノワール・メデューサは神殿生まれのレイドボスであり、しかもアズール・メデューサ亜種。通常種のアズール・メデューサよりも格段強いとされる稀少種である。

 その能力値もまたはるかに高く、間違いなく知能も高いだろう。


「次にココちゃんに会える日が楽しみです!」

『ああ、吾もココ様も楽しみにしておる』


 ライトと闇の女王がそんな会話をしていると、今度はココがレオニスから離れてライトに覆い被さるように抱きついてきた。

 中腰で頭の位置を合わせ、ニコニコ笑顔でライトの顔に思いっきり頬ずりするココ。パパであるレオニスに抱きつくのとはまた違う、お兄ちゃんに甘える幼い妹のようだ。図体だけ見たら、ココの方がよほどデカいのだが。

 今世では基本弟の立場であるライト。お兄ちゃん!と慕われることに滅法弱い。種族こそ違えど、自分にも妹という存在ができたことにライトは内心歓喜していた。


「ココちゃん、また美味しいものをたくさん持って遊びに来るからね。またいっしょに遊ぼうね!」

『♪♪♪』

「ココ、ママである闇の女王の言うことをよく聞いて、元気に大きくなるんだぞ」

『♪♪♪』


 四人は別れを惜しみつつ、再会を誓いながらライト達は暗黒神殿のある最奥層を後にした。

 暗黒の洞窟の初探検編、これにてひとまず終了です。

 第497話から始まり、記念すべき500話や諸々のキリの良い各種数値到達を経て今日の第504話で完了、その回数実に8話分。思った以上に結構な回数がかかってしまいました。

 これはまぁひとえに神殿の卵発見&その場で孵化という、イレギュラー案件があったせいなのですが。クロエ=ココという可愛い妹分や娘ができて、ライトもレオニスもさぞ大喜びでしょう!(º∀º) ←一番喜んでいるのは実は作者


 ココもいつかライト達といっしょに、世界中を旅する日が来るといいなぁ。

 果たしてライトはお兄ちゃんらしいお兄ちゃんになれるでしょうか?一応前世では妹が一人いたので、何とかなりそうな気はする。

 そしてレオニスの方も、人間の嫁さん迎える前に何と異種族の娘が先にできてしまいました。うひょー、相変わらず波瀾万丈な人生だ!

 でもまぁね、そこは本番の子育て前のプチ予行演習と思えばね!……って、本物の育児のように、おしめ替えたりお風呂入れたりとかは全くありませんけども。

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