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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
初めての春休み

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第499話 暗黒の洞窟の生態系

 一層の転移用円陣から二層に移動したライトとレオニス。

 そこから先も魔物除けの呪符を使い、安心安全の道中をゆっくりと歩いていく。

 最初のうちは緊張していたライトも、一層から小一時間歩いてきたことでだんだんと気分が解れてきたのか、レオニスの横につき少しづつ小声で話しかけるようになった。


「ねぇ、レオ兄ちゃん。この様子だと、闇の女王様は多分無事だよね?」

「そうだな。そもそもここはカタポレンの家から近い場所にあるし。俺達の家の目と鼻の先で、死霊兵団だの禍精霊だのおかしいのが暴れてたら俺に分からんはずもないしな」

「そうだよねー」


 そもそもライト達が属性の女王達のもとを訪れることになったのは、彼女達が廃都の魔城の四帝の毒牙にかけられていないかどうかの安否を確認するためだ。

 もとは炎の女王からの頼みであったが、レオニス達としても率先して調査せねばならない。

 もし彼女達が四帝の毒牙にかかっているなら、奪われた魔力は全て四帝の魔力として使われるからだ。

 そうした四帝の奸計を見つけ出し潰すことは、廃都の魔城の殲滅のためにも欠かせないことだった。


「でもまぁな、無事なら無事できちんとその姿を確認した上で、依頼主である炎の女王にも報告したいしな」

「そうだよね。確認もしないで無事だなんて、そんないい加減な報告できないもんね」

「そういうこと。それに……かつて俺も目指したけど、辿り着くことすらできなかった暗黒神殿。その実物を、見れるものなら是非ともこの目で拝みたいってのもある」


 レオニスの答えは、その義理固さだけでなく冒険者としての好奇心もあることを伺わせる。

 過去にこの暗黒の洞窟に挑むも、結局辿り着くことができなかった暗黒神殿。その時に達せられなかった雪辱を果たしたい、とレオニスが思うのも当然のことだろう。


 小声でもそれなりに音が響く中、ライトとレオニスは二層を歩いていく。

 時折分岐点が出てきて道が二つに分かれるところもあるが、そうしたところはレオニスが昔描いたお手製地図を確認しつつ進んでいく。

 こうして二人は順調に二層の突き当たりに到着し、一層にもあった転移用円陣から三層に移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 三層でも魔物除けの呪符を使用し、何事もなく歩いていくライトとレオニス。

 暗黒の洞窟に入ってから二時間が経過し、五枚目の魔物除けの呪符を使用したところで少し休憩を取ることにした。

 入口の時と同様に、二人は地べたに座りながらおやつ代わりのアップルパイとぬるぬるドリンクで一息つく。

 ここでライトがレオニスに、気になっていたことを聞いてみた。


「レオ兄ちゃん、この暗黒の洞窟にはどんな魔物がいるの?」

「一層は暗黒茸、暗黒蘭、暗黒蜂、ブラックスライム、二層は暗黒蛇、シャドージャッカル、ハーミットホーク、ブラックローズ、三層は闇の精霊、暗黒蝙蝠、カオスゴーレム、暗黒の魔獣、だったかな」

「階層毎に違う魔物が住んでるんだね。階を跨いで混ざることはないの?」

「基本的に魔物は階層移動しないからな。円陣の転移自体が魔物達には効かんのか、それとも魔物達の方から円陣には絶対に近寄らないのか、そこら辺の詳しいことは俺には分からんが」


 さすが現役冒険者レオニス、魔物のデータはしっかり頭の中に叩き込まれていて、聞けばすぐに答えが出てくる優秀さだ。

 そしてレオニスの答えを聞いたライトは、内心で驚愕していた。

 一層の魔物は聞き覚えどころか普通に見覚えもあったが、二層と三層の魔物の名前はほとんど聞き覚えがなかったからだ。



『やっぱ俺の知らない魔物のラインナップだ……とはいえ、ジャッカルとかホークとか大抵想像はつくが』

『つーか、暗黒の魔獣はここで出てくるんか……あれはBCOでは騎士団で討伐するレイドボスの一種だったが……レイドボスから冒険フィールドのレアモンスターに降格したのか?』

『まさかあれと同じやつが出てくるのか? あんなのがフィールドモンスターとして同時に何体も出てきたら敵わんぞ……』



 ライトはBCOの記憶を懸命に脳内で手繰り寄せる。

 ジャッカルは狼系、ホークは鷹系、ローズは植物系の魔物である。他の同系列の魔物とは基本的に見た目が同じで色違い、いわゆるデータ流用というやつである。

 ただし強さは出てくる冒険フィールドによって変化する。当然後発のものの方がステータス値は高く強い。

 ライトの推測では、おそらくは従来の同型魔物よりも強さは上だろう。何せライトも知らない未知の魔物だ、これまでの魔物より弱いということはないだろう。


 そしてもう一つ驚いたのが『暗黒の魔獣』と呼ばれる魔物のの存在だ。

 ライトの知る暗黒の魔獣とは、これまでに出てきた水神アープやディープシーサーペントと同じレイドボスであった。

 その姿は獅子の頭に山羊の身体に蛇の尻尾という、いわゆるキマイラと呼ばれる魔物そのものである。

 ちなみにBCOの暗黒の魔獣は獅子と山羊と竜、三つの頭を持ち背中に竜の翼が生えている。


 本来ならレイドボスであった暗黒の魔獣が、暗黒の洞窟のフィールドモンスターになって出てくるとは驚きだ。

 とはいえ暗黒の魔獣のレイドレベルは1、どちらかというと初心者向けの最弱レイドボスであった。なので、同じ暗黒の名を冠する繋がりとしてレアモンスターに降格したのかもしれない。


 未知の魔物に旧レイドボスまで入り混じる暗黒の洞窟。

 今回は魔物除けの呪符を使用しているので、それらと遭遇することはない。だがもしこの先またここに訪れることがあるとしたら、これは絶対に油断できないであろう、とライトは密かに思う。


 特に暗黒の魔獣がいる三層は、他の魔物も同様に強いだろう。カオスゴーレムとか、聞いただけで強そうな名前だ。あと、暗黒蝙蝠というのも…………ン? 暗黒、蝙蝠?

 ここでライトがふと何事かを思い浮かべる。


「ねぇ、レオ兄ちゃん。三層の魔物の暗黒蝙蝠って、もしかして、アレ? マードンもそれ?」

「ン?……ああ、言われてみりゃそうだな、ありゃ確かに暗黒蝙蝠だ」

「マードンって、この暗黒の洞窟の出身なのかな?」

「かもしれんなぁ。今度あいつを叩き起こしたら聞いてみるか」


 かつて屍鬼将ゾルディスのもとで一番の側近を名乗っていた、蝙蝠型の魔物マードン。魔物の種類で言えば『暗黒蝙蝠』で、この暗黒の洞窟固有の魔物らしい。

 どういった経緯でゾルディスの配下になったのかは分からないが、この暗黒の洞窟三層がマードンの故郷?である可能性が高そうだ。


 ちなみにあのマードン、実は今も大きな魚籠の中で浄化魔法の呪符を貼られたまま寝ているらしい。

 食事とかしなくて大丈夫なのか?栄誉面で干からびたりしないのか?とライトは思ったのだが、魚籠の中に魔石を数個置いて魔力を吸収させることで餓死などといったことにはならないようにしているらしい。


「そういえば、あのマードンって結局どうしたの? どこかに移したの?」

「いや、カタポレンの家の倉庫に魚籠に入れたまま仕舞ってある」

「え、マジ!?」

「マジマジ」


 ライトは知らなかったが、魚籠に入れられたマードンはカタポレンの家の倉庫に今でもずっと置いてあるという。

 冬眠のようにずっと寝ていて騒いだり暴れもしないし、レオニスの事情聴取はライトが通学時に行われていたので全く気づくことがなかったのだ。


「廃都の魔城の四帝の情報を聞くために、何度かあいつを起こしたことがあるんだが。起こしたら起こしたで、すんげーうるせぇんだよな。しかもろくな情報も喋らんし」

「あー、うん……何かすっごく大騒ぎしそうだねー……」

「幸いなことに、呪符を貼っつけたまま魔石を数個魚籠の中に入れときゃおとなしく寝てるから、しばらくそのまま置いとくことにしたんだ」


 あのマードンのことだ、起こしたら起こしたでキーキーうるさいというのも実に容易に想像がつく。

 しかも上質の魔石のエネルギーを毎日取り込んでいるせいか、封印の如く寝ているだけのはずなのに肌は日々ツヤツヤと輝きを増し、体型も肥えつつあるという。

 どこまでも図太い神経の持ち主である。


「さ、じゃあそろそろ行くか」

「はーい」


 ここからもう少し進めば三層の最奥、一番奥の突き当たりに着くはずだ。

 二人はそれぞれ炎の女王や水の女王、火の女王からもらった勲章を取り出しポケットに入れる。

 ライトはまだ見ぬ闇の女王に会えることを願いながら、レオニスとともに再度奥を目指して歩き始めた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 休憩から再出発して約十分。

 二人はとうとう三層の突き当たりまで辿り着いた。

 それまでの通路に比べ、格段に広い円形状の空間が広がる場所に出た。

 その広さは炎の女王がいた玉座の間よりも何倍も広く、ちょっとした運動場くらいにはなりそうな大きさだ。


 だが、ぱっと見では何もない空間のように見える。

 神殿はおろか視界を遮るものすら何一つない、ただのだだっ広い空間が広がっている。

 ライトは不安そうに、横にいるレオニスにそっと小声で尋ねる。


「レオ兄ちゃん……ここが暗黒の洞窟の一番奥の突き当たり、なんだよね?」

「ああ、間違いない。この部屋のどこかに、暗黒神殿に繋がる道があるはずだ」


 レオニスはじっと前を見据えながら、迷いのない力強い声で答える。

 その力強い声の頼もしさに、ライトはちょっとだけ安堵する。

 レオ兄がそう言うなら、間違いなくそうなんだ。そう素直に思えてくるから不思議なものだ。

 改めてライトも前を向き、最奥の空間をじっと見つめる。


 レオニスはまず真っ直ぐ進み、入口から直線上の最奥の壁に向かう。そこから壁を触りながら、時計回りにゆっくりと歩きながら移動していく。

 半周して入口に戻り、入口左手の壁を続けて触りながら移動していくレオニス。

 そしてとうとうぐるりと一周したが、特に何も感じた様子はない。


「んー……壁を触りながら全周してみたが、特にこれといった異変や違和感は感じなかったな。さて、どうしたもんか……」

「どうしようね……他に何か手がかりを見つける方法はないかな…………ン?」


 思案顔で途方に暮れるレオニスに、ライトも同意しつつ話しかけていた、その時。

 ライトは部屋の中央に何かが浮かび上がっているのを見つけた。

 それは、これまで階層移動に使用してきた転移用円陣によく似ている。

 ライトはレオニスのロングジャケットをクイッ、クイッ、と引っ張りながら、部屋の中央を指差してレオニスに教える。


「……レオ兄ちゃん、あれ……」

「ン? …………何だありゃ、転移用の円陣か?」


 二人してそーっと部屋の中央に歩いていき、円陣の近くまで移動する。

 その大きさは通路の突き当たりにあるものよりもかなり大きいが、形状や模様は転移用円陣とほぼ同じもののように見えた。


「これ……階層移動用の円陣と同じもの、だよね?」

「多分な…………入ってみるか」

「……手、繋いでもいい?」

「おう、万が一別々の場所に飛ばされたり(はぐ)れたら困るからな。せーの、の合図で同時に足を踏み出すぞ。……せーの!」


 ここまで来たら、円陣に入らないという選択肢はない。

 ライトとレオニスは逸れないように手を繋ぎつつ、意を決してレオニスの『せーの!』の合図で同時に円陣の中に飛び込んでいった。

 前話に続き、今回も暗黒の洞窟探索です。

 魔物除けの呪符のおかげで全く襲撃されることなく、安心安全の道中。

 冒険要素が薄い代わりに、暗黒の洞窟の本来のデータや解説などを二人の会話中に結構盛り込んでます。


 そしてそのついでとばかりに、マードンが名前だけでの再登場。

 レオニスに浄化魔法の呪符数枚をペタペタ貼られて、スヤァ……と眠りこけるマードン。あれからずっと冬眠してたとは、ライトどころか作者もびっくりですよ!……まぁアレは普通の魔物じゃないし、取り扱いもなかなかに難しくてですね。マードンのその後を出す機会がついぞなかった、というのもあるんですが。


 というか、マードンに関して非常に謎いことが一つ。

 今年の2月1日に『小説いいね機能』なるシステムが追加され、読者様の任意で各話に『いいね』がつけられるようになりました。

 これを受けて、ありがたいことに拙作の各話にもちょこちょこと『いいね』を付けてもらえているのですが。もうすぐ500話を迎える拙作の各話の中で、最も『いいね』をいただけているのが、何と『第414話 魚籠の中身の取り扱い』なんですよΣ( ゜д゜)ウソーン!

 その数5件、同率一位もなく第414話が単独トップという、本当に謎いことになっております…( ̄ω ̄)…ナンデ?

 え、まさかあのマードンが超大人気!とかいうことじゃないよね?マスターパレンのパティシエ姿の凛々しさ効果よね?( ̄ω ̄;≡; ̄ω ̄)

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