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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
様々な出会い

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第43話 アイギス

 ライトがラグナロッツァにあるラグーン学園初等部へ編入するという話がまとまった翌日、早速いろいろな準備を始めた。


 まずは家の中の一室、ライトの部屋の隅に転移門を新設した。

 レオニス曰く、一人二人移動させる程度ならそれほど大掛かりな魔法陣を組む必要はない、らしい。

 ただし、念の為万が一何かしら緊急事態が起きた時に備えて、人間五人分くらいは転移可能な陣を敷くという。


 他にも、万が一にも誤動作が起きないように、転移先は当面の間カタポレンの森の自室とラグナロッツァの家の2ヶ所のみの行き来とする制限設定を施すそうだ。

 そりゃね、行き先間違えていきなりディーノ村の冒険者ギルドや他国の転移門に移動しちゃったら、壮絶にマズいことになるもんね。

 後から改めて行き先指定を追加できるように、空白の移転先指定欄もいくつか作っておくようだけど。


 次に、ディーノ村の冒険者ギルドに行き、転移門を利用してラグナロッツァの冒険者ギルド総本部に移動する。

 道中ディーノ村のクレアと総本部のクレナにも会い、それぞれちゃんと挨拶したりちょっとした世間話などもしたが、相変わらずそっくり過ぎてライトには未だに区別がつかない。

 レオニスの言う区別の仕方、耳の形や耳たぶもよーく見てみたのだが違いがさっぱり分からない。

 二人同時に並べて耳の形比べでもしてみないと、こりゃ一生分からないんじゃなかろうか?とライトは内心本気で思う。


 ラグナロッツァに移動したら、まずは制服の注文のために服屋に向かう。

 その服屋の名は【アイギス】、名前の由来は女神の防具らしい。防具全般扱える仕立て屋だそうだが、それよりもドレスなどのファッション的な衣装の方が有名なお店だそうで、その裁縫の腕やセンスは超一流の店だとレオニスは太鼓判を押す。

 そしてその店はカイ、セイ、メイという三人の姉妹が経営しているという。

 アイギスの名を知らぬ者はいない、というほどの超有名人気店にも拘わらず、ライト達が入店した時にも快く受け入れてくれた。


「あらー、レオじゃなーい、いらっしゃいませー」

「おう、メイ。久しぶりだな」

「本当にね。そして何、今日は服の新調?」

「いや、それも後日頼む予定ではあるが、今日はこの子の制服を注文しようと思ってな」

「あら、可愛らしい男の子をお連れなのね。こんにちは」


 メイと呼ばれた女性が、ライトに向かい挨拶をした。

 淡紫の左サイドテールに、濃い紫の瞳。見た目は二十代前半か半ばくらいか。

 目鼻立ちも整ってはいるが、何よりも目を引くのは黒を基調としたその華やかな出で立ち。

 パフスリーブとフリルたっぷりのミニスカワンピースに編み上げ装飾入りのビスチェ、羽毛やレースの花飾りのついたミニチュアサイズのゴシックハット、二の腕半ばまであるレース生地のオペラグローブ。

 これはあれか、俺はそこまで詳しくはないが、いわゆるゴスロリというやつだろうか?


「初めまして、こんにちは。ぼくはライトと言います。今日は、ラグーン学園初等部の制服を作ってもらうためにきました。よろしくお願いします」


 ライトはメイに向かって、ペコリとお辞儀をしながら挨拶した。

 最近は初めて会う人に挨拶することが多かったので、慣れてきたものだ。

 メイは感心したように、ニコニコとライトを見た。


「まぁ、とても賢くてお利口さんね。この子が噂の養い子君?」


 えっ、それホントにラグナロッツァ中の噂になってんの?

 うそーん、レオ兄のジョークじゃなくて?


「ああ。ライトはグランの兄貴とレミ姉の息子だ」

「……そうだったの。あの二人の子なのね。ああ、面影がよく似てるわ」


 メイが目を細めて、懐かしそうな眼差しでライトを見つめる。


「メイさんは、ぼくの父さんと母さんをご存知なんですか?」

「ええ。グラン君とレミちゃんは、私達の仲間であり親友よ」

「そうなんですか?」


 ライトはびっくりした。

 そして、ここにもまた自分の両親を知る人がいた。

 そのことが、ライトにはとても嬉しかった。


「ええ、私達三姉妹とグラン君とレミちゃんはね、ディーノ村の孤児院で育った孤児院仲間なの」

「えっ、じゃあレオ兄ちゃんとも仲間なんですか?」

「もちろん!レオのおねしょしたお布団だって、私達がよく干してたものよ?」

「ちょ、メイ!」


 レオニスが慌ててメイを止めようとする。

 メイはそんなレオニスの慌てぶりなど気にも止めず、会話を続ける。何だか彼女の背後にキニシナイ!大魔神のオーラがうっすらと見える、ような気がする。


「うわー、レオ兄ちゃんの小さい頃のお話、聞きたいな!」

「うふふ、いくらでもお話してあげるわよ?」

「おい、メイ、ちょっと待て、いや、待ってくれ、いやいやホントに待ってください」


 今まで見たこともないくらいに、レオニスが焦っている。

 その光景の何と楽しきことよ。

 ライトとメイはニヨニヨと笑い、そのお尻には悪魔の尻尾がピコピコと生え動いているかのようだ。


「くっそー、お前ら覚えてろよ!」


 歯をギリギリと食いしばりながら、うっすらと涙目になるレオニス。

 あんまり弄りすぎても可哀想なので、ここら辺でやめとこう。


「ぼくの父さんと母さんのお話も聞きたいです!」

「ええ、いつでも大歓迎よ。ところで今日は、制服がどうのとか言ってたわよね?」


 打ちひしがれていたレオニスが、シュタッと起き上がり速攻で立ち直る。


「ああ、ライトが言った通りだ。今度、ライトをラグーン学園初等部に通わせることになってな」

「まぁ、それはいつから?」

「来月の1日からだ」

「ラグーン学園初等部の男の子の制服ね、在庫あると思うからちょっと見てくるわ。待っててね」


 メイはそう言うと、店の奥の方に引っ込んだ。

 しばらく待っていると、メイが制服らしき服を手に持って戻ってきた。


「入学式用の見本があったから持ってきたわ。サイズも多分ぴったりくらいだと思うんだけど、どうかしら?」


 メイはライトの後ろに回り込み、制服を背中に当てて大まかなサイズを確認した。


「見本用を売っても大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫、この時期に制服が売れるなんてことは滅多にないから。それに、時期外れの転入生や留学生の受け入れなんかもたまにあることだから、各サイズの1着や2着分のストックも常時用意してあるのよ」

「すまんな、そしたら一応試着させてみてもいいか?」

「どうぞ。試着室はこちらよ」


 メイは二人を試着室前まで案内した。


「では、どうぞごゆっくり。お着替えは一人でできる?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

「本当にしっかりしたお利口さんね」


 ライトはメイに御礼を言いながら、試着室の中に入っていった。

 メイとレオニスは、ライトが制服の試着で着替えている間雑談を始めた。


「姉さん達は奥の方で作業中よ。会っていく?」

「いや、仕事の邪魔をしちゃ悪いからな、今日は遠慮しとく」

「そう?別に構わないのに」

「またジャケットの改造や修理が必要になったら頼みに来るさ」


 ジャケットとは、どうやらレオニスのシンボルにもなっているあの深紅のロングジャケットのことのようだ。

 確かにそのファッションセンスからして、ここアイギスの作品らしいと言える。

 だがしかし、メイの端正な顔つきが途端に歪む。


「えー……あれの修理とか、もう勘弁よ……」

「ん、その節はすまんかった」

「ホントよ、もう。あれは修理するより、もはや全く同じの新しいジャケットを用意した方がいいんじゃない?ってくらい酷かったんだから……」

「まぁな、それは認める。だが、俺もあのジャケットには思い入れもあったし、素材からしてとんでもなく貴重な品だからな……」

「貴方ほどの人が、そこまで私達の作った服を大事に思ってくれることはとても嬉しいし、光栄なことでもあるけどね」

「ああ、お前達の腕もセンスも間違いなく本物の超一流だからな。俺の戦闘服に関してだけは、他の人間には任せられん」

「ありがとう。そこまで言ってもらえたら、私達も仕立て屋冥利に尽きるというものよ」


 後日聞いたところによると、この時のレオニスの言った『その節』とは、廃都の魔城の討滅戦の時のことらしい。

 魔物の体液やら肉片、返り血等々を散々浴びたジャケットは、そりゃもう壮絶なことになっていたようだ。

 そしてレオニス自身も、服を着替えて入浴しても魔物由来の異臭のようなものがこびりつき、しばらくその異臭が取れなかったという。


 レオニスとメイがそんな会話を続けていると、試着室でもそもそと着替えていたライトがカーテンを開けて出てきた。

 ゴスロリ美女三姉妹が末妹、メイの登場です。

 久しぶりの女性キャラ登場だ、わーい!……でも、レオニスより年上なんですよねぇ、しかも頭が上がらない姐御キャラという。

 本当に、レオニスってばハーレムとは縁遠い……


 ちなみにレオニスがライトに三姉妹と同郷だということを話さなかったのは、おねしょ布団話で見られるような過去の恥ずかしい話をされたくなかったからのようです。

 んなもん隠してたって、ライトがグランとレミの子だと紹介すれば絶対に芋づる式にバレますのにねぇ?

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