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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新たなる試練

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第416話 アクセサリーの配分

 アイギスで神樹の枝のアクセサリーを受け取ったレオニスは、ラグナロッツァの屋敷に戻ってきた。

 時刻は午前十一時少し前、昼食の時間には少々早い時間だ。


「おーい、ラウル、いるかー」


 レオニスは空に向かって執事の名を呼ぶ。

 しばらくすると、己の名を呼ばれた執事が音もなく姿を現した。


「おう、ご主人様、お呼びか?」

「ライトはまだこっちに来てないよな?」

「ああ、まだ来てないぜ」

「そうか、まぁもう少ししたら昼飯食いにこっちに来るとは思うが」


 食堂に向かって歩きながら会話する二人。

 ここ最近のライトとレオニスの土日祝日の昼食は、ラグナロッツァの屋敷でラウルのご飯を食べるのが常となっている。

 単に作る手間を省きたいのもあるが、ラウルの美味しいご飯を食べたい!というのもあったりする。


 ラウルはラウルで人に美味しいご飯を振る舞うのは好きなので、レオニスから材料費をもらえれば特に苦にもならない。

 最近はレオニス達の食費やライトのおやつ代として、多めの食費をもらっているのでラウルの機嫌も非常に良いのだ。


 そんなラウルの働きに労うように、レオニスがラウルに土産を差し出した。


「ほれ、ラウル。今日の土産だ」

「土産?……おお、ぬるぬるドリンクチョコレート味か!」

「おう、今日は冒険者ギルド総本部に用事があって出かけたからな。そのついでに買ってきた」


 レオニスがラウルにぬるぬるドリンクチョコレート味を五本渡す。

 その内訳は、濃いめが三本、サラサラが二本。お一人様合わせて五本までの購入個数制限がある大人気商品なのだ。

 そんな大人気商品を手土産として買ってきてもらえたことに、ラウルは殊の外喜ぶ。

 五本のぬるチョコドリンクを大事そうに空間魔法陣に仕舞うラウル。


「ご主人様、ありがとうな!」

「まぁな、ラウルにはいつも美味いもん作ってもらってるしな」

「これを買えるのは後四日しかないんだよなー、俺も明日以降毎日冒険者ギルドに買いに行くかな」

「何だラウル、そんなにこれが気に入ったのか?」


 この日は2月11日、バレンタインデーの2月14日まで残り三日と半日。

 その残りわずかな三日間、毎日ぬるチョコドリンクを買いに行くと言い出したラウルにレオニスが心底びっくりしながら聞き返した。


「ああ、今年は濃いめとサラサラの二種類に増えたんだろ? 特にこの濃いめの方は、ゆっくりと煮詰めればケーキやプリンなんかにも使えそうだしな。サラサラの方も少し煮れば料理にかけるソースに応用できる」

「おお、そうか、そこまで気に入ったんか」

「そりゃもちろん!これだけチョコレート味を手軽に使える手段はそうそうないぞ? 購入制限がなけりゃ全部買い占めたいくらいだ」


 ラウルの熱弁に、レオニスはかつてのツェリザーク限定ぬるシャリドリンクのことを思い出す。

 あの時もラウルの熱の入れようは半端なかったよなー……でもこのぬるチョコドリンクの方は買い占め不可だからな!

 さすがのラウルも買い占め不可のものを何度も買ってこい!なんて無茶振りはできんだろう。残念だったなラウル!


 レオニスがそんなことを考えている一方で、ラウルも何やらブツブツと呟いている。

 くッそー、ぬるチョコドリンクの味がこんなに向上してるならもっと早くから足繁く買いに行くんだった……残り三日、ライトがラグーン学園から帰ってきたら二人で毎日冒険者ギルドにぬるチョコドリンクを買いに行くか。何ならマキシやレオニスにも、仕事帰りに冒険者ギルドに寄り道してもらってだな……


 レオニスとラウル、二人して怪しいオーラを立ち上らせながらクックック……と笑っている。実に胡散臭い図である。

 するとそこにライトが外出から帰ってきた。


「ただいまー」

「おう、ライト、おかえりー」

「お昼ご飯今からだよね?お腹空いたー!」

「おう、今から三人分用意するところだ。その間に手を洗って着替えてきな」

「はーい!」


 ライトはラウルの言いつけ通り、手洗いと着替えるために食堂を一旦出る。

 二階の自室で私服に着替えて再び食堂に戻ってきた時には、もう三人分の食事が出揃っていて食べるばかりになっていた。


「「「いっただっきまーす」」」


 三人声を揃えながら食事の挨拶をし、昼食を食べる。

 本日のメニューは、聖なる餅にピザの具を乗せて焼いた餅ピザだ。

 トマトソースにチーズと輪切りのピーマンを乗せて焼いたベーシックタイプ、コーンのマヨネーズ和えにベーコンを乗せて焼いたもの、明太子マヨネーズにチーズを乗せて焼いて刻み海苔を散らしたもの。全部で三種類の餅ピザである。


 ただでさえ美味しいピザなのに、聖なる餅のHP回復効果も加わって皆の食べる手が止まらないことこの上ない。

 特にライトとレオニスは、昨日のプロステスでの炎の洞窟調査後ということもあって、疲労回復効果抜群の餅ピザがよく効くようだ。


「ンーッ、ラウルのご飯はいつも美味しいけど、特に今日のは超美味しーい!」

「ああ、昨日はプロステスで散々働きに働いたからな。働いた後の聖なる餅は疲労回復にもってこいだ」

「おう、俺様の作る美味い飯がご主人様達の疲労回復に役立つなら何よりだ」

「ラウル、いつも美味しいご飯ありがとうね!」

「どういたしまして」


 ライトやレオニス、特にライトらの大絶賛に気を良くするラウル。次々と減っていく餅ピザを、己の空間魔法陣からどんどん出しては補充していく。

 そうして五十個もの餅ピザが三人のお腹に消えていった。


「ふぃー、たくさん食べたぁー。ごちそうさまー」

「食った食ったー。ごちそうさま」

「デザートは簡単にぬるチョコホットドリンクな」


 食後の後片付けをサクッと終えた三人は、再び椅子につきラウル特製ぬるチョコホットドリンクを飲んでのんびりと一休みする。

 レオニスが冒険者ギルド総本部でいただいたぬるチョコホットドリンクに比べ、ラウル特製の方がクリーミーで若干甘めだ。砂糖や生クリームを加えていると思われる。

 食後のドリンクでほっと一息ついた中、レオニスがライトに声をかけた。


「ライト、この後何か予定はあるか? 今朝の話じゃ学園の宿題とかしたいことあるって言ってたが」

「あ、うん、それはもう終わったよー」

「ならこれからツィちゃんとこに行くか? カイ姉に頼んでおいた神樹の枝のアクセサリーをさっき受け取ってきたんだ」


 ライトに午後の予定を聞いてきたレオニス。

 何事かと思いきや、今から神樹ユグドラツィのところに行こうというお誘いであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 神樹の枝のアクセサリーが出来上がったからには、ライトもレオニスも早速ユグドラツィのもとに行き報告したいと思うのは当然のことだ。そして今日は日曜日、神樹ユグドラツィのもとに行くならライトといっしょに行ける休日のうちがいい、という訳である。


「どんなアクセサリーができたのか、見せて見せて!」

「おう、そんな慌てんでも見せるからちょっと待て」


 待ちきれない!とばかりに催促するライトに、レオニスも苦笑いしながら空間魔法陣を開く。

 そこからどんどん出てくる様々なアクセサリーに、ライトだけでなくラウルまで興味津々に覗き込んでくる。

 タイピンにカフスボタン、大小二つのバングルにペンダント、様々な木製品がテーブルの上に並ぶ。


「うわぁ……どれも全部使いやすそうだね!」

「だろ? カイ姉達の仕事はいつでも完璧だからな」

「まだ分体も入ってないのに、ツィちゃんの強い力が感じられるな……つーか、何だこの置き物、フォルか!? こんなん可愛過ぎだろ!!」


 アイギス製アクセサリーはどれも逸品揃いで、その丁寧な仕上がりと完璧な仕事ぶりにライトもラウルも心から感嘆している。

 中でもラウルが最も注目し目を輝かせたのは、カイ作の木彫りのフォル。さすがフォル教信者第一号、真っ先に目を奪われたのがそれとは信者第一号の称号に相応しい溺愛っぷりである。


「あー、それはカイ姉達のアイギスの御守りにする予定だから譲るのは不可だぞ?」

「何だ、そうなのか……まぁでもアイギスの守り神としてフォルを祀るなら、それも納得だな」


 レオニスから早々に譲渡不可を宣告されたラウル。

 少しだけ残念そうだったが、それがアイギスの御守りと聞き納得するあたりやはり心根の優しい妖精である。

 というか、『御守り』のはずが速攻で『守り神』に昇格するのはフォル教信者ならではの思考回路か。


 他にもセイ作の小鳥の置き物やメイ作のジュリ扇等、いくつかの譲渡不可品を説明しながら端に除けていくレオニス。

 アイギス製の逸品の数々のお披露目が済んだら、お次は誰が何を持つかの相談だ。


「レオ兄ちゃんはどれを身に着けるの? やっぱカフスボタン? それともタイピン?」

「そうだなー、取り外しが一番簡単で着けやすいのはタイピンなんだが……カフスボタンも捨てがたい」

「そしたらぼくにタイピンくれる? タイピンならラグーン学園の鞄に普段着けて、休みの日には服につけてお出かけに持っていけるし」

「おう、いいぞ。じゃあタイピンはライトで俺はカフスボタンな」


 ライトはタイピン、レオニスはカフスボタンとそれぞれの取り分が決まる。

 ライトとしては取り外しのしやすさももちろんだが、ユグドラツィにラグーン学園での学園生生活も見せてやりたかった。

 レオニスのカフスボタンも、深紅のロングジャケットに常時着けておけば自動的に冒険時の供になる。


 そう、レオニスは以前ユグドラツィに『俺達がいろんなところに分体を連れてってやるんだからな』と言い放った。

 その時に交わしたユグドラツィとの約束を、ようやく果たせる時が間近に来たのだ。


 だが、そんな感慨の空気を読まない妖精がここに一体。


「なぁ、俺も何かもらっていいか?」

「おう、置き物と扇子以外ならどれを選んでもいいぞ」

「そしたら俺はこのバングルがいいかな」


 成人男性用サイズのバングルを手に取りながら、己の左手首にスッと嵌めるラウル。もともとそれはレオニス用として作られたものなので、ラウルが嵌めてもサイズ的に何の問題もないようだ。

 神樹の枝の太い箇所から切り出されたであろう、一本彫りのバングル。飾りの彫刻はなく無地のままで、継ぎ目も一切ないシンプルな腕輪。柔らかな丸みが美しい木目と相まって、究極の美すら感じさせる逸品だ。


「でもって、この小さなバングルをマキシに譲ってもらいたいんだが、いいか?」

「おう、いいぞ。マキシもツィちゃんの友達なんだろ? だったらマキシにも何かあげなきゃな」

「ありがとう。マキシに代わり感謝する」


 仕事中でここにはいないマキシに代わり、ラウルがレオニスにマキシの分のアクセサリーを欲しいと懇願する。

 もちろんレオニスにそれを断る理由などない。むしろ同じ屋根の下で暮らしているマキシにだけアクセサリーがないなどと、仲間外れになってしまうではないか。

 そうしたラウルの危惧が分からぬレオニスではない。


 マキシは今この場にいないので、彼の好きなものを選択させてやることはできない。だが、マキシなら神樹の枝のアクセサリーというだけで喜んでくれるだろう。しかもラウルとサイズ違いのお揃いのバングルだ、マキシが喜ばない訳がない。

 それに、その小さなバングルはもともとライトが着けられるように作ってもらったものだった。ライト用といっても、少しでも長く使えるように気持ち大きめに作られているのが見て取れる。

 だが、ライトはいずれ成長して着けられなくなるであろうバングルよりも、ずっと使えるタイピンの方を選んだ。

 サイズとしては小柄なマキシにも使えるだろうし、皆が神樹の枝のアクセサリーを持てるようになって全員万々歳である。


「これで皆の分のアクセサリーが決まったね!」

「ペンダントは余ったが、まぁいつか誰かが使ってもいいだろう。じゃ、これからツィちゃんとこに行くか」

「うん!」


 ライトとレオニスが席から立ったところで、ラウルも同時に席を立つ。


「ご主人様達よ、俺もツィちゃんとこに行くのについていっていいか?」

「ン? そりゃもちろん構わんが……お前の方からカタポレンの森に行きたいとか言い出すなんて、珍しいな?」

「そりゃあな、俺だってツィちゃんの友達だし。アクセサリーの礼をマキシの分と合わせて言わなきゃならんだろう?」


 ちょっと照れ臭そうな顔をしながら言い募るラウル。

 ラウルだって神樹ユグドラツィと友達なのだ、友に会いに行きたいと思う気持ちはライトやレオニスにもよく分かる。


「うん、そうだよね!ラウルだってツィちゃんから加護をもらった友達で、ツィちゃんとは仲良しだもんね!」

「お、おう、そういうことだ」

「おーおー、ラウルにもどんどん友達ができて良かったなぁ!俺は嬉しいぞ、あの自称人見知りの引っ込み思案なラウルに神樹の友達ができたなんて……嬉し涙で前が見えねぇわ、ョョョ」

「う、うるせー!大きなご主人様め、からかってんじゃねーぞ!」


 ラウルの言葉に嬉しそうなライトに、ラウルの肩に腕を回しながらニカッと笑いつつ嘘泣きで流れもしない涙を拭う素振りをするレオニス。

 レオニスの言葉に顔を真っ赤にしたラウルが、レオニスのちょっかいに怒るフリをしながら抵抗する。

 人族二人と妖精一体が織りなす平和なひと時だった。

 ようやく神樹の枝のアクセサリーを持ってツィちゃんのところに行けそうです。

 ツィちゃんから枝を分けてもらったのが第317~318話なので、ちょうど100話ぶりですね。作中の時間で言えば一ヶ月とちょっとくらい経っています。

 というか、それまで炎の洞窟調査をしていたということもあって、急いで仕上げる必要もなかったんですよねぇ。だって、ゴウゴウにクッソ暑い炎の洞窟に木製のアクセサリー持ち込む訳にもいきませんし( ̄ω ̄)


 ですが、ツィちゃんの弱点である火属性の炎の洞窟調査が完了したので、早速ツィちゃんアクセの仕上げにシフトできた、という訳です。

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